表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ゾンビパンデミック

作者: しのぶ

 俺はホームセンターに勤務している。


 ある日、同僚の佐藤と一緒に休憩室でコーヒーを飲んでいると、ドアがバタンと開いて同僚の伊藤が入ってきた。


「た……大変だ!ゾンビが……!」


 伊藤は血まみれで息も絶え絶えに言った。その後ろから誰かが伊藤の首筋に噛みついた。


「ぐわああああーーー!!」


 事切れる伊藤。その後ろには、白目をむいて肌が紫っぽく変色した男が。これがゾンビか?


「ああ~」


 ゾンビはいかにもゾンビっぽいうめき声を上げて俺たちのほうに歩みよってくる……と、そこへ、


「オラア!!」


 佐藤がパイプ椅子でゾンビを殴り付けた。倒れるゾンビ。さらに佐藤は倒れたゾンビの首を踏みつけると、ゴキッと音がしてゾンビは沈黙した。首の骨が折れたらしい。


 俺は言った。


「な、何なんだこれは……?あ、そうだ」


 スマホのテレビをつけてニュースを見てみると、ニュースキャスターが街を背景にして早口で喋っていた。


「ゾ、ゾンビです!ゾンビが街に大量発生しています!な、何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も何が起こっているのか分からねえ……!あ、あそこにもゾンビが……!」


「マジかよ……」


 俺は突然の展開についていけない。そこへ佐藤が妙に冷静に言った。


「でもここはホームセンターだから不幸中の幸いだ。倉庫に行こうぜ。何か武器になるものがあるかも知れない」


「え?そ、そうだな……」


 幸い倉庫は休憩室の近くにあるので、俺たちはすぐそこに行って、何か役に立ちそうなものを探した。俺はシャベルが並んでいるのを見てこれを使おうかなと思っていると、


「お、いいものがあるじゃねぇか……」


と言って、向こうで佐藤が斧を取り上げていた。薪割りに使うような、長さが70cmくらいある斧である。


 そこへまた、バタンとドアが破られる音がして、ゾンビが一匹入ってきた。俺がそのゾンビをよく見ると……


「て、店長!?」


「ああ~」


 店長の原田のゾンビだった。


「そんな……店長まで……!」


 俺はシャベルを手にしてためらった。決して人格者とは言えない店長だったが、仮にも元同僚なので倒すのには抵抗感がある……と思っていると、


「オラア!!」


 佐藤が店長ゾンビに駆け寄って、斧を横向きにフルスイングした。

 ゾンビの首は吹っ飛んで壁にぶつかり、床に転がった。体のほうも、その場で膝をついてからばったり倒れた。


 佐藤は言った。


「フゥ~~……気持ちいい~~~……」


「え?」


 佐藤は倒れた店長ゾンビの死体を蹴りながら言った。


「元々お前のことは嫌いだったんだよ。パワハラ野郎がよ……ゾンビになったお陰で気兼ねなくぶっ殺せてせいせいしたぜ。ま、元からゾンビみたいに害悪しかないゲス野郎だったけどな」


「は、はあ……」


 そこへ、


「ああ~」


「そんな……!吉田まで!?」


 同僚の吉田のゾンビが現れた。


「オラア!!」


 また首を吹っ飛ばす佐藤。


「お前も嫌いだったんだよ。ねちねちウザ絡みしてきやがってよ……お前が俺の陰口きいてたの知ってるからな」


「は、はあ……」


 ここにいても危険そうなので、俺たちは安全な場所を探して廊下を進んだ。その途中でもまた、元同僚のゾンビたちに遭遇した。


「ああ~」


「や、山田!お前まで……!」


「オラア!!」


「ああ~」


「古田!お前もか!?」


「オラア!!」


 そんな感じで、主に佐藤が次々にゾンビを倒して俺たちは廊下を進んだ。


 店内にはゾンビがたくさんいた。こいつらは一般の客がゾンビ化したものだろうか……


「ああ~」


「せいやァ!!」


 佐藤は客ゾンビの頭をカチ割り、言った。


「てめぇらクソ客どもにもうんざりしてたんだよ。お客様は神様だとでも思ってたか?元々腐ってた脳ミソから全身に腐敗が回ったのか?てめぇらは元からゾンビのような存在だったんだよカスが」


 店内を回ったが、店内には安全な場所はなさそうだ。俺は言った。


「どうする、外に出るか……?」


「それがいいだろうな。外の様子も見ておきたいし」


 店の外に出てみると、街には人の姿がなく、所々窓が割れたり、火が燃えていたり、車が横転したりしていた。


 道路の端に、自衛隊の装甲車らしきものが倒れていて、そのそばには自衛官らしき人物の死体があった。佐藤はその自衛官から銃を取り上げて言った。


「いいもの持ってんじゃねぇか……」


 見たところその銃はアサルトライフル、引き金を引き続けていればライフル弾を連射できる銃のようだ。佐藤はその銃をいじっていたが、


「使えそうだな」


と言うと、近くのビルに向かって試し撃ちした。銃声が響いて、壁に穴が開く。さすがに威力が高い。そこへ、


「ああ~~」


 向こうからゾンビたちの群れが現れた。


 佐藤はアサルトライフルを構えると、ゾンビの群れに向かって機銃掃射した。ゾンビたちは銃弾に貫かれて次々に倒れていく。佐藤は引き金を引き続けながら歓喜の叫び声を上げた。


「ヒャッハーーー!!!パンデミック最高だァーーーー!!!!!」



 こんな時だけれど、俺はゾンビものの映画とかゲームが好まれる理由の一端を垣間見た気がした。

 いわゆるリセット願望というやつか、今ある世界をぶち壊して、合法的に人型のターゲットを撃ち殺せる、そんな環境にカタルシスを感じるのかも知れない。北斗の拳とかマッドマックスみたいな、現代文明が滅んだあとの世界を描く作品もそうなのかも知れないな……




 






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ