どうしてこうなった?
亀投稿になるかもしれませんが、頑張ります。
よろしくお願いします。
誤字脱字、一応チェックしてますが……ありましたら指摘下さい。
おかしな所もありましたら……お願いします。
前世の記憶があるから、世界の予備知識があるからと言って……全てが上手くいくとは限らない。
ーーシンシア・ミルナイト
まじで……どうして……何処で間違ったよ……。
私は今、絶壁の崖の上のポ……コホン。
絶壁の崖の上で後一歩でも踏み出せば落ちるだろう位置まで剣で脅され仕方なく歩いて来たけど……。
正直人目が無ければ頭を抱えたい気分だ。
ほら、顔文字の“orz”ってしたいくらいに凹んでるし困惑してる。
それをプライドだけで背すじを伸ばし、前を見据えて踏ん張っているのです。
本当に何処で間違えたのだろうか……。
社交界と王都からの追放、公爵家からの追放で野に放たれるはずだったのに……今、私の手には魔封じの枷があり連行するのに自分で歩けって事で足だけは自由です。
自分で飛び降りろって事ですかね?ですよね。
本当に……私は何処で何を間違えたの?
こんなEND聞いた事ないよ??
私には前世の記憶があった。
詳細になればなるほど曖昧にはなるけど、それでも自分がどんな人間であったかとか、前世の世界の常識や当たり前の事などは記憶にちゃんとあったりした。
その中に一つのゲームの知識があった。
前世の私は乙女ゲームよりRPGの方が好みだったが、前世の隠れオタク仲間で親友だった奴からオススメされたってより押し付けられた乙女ゲームの一つ。
物語的には二番煎じ、三番煎じな物だったけど、声優さんが豪華だったり乙女ゲームではあるけどRPGとしても面白い物だったので私も最後まで遊べたゲームでもあった。
シンシア・ミルナイト。
ミルナイト公爵家の一人娘で王家の血筋に久しぶりに生まれた姫だった事もあり可愛がられて育つ。
第一王子の婚約者であり、一番王妃に近いとされる娘で“銀の妖精”、“銀月の天使、女神”という異名を持つ才女であり淑女だった。
しかし、成人前の二年だけ通う事になる貴族の学園にて男爵とは名ばかりの庶民に近い生活で育った少女が伯爵家の庶子だった事が判明。
伯爵家令嬢として学園に来た少女が良くも悪くも貴族令嬢らしくないその少女が第一王子を含めた複数の有力貴族の子息達を癒し恋に落ちていく。
その少女と恋に落ちた第一王子は婚約者であるシンシアに婚約破棄を言い渡す。
まぁその前にシンシアが虐めと言うか苦言を呈し続け、他の貴族令嬢、子息達がしたはずの行為を全てシンシアの責任として罰せられる。
貴族としては最悪な罰とされる社交界と王都からの追放という罰を受ける。
その後、公爵家からも追放される事になるのだがそれは公爵家からの罰なので別とする。
主人公と王子のTRUE ENDの場合のみなんだけどね……。
NORMAL ENDでは恋が愛になる事はなくそのままシンシアが王子に嫁ぐ事になるし、HAPPY ENDでは王子が王籍を辞して爵位を賜り一臣下として主人公が嫁ぐ事になる。
その場合シンシアは婚約破棄ではなく、解消、無効とされ別の貴族へ嫁ぐ事になる。
はぁ……。本当に何処でどう間違ったよ。
私の記憶が完璧に蘇ったのは私が十歳を目前に控えた頃。
記憶が無かった頃にもこの世界への違和感を持っていた、環境のせいもあるのだろうけど……子供らしい子供とは少し違う子供だった自覚がある。
まぁ、それでも公爵家で家族にも愛されてるし、大切に育てられた。
「シンディの婚約が、決まったよ。相手は第一王子だよぉ。嬉しい?」
「ーー冗談にしては笑えないですね。何を考えていらっしゃるんですか?」
「ふふ。もっと驚いてくれないと面白くないなぁ。でも、まぁさすがは僕の可愛い娘だねぇ……賢くて嬉しいよ」
「父様。きちんと説明してくれないなら領地に帰りますよ?」
「え!?それは駄目!ちゃんと説明するから捨てないで……最近可愛くないあの子と二人っきりとか嫌だ!」
父様の発言にキョトンとしてしまった。すぐに笑えないよ?と本音をよこせと言うけど、いつも通りにっこにこで腹の中が読めない表情で親ばか発言をしてくる。
この人、三児の父で三十四歳なのだが……正直見えないし人によっては十代と言われる見た目をしてる。この人畜無害のような笑顔で誰も警戒せずに懐に入ってしまう。
でもその実、笑顔は笑顔でも家族に見せる本当の笑顔と普段の笑顔は全くの別物で……普段の笑顔は家族である私から見れば凄く怖いんだよね。日本人にとって表情が分かりにくいって言うのは凄く怖いんだよね。日本人って本当に他人の表情の機微を読み取って生きてるんだなぁって実感する。
糸目笑顔の父様は近寄るべからず……微か過ぎて気づかないけど、口元によく注意すると分かる。良くない事を考えてると片方だけが僅かに上がる……。超怖い。
ミルナイト公爵家は私を含め子が三人。長兄はルドルフ兄様、成人前の二年通う事になる貴族が通う学園に在籍だけしていて、騎士団から望まれ騎士見習い(成人前だから)として所属し頭角を現しているらしい。武に長けた人です。最近成長期なのか見る度に大きくなって父様いわく『可愛くない』らしい。
次兄はリュコス兄様、長兄と私とそれぞれ三つ違いで十二歳、もつすぐ十三歳。武も劣等ではないがそれ以上に文に秀でた兄で公爵家の膨大な領地を経営し繁栄させてくれている父様の弟で私達の叔父様が見込み領地で教育を受けているので私が王都に来てからは滅多に会えずにいる。
本来、領地はその家の長が経営、運営する。
しかし、この目の前にいる父様は椅子に座り続けるより暴れたい人だった。自由人で他人の事に興味が無い、果てしなく優秀な人ではあるが文より武、ペンより剣を選び“笑顔の死神”という意味のわからない異名を持ち、王国一の将軍だった。
あの人畜無害の笑顔で、まるで散歩するがの如く戦場を駆け、その後に動くものは残らず血の海が広がる……。
一度父様に聞いた事がある『なぜ父様は笑顔の死神と呼ばれるのですか?』と、すると父様はにこりと優しく微笑み『死ぬ最後は笑顔で見送り、見送られたいものでしょ?』と幼いながらに背すじがゾクッとした。その微笑みが家族に向けるものでも普段の笑顔でもないような気がして……怖かった。
ちなみに“血濡れの天使”も父様の異名である。
父様の見目は大変美しいので仕方ないかもしれないが三十過ぎの男に天使って……と吹き出しそうになったのは私だけの秘密だ。
そんな父様だが、母様が流行り病で亡くなったと同時に将軍職を辞して領地に引きこもろうとした。
しかし、国が許すわけもなく……騎士団の相談役という父様の為に作られた新しい役職に天下り、時に騎士を鍛え、時に暴れ……時に掌握し、楽しくやっているようだ。
私は領地にいたのだが、父様が王都務めになると何も言わずに私を王都に誘拐の如く連れてきた。
親ばかは治らないらしい。
「うんとね、どうも最近一部の過激派が派閥争いで暗殺まで試みてるみたいなんだよね。だから仕方なく僕の息子を二人と娘を貸してあげようかなぁ?って思ったんだ。どちらかが立太子すれば状況も変わるだろうから、それまでね?」
「第一王子と第二王子ーー側室と王妃の派閥争いですか……。それで完全中立であり貴族の中でも筆頭と言われ、王族と並ぶ力を持つ我が家が時間稼ぎをするって事ですね」
「その通り!さすがシンディだねぇ。話が早くて嬉しいよ」
「息子を二人と言いますが、リュコス兄様を呼び寄せるのですか?叔父様に呪い殺されますよ?」
『で?』と首を傾げ、先を促すと父様は少し考えるようなニヤニヤしてるような笑顔で話し出した。
第一王子と第二王子……。
第一王子は側室として上がった侯爵家の元令嬢、第二王子は王妃として嫁いだーー王国に存在する四公の一つの公爵家の元令嬢である。
側室にしても、王妃にしても王に望まれ嫁いだのではないと言う事は共通していて……側室の方が先に子を成したと王妃は二年違いで子を成した。
しかし、側室に至っては様々な憶測が飛び交っている。
妊娠した事で後宮入りしたが、少し妊娠期間が合わないだったり、寝所を共にしたのは事実だが国王には夜にあったであろう事、その記憶がないと言うものである。
第一王子が産まれてからの目下の問題は本当に国王の子、なのかっていうもので……。
残念な事に第一王子も第二王子も母君に大層似ていて、外見的特徴で国王の子だとは言えない事である。
そんな状況で、この国での風習では早々に後継を決めるのだが……どちらの王子も立太子していなく、憶測に煽り声がどんどん大きくなってるわけだ。
だからそれに焦った側室派も王妃派も過激な者達が暴走してると思われる。
二人いるから立太子が決まらない。一人なら選ぶ必要なんて無くなるじゃないかって感じですね。
だから父様がそれぞれにミルナイト公爵家の子をつけようと思ったのだろう。
ミルナイト公爵家は建国の王の弟君が始祖にあたる。
建国から存在し、一度途絶えて薄れてはいるが建国の王の子孫にあたる家から養子を迎えた王家よりも一度も途絶えてない王弟の子孫であるミルナイト公爵家は貴族の中でも別格で一目おかれている。
そして、武力も権力も王族に並び立ち財力、財源に至っては王族よりも上である。
しかしながら権力というものに無頓着な血筋であり、何があっても完全中立を貫いてきた。
もしミルナイト公爵家が牙をむく事があるとすればそれは一族を害された時のみ……。
それが王侯貴族での常識であり、暗黙の了解である。
だから第一王子、第一王子にそれぞれ息子を一人……あれ?リュコス兄様が呼ばれるなら私必要なくない?
「うーん。リュコスは確かに優秀でロルフが囲いこんで育ててるけど……ロルフがどうのってより、優秀過ぎるし、ロルフの影響を大いに受けているから王宮にあげたら掌握してしまいそうだから今回は呼ばないよぉ。今の所、うちに被害はないしね?」
「ーー私の記憶では父様の子は私を含め三人でしが、もしかして外に子がいるのですか?そうなら本気で軽蔑して領地に戻ってロルフ叔父様と兄様達と全力で父様を駆除しますよ?」
「え!? なっ! 待って! そんな目で父様を見ないでッ! 本気で泣いちゃうよ!? 僕の本当の子じゃないよ。知り合いの子を引き取ろうと考えてるんだ!だからその目は止めて! 父様泣きそうだよぉ」
「知り合いの子供を? 何故? 跡取りはどちらも完璧な子がいるではないですか……兄様達は優秀です!」
「うーん。どうもね、持て余していてどうしたらいいか分からないって子がいるんだけど……。僕ねぇ、普通の貴族みたいに子供を道具になんてしたくないんだぁ。我が子はやっぱり可愛いもんね?だから……都合よく使える駒を手にするのもいいかなぁって思ったんだよぉ。それに疎まれて虐待されて死ぬかもしれない生活から脱却出来るんだからその子にも悪い事ではないでしょ?」
父様の答えに『だよねぇ』と思いつつ、それならどういう事?
うちは三人兄妹ですけど!?と思いついた結論にリュコス兄様のゴミを見るような目を心がけて父様を見つめ『庶子なんていたら駆除するぞ』と脅すと珍しく笑顔が消えて泣きそうになりながら説明を始めた。
わざわざ知り合いの子を引き取る理由って何?ルド兄様と私がそれぞれ王子につくならそれで事足りると思うのだけど?と『理由なくね?』と遠回しに聞くとどうも別に理由があるらしい。
そして、その理由は結構最低だった。
他人に興味がないのもここまで来るとどうなの?と思う。
でも、まぁ……確かに。兄様達も私も父様は大切にしてくれている。利用されるような事は一切ないだろうと思うし、政略結婚などする必要もない程、我が家は別格に位置してる。
“笑顔の死神”とか“血濡れの天使”なんて言われているけど、親ばかだし我が子は可愛くて仕方ないらしい。
まぁ父様の言う通り、疎まれ虐待されて育ったり、その中死ぬよりはマシかもしれないけど……。
“駒”って言い方が嫌だ。
「まぁ、というわけで……第一王子にその養子とシンシア。第二王子にルドルフをつける。これは決定事項だ。わかったな?」
「承りましたわ。お父様」
急にいつもの間延びしたような、意図的に幼い子供のような話し方から声に力を乗せ、大人で上位者である話し方に代わり、私はスカートを摘み軽く持ち上げ頭を下げた。
こういう口調の父様は異論を受け付けない。この時の父様には逆らってはいけない。