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素敵な兄様と、やってきた義弟

竜の『り』の字も出てこない?

 


「兄様。貴族でなく庶民として貧困せずに一生を暮らすとして……いくらくらい必要なのでしょう」

「ん?え?は?何かいっぱい紙に書き込んでいると思ったら急にどうしたの!? 何、その突拍子もない質問!」

「そんなに深い意味はありませんよ?ただ少し気になったのです」

「えー……。まぁ、庶民の月収が金貨一枚か二枚とは聞いた事があるけど……詳しくは分からないし、正確な情報でもないよ?」


 三日に一日お休みがある妃教育、休みが久しぶりに重なり家族団欒の予定だったけど……お昼前に呼び出しを受けて感情がバレバレの笑顔で出かけて行った。

 呼び出した相手が血祭りに上げられせんように……。


 すぐに戻るから!と出かけた父様を待つ間、私と兄様は昼食を済ませサロンで時間を潰す。


 私は追放準備の為に必要な物などを書き出し作業をしつつ、この世界の物価を知らないな……と本当に何も考えずに兄様に質問してしまい凄く驚かれてしまった。


 そりゃそうだ。

 騎士は基本貴族の職で、能力さえあれば平民でも関係なくできるとは言え、やっぱり八割、九割は貴族が占めてるのが現実です。

 まぁ騎士見習いから騎士になった時点で一代限りの騎士爵が与えられるしね。

 騎士は高級取りですよ!

 ちなみに兄様は我が家に余っている子爵を受け継いでます。


 兄様の答えは多分、平民出の騎士か騎士見習いに聞いた話なんだろう。


 金貨二百枚位が目標金額かな……。

 お小遣いとかで貯めれるかな?無理だよなぁ……今までお小遣いなんて貰ったことないもの。

 欲しい物や必要な物は父様に言えば必要数以上用意されるしね……。


 うーん。前世チート? 前世の記憶や知識でチートするなら父様より叔父様だよなぁ。

 ミルナイト公爵家の商会とかも全部叔父様管理だし……。

 早めに領土へ行く機会を作らないといけないな。

 とりあえず、詰め込まれる妃教育を早々に終わらせる事を目標にしよう。


「兄様。兄様は王子方の事どう思われます?」

「ーーうーん。そうだねぇ……正直、第二王子は優秀だし自分のお立場をしっかり理解なさってると思うよ。それに子供っぽくない所なんかシンディに似ていて親近感が湧く」

「やはり優秀でいらっしゃるのですね。父様の話題に時折出てきていたので、優秀なんだろうとは思ってましたが……私に似ている、ですか……」

「正直、今回の父上の行動は納得し難いね。僕が第二王子付きの護衛になるのも、シンディが第一王子の婚約者になった事も、わざわざ養子をとることも……」


 ふと、兄様に今回の父様の行動についてどう思ってるのだろうと遠回しに探りを入れる。

 兄様達も私も母様似で童顔って事はない。

 まぁ、リュコス兄様は父様と同じく笑顔を絶やさない物腰柔らかな少年に見えるが、その実真っ黒なお腹の中身をしてる。

 自分の望む結果の為なら相手がどれだけ損をしようが傷つこうが関係ない。と言う人だ。

 まぁなんと言うか……父様、叔父様、リュコス兄様は色んな意味で良く似てます。

 ルド兄様は我が家で、一番普通でまともな思考と人格を持っているかと思えば、ミルナイト公爵家特有とも言える家族以外に興味がないし、家族を守るなら方法は問わない。


 だからか、今回……私を盾のように貸し出した事と家族に他人を入れる事をよく思ってないようだ。

 でも、父様の決定で反論は許されない。反論したいなら父様を倒してからにしてね?と本気で思ってるし、言っていた。



「父様の建前の理由はわかりますよ?それにそうするのが無難だと思います。何かの間違いで婚約者、ミルナイト公爵家の娘が怪我をしたり死んでしまった場合の報復に恐れて手を出さない、追い込まれるまで時間稼ぎになると考えているのでしょう。養子の件はいざと言う時の私の代わりって所じゃないでしょうか……ルド兄様は襲われても対応出来るけど、私はまだ駄目ですからね」

「それは分かってるよ。時間稼ぎに一番有効な事もりかいしてるよ。僕やリュコスだけで良かったじゃないか……シンディまで、それに養子なんて……」

「リュコス兄様を呼び出せば叔父様が泣きますわ。これでいいのですよ。養子にしたって兄弟と考えずに居候や同居人と考えればいいのです。父様がきちんとなさいますよ」

「ーー確かに、叔父上が困るのはよくない。まぁそうだな。俺は基本寮生活だし、顔を合わせる機会も少ないだろうしね」


 そう、我が家が出るのが一番効果的なのだ。

 それは良くわかってるけど、政治云々に興味がない父様が盾役に子供差し出した事が一番謎なのも事実。

 国王陛下に何か頼まれたのかな?

 うーん。泣きつかれたが一番近そうで、相手するのがめんどくさかった。ってのが一番ありえそう。





「ル、ルーカスです」

「ーーシンシア・ミルナイトですわ。よろしく、ルーカス」

「え、あ、はい!よろしくお願いします」


 兄様と父様が分からないと話してから一ヶ月。

 私は基礎的な妃教育を終わらせ、父様に頼んで護身術と魔術を本格的に学びたいと頼み、希望通りにダンス、護身術、魔術漬けの日々を送っていた日、父様が貧相な子を連れてきた。

 衣服は身体に合っていなく、髪も伸び放題、痩せこけている頬が痛々しい。

 父様に促され名乗る少年に『最近、父上に笑顔が似てきたね』と兄様が言う笑顔でよろしくと微笑んでみると少し驚いた表情の後に前のめりに転けるんじゃ!?と言う勢いで頭を下げてきた。

 まぁ冷遇されていたなら受け入れるようなこちらの態度や反応に戸惑うのかな?


 ルーカス・ミルナイト。

 攻略対象の1人でライバル令嬢であるシンシアの義弟。

 公爵家を追放するとシンシアに宣言するのがこの義弟である。

 後、五、六年でそこまで信用される人材になるのだろうか?

 父様は駒として、兄様は家族に乱入してくる異物として見てるけど……。

 公爵家の跡継ぎはルド兄様、領地経営はリュコス兄様が跡継ぎとして決まっている我が家からしたらルーカスは本当は必要ないし、与えられる物は無いに等しい。

 ルド兄様を蹴落とすのか、リュコス兄様を蹴落とすのか……もしそうなら怪物的な優秀な人材と言えるけど……。


「ルーカスは魔力が多過ぎてねぇ、今は僕が封印してるけどぉ……ルーカスは自分の魔力を制御出来ない。そういう体質なんだよぉ」

「先天的な疾患という事ですか?」

「そう言えるだろうねぇ。使い道的には魔力供給かなぁ?」

「そうですか……。ルド兄様の役には立ちそうですね。ルド兄様が許すとは思えませんが……」


 ルーカスの部屋にルーカスを案内させる為にメイドに預けると父様がルーカスの話を始めた。


 ゲームでは語られなかった真実。

 騎士や将軍職を任され続けたミルナイト公爵家にとって魔術を扱えないのは致命的である。

 噂には聞いた事があったけど、本当にいたのか……って言うのが私の感想だ。


 魔力は主に貴族が持つ能力で、それを扱う教育も幼い頃から施される。

 まぁ攻撃や防御など、本格的な魔術を行使出来る程の魔力を持つだけで、貴族以外にも魔力はあるし、生活魔術と呼ばれる基礎的な魔術は一般市民でも使える。


 魔力があるのが当たり前の世界で魔力を持つのに魔術を行使出来ない体質を持つ人が存在する。

 生まれつきそうで、それを覆す事が出来ない物で、解決方法は魔力の多くを封印する事だけ。

 魔術は行使出来ないが魔力が多く処理しきれずに暴走することを防ぐ為なんだそうだ。

 暴走により、周囲の人を傷つける他に最終的には爆発してしまう。


 それにしても魔力タンクですか……有効活用はルド兄様だろうけど……。

 今のままじゃ無理だろうなぁ。



「食べないのですか?ルーカス」

「えっと……僕なんかと一緒に食べていいんですか?」

「ーーそれはそうでしょ?義理とは言え姉弟ですから、家族と食事をするのは当たり前でしょう?」

「は、はい……」

 

 父様も兄様も最近忙しいらしい。

 騎士団の昇進試合が迫ってるからだ、騎士見習いが騎士となる最終審査で優勝者と能力があると認められる者が騎士となり、騎士団に配属される。

 兄様は今回は不参加だが、いろいろ借り出されているらしい。

 第二王子付きになるに当たって最終審査を次回に回したらしいから……フラストレーションが溜まってそうだ。


 慣れるまではと一週間、ルーカスは自室で一人で過ごしていた。

 食事等も全て……。

 しかし、ずっとそうしてるわけにもいかないのでそろそろ良いだろうと食事を共にする事にしたが……やはり戸惑いが多いのだろう。

 畏怖され、冷遇されて育ったわけだし……まぁ、体質的な問題だから仕方ないけど……。

 魔力量は多いと言っても、父様、兄様達、私の方が多いので、もし暴走されても押さえつける事は余裕である。

 ハイスペック一族をなめちゃいけないよ。


 姉弟なのだからと言う私の発言に頬をほんのり染めて表情を緩め、俯き頷く義弟を少し可愛く思ってしまった。


 多分、ゲームのシナリオ的には関わらないのがいいと思うんだ。

 ゲームでシンシアとルーカスは良好な関係を築いてはいなかった。

 でも、弟ーー同い年だけど。前世から憧れていた弟……可愛がりたいよぉ!

 来た日は手入れなんかされてなくボロボロだったけど、お風呂に入り、髪を整えればさすが攻略対象!と叫びたくなる程可愛い子がいた。


 光の加減によっては銀色に見える青髪に緑色の瞳は翡翠のようで、小動物のようにオドオドしてる仕草はあざといくらいに可愛い。

 何この生き物!レベルだった。










「姉様!綺麗な花が咲きましたよ!お庭に行きましょう!」


 ーールーカスを引き取り、三年が経った。


 無事、ブラコンが何が悪いって言うんだ!と開き直った私に懐く可愛い義弟になったルーカスは今日も今日とて、魔術の練習が終わる頃を見計らい部屋へやってきた。


 この世界の十三歳にしては幼く感じるが、人間として世話をきちんとされ出して感情を少しずつ取り戻して行ったから仕方ないのかなぁ?と思いつつも可愛いのでつい甘やかしてしまうのは仕方ないと思うんだ。


 父様も兄様達も適度に距離を置き接してるみたいだけどね。


 我が家に来て一年と半年、私の手伝いはあったが教育に至っては年相応かそれを上回るものを身に付けて第一王子付きの文官候補になったルーカス。

 それまでは私と常に行動を共にしていたが、婚約者の私より側近候補として選ばれたルーカスは第一王子と過ごす日々が増えた。


 ルーカスは不満そうだけど、命の恩人である父様に命じられた事を拒否する事も出来ずに不満顔を父様を意識して似せようとしてる笑顔を貼り付け自分の役割をこなしているが……


 休みや帰宅後など、私に構う濃度が……

 接し方間違えたかな?と思いつつも、ブラコン姉の私からしたらシスコン気味の弟が可愛くて仕方ない。


 私は悪くない!


 庭に行こうと私の手を握り少し前を歩くいつの間にか身長が抜かれた義弟の背中を見つめた。

 この子が私を裏切るまで二年……本当に裏切られるのだろうか……。

 もしそうならすごくショックだなぁ……。

 やっぱり……関わらない方がよかったのかな。

 大好きな義弟に裏切られるのはきっとつらいと思うよ。


 その未来を想像しただけで、胸がギュッと痛くなり自然と自分の胸元に手をやり服を握ってしまう。


 いくらミルナイト公爵家の血を受け継ぎ、その思想に感化されていても、私には前世の記憶がある……。

 家族として大切だと思うようになったルーカスに裏切られるのは凄くつらい……。


 もしかしたら血の繋がる父様や兄様達にも裏切られる可能性もあるのに……。


 あーやだな。








「シンシアさん。駒なんだからあんまり入れあげちゃダメだよ?」

「だって父様! 義弟ですよ!? 末っ子からしたら可愛いですよ! 可愛がらない方がおかしいですぅ!」

「えー……。でも、ほら他人はあんまり信用しちゃダメだよ?」

「父様って、精神的引きこもりですよね?」

「ーーなんだろ、凄く胸が抉られてる気がする」

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