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第十一話 青鷺

「はい。それで、夜明けと日の入りの『気』と全ての『力』の流れを調査した後、再び異世界の方に連絡をとってみます。…はい。異世界にいるのは山神に間違いは無いかと…はい。もちろんです。…はい。失礼します」

 異世界の人間と話をした翌日、卓也は電話で『組織』に途中経過を報告した。


―――――ガチャッ―――――


「やれやれ…」

 受話器を置くと、卓也は部屋に戻り昼過ぎまで休んだ。



「…最近、独り言が多くなったな…」

 卓也はそう言いながら、何度目かの山登りをしていた。

(まずは、日の入りの『気』の流れを視てみよう)


(ここからでいいよな)

 卓也は『祠』の前で足を組んだ。

 まだ日暮れまで少し時間が有るが、その前から『潜り』『飛び』始めた。




 さあ…

 始めよう…




 卓也は意識を空に浮かばせ『力』の流れと『気』の流れを広範囲に感じ取っていた。

 この土地は、古くからをそのままに『神』を祀り『神事』を重んじてきた所だ。

 今は、数少なくなってきている『自然』と『人間』が共存している場所。

 心地の良い場所。




 もうじき…

 日が…

 暮れる…

 集中して…

 『気』を…

 『力』を…

 感じて…

 さあ…

















「…違う…確かに入れ替わるから騒がしくなるけど…混沌とはしていない…」

 すっかり日が暮れた後、卓也は戻って来た。

 しかし、思うような結果を得られず、少々落ち込んでいた。

「このまま夜明けを待つか…」

 卓也は、空を見上げながら夜明けを待ち始めた。


(満月か…余計な光が周りに無いから綺麗なもんだ)

 卓也は時が過ぎ去るのを、風を、自然を感じながら待っていた。




「あれは、何だ?」

 卓也が見上げていた先に、『光』が通り過ぎた。

 『光』は遠くに居るからか、ゆっくり移動しているように見える。

「行くか」

 卓也はそう言うと、足を組み意識を飛ばした。




 行って…

 しまう…

 もっと…

 速く…

 速く…




 卓也は『光』の後を追い、視認できるまで近づいた。

 『光』の正体は一羽の鳥であった。




 追いついた…

 これは…

 青鷺?…

 初めて…

 視た…

 青鷺の火…

 これが…

 



 卓也はしばしの間青鷺の放つ『光』に見入っていた。

 青鷺の羽は、抜けると『光』を失うがその様さえ見入るに値するものだった。




 これだ…

 青鷺の…

 通った…

 後…

 『気』が…

 乱れて…

 混沌と…

 している…

 ・・・・・・

 ・・・・・・

 見つけた…

 良かった…

 後は…

 行動を…

 起こす…

 だけ…

 忙しく…

 なる…




「とりあえず。青鷺に交渉しないとな…」

 卓也は意識を戻すと、青鷺が飛んで行った方角へ向かって行った。







 真夜中を過ぎた頃だろうか、卓也は歩き続け、目的の場所にたどり着いた。

 そこは、森の奥深く、人間がけして入りこめない僅かな次元の間。

 そこに、卓也が先ほど見かけた青鷺が居た。



 卓也は注意深くその巣に近づいていった。

(気性は荒くは無い筈なんだが…)

 卓也は、万一の事があれば逃げ切れるギリギリで止まった。


『こんばんは』

 卓也はこの世のモノでないモノのみが聞き取れる声で話しかけた。

『我に話しかけるのであればココまで来い』

 青鷺は特に驚いた様子も無く応えた。

『先触れもなしに来たこと、お許しいただきたい。しかし、聞きたいことと、答えによっては協力していただきたいことがあります』

 卓也は青鷺の前に立ち言葉を続けた。

『フ…久しぶりに人間から近づいてきたと思えば…いいだろう。問いには答えてやらんでもない。だが、協力するかどうかは、そちらしだい』

『ありがとうございます。では、話をさせていただきます…………』

 

 卓也は青鷺に山神に関することのほとんどを話して聞かせた。


『確かに、人間の数えでその程度の時にあの近くを通った…あそこの山神にも面識が有るゆえ協力してやらんでもない』

『ありがとうございます。…何か条件がありますか?』

『話が早くて助かる…実はな、我にそろそろ子が出来る。そうなるとこの結果を維持していくことは困難になる。もしもの時があった場合、我はいい飛んで逃げられる。じゃが子らはそういかん。卵から孵れずに死ぬことになる…』

『お子さんがある程度大きくなるまでの結界ですか?条件は』

『少し違う。条件は、お前たち人間が管理している水水晶(みずすいしょう)じゃ。あれなら使い方しだいで安全に子育てできる』

『水水晶ですか…『組織』に許可を取らなくてはいけませんね…恐らく成功報酬になるでしょう』

『無論承知。誰が成功もしないで報酬だけ貰おうとするか』

『分かりました。では、早速連絡して見ましょう…しかし…』

『渡せるのは、ある程度の『力』しか宿っていない物になるのじゃな』

『はい。恐らくは…』

『それでよい。我は安全に子に旅立ってほしいだけ。大きすぎる『力』は無用じゃ』


 その後卓也は、青鷺と少し話をし森を出た。






「もうすぐ日の出か…」

 卓也が『祠』の前に戻ると空が明るくなり始めていた。

(確認しとくか…)

 卓也は日暮れと同じように意識を飛ばし全てを感じた。


「やっぱり違うな…よし。報告のし直しと、異世界との交信をしないとな」

 

 夕べはほとんど眠っていない筈だが、それを感じさせない足取りで卓也は山を降りていった。



この前、連鎖シリーズのアクセス数を見たら思っていたよりいっぱいの人が見てくれていました。とってもうれしいです。ありがとうございます。

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