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délicieuse vie ~美味しい生活~  作者: 朝倉メイ
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お釈迦になる

4月8日だったから、それだけです

 桜吹雪の校庭に今日も珍妙な歌声が聞こえてくる。

「お~た~んじょうび~お~め~ぇでとお~♪ゴ~ダ~マぁシッダぁルぅタ~♪お~た~んじょうび~」

呑気に歌いながら下校している少女の後ろから、同じ制服を着た少女が声をかけた。

「いや、普通にハッピーバースデーって歌えば?」


 何時もの様に歌っていたのは黒崎讃良(さらら)、話しかけたのは月見里(やまなし)千尋(ちひろ)である。

「だってこの歌、元々替え歌でしょう? だから好きに歌ったっていいじゃん」

「え、元々替え歌なの?」


 驚いて思わず聞き返した千尋は『しまった』と思ったが遅かった。 讃良のスイッチが入った。

「そうだヨん、あれはグッドモーニングが正しい歌詞なんだよ」

そう言って讃良は正しい歌詞で歌い始めた。


 「――~♪…~ to all~♪」

歌い終わって、ふんすっと鼻の穴を広げる讃良の顔を見て『無駄に発音が良いのが腹立つな』と千尋は思った。

「世界中で歌われているけど、国によって微妙に歌詞が違ったりするんだよね。 マリリンちゃんも恋人である大統領の誕生日に歌ったりしてるしね、今ではお誕生日の定番だよねぇ」


 世界的なセクシー女優をマリリンちゃん呼ばわりするのはどうかと思うのだが、指摘するのも面倒なので千尋は口に出さなかった。


 立ち止まって話していると目立つので、二人は歩きながら話を続ける事にした。

どちらにしても美少女二人は目立つのだが、会話の中身は大変残念な内容である。

「それでシッダールタ様のお誕生日をお祝いして近所のお寺に行こうと思ってるんだよね、ちーちゃんも行こうよ」


 シッダールタ様のお誕生日って何だろう、聞くとまた長くなるかなぁ、そう思いながら千尋は訊ねた。

「シッダールタ様って誰だっけ?」

「えっ、ちーちゃんも知ってるでしょう?今日は4月8日、灌仏会だよっ!」


 讃良は鼻息も荒く続けた。

「4月8日はお釈迦様のお誕生日でぇ、昔、鋳物師が阿弥陀仏を造るときに失敗して、失敗した理由を『火が強かったから』って言ったんだって。 でもその鋳物師が江戸っ子だったから『火』を『し』って発音しちゃって、『しが強かった』って聞こえたんだって。 それで4月8日(しがつようか)とかけて失敗する事を『お釈迦になる』って言うという説があるの。 まぁ良くできた話だから、誰かが作った話だろうと言われてるけどね」


 そう言い終えて讃良はにっこり笑った。

「取り敢えず今日はお釈迦様のお誕生日なのでお寺にお祝いに行きましょ?」



――お釈迦様のお誕生日のお祝いって、讃良は甘茶が飲みたいだけだろうと千尋は思った。


 


『美味しい』要素がなかった?

甘茶って美味しくない……

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