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délicieuse vie ~美味しい生活~  作者: 朝倉メイ
7/27

新茶の季節?

讃良の説明が長いです


今年は5月2日が八十八夜、只それだけです


 ゴールデンウィークの中休み、普通に授業が行われた中学校の下校風景に何時もの様に珍妙な歌声が聞こえて来る。

「い~ち~ごぉだ~いふ~くぅみ~たらぁしぃだ~んご♪よ~も~ぎぃも~ちなぁらぁつ~ぶあんがぁす~きぃ♪」(苺大福、御手洗(みたらし)団子、蓬餅(よもぎもち)なら粒餡が好き)


 気持ち良く歌っている日本人形の様な美少女の後ろから、一見ダブルと間違えそうな美少女が話しかけた。

「そう言えば新茶の季節だね。 讃良(さらら)は今日はお茶のお稽古なの?」


 歌っていたのは黒崎讃良、話しかけたのは月見里(やまなし)千尋の残念コンビである。

「ううん、今日はお稽古の日じゃあないよ。 それにお抹茶の新茶の季節は11月だよ」

 そう言ってコテンと首を(かし)げた讃良に通りすがりの下級生たちは見惚れている。

このコンビは見た目だけは良いのだ。


 抹茶の新茶の時期は11月と言われて千尋は思わず質問してしまった。

「え?今日は八十八夜だから新茶の季節だよね?」

「そうだヨん、立春を起算日(1日目)として88日目の今日が八十八夜だから、茶摘みの季節で新茶が美味しい!」

 自分の問いにスイッチの入った讃良の顔を見て、長くなるだろうなぁと諦めて話を続ける事にした。

「じゃあ何でお抹茶は違うの?」


 千尋の質問に気を良くした讃良は満面の笑顔で説明を始めた。

「普通の緑茶は摘まれた茶葉を直ぐに蒸して揉むんだけど、抹茶は蒸したら揉まずに乾燥させるの。 この乾燥させた物を茶壺に入れて半年位熟成させて臼で挽いて粉にした物が抹茶なのよ。 この茶壺を開封する『口切りの茶事』は茶道のお正月とも言われるのよ」


 ふむふむと頷く千尋に讃良は更に続けた。

「普通のお茶の樹はお日様をいっぱい浴びて育つんだけど、抹茶用のお茶の樹はね寒冷沙って言う黒い網みたいな物を(かぶ)せて、お日様を当てないようにして育てるの。 これを碾茶(てんちゃ)って言うんだけど、碾茶はお日様を浴びてないからテアニンがカテキンに変化しないの。 だから甘味のあるお茶になるのよ」


 寒冷沙とか碾茶とか、テアニンがカテキンに変化しないかとか、千尋にはちんぷんかんぷんだったが抹茶は手間がかかっているから甘いと言うことだけは理解できた。


 これで終わりだと思って讃良の顔を見ると、鼻の穴が膨らんでいた。

まだ続くんだなと千尋は心の中で溜め息を吐いた。

「それでね、お茶の樹は『カメリアシネンシス』っていうんだけど、日本茶も中国茶も紅茶も全部この『カメリアシネンシス』なのよ」

「あー、何か聞いた事があるような……?」

「日本茶は摘んで直ぐに蒸すから発酵しないの。 完全に発酵させた物が紅茶っていうのは知ってるよね? それでね中国茶は半発酵なんだけど、発酵が短い黄茶(ファンチャ)白茶(パイチャ)や半発酵の烏龍茶等もあるけど後発酵って後から麹菌で発酵させた黒茶(ヘイチャ)っていうのもあるの」


 ファンチャ?パイチャ?ヘイチャ?千尋の頭は既に爆発寸前である。

「あ、黒茶は千尋も飲んだ事があると思うよ、普洱(プーアル)茶も黒茶の一種だよ」



 難しい事はよく解らなかったが、今後讃良には食べ物の事と諺や慣用句だけでなく『お茶』の話題も振るのはよそうと千尋は思った。



 

リーゼロッテがフランツさんに抹茶を頼んだ時に説明を入れていなかったので、此方で書きました



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