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なりゆき勇者の生業  作者: 神無月はづき
1/7

就職しました

 俺の今の心境はこうだ。


「面倒な柵から解放されたい」


 というのも、全部あの変な仕事斡旋サイト『神ナビ』のせいだ。そして変な資格を手に入れてしまった俺の運命は狂いに狂ってしまい、異世界に飛ばされて――


「勇者様? どうかされましたか?」


 犬耳が可愛い魔道士の少女のミルティが俺を心配そうに見てくる。


「何で魔王を倒した勇者なんてやってんだろうなって……」


 そう、生きるために必死だっただけ。冒険者に登録したのも、依頼をどんどん達成していったのも、冒険者ランクを上げていったのも、ダンジョンに潜るために仲間を集めたのも、未踏のダンジョンを最速攻略したのも、そして、魔王を倒したのも……。

 別にやりたくてやったわけじゃなかった。異世界転移とか最高じゃねって最初は思ってたけど、アニメやラノベで知った稚拙な世界とは訳が違った。チート能力で最強? 馬鹿言ってんじゃねぇよ。そんな優しい世界が何処にあるんだよ! 根暗や引きこもりがどうしていきなり強くなれるんだよ無理だっての! コミュ障がどうやって仲間増やすんだよ、無理だろ。そういうのはイケメンだけが許されることで、普通のオタクじゃ無理だ。


「自分に特大ブーメランだな、これ」


「ん、何か言ったか?」


 イケメンの騎士である親友のユノがこちらに近づいてきた。そうして俺は、こう言った。


「あぁ、勇者辞めたいなーって」


「「「「えっ?」」」」


 まぁ、普通はこんな反応だよな。





 事の発端は、俺が上京して職を探していたことが始まりだった。






「ここが、東京か……って喜び勇んで来たはいいけども」


 俺こと紅瀬木くぜき 零士れいじ、まだ職が見つかりません。やはり高卒じゃ何処も採用してくれないんだな。夢の大都会である東京に出れば、何かあるんじゃないかと思っていました。あぁ、これなら公務員でも目指しておけば良かったかな。自衛官とかなら、俺の頭でも入れただろうなぁ。運動は嫌いじゃないし、むしろ体は鍛えてたからそれも良かったな。まぁ、今更だけども。出来るのはバイトくらいで、やはり正社員は難しいですよねぇ。ダメだ、世の中嘗めてたわ。

 そして今日も、スマホ片手にハンバーガーを頬張っていると――


「え、経歴不問! 面接のみって。マジか! このアプリを入れればその仕事先の面接受けれるのか。……神ナビ?」


 でかでかと表れた広告を見て一縷の望みにかけようかと思ったが、名前が怪しすぎる。いや、でも……もうなりふり構っていられないのも事実だ。藁にも縋る思いで、俺はそのアプリをインストールした。

 数分でインストールは終了し、表示されたのが面接会場の行き方だった。でもこれ、公園の中なんですけど? あれれ? おかしいぞこれは。


「ゴーグルマップでも同じだ。やっぱり公園の中だよ。えぇ、これはもしかしなくても騙されたパターンじゃないですか」


 と言いつつも、俺は面接会場の公園へと足を運ぶ。まずは行ってから、話はそれからだな。誰もいないなら仕方ない、新しく仕事を探すしかないな。


「ってわけで来ましたよ、面接会場。さぁ、誰かいませんかね?」


 指定された場所に辿り着いたが、やはり誰もいなかった。


「はぁ、そうだよなぁ。そんなうまい話があるわけないじゃん。あぁ! それよりこれって、もしかしなくても請求来たりするヤバいサイトか何かだったりするのか!」


 何てこった、その可能性が高いではないか。あんなにでかでかと表示された広告だったんだ。請求の電話が来たり、強面の兄さん達が来たりするかもしれない! どうしよう!?


「やべぇって、どうしようどうしよ――」


 言葉はそれ以上紡がれない状態に陥った。何と言うか、いきなり足場が無くなった。そう、今の俺は謎の浮遊感に声も出なくなっていた。もしかしなくてもこれは俺が空を飛んでいるからなのか? 下には先ほど俺がいた公園が見えるような……。


「あ、あの……もしかして面接希望のひとですか?」


 急に後ろから話しかけられて、振り返るとなんかいた。いたって表現をとったのは”それ”が浮いていたからである。


「……」


「よかったぁ。来なかったらどうしようって思ってました。あの、聴こえてますか」


 とりあえず頷いてみた。すると”それ”は満面の笑みでぽんっと両手を合わせて納得しているようだった。


「申し遅れました、導天使みちびきのてんしのラフィっていいます!」


 なんなん? いったいこの娘はなんなのさ? いや、それよりも、だ。未だ浮遊感に襲われている状態なんだが、とにかく怖いんですけど。


「この度、神ナビをご利用頂きまして誠にありがとうございます。ではでは、これから面接会場にご案内するのです!」


「はっ? うわぁあああああああああああああああああああああああああっ!?」


 謎の美少女に手を掴まれたと思ったら、物凄い力で引っ張られて何処かへ連れて行かれる。展開が早くて頭が回らない。何処かってのは多分面接会場とやらなんだろうけど、ものすげぇ怖いんですけど! うわ、何だか目の前が真っ暗に……。




「――さい」


 ん?


「起きてください!!」


「はっ!?」


「もう着きましたよ、ようこそ第四天転用面接会場界、通称『転界』へ」


 ……はい? てんかいって何さ。えっと、俺はどうなったんだ。覚えているのはこの少女に物凄い力で引っ張られて、そこからは覚えていないんだが。


「まさか、俺は死んだのか?」


「いえいえ、今から紅瀬木零士さんには面接を受けてもらいます。ではこちらにお掛け下さい」


 え、何これ。雲みたいなものがふわふわと飛んできて、これに座れってこと? それよりももう始まんの? 色々と心の準備が出来ていないんですけど。よし、とりあえずこの雲に座るか。あ、座り心地最高だわ。


「まず、目を閉じてもらいます。今からいくつか質問をするので、正直に答えてください。あ、声に出さなくても大丈夫です。心の中で考えて頂ければ私に伝わりますので」


 訳が解らないが、とりあえず言うことを聞いておこう。目を閉じて心の中で考える。うん、何だろう。まるで宇宙空間にいるような心地よさだ。行ったことないけど。


「さてさて、まず一つ目の質問です。テテン、あなたは正義ですか? それとも悪ですか?」


 えっと、まずは何処から突っ込めばいい? 自分で効果音を言ったところか? それともその後の質問か?


「突っ込みはいいので、質問に答えて頂ければと。やはり効果音は必要かなと思いましたので入れてみました」


 おっふ、俺の心の声ダダ漏れじゃないですかやだー。とりあえず正義、かな。どちらかと言えば。


「ではでは、二つ目の質問です。テテン、あなたは死んだら天国と地獄、どちらに逝きたいですか?」


 それはもちろん天国でしょう! それ以外に無いのではないでしょうか?


「ふむふむ、三つ目の質問です。四季折々の世界と無色透明の世界、あなたならどちらに住みたいですか?」


 やはり日本人ですので四季折々の世界がいいですね。


「はーい、これで面接は終わりです。お疲れ様でした! もう目を開けて頂いても構いませんよ。……ほうほう、これはこれは。中々にレアなジョブですね。解放者リベレーターですか。これほどの適正者は殆どいませんね。これは派遣先によってはとても有利なことになりそうです。ならすぐにでもあちら側に連絡を取って、インターン代わりに派遣先へと送っちゃいますかねぇ」


 よく解らない面接が終わったと思ったら、天使の少女が更によく解らないことを言っているんですが。りべれーたーとやらがなんたらと言っていたけども、それがどういったものなのか。ってこれ何の仕事なんだよ。あと最後の方、派遣先に送るとか言ってなかった? 教育期間省いていきなり実戦投入とかは流石に無いよね?


「あ、お待たせしました。あちらの側と連絡が取れましたので、これから行ってもらおうかと思います。簡単なことはこの取扱説明書と資料をお渡ししておきますね。もし何か解らない事がありましたら、あちら側の者に確認してください。資料請求とかしてくれても大丈夫だと思いますよ」


「はい? あの、俺は何処に行けばいいんで? まだ何にも説明とか受けてないんですけども……」


 何故か話がとんとん拍子に進んでいって、当事者の俺は置いてきぼりなんですが。あちら側というのはとか、取扱説明書とか何とか、何処で資料請求すればいいとか、そして何より、俺は一体何の仕事に就くのかってことが一番気になるんですが!


「まぁ、行けば解ると言いますか。精一杯生きてくださいとしか私からは言えませんね。運の適正も高いからすぐにどうなるってこともないと思います」


「どうなるって何!? 凄い不穏な言葉なんですがそれは!」


「ではでは、解放者リベレーターとしてのお仕事、頑張ってくださいね!」


「えっ?」


 そしてまた、足場が消える感覚がして今度こそ落ちていく。そうして俺は、また目の前が真っ暗に……。

ぼちぼち投稿していきますので、温かく見守っていただければ幸いです。

ちょっと最初は色々とすっ飛ばしていきます。

よろしくお願いします。

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