表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/31

message

車輛は302号線を東に進み、牛込柳町げ外苑東通りに差し掛かり

右折し、弁天町まで北上する。

25線にて右折。進路を東に戻し神楽坂が近づいてきた時点で道を外れる。

ここまでは問題なく進んできた。

変化は側道に入って3分ほどしてからのことだった。

「おい。」

我妻が起きて、誰に言うでもなく言った。

組長の掛け声一つで車輛は停止する。

東寺が越智にうなずき、助手席から降りてカバーを開く。

夜の静寂をはらんだ大気が車内に流入する。

静寂といっても都市は静かな巨人のようににうごめいている。

湿った水の匂い。

川が近いのだ。


東寺は荷台から三脚と狙撃銃を取り出し、車のすぐ脇のビルに消えていった。

泉喪は土曜日の朝の情報番組の撮影スタッフが

話題になりそうな店に入っていく姿を連想する。


もちろんそんな店はない、高いだけの建築物だし

あるとしても閉じている時間だ。


東寺は暗視スコープをかけながら入っていったが

銃の射程円は、まだ八幡邸を包有しない。


泉喪以外は、初老の手練れが何をするのか分かっている。

というより、至極当然の手続きをしに行ったという空気だった。

泉喪はわずかに首をかしげる。


爆発音。

震動。


「え。」


泉喪は振り返る。

ビルの木立の向こうの国道25号線。

直線距離で車輛進行方向の斜め後方およそ250mで

通過してきた24時間営業のガソリンスタンドの映像が脳内に再生される。


間をおいてサイレンの響き。


警察(さつ)払いだ。

驚くことでもないだろう。」

あくびを我慢するように、隣の我妻が言った。


「なるほど、す。」


青年はそれだけしか言えない。

馬鹿みたいに派手なやり口だが、合理的ではある。

こんな、かたぎの皆様の迷惑を全く考えない方法でも、成しえることは

厄介払い

だけではない。

メッセージ。


『俺たちはここまで来た。

これから行く。

警察は払った。

存分に()りあおう。』


…くらいは伝わるのだ。



ビルから戻ってきた東寺は三脚と狙撃銃を戻す。

その手つきはとても丁寧だけど、彼の面持ちは

スタンドの狙撃、爆破の前後で違いが全くない。


― ほんと、村っぽい。

というか、この人たちのキャンプのファイアーは

派手、だなあ。―


東寺は開いた口が半開きな泉喪をしり目に助手席に乗り込み

静かにドアを閉める。

同時に発進。

のあとで、他愛もない会話がなされる。

タンクの爆発のし方とか、炎上した給油車とか、消防車の到着時間などなど。


彼らには普通の事、なのだろう。

ずっと、これからもマイム・マイムの踊りを続けるつもりである。

けれど。

泉喪は来てしまった。


終焉の静寂が迫っていることに

悲哀を覚えているうちに、車輛は目的の住宅街に差し掛かった。


























評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ