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パクッと……パクって!? いやぁぁぁ

少し間隔あけながら投稿していく事になると思いますが、週一は必ずと……出来るかな……大丈夫かな。


頑張ります!

すいません(;´Д`)

 


「ーーえ、にゃ! 」


 間抜けな発言だった事は認めるが……。


『あーーん、パクッ』と言う効果音がピッタリな感じでカプっといかれた。


 あ、死ぬ? 死後、うんことかやだよ!?


「キャッ! 」


 真っ暗になり、マジでこのまま食われるんじゃ……とガタガタしてると急に明るくなり軽い浮遊感とお尻への衝撃に悲鳴をあげてしまった。


「え、これ……金銀財宝?」


 放り出された所と言うか、私の下にあるのはキラキラと輝く金銀財宝の山だった。


 ドラゴンが宝物集めるって本当だったんだな……。

 ここはどうも洞窟? らしいが、金銀財宝の少し離れた所に池? 泉? があってその上が抜けてるようで光が差し込んでいる。

 私、なんでここに運ばれた?


 私を咥え運んできたドラゴンは、少し距離を置いた所で丸まって眠ってるのか、目をつぶっている。


 西洋ドラゴン、そのままな姿形をしてるな……。

 コモドドラゴンがドラゴンって言われるのが分かる。凄く似てる。

 まぁ、このドラゴンは真っ白で光の加減で銀色に見える色だけど……。

 爬虫類は嫌いではないけど……このサイズは流石に怖いな。

 さっき一口だったしな……もしかして、私非常食?


 とりあえず、ここに何があるのか見て回るかと財宝の山から降り、ドラゴンの横を通り過ぎようとした時……


 ドーンと少し先にドラゴンの尾が置かれ、まるでこれ以上は行くなと言われてるようだった。

 バッと振り返るとドラゴンは片目を開け私を見ていて……仕方なく来た道を戻るとドラゴンは再び目をつぶった、尾の位置は変わらず、これ以上ダメって事なんだろうな……。


 仕方が無いので、泉の方へ向かうと……そこだけ洞窟ではなく自然豊かな不思議空間になっていた。


 泉の周りには植物があり、何故か凄くキラキラしていた……。

 小さな林のようなちょっとした木々があり、そこには木の実がなっている物もあり……私はそれをもぎ取り、一口。


「あ、美味しい……」


 うーん。

 とりあえず、あの尾の先に行かない限りは自由らしい。

 もし、非常食扱いだったとしても、今すぐ食べられるって事はなさそうと結論付けて、ここで生活する決意をした。

 泉の近くに魔術で小屋を作り、そこで寝起きする事にした。



 私が竜の谷に落とされて? 落ちて? 一ヶ月。

 まだ非常食の出番は無いようで、生きています。


 それどころか……ドラゴンさんは何処から手に入れてくるのか……家具や服、生活に必要な物を出かける度にお土産として持ってきてくれていた。


 おかげで何もなかったログハウスもどきは立派なワンルームになりました。

 前世のワンルームより絶対豪華だし、物によってはミルナイトにいた頃より良いものがありそう……。


「ドラゴンさん、アルジャンさん! 料理がしたいです……焼くだけとかもう飽きたよぉ……塩味以外が食べたいよぉ」

「グルルル……」

「後、ドレスはもういらないので……ワンピースが欲しいです」

「グル、グルルル」


 今日も今日とてドレスの入った箱を持ち帰ってきたドラゴンさん事、アルジャンさん。

 勝手にアルジャンさんと呼ぶようになったのは呼び方がドラゴンさんでは味気ないと思い始めた。

 それで前世の記憶から何処か外国の言葉で銀色をアルジャンと言う事を思い出してそのまま名付けて勝手に呼んでる。


 ドレスよりワンピースがいい。だって動きにくい。

 そしてワンピースより、料理を作れる環境が欲しい!!


 そう要望を出して翌日にはアルジャンさんは旅立って行った。

 正直、一人だと何もする事が無くて暇だ。

 暇すぎて財宝の分類とかしちゃうくらい暇。


「アルジャンさん、遅いな……今日で三日? 初めてだな……」


 あの日から三日、アルジャンさんは帰ってきてない。

 どうもアルジャンさんは過保護で、好き勝手ウロウロしても止められる事がなくなったと思ったら少し距離を置いてずっとついてくるし、躓いて転びそうになれば助けられ財宝部屋に連れ戻されて数日外出禁止になる。

 そんなアルジャンさんが私を三日も放置? 何かあったのかな? 大丈夫だよね、ドラゴンだもんね。


 非常食として、置いておかれてると思っていたのは数日だけだった。

 非常食より、金銀財宝への対応が一番近い気がした。

 何かアルジャンさんに興味をもたれる事があって大切にされてるんだと思う。


「一人は、いやだ……。一人は……怖いよ、アルジャンさん」


 よく考えれば、追放を言い渡されて竜の谷に落とされてから意思疎通は満足に出来なくても、本当の意味で一人じゃなかった。


 財宝部屋の奥の自分の小屋で、その小屋には分不相応な豪華なベッドの隅で毛布に包まりながら震える身体を抱きしめた。


 私の前世の実の親は、良くも悪くも女だった。

 ある男に傾倒し、貢ぎ……妊娠して捨てられた産みの母は子供の私に一切興味がなかった。

 毎日、狭いアパートの一室で一人だけ……食事も満足に貰えなくて……食パンとジャムだけが与えられて、そのまま一週間不在とかがざらにあった。


 一人は、嫌だ……。


「シンシア? 」

「ーーえ? 」


 どのくらいそうしていたのか……名前が呼ばれた気がして毛布から出る。

 父様や兄様達の声じゃない、ルカでもない。

 誰?


「いないのか? どこだ? シンシア! 」

「こ、ここに……え? 誰……?」

「いた……。良かった……思ったより時間がかかって……居なくなったかと思った」

「え……アルジャン、さん? 」


 切羽詰まったような声に恐る恐る小屋の扉から顔を出すと銀髪の美形が洞窟内にいた。

 一瞬、ドラゴン退治にきた人かと思ったけど、近づいてくる美形がどうも人間離れしていて、無駄にキラキラしていて……私を抱きしめ、居なくなったかと思ったと心底安心したような声色に『もしかして』と聞いて見たら『そうだ』と耳元で囁かれた。

 ヤバい、良い声過ぎて……腰抜けるかと思った。


「久しぶりに人化して、人間の言葉を口にした。感覚を掴むのに思ったより時間が掛かったんだ。人化も言葉も何百か、何千年ぶりだったからな」

「本当にアルジャンさんなの?」

「そうだ。君と、シンシアと言葉をかわしたかった。俺がどれだけ君を大切に思っているか……それを伝えたかったんだ」

「ふふっ。私も貴方が大切だって気づいた所なのよ!会いたかった」


 ドラゴンの生態は明らかになっていない。

 強いていうなら遠く離れた土地にドラゴンを始祖にした竜人の国があるらしいと聞いた事があるくらい。


 この綺麗な人がドラゴンだからなんだと言うんだろう?

 私は一人でも大丈夫だったと思う。

 でも、もし一人で居たとしたら途中で全てを諦めていたかもしれない。

 一人は嫌だと自暴自棄になっていたかもしれない。

 私は、このドラゴンに救われ、大切な存在だと思ったのだからそれでいいんだ。


 私は素直に会いたかったんだと口にし、私を抱きしめるアルジャンの背に手を回した。


 そして、アルジャンが満足するまで抱きしめられていたが、どのくらいか分からないけど……満足したのか笑顔で私から離れ、異空間魔術の空間収納から私の為に用意してきてくれた調理器具や食器類、食材や調味料を出してくれた。


 あれ以来、アルジャンは谷を出る時以外は常に人化して過ごし、共に食事をして、共に眠りにつくようになった。

 既成事実がないだけで、夫婦のような日々を過ごしていた。

 過保護で谷から出して貰えないけど……そこまで困る事もないし、アルジャンが納得するようにするつもりでいる。


 しかし、そんな平凡だが穏やかで優しい時間が突如破られた。


「邪竜めっ! 退治してくれるッ!」


 声高々に宣言し、剣を掲げる青年が谷に侵入してきたのだ。

 私の育った国では珍しい褐色に赤系の髪……あれはハールカルダ国の特徴だったはず……。

 ハールカルダは遠くも近くもない、竜の谷を挟んだ先にあるので行くには迂回路が必要だから交易は盛んじゃない。

 輸送費が高くつくんだよね……。


 それより……


「アルジャン……邪竜なの? 」

「いや? 人里は襲った事ないぞ……盗賊はよく襲うけど……。シンシアのドレスも盗賊のアジトにあった中から似合いそうなのを選んだ」

「盗賊かぁ……なら別に悪い事してないよね? 」

「あぁ。この前久しぶりに人里に行ったが、この姿だったし、ちゃんと買い物したぞ? 」

「何故邪竜? 」


 私の質問にアルジャンは不思議そうな表情で私を見返し首を傾げた。

 どうもアルジャンの獲物は魔獣や動物の他は盗賊らしい。

 人里を襲わず、盗賊退治してるなら善良な竜じゃね? 邪竜ではないよね?


「あ、あの……あなた達は邪竜に捕えられているんですか? 邪竜は何処ですか? 」

「え、邪竜って言うか……ドラゴンならここ……」

「俺がそうだ。どうした? 」

「え? 人の姿をしたドラゴン? え、何それ……どういう事……」


 剣を掲げ宣言した青年は目の前にいるのが人間二人だと認識したようで、少し恥ずかしそうに掲げた剣をオズオズと下ろすと『邪竜は? 』と聞いてきた。

 目の前にいますよ? 私がここにと手のひらを上に向け示すと、アルジャンも自分がそうだと要件を聞くが、青年は軽くパニックになったようで……ブツブツと呟き、フラっと身体が傾き……倒れた……。


「倒れたッ!? アル! 倒れたよ!? 」

「そうだな……。とりあえず……寝かせておこう」

「う、うん……」

「それよりシンシア、腹が減ったぞ! 」

「あーうん。そうだったね……すぐ作る」


 目の前で人間が倒れるのを初めて見て、軽くパニクった私にアルジャンは落ち着き払って寝かせておくと言われた。

 え? それでいいの? と思わなかったわけではないけど、病院とかもないし、治癒魔術は外傷にしか効かないから私に出来る事もない。

 それにご飯を作ろうとしてた時だったので、空腹を訴えられたら私は作るしかないので、倒れた青年はアルジャンに任せて食事を用意する事にした。


 アルジャンが暮らし、今は私も暮らす洞窟は簡単に言えば蟻の巣のように部屋がいくつもあるようになっている。

 アルジャンが自分で掘ったらしい。

 財宝部屋は一番奥で入り組んでいるし、アルジャンの許可が無ければ入る事も出来ない、見ることも出来ないようになってる。

 今は人化してるけど、あの大きさーーちょっと大きめのアパート位でそんな細かい術式組んだね。と感心する。

 アルジャンが言うにはドラゴンにも得手不得手はあるものの、人間の魔術は初歩中の初歩だと笑ってた。

 私の魔術行使の仕方はおかしいらしく、色々教えてくれる。

 私の魔術は術式が必要ない……。魔石に魔術を込めたり、瞬時に行使する為に保存したりする時は必要だけどね。


「アル、出来たよー。今日は簡単に済ませたけど、いい? 」

「ん。シンシアのシチューは美味いからいい。俺は好きだ」

「ふふっ。ありがとう。それでその子どう? 怪我とかしてなかった? 」

「ん? あぁ……。頭を打った様子はないな……人間がドラゴンに挑むなど無謀だからな、酷く気を張っていたのだろう。俺から見てもこいつは実戦経験が浅いと思う……ドラゴンならば魔獣の一部や化け物として退治出来ると意気込むかもしれんが……その相手が自分と同じ姿形をしていたとなると、実戦経験の有無や同族を殺した事があるかで大きく変わる。まだ若いからな……腕に覚えはあっても人間を殺した事はないのだろう」


 基本的に私の生活空間は財宝部屋になってる。

 洞窟に入ってすぐの場所に洞窟とは思えない部屋になってる所はアルが私用に新しく用意してくれた出入りしやすいーー言うならばサロン、リビングみたいな……そこに転移陣が用意されていて、そこから財宝部屋までは一瞬だったりする。


 洞窟に掘られて造られた石窯に鍋を入れ、木の器にシチューを注ぎ、カゴにいれたパンと共にアルジャン特製の食卓へ運ぶ。

 手抜きでごめんね? と言うと笑顔で好きだと言ってくれるから嬉しい。

 ふと、部屋の端にさっきまでなかった地面より少し高くなった所に藁が置かれていて……その上に眠る青年に目が止まった。


 外に放り出しとくのかと思ったら、案外優しいな。

 ちゃんと寝床用意したんだ……。

 無事? と聞くと外傷はないらしい……。

 倒れたのも精神的なモノだろうとアルジャンが話してくれた。


 人間を殺した事がないから……?


 あぁ……前世の私ならそうだったかもしれない。

 人が目の前で死ぬのは見た事がなかった……。

 母親は嫌いだったし、最後はその手で殺されかけたけど……それでも殺せなかった……殺そうと思った事もなかった。


 でも、現世は違う……。

 育った環境? 血の影響?

 確かに……目の前で倒れたのを見た時は焦った。


 でも、私……多分、既に五人殺してるんだよな。

 軽く忘れてたよ……。

 思い出してすぐにあの魔石の反応を探知魔術を使って探したけど、既に存在しなかった。

 気配を探るのは半径五キロくらいが限界だけど……自分の魔力や魔術の込められた物なら距離は関係ない。


 反応がないって事は術式が発動し、爆発したって事だ。

 予定では山を降り、馬車に戻るくらいで爆発するように魔力を吸収するようにした。

 半径二キロ程度の威力のはず……。


 はは……なんとも思わないとか……色々変わったのかもしれない。






 



「シンシア、明日はピザがいい」

「ん? わかった。アルってチーズ好きよね? それにドラゴンって本当は食べなくても平気なんでしょ? 私は一緒にご飯食べてくれる人がいるって嬉しいけど」

「あぁ。ドラゴンは魔素を吸収するからな……肉体を持つ精霊と言えば分かりやすいか? 性質は精霊に酷く近いんだよ。だから食事は趣向品に近いだろうな。俺もシンシアと食事をするのは好きだ」

「なるほどぉ……って精霊見た事ないんだけど」

「まぁ、奴らはドラゴン以上に引きこもりだからな……。別空間に多重結界で隠れてる。でも、時々変わり者が人間のフリをしてこちらに来ていたりするぞ?」

「ーー人間のフリ? アルみたいに?」

「あぁ。精霊の姿は様々だからな。それにどんなモノにも変えられる」

「ほへぇ……。精霊凄いね。いつか会ってみたいかも?」

「そうか。なら精霊は甘い物が好きだからな。ここは人里から遠いし、俺がいるから滅多に人間は来ない。シンシアの作るお菓子の匂いに釣られて出てくる奴がいるかもな?」

「え!? 本当!? なら毎日作ろっかなぁ」

「それはいいな。俺も食べたい」

「もちろんだよ!」


ーーあれ?

これ、アルが食べたいだけとかないよね?

私上手く誘導されたとかないよね?


なんか釈然としないぞ?




...........................................


次話は30日です。

よろしくお願いします

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