無理ゲーです。リアル俺様はちょっと……
少し修正しました(;´Д`)
誤字だらけだった……チェックしたのに……なぜorz
父様に婚約話を話された日の夜、夢を見た。
私が全く違う世界で生きている一生をコマ送りで観るような感覚。
正直、納得した……。
生まれて物心がついた頃からあった世界への違和感。
魔法が当たり前に存在して、剣が普通に手の届く距離にあって……何故か文明が劣っていると思った。
何か分からない物をあると思い込んだり、こんな物があると便利だろうと知らないはずの物を作ろうとしたり……本当に大人からしたら奇妙な子供だったと思う。
そのコマ送りだらけの前世の記憶の中に私についての情報があった。
何故?と思った瞬間理解した。
腐れ縁でもある隠れオタク仲間で親友だった奴がオススメなんて生易しい言葉ではない押し付けられたと言えるゲームだった。
タイトルが思い出せないが、ストーリー的には二番煎じ、三番煎じで主要キャラの声優さんが豪華だった事と思ったよりしっかりとRPGとしても遊べる事もあり、親友の付き合いついでに一通りクリアしてやり込んだ。
主要キャラーー攻略対象と自分のレベルをあげてモンスターや魔王を倒すと言うもので主人公は“聖女”として人々と国を守る。
ストーリーのラスボスは魔王だが、エクストラステージがありそれぞれの全ENDとハーレムENDを終わらせた後に隠れキャラではなく本当のラスボス邪神が降臨する。
その邪神の右腕とされるのは第一王子の婚約者でTRUE ENDの場合、王子妃を害したと追放され行方知らず(誰も探さなかった)シンシア。
追放後、生死の境をさ迷った時に邪神に助けられ眷属になり魔王以上の存在になってしまう。
ストーリーラストで魔王を倒す、バトル推奨レベルは65。
ストーリーだけで手に入る経験値で上がるレベルは46だから少しレベ上げが必要だが、プレイヤースキルや装備、課金などの方法でレベ上げ短縮や46そこそこで倒せない事もないボス。
しかし、邪神の眷属のシンシアへの推奨レベルは90。
『エクストラステージ!? 何それ!!』で魔王討伐レベルで突っ込んだら瞬殺され死に戻りする事になる。
しかも……もし勝ったとしても、その後すぐに眷属シンシアを殺されたと怒り狂う邪神が降臨。
回復する事なくバトル突入。
邪神のレベルは120。無理ゲーの糞ゲーだった。
鞄に装備以外の枠全てに回復薬やドピを詰め込み、シンシアで極力使わずに済むようにレベルを上げ……。
邪神バトルの時は回復薬を垂れ流し状態でバトルする。
99まではそこまで無理をせずにレベルが上がるのに……(ゲーム廃人だったけど)100からは本当に経験値が入ってるのか、蓄積されてるのか……疑いたくなる程の微々たる変動……正直“ミリ”じゃなくて“マイクロメートル”なんじゃないかと同じくゲーム廃人の親友と嘆いた程に……。
辛かった……。そして邪神……三回もHPが全回復するチートだった……。
と、まぁ……私にとってはRPGとしての記憶の方が強いが本来あのゲームは乙女ゲームである。
貴族とは名ばかりの男爵位を持つ貧乏貴族で庶民と差して変わらない生活で育った主人公。
しかし、主人公がある時少ないと言われる光属性の魔力に目覚め、その時に覚醒したのか莫大な魔力を持つことになり伯爵家の庶子だった事が判明し、引き取られる事になり学園へやってくる。
そして、主人公は慣れない貴族社会へ飛び込みそこで出会った見目麗しい子息達と心を通わせあい……“聖女”として国に選ばれ攻めてくる魔王を倒す旅に出る。
攻略対象を勇者としてパーティーを組みクエストをクリアしていく。
第一王子と公爵家子息の攻略に登場するライバル令嬢がシンシア・ミルナイト。
“銀の妖精”、“白銀の女神”、“月の精霊”と呼ばれる第一王子婚約者で、四公の一角を担いその中でも格が上とされ筆頭貴族と言われるミルナイト公爵家令嬢。
元は品行方正で令嬢の見本とも言われ、優秀過ぎる令嬢だったが……婚約者である第一王子と義弟が主人公と仲良くなるにつれ暴走していく。
NORMAL ENDでは攻略対象と主人公は恋が愛に変わることは無く、政略的な婚約が破棄される事はない。HAPPY ENDでは攻略対象が地位を捨てる事により婚約は無効とされ別の子息と婚姻する事になる。TRUE ENDではその地位のまま主人公と婚姻する事になり悪役令嬢として罰せられる。貴族令嬢が、たった一人でお金も身分を奪われ放り出される……。
記憶からゲームの知識を引き出し、頭を抱えた。
乙女ゲームとはそのゲームのストーリーによるけれど……私はあまり得意じゃなかった。
悪役令嬢、婚約破棄、ハーレム……確かに女の子にとって憧れるシチュエーションなのかもしれない。
漫画や小説でも略奪愛や複数の男に言い寄られる物は人気だった。悪役令嬢だって物語を盛り上げる為のキャラクターだし、分かってはいるんだけど……。
現実世界でそれを当てはめると最悪な女だと思うのだ。
前世の世界で婚約って言うのはプロポーズをして、されて……式や入籍までの期間を指した。
その間に浮気して婚約破棄になったら慰謝料を請求出来る事だったりするわけで……。
ハーレムなんて簡単に言ってるけど、複数の男とお付き合いや侍らせてる女なんて他の人間から見たら“糞”だ。
だから二次元では許されるとゲームだったり漫画だったりとあるわけだけど……。
今の状況だとリアルだし、元々嫌いなのに……その立場になったとか、ありえなくね!?
悪役令嬢なんてごめんだ……。
男を横取りされるのも、当たり前に主人公が勝って、退場させられるのもいやだ。
でも、ちょっと待って……。
何故、ゲームの中で成人まで一年という時期に第一王子は第一王子のままなのだろう?
第二王子も話には出てきた、第二王子も第二王子のままだった。
王子を区別するための『長男、次男』と同じようなものだけど……。
役職でもあるわけで……立太子すれば、王太子と呼ばれる事になる。
王太子はたった一人だし役職でもあるわけで……。
この世界ってか、この国は昔にあった国が崩壊しかけた継承権争いを教訓に早々に後継を指名する風習がある。
だから後継が指名されてない家ーー男児がいない等ではない限り、その家の子息には『何かある』と考えられるし、色々囁かれる。
王族なんかは特に色々、ねぇ?
「お前が俺の婚約者か、パッとしないな」
「ーーヴォルフガング・ミルナイト公爵が娘、シンシア・ミルナイトです」
「ふんっ!俺の婚約者になれた事に感謝をして、俺に恥をかかせないように励めよ」
「…………」
初めての顔合わせで私は王子を見限った。
父様に小脇に抱えられて王宮へ連れてこられて初対面を果たしたのだが……。
金髪に碧眼。
見た目だけなら王子らしい王子で、まだ幼さの抜けきらない……天使と呼ばれても不思議ではない感じに『さすが王族……』なんて思ったのもつかの間……。
入室が告げられ、カーテシーで待つ私の頭に降ってきたのは姿勢を戻す許可でも、名乗りでもなく、馬鹿にしたような見下した上から目線の言葉だった。
カーテシー……これ結構しんどい。
少し無作法だけど、とりあえず名乗りを上げもう一度深く足を曲げてから身体を起こし、姿勢を正した。
こちらから挨拶をするって言うのは本来無礼だが、礼をしたままの客を放置するのも無礼だから文句は言わせない!自己紹介をこちらからしてニッコリ微笑みつつ、お前から促すのが礼儀だろ!?と目に力を込めるが、通じなかったのか……さらに上から目線で来た。
もう既に見限ったが、一つ言わせてもらおう。
確かに童顔でナイスミドルやカッコイイより可愛いと称される父様だが、美形には変わりないし、母様もその世代の社交界で一番美しいと謳われた美女であった。
その遺伝子の掛け合わせで私がパッとしないわけが無い。
前世から比べたら月とすっぽんだ、ナルシストになるつもりはないが美人だと思う。
それをパッとしないと言った、この糞ガキ。
確かに……まだ互いに九歳と少し早く産まれたので王子は十歳……まだ子供な事は理解している、こちとら完全に記憶が戻り精神年齢が少し成長した気もする。(前からズレてたなんて言わないで……)
だからこんな子供に怒るなんて大人気ない事しないもん!とは思いつつも……
十歳の、しかも王族がコレってどうなの!? 自分の立場を理解してないの? 馬鹿なの? 阿呆なの? と捲し立てなかっただけ褒めて欲しい。
誰がお前の為に努力するかよ!
こちとら仕方なく婚約者って立場にいるんだよッ!と大人気なく心の中で罵声を浴びせ返事をせずに無言でニコりと笑みを深め……そんな時、背中にヒヤッとした冷気を感じ、バッと振り返ると父様が笑顔でブリザードしてたので一気に私の熱は冷めた、どころか氷点下になった。
その帰り道に『あんな糞ガキ、見殺しでも良かったねぇ。ってか、僕が殺しちゃいそうだよぉ。あははァ』なんて言ってた父様が凄く怖かった。
まぁ正直、父様は中立なんて良い言い方してるだけで……ただの“傍観者”だ。
興味がないと言っていいと思う。国王陛下に頼まれ、泣きつかれ、ウザいから仕方なく時間稼ぎ案を出したって感じだろう。
それにしても第一王子は何を学び、考えているのだろうか……。
一つ言えるのは、国王陛下は何かあるまで放任、そして側室である母君が王子に立場を正しく伝え、律していないのだろう。
自分の息子を殺したいのかなぁ?と言うのが私の感想です。
王子が居なけりゃ側室と言う立場すら危うくなるだろうに……馬鹿なのか?阿呆なのか?
『あぁ……この親にしてこの子あり』って事なんだろうか……。
「とりあえずゲームの結末としては追放が無難。あの王子と結婚も見知らぬ相手と政略結婚もごめんだし……」
自室でこれからのことを考えて、ひとまずゲームとして考えると私は追放ENDが無難だほうと言う結論に至った。
親ばかな父様がどう動くかは謎だけど、とりあえず準備は必要だな。
今の自分に何が出来て、出来ないか……そして何を準備して持っていき、何を諦めるのか……。
金銭は持ち出せないかもしれないから色んな所に隠すのが無難だろう、追放される時に全部取り上げられる可能性も考えとかないと……。
そうと決まれば……とすぐに準備に取りかかる事にした。
こういう時、権力と財力があるって素晴らしいなぁ。
普通の子供なら何も出来ないもんね?
婚約が決まり、追放ENDを目指すと決めた日からコツコツと様々な準備を始めた。
貴族の子として義務である教育を家庭教師から教えてもらうが、私はそれを早々に終わらせていた事もあってダンスのレッスンだけは毎日あるが、それ以外は毎朝、ニッコニコの父様に小脇に抱えられて毎朝王宮へ通い、妃教育を受けて、ニッコニコの父様に小脇に抱えられて帰宅する日々。
準備……間に合うと、いいな……。
「父様、自意識過剰って……色んな意味で痛いですね」
「とりあえず、お茶に雑巾の絞り汁でも入れとく?」
「父様……子供相手に大人げないですよ」
「うーん。ならバナナの皮でも置いとく?」
「え……?」