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さっさとお菓子食べて下さい。俺が食べられないでしょ?

ブックマークありがとうございます(っ>ω<c)

 


「よろしいんですか?シンシア様」

「ーーえぇ。己の立場を理解できない残念な人間にかける言葉は持ち合わせていませんわ。好きになさるといいのです」

「ーーそれは、いつでも手放せると言う事ですか?」

「ふふっ。そんな事は本人に直接聞いてはいけませんよ? せっかくなのですからできる所まで自分の持てる全てで結果を手にしなさいな?」

「そうですね。失礼しました」


 無事に学園に入学して半年、私と私を取り巻く令嬢や子息の目線の先に見えるのは第一王子と入学寸前に男爵家から伯爵家へ養子になり入学してきた令嬢が観衆の前で寄り添い、立場や役職を捨てた姿。


 第一王子が王太子になるには能力は勿論として、力ある後ろ盾が必要。

 その後ろ盾が今のところ私である。

 ミルナイト公爵家と言う名と私所有の商会、私個人の財産。

 王子やルーカスは勘違いしている……。

 ルーカスは名はミルナイトだが、その実……発言力も無ければ立場も未来も用意されていない。

 私が婚約者を辞め、ルーカスだけが残る事になればルーカスはミルナイトから適当な家に名前だけの養子縁組がされるだろう。既に父様が用意済みである。


 そして私が婚約者を辞めるのと同時にルド兄様は第二王子から離れる。

 愚かな暗殺合戦が再開されるわけだ……。

 まぁ、私が婚約者を辞める方が情報は早いだろうからで先に死ぬのは第一王子かもしれないなぁ。


 それに……王子は二人だけではない、王族籍を持つが発表されてない王子が父様の伝で隣国にて健やかに育っておられる。

 父様が言うには国王陛下そっくりで、凄く優秀なんだってさ……。

 第一王子よりは第二王子、第二王子よりその隠された王子ってのが父様の感想だって笑ってたなぁ。

 あの笑顔は面白くて仕方ないって感じだったな、隠された王子の存在を知らずに殺してしまえば、自分の推している王子が自分達の傀儡になるとでも思ってるんだろうなぁってニヤニヤしてる感じだと思う。


 本当にゲームには一切なかった事が多々ある。

 一番は魔王と言う存在だ……もう復活していてもおかしくないのに、そんな話一切聞かないんだよね?

 どうなってるのだろうか……。


 中立を宣言し行動してるミルナイト家が、どう動くのかを知りたい中立や立場の低い貴族の子息や令嬢が私に探りを入れてくるけど、直接本人に聞いたら面白くないよ?と忠告するとすぐに引き下がってくれるのは多分、私がミルナイトだからだろうなぁ。


 それにしても王太子が決まらないのは第一王子が残念な事と、国王陛下が出来れば隠された王子を跡継ぎにしたいからだとは思ってもみなかった。


 国王陛下には生まれる前から決まっていた婚約者がいた。

 父様の従姉妹にあたる今は無い侯爵家の令嬢だった。

 お二人は本当に仲睦まじく、優秀で未来は安泰だと言われていた。

 しかし、侯爵家の不正が発覚……。

 濡れ衣だったが、証拠は完璧で覆す事すら出来ない程だった。

 前国王陛下の沙汰により侯爵位の返還、主犯とされた侯爵は斬首、一族連座は避けられたが、国内で生活していく事は出来ずに国外へと逃げた。

 元婚約者は既に妊娠していて、貧困し、弱った母は子を産み、亡くなった。


 父様はその事を生まれた後に届いた手紙で知り、数年一緒に生活した事もある。

 まぁ王子なんて最近まで知らなかったけどね……。

 むっちゃ親戚の子だと思ってたしね……。まぁ親戚なんだけど……。


「第一王子は何故気づかないんだろうね……。自分で自分の首を絞めている事に……死に急ぎ野郎なのかしら?」

「ーーお嬢、言葉が悪いです」

「そうかしら? ルカの気のせいじゃない?」

「そうですか。さっさとお菓子食べてくださいね」


 学園で王族、上位貴族に与えられる自室にてお茶タイムをしつつ……第一王子が阿呆過ぎだよねぇ。と口にすると軽く注意された。

 最近、冒険者業で助けた元貴族子息の冒険者が懐いた結果従者になった。

 元々メイドしかいない家で、家として雇ってるから学園に入るタイミングで新しく雇う事になってたから良しでしょ。

 懐いて従者にまでなった割には……なんて言うか、敬ってる感がない……。

 あ、でもちゃんと退職金用意しないとな……。

 私名義で雇ってるからね。



「姉様……アンナを虐めてるって本当ですか?」

「ーールーカス、貴方には落胆しました。父様の選択がやはり正しかったようですね」

「え、姉様? 何を……誤魔化そうとしてるんですか!? 話を逸らさないでください! 」

「はぁ……本当にそう思っているのなら、我が家での教育は無駄だったと言う事ですね。残念です。本当に……今の貴方に私や兄様達を姉、兄と呼ぶ資格はありません」


 学園の中はゲームの物語通りに話が進む。

 ルーカスが私に直接聞いてくるようなストーリーは無かったけど、ルーカスが第一王子に忠実でアンナ(ヒロイン)に傾倒し出してるのは事実。


 問題は学園外はゲームとは大きく違うって事だろうか……。


 父様や兄様達は私を嫌ってないし、それどころか溺愛してくれている。

 魔王が復活していない。

 主人公は確かに特質した光属性と魔力を持つが、レベル上げと言うか実戦経験や能力強化と言うのをしてない。

 宝の持ち腐れだよね。


 それにしても、やっぱり父様が決めた事は正しかったんだろう。

 教師による教育も、私がしたサポートも忠告も無駄に終わった。

 報告をすれば、全てが終わるだろう。


 私の婚約も兄様の任務も、ルーカスの養子縁組も……

 出来たら死なないといいな……さすがに目覚めが悪いと言うか、後味悪いというか……。


「シンディ! 久しぶり! 」

「あれ? リュコス兄様? え? どうして王都に!? 」

「ふふっ。ルカから報告があってね? そろそろ動きそうだって……だから見物しに来たんだよ」

「よく叔父様がお許しになりましたね? 」

「まぁ、シンディの商会ーーフルムーンに仕事で用があるんだけどね」


 父様に報告したが、とりあえず発表と通告は時期を見てする事になった。

 私は婚約者では無くなったし、兄様は忙しいと言う理由で騎士団に戻っている。

 ルーカスはミルナイト公爵家から辺境にある名前だけの伯爵家へと養子縁組をした。

 既にミルナイトを名乗る事は犯罪になる。

 可哀想に……破滅だなぁ。


「もう一部に情報が流れてる。あいつは変わらずか?」

「えぇ……。阿呆の犬で、お花畑に傾倒して親身に世話してるようですよ」

「ふふっ。せっかくいい頭と見た目を持ってたのにね?父様も可哀想だねぇ……投資に失敗したんだから、まぁ見る目が無かっただけだねぇ」

「それ、父様に言ったら泣かれますよ?」


 リュコス兄様の優しい目付きが急に無になる、口元の笑みはそのままだからなんて器用な事だろう。

 一部には情報が流れてる。

 それはわざと流したと考えておかしくない。

 ミルナイト公爵家は王子から手を引いたよ、もう関係ないよ。という父様の宣言だ。

 私や兄様の後釜を狙う貴族達に流したんだろうなぁ……。

 権力を欲する貴族にとって、どれだけ腑抜けな存在でも魅力的なのが王族であり、王子だ。

 ってか、腑抜けな方が魅力的かもしれないな……。

 我が家にはそれを凌駕できるだけの力があったから婚約と言う時間稼ぎをしたけど、普通の親ならあの腑抜けの王子の婚約者に娘を差し出すような事はしないだろう。


 誰が婚約者に据えられるかは不明だけど、生け贄に近いよね。

 暗殺対象はそれぞれ王子だ、けど王子の隣に並ぶと言う事は共に暗殺の危険に身を晒されるって事だし、自身で守る力や家に全ての貴族を上回る力がないと身を危険に晒し続けるしかない。

 そんな危険な場所に自分の娘を推薦なんて普通ならしたくないって思うけど……そこは、まぁ、娘なんて道具なんて考えの貴族なら普通かもしれないな。


 リュコス兄様が急に楽しそうに笑い父様の見る目がないとニヤニヤしだす。

 この兄様は叔父様と同じで、口で勝負と言うか策略で事を成すタイプだからか……力に物をいわせ物理的に壊す人種はあまり好きじゃないんだそうだ。

 だからリュコス兄様と叔父様は父様の失敗などを本当に楽しそうに笑いチクチクついてくる。

 むさくるしいなんて言いつつも子供大好きな父様はきっと泣く事だろう。

 

「まぁとりあえず、足元をすくわれないようにしないといけないよ? じゃないと……僕、国滅ぼしちゃうよ? 」

「兄様……物騒ですわ。兄様なら確実に出来る所がより怖さを引き立ててますわ」

「ふふっ。大丈夫、家に不利益になる事はしないから」

「まぁ、でも……私、王侯貴族のしがらみが面倒くさいので離れる事の出来る機会があれば、それはそれで建前にして全てを投げ出したいですわ」


 兄様の忠告に軽く引きつつも、兄様にもその情報がいってるのか……ルカめ、口が軽いぞ。

 どうも第一王子は婚約者と言う立場にいる私を廃しようと動いているらしい。

 ニコニコ楽しそうに話しているけど、不敬すぎる発言の数々だ。

 ミルナイトの血筋特有の権力にも地位にも興味がなく、縛られるのを嫌う性質。


 まぁ私の場合、人格の根本に前世の記憶、知識があるのが最大の要因かもしれないけどね。


「ふむ。まぁ、確かにね……権力は魅力的だけど、それにだけ囚われるのは不幸だ。地位も高くなればなるほど、身動きが取れなくなり責任が増えていくからね。好きな事だけしていたいね」

「そうね。兄様は領地経営? それともお金稼ぎかしら? 」

「金が稼ぎたいね。領地経営も楽しいけどね……国を動かすのも魅力は感じるけど、この国はいらないかな? 」

「ふふっ。いつか建国して国経営しますか?」

「シンディが手伝ってくれるなら考えてもいいかな? 」


 私の投げ出したいわ発言に兄様も納得するような言葉を口にする。

 私と兄様の冗談だが、なんて怖い冗談だろう……。

 しかも、それが出来てしまいそうだから怖いよね?

 冗談だよね? 兄様……。



「シンシア・ミルナイト! お前が権力を振りかざし、アンナを虐めていたのは分かっている! 大人しく裁きを受けろっ!」


 そう何年ぶりかに私の目を見た第一王子が声高らかに宣言したのは兄様が帰って一ヶ月後の事だった。


 はぁ……情けない。そんなに死にたいのか、阿呆だな。









「お嬢、今日はクッキーですか? パイですか? それとも……ケーキですか!?」

「ーー私に忠誠を誓うって言うより、私の作るスイーツに忠誠を誓ったのね?」

「いまさら何を言ってるんですか? 美味しくて、新しいモノを作るお嬢を守りますよ」

「ーーなんだろう。おやつ抜きにしてもいいかな?」

「さぁぁせんしたぁぁあ!!」



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