閑話*モンスターペアレントとはきっとこの人達の事だ。1
コンバンハー(´∀`∩
少し短いです。
でも、短くサクサク読めるお話が書きたいと思うんです。
……ついまとめられないくてダラダラ書いてしまうので文字数増えるし、区切り悪いし……orz
「父上ッ!! 兄上ッ! 」
「リュコス? なんで王都に? 」
「シンシアが……シンディが……竜の谷に落とされました」
「「は? 」」
父上と国王陛下について国境で秘密裏に、とある国との会見があった。
公にし、邪魔をされる事を危惧した国王陛下は信頼出来る人材だけを引き連れ王宮を出たのが……。
良くも悪くも父上は裏切らないと信頼しているのだろう……そしてその一員に自分も呼ばれたのだ。
第二王子の護衛から外れる理由にもちょうど良いだろうと父上の決定で自分の同行が決まった。
三週間と言う期間、やっと王都に戻った父上と俺を出迎えたのは愛しい天使の妹ではなく……領地にいるはずの生意気な弟だった。
弟のリュコスは父上の弟である叔父上に似ている為に、父上も息子は可愛いが『何かムカつく』と呟く事が多々あった。
基本的に領地に引きこもりのリュコスがなんの為に?と思ったが……
その後に続いた言葉に父上も俺も言葉を失った。
信じられない。
俺の天使が竜の谷? なんだそれ……。
国王陛下の嘆願により、婚約無効の発表は時期を見ることになっていた。
国王陛下側にも準備や理由があるし、完全に納得したわけでは無いが、我が家に楯突く馬鹿な貴族もいないだろうと……何処か甘く考えていたのかもしれない。
俺は……何よりも大切な妹を無防備な状態で愚かな人間達の元へ置いて行ってしまったのだ。
俺がリュコスからの話を聞き、理解するよりも早く父上の姿が掻き消えた。
転移魔術だろう……。
シンシアが『出来るかも? 』と研究し、開発したシンシアの魔術。
俺には理解できなかったが、父上は使えるようになっていた。
しかし、それはロストマジックだから公に使ってはいけない。シンシアが狙われると父上がシンシアや俺達に言いつけていた魔術。
「第一王子が……竜の谷行きを決めたのか? 」
「一応は……しかし、提案したのは殿下とあの屑が傾倒していた頭の軽い女だ」
「シンシアの所在は?」
「ーー魔封じをされて連行された。その後、連行したはずの騎士達が山付近の道で爆発したと目撃情報が来てる」
俺の疑問にリュコスは無表情で淡々と答える。
リュコスは父上と似ていて、常に笑顔を貼り付けている。
共に育った者ならば、その貼り付けた笑顔でも感情の機微を伺う事はできるが……無表情と言うのは久しぶりに見た気がする。
まだシンシアが幼かった頃、母が亡くなり……父上がシンシアを王都に連れて来た頃。
リュコスも一時期、王都のタウンハウスに来ていた時だった。
基本的にタウンハウスにも、領地にも居なかった父上はタウンハウスのメイドに関して厳しくしていなかった……と言うよりも放任状態だった。
そんなメイドの中に何を勘違いしたのか、父上に色目を使い、一人になる事が多かったシンシアにベッタリとくっ付いて回るメイドがいた。
父上は良くも悪くも他人に興味がなく、それは自分に向けられる感情についても同じで気づいてなかったが、リュコスが一番最初に気づいた。
あのメイドが気持ち悪い……。と、俺に訴えてきた。
その頃からまるで花が咲くように笑顔だったシンシアの笑顔に違和感を感じるようになった。
父上やリュコスの笑顔が被るようになった……。
そしてリュコスと共に調べてわかった。
メイドは、母上の死をシンシアのせいだと囁き続け、服を着て見えない所に折檻だと言い傷つけ、躾だと言って食事を抜いていた。
その事がわかった時、リュコスの表情が無になっていた。
メイドは確かに優秀で、他のメイドや使用人にも一目置かれていて、決して他の人間がいる所ではシンシアを冷遇しているようには見えなかったし、逆に親身になってるようにすら見えた。
伯爵家の令嬢だった事もあり、後妻にはどうかと言う話すら出ていた程だった。
俺とリュコスはすぐに父上に報告し、底冷えするような綺麗な笑顔の父上に拷問されるメイドをリュコスは無表情で見つめ続けた。
そこに叔父上も加わり、メイドの生家である伯爵家はそれまでの羽振りの良さが一点、爵位を売らないといけない所まで堕ち、没落していった。
その過程にリュコスと叔父上の手があったのは間違いない。
魔封じをされて連行……。
シンシアなら魔封じを破壊するのは可能だ……。
しかし、リュコスの言い方だと強制的に破壊するより周りに被害のない破壊を選んだと考えられる。
そして、連行した騎士を爆発させたのは『使わないし、使いたくないけど……護身用にね?』と苦笑していた父上に作らされた魔術具のものだろう。
あの優しい天使のようなシンシアが使ったという事は、そうしてしまう程、傷つけられたと考えてもいい。
とりあえず、連行した騎士の血縁を殺そう。
自分の役割というか、回って来るだろう余り物の処遇を考えていると大きな爆発音がした。
音は王宮の方角から聞こえる。
「父上が動いた。俺達も行くぞ」
「了解。早く終わらせてシンシアを探しにいかないとね」
「父上がいないと竜の谷への行けないからな……」
「大丈夫。シンディにかけた魔術は消えてない……生きてるよ」
爆発音を合図に俺達兄弟も行動を開始する。
既に情報は全て、リュコスによって用意されていた。
それがリュコスの役割で、俺は物理的な実行役だ。
リュコスは情報収集や証拠集め、物理的報復が許されない時の実行役。
早く済ませ、父上を連れて竜の谷に行こうと口にするとリュコスが手の中にある魔石を見つめて、シンシアにかけた魔術が消えてないと呟く。
父上、リュコスの魔の才能はシンシアには劣るが多才だ。
父上は攻撃魔術、リュコスは呪術や結界など細かい俺がどうしても苦手な分野に秀でている。
俺は魔術が苦手なわけではないが、武術を主とし防御系魔術が得意と言える。
それに気づかせてくれたのは、幼いシンシアだった。
『兄様は、最強の剣と盾をお持ちなのですねッ! 兄様の才能は戦い守る為のものです。素晴らしいんですよ? 気づいてますか?』
そう言って、自分が父上のように攻撃魔術が得意ではないと落ち込み投げやりになりかけた俺を慰め、叱咤してくれた。
あの時の優しく、花が咲くような笑顔はずっと覚えている。
大丈夫だ。
どんなことをしたって可愛い妹は守ってみせる。
それが国を滅ぼすとしても……。
そう決意し、俺はリュコスから数枚の書類を受け取り、既に何も無くなっていた広いタウンハウスから踏み出した。
その日、いくつかの領地で魔獣が出現し、領主一家とその血縁の貴族や商人、庶民に至るまでが魔獣により命を落とした。
不思議な事に抵抗しない人間を襲う事なく、抗った人間以外の被害は皆無だった。
領主一家の誰かが魔獣の怒りをかったのだ……と噂されるようになり……。
怪事件として迷宮入りする事になった。
その同時刻、国で一番権力と地位、財を持つと言われていたミルナイト公爵家とそれに連なる血縁の貴族と国で一、二を争っていた商会が元々存在していなかったように忽然と姿を消した。
それは経済の停滞を示し、国の守り神と呼ばれていた防波堤であった戦神が消えた事を示していた。
国が荒れる……。
誰もがそれを予期していた……。
「ねぇ、兄さん」
「なんだ? その呼び方、懐かしいな」
「僕、嫌な予感がするんだ。シンシアに虫が寄ってきてるような」
「奇遇だな。俺もだ」
「やっぱり急ごう。すぐにでも終わらせよう!」
ーーシンシア
「へくちっ!」
「大丈夫か?」
「ん〜。平気、でもなんか背筋がゾクッとしたような?」
「熱は無いようだが? もう今日は寝るか?」
「うん。アルも一緒に寝てね?」
「あぁ。分かってる……。起きるまでそばに居る」
兄達が怖い……(笑)
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次話は8月4日です。