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異世界ギャンブル  作者: もものぎ
1/1

兄妹で異世界へ

牌の表現で

マンズを一二三

ソーズを456

ピンズを⑦⑧⑨

字牌は

東南西北白発中

赤牌は

❺r五r5

と書きます。


----異世界転移----

 文字通り異世界に転移すること。異世界への行き方として、向こうから召喚されたり、ゲートを通ったりと様々である。似た事象として異世界転生があるが、これは死んで転生することである。

 

「この主人公俺tueee確定ガチャ引いてるやんけ!」


 大抵、転移後転生後の主人公は能力に恵まれていて、それを神だとか天使だとかが授けてくれるのだから、“確定ガチャ”と言う。


「しかも、仲間も“強い可愛い優しい”の満貫やもんなぁ。」

六萬兄むつまけい、20歳、兄のほう、大学生、麻雀好き。実家の雀荘、「六萬荘」を残したまま父は他界し、母と五つ年の離れた妹の3人で切り盛りしている。目にかかるくらいの涅色の髪と男にしては背は高くないが、その整った顔立ちと魅力的な笑顔で女性客に人気であった。8卓しかない小さな雀荘でも居心地の良い場を提供出来ていることから、ちょっとだけ人気がある。そこへのこだわりというか意気込みみたいなもので、「六萬荘」では働く時はスーツというルールは無いが、今日もスーツ姿だ。


どうやら異世界モノにハマってるらしく、『異世界転生したら神々の世界だった』略して『異転神』という漫画を読んでいるようだ。


「1飜足りてへんやん。」

そうツッコムのは六萬妹(むつままい)、15歳、JK、妹のほう、方言。容姿端麗と言うよりかは幼いが、黒紅色の髪とくせ毛がよく似合っていて、蝶や花やと可愛がられている。今日は店のイベントでメイド服を着ている。


「テンパネしてるから。見てこれ、ヘケトちゃん。めっちゃ可愛い。」

ヘケト、エジプト神話における水の女神。

蛙の顔をした女性の姿をしており、多産と復活を司るとされている。上手くデフォルメされているというか、かなり可愛く描かれている。


そう言う兄をちらっと見やるが興味が無さそうに軽くため息をついた。


「異世界転生が最近のトレンドやねんな。」

最盛期とまではいかないが、異世界市場はいまだ衰えていない。

そんなことより、

「こんなん着るん恥ずかしいわ。」と少し頬に赤色がさす。

いやいやそんなことはない。知性を思わせる黒色のロングスカートと綺麗な白のフリルがよく似合っていて、傅く様はなんというかこう、唆るモノがある。

これは、売り上げも期待できそうだ。


 雀荘は、基本的に麻雀を打てる場所を提供する対価としてゲームが終わるたびに“場代”を貰う。

これが売り上げになるのだが、付加価値として飲食出来たり、メイド服を着た可愛い子と打てたり、こういった面でも売り上げに繋がる。要は接客だ。


そろそろ開店時間だ。スマホで時間を確認する。08.27、朝9時からスタートだが、来店できるように玄関は開けてある。たまに早く来て待っている客もいる。

確か、今日はセット(卓を借りて仲間内で打つこと。貸し卓。)の予約が2件あったな。と準備を進めていった。




―――「ありがとうございました!」

 本日最後の1本が終わり、閉店の合図となった。

「妹ちゃん今日も強かったね〜。その服も似合ってるし可愛いしまた会いにくるよ、んじゃお疲れ!」

中年のサラリーマンが、次のコスプレも楽しみにしてるよと笑っている。

「またお待ちしております。」

ふむ、お辞儀する姿も様になっている。さっきの客の気持ちが少し分かった気がした。


「妹、今日もお疲れ。来客も多く大変だったろ、片付けはやっとくから休んでていいぞ。」

我ながらなんて優しい兄貴なんだ!ちゃんと労えるしかっこいいし!


「……ありがと。」

思考を読まれてるのか、自分で言うか?とでも言いたげな顔で返事をしたがクスッと口元が緩むのが見えた。

「でも2人でやったほうが早いやん。手伝うで。」

なんてできた妹なんだ!優しいし可愛いし!と妹も自画自賛する。

この兄にしてこの妹あり。


「兄、これなんで6鳴いたん?」

麻雀好きの兄妹なんだ、こういう会話もよくする。

牌姿は「二二二三四②③④23366」

点棒状況にもよるんだけど、と一言置いてから説明していった。

「―――という理由で鳴いて、2を切って二五3待ちにしたんだ。」


「ふーん、相変わらずちまちま稼ぐ麻雀してるんやね。」

なんて少し笑われる。

「あのな、誰もがお前みたいに高い手が入るわけじゃないんだよ。」

妹なら鳴かずとも234の三色になるか、赤五を引くだろう。そう、妹は神々の寵愛を受けている、と思い知らされるくらい手が入る。

「まぁ、お兄ちゃんはしこしこ頑張ってくよ。」

そういう兄の顔はニヤニヤしている。

「……変態。」

そう話しながら閉店作業をしていると、忘れ物があることに気付く。

「あれ、誰のやろこれ。」

かなり古い本で、著者も書かれてない。開くと、擦り切れそうなページに見たことのない文字が羅列している。

「兄!これ。」

なんだこれとページをめくっていくと魔法陣が描かれているページが出た。

すると突然、魔法陣が目を覆うような強い光を放ち、飲み込まれそうな感覚に襲われる。

「えぇっ!まさかこれ!!!」

この時点で何かを察したように兄は叫ぶ。その横でそんなオチなんかこれ!と妹はツッコム。

さっきまで麻雀がどうの売り上げがどうのと普通の日常を過ごしていた2人だが、こんなことになると予想だにしなかったろう。いや、兄は少し望んでいた縁もあるかもしれない。


「「まさかこれ!!!」」




「「「「異世界転移!?!?」」」



そう叫ぶと同時に、2人の姿はどこともなく消え去ったのであった。


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