表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/15

第四話 時は過ぎ去り

 あの日から幾年過ぎた。


 卓也は、あれから修行にのめり込むようになり、十三歳のときに初仕事を勤め上げるほどになった。

 

 十歳を過ぎる頃になると、父親は術者としての仕事や『組織』でそれなりの役職についている為にある、雑務などに追われ始め、卓也の修行は父親からの宿題と人手が無い時のみ借り出される母親に見てもらっていた。


 あの日から卓也は変わった。

 それまでは全てに諦め、修行をただ機械的にこなしていたが、あの日から卓也は強くなりたいと、目標を持つようになった。

 幼かった卓也には真坂が言っていたことは、理解しがたいものであったが、卓也は成長し、その『言葉』が解ったとき、『力』はあった方がいいと判断した。

 

 仕事は最初の頃は、簡単な除霊や封印程度のものであったが、次第に父親や母親の監視の元、鎮めや退魔などをやるようになった。


 忙しさのあまりか、卓也は真坂の『言葉』も『筒』の中に居た女性のことも十五歳を数える頃には忘れてしまっていた。

 今、卓也にあるのは『強くなりたい』という思いだけだった。



「卓也、今度の仕事は気を引き締めてやりなさい」

 卓也の十六歳の誕生日を目前にしたある日、父親は今度の仕事の資料と共に言った。

「そんなに難しい仕事なんですか?」

 卓也は資料を見ながら父親に聞いた。

「それもあるが、今回はサポートが居ないんだ」

「父さんや母さんがついて来ないと言うことですか?」

「そうだ。それによって失敗した時は、誰かの助力を『組織』に申請できるがそれなりのペナルティーがある」

「術者を続けられないほどの…?」

「失敗の度合いによっては、記憶と力を封印され一般人として生きていくことになる。今回の仕事に成功したらお前は一本立ちすることになる」

「一本立ちをしたら責任は自分で取らなくてはいけない…」

「そうだ。本来なら二十歳前後で一本立ちなんだが、お前は物心つく前から俺が教えていたからな…」

 卓也は資料を見ながら淡々と、父親はそんな息子を見ながら少し寂しそうに話した。

「確かに今回の仕事は山神、少しでも気を抜けば死にますね」

「そうだ。心してかかれよ」

「分かりました。明朝出発します」

「…見送りはしない。帰って来い」

「分かりました」

 卓也はそう言うと、部屋を出て行った。



「しっかりやれよ、わが息子…いつの日か、アノ約束を思い出すまで…」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ