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第十二話 お帰り

三日たった…

その間卓也は『組織』や異世界、それに青鷺と連絡を取り合った。

青鷺への報酬は卓也が目論んだ通りに、ある程度の『力』を持った水水晶になった。

異世界とこちらの時間差をはかり、青鷺に飛んでもらう時間とルートを決めた。

そして、三日たった夜、卓也は行動を起こした。




「満月じゃないけど大丈夫だよな…」

卓也はそう言いながら、海を凍らし足を組んだ。

『卓也よ我は予定通りに飛ぶ…失敗るでないぞ』

『無論、そのつもりですよ』

 事前打ち合わせに来た青鷺は卓也の準備が整ったのを確認すると、ふわりと飛んでいった。




 

「ふ〜。いくか」

 一人になり、息を整えると卓也は意識を『光』の方へ向わせた。




 『光』動いたら…

 一気に…

 霊力を…

 集中して…

 『道』を…

 創る…

 ・・・・・・

 大丈夫…

 自信を… 

 持って…


 卓也は待った。

 霊力を練り上げ、いつでも『道』を創れるように。

 


 落ちついて…

 落ちついて…

 大丈夫…

 大丈夫…




行くよ…




ああ…

用意は…

出来ている…




卓也が意識を集中させていると、異世界からの声が聞こえた。


『光』が動きだした。

青鷺が近くを飛び、周辺の『力』が『気』が混沌としてきた。

卓也が練り上げた霊力が『光』の中に入り、『道』を創りあげた。


今、ここに考えられる全ての条件がそろった。


後は、あちらとのタイミングが合っていれば…。

卓也は祈るように『道』を維持し、霊力を送りながら待った。

結果を。






「え…?」

 気が付いたら卓也は体に戻っていた。

「どうしてだ…」

 卓也は慌てた様子で、海を覗き込んだ。

「…『光』が」

 本来なら肉眼では見えないはずの『光』が見える。

 しかも、『光』がだんだんと昇ってきていた。

「……ありえない……」


それは、本来ありえない事だ。

卓也が『気の流れ』の先にある『力』を『光』に例えたのは、その『力』を感じたときのイメージに過ぎない。

実際に見たわけではないのだ。

だが今、卓也がイメージで感じた通りの『光』が海の底から浮かび上がってきている。


「…異世界の者の仕業か…」

卓也は妙に納得した顔で『光』を見つめた。




 『光』が完全に海から出てしばらくたった。

 その『光』ほとんど動かず、ただ揺らめいていた。


『…どうであった?』

 しばらく『光』を見ていると青鷺が戻ってきた。

『まだ結果は分からない。だが、あなたのおかげで『光』の周りにあった壁が揺らぎ『道』を創る事が出来た。感謝する。後は、結果を待つだけ…』

『…そうか』



「どうやら、そろそろのようだな」

 卓也がそう呟くと、『光』の一部が開いてきた。


「こんにちは。はじめまして」

 『光』が人一人通れるほど開くと、中から腕に蛇を巻きつけた『人』が出てきた。


 その『人』は背中まである髪を幾つかの飾りで上に纏め上げ、服は真っ白い布を何本もの飾り紐で巻きつけていた。


 その『人』が卓也の創った氷に乗ると『光』は静かに戻って行った。


「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 二人は無言で向かい合った。


『うまくいったようだな』

『はい。そのようですね』

 無言の空間に青鷺が割って入ってくれた。

「こっちの言葉が分かりませんか?」

 卓也は『人』に再び話しかけた。

『こちらの言葉なら分かりますか?』

 卓也はこの世の言葉ではない言葉で話しかけた。

「…いや。わかる」

「それは良かった…その腕に居るのが山神ですね。こちらにおねがいします」

 卓也は言葉が通じるとうれしそうに笑い、山神を確認するために手を差し出した。

「これが吾の世界に迷い込んだ『獣』だ」

 『人』が卓也の腕に合わせて手を出すと蛇が移っていった。

(って、会ったことが無いんだよな…)

『青鷺』

 卓也は蛇を見つめながら、青鷺に助けを求めた。

『うむ。かなり『力』は弱っている様だが、山神に間違いは無い…久しいな山神』

『ああ…』

『異世界へはかなり困難な旅路だったようだな。お前が居なくなったおかげでこっちまで飛び火したぞ』

『…すまない』

『謝罪ではなく、礼を聞きたいものだ』

『すまない。…ありがとう』

『それでよい』

 卓也は青鷺と山神の会話を安心したように聞いた。


「山神を送り届けてくれて。ありがとうございます。申し遅れましたけど私は卓也といいます」

「いや。いい経験をさせてもらった」

「そう言ってもらえてよかったです」

 卓也は仕事が一段落したからか、随分リラックスしてきた。

『そなた、我の言葉が分かるか?』

『分かる』

『うむ。では聞くが、そなたが通ってきた道が閉じているがどうするつもりだ?帰るのであれば我は再び飛ぶが』

『『獣』よ心遣い感謝する。だか、コツは掴んだ。吾はいつでもココとあちらの海をつなげることが出来る』

『…そうか。ならば我は戻るとする。卓也報酬の方は後日持ってきてくれ』

『いや待ってくれ』

 そう言って飛び立とうとする青鷺を卓也は呼び止めた。

 卓也はいそいそとポケットを探り手のひらに乗る小さい袋を出した。

『水水晶はすでにここにある』

 卓也はそういいながら、袋から紙に包まれている物を取り出した。

『まったく気配を感じなかったが…』

『それなりと言っても、かなりの『力』を持っていますからね。封印しておいたんです』

 卓也が紙を解くと常人には分からない光を放つ小さな水晶が出てきた。

『これが水水晶です』

『思っていたものより『力』が強いな…感謝する』

『いいえ。感謝するのはこちらのほうです。ありがとうございました』

『…これで安心できる…山神いづれまた。異世界の者そなたも達者で…』

『礼を言う』

『ああ』

 青鷺に山神、『人』が答えると水水晶を受け取り飛び立った。




「さてと」

 卓也は青鷺を見送ると異世界の『人』に向き直った。

「俺はこれから山神を本来の場所に送り届けるが、あなたはどうします?」

「しばらくこちらの世界に滞在したい」

「…分かりました。山神を送り届けてくれた方だ…恐らく『組織』で何かしてくれると思いますよ」

 卓也は一段落すると山神に向き直った。

『山神、あなたを『祠』に連れて行きます。本来の『力』が戻るまで封印と言う形で山を霊的に封鎖して、行動を制限させていただきます。よろしいですね?』

『致し方ない。しかし、村の人間が…』

『霊的に封印するだけですから、ただの人間が出入りすることに何の問題もありませんよ』

『そうか…』

『それに、あなたが戻れば山も落ち着く…村の人たちも喜びますよ』

『ああ…戻ろう』

 卓也は山神の返事に頷くと、異世界の者に再び向き直った。

「付いてきますか?それとも、一人で行動しますか?」

「付いていこう」

「そうですか。では、『組織』に報告するのに名前が必要なんですが、聞いても大丈夫ですか?」

「ああ。…名はイツ・キと言う」

「イツキさんですね。おそらく少しの間だと思うけど、よろしくお願いします」

卓也はそう言うと、イツ・キと共に氷を渡り砂浜へと戻った。




『言い忘れていましたが。お帰りなさい山神』

 『祠』に着きいよいよ山神を眠らせる段になって卓也が言った。

『そうだな…ただいま』

『それでは、おやすみなさい』

『…おやすみ』

 そう言うと山神は『祠』に吸い込まれるようにして消えた。

「…さて」

 卓也は山神が完全に消えると、『祠』の裏の見えないところに札を貼り付けた。

「…これでよし。待たせました。じゃぁ、とりあえず宿に行きますか」


「山を霊的に封印するのではなかったのか?」

「山を完全に降りたらやります。今やったらこっちまで影響でますから」

 そんな会話をしつつ二人は山を降りた。


「じゃぁ。封印します」

 山を降り、あらかじめ仕掛けをしておいた場所に出ると卓也は柏手(かしわで)を山に打った。

「…簡単なものだな」

「あらかじめ用意をしておけば…さて、では今度こそ行きましょうか」

「ああ…」



 その後卓也はイツ・キに服を着せたり『組織』や村人に報告をしたり、そのほか雑務を片付けたりと…山神を封印して五日後に村を出られた。






長くなってます…

どうしましょう…

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