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LUCK   う~ん・・・勇者?  作者: ススキノ ミツキ
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第8話 ゾリンペル砦

 クラウドはゾリンペル砦に向かっていない。何故なら今後激化するかもしれない戦いの前にバウモラ遺跡で行うべきことがあると思っていた。


 それはダウゴウラの魔元核石を吸収することだ。クラウドは考えていた。エルナさんを助けることが出来たエターナルヒールはもともと大量のホワイトスライムの魔元核石を吸収したことで得たのではないか・・・という事を。ダウゴウラの魔元核石を大量に吸収すればプロテクトシートも変化が起こるだろうと!


--この前から結構倒してるけど、まだいるかなぁ?聞いた話ではまだ大量発生は終っていないって言ってたけど。


 クラウドは高速移動でバウモラ遺跡に到着する。


--おっ!かなりいるいる。え~と、126匹か。


 クラウドは神剣レナスを出す。目を閉じて高速移動しながら全てを短時間で倒してしまう。


--よ~し、吸収するぞぉ!


 クラウドは今まで持っていた分と倒した魔元核石をすべて吸収していった。ダウゴウラは食用に収納しておいた。


 ステータスを確認してみるとプロテクトシートはゴッドグランシーズと名前が変わっている。


--試してみるかな・・。


 ゴッドグランシーズを試すと今までより、かなり使い勝手が良くなっていて思い通りに構築が出来る。一部を矢の様に飛ばし遠隔操作も可能だ。今までプロテクトシートを二つ同時に発動すると一つ構築するよりも格段に強度が減っていたのだが、その傾向もみられない。


 いろいろ試したい所であったが結界柱を壊されると困るのでクラウドは高速移動を開始してマップを確認しながら進んでいく。


 時間が掛かる林は避けて、周りに咲いている見たことも無い綺麗な花や風景を堪能しながら高速移動を続けていく。走っている動物達を追い抜きながら、すごい速さでどんどん進んでいたのだが風景を堪能し過ぎた為にマップを見誤ってしまう。高さ300メートル以上もある崖からダイブしてしまった。


--うわっ!しまった!よそ見し過ぎた。ゴッドグランシーズがあるから落ちても多分大丈夫だろうけど・・・でもちょっと怖いなぁ・・・よし!怖いついでにあれ試してみるか?


 クラウドはゴッドグランシーズの鎧に翼を生やし高速移動の風を翼に当ててみる。クラウドは空へ舞い上がろうとするが上手く行かず崖を削りながら高度を下げていく。少しずつ翼の形や角度大きさを変えていく事で徐々に安定していく。安定した瞬間一気に風を翼に当てる。空を駆け巡りながらどんどん上昇して雲を突き抜けていく。そしてゴォ~~~!!という音と共にゾリンペル砦へ向かいだした。


--ゴッドグランシーズの強度なら可能だろうとは思ってたけど、空を飛べる日が来るとはなぁ!いつか地球に戻れた時は空からの景色、母さんにも一緒に見てもらいたいな。


 凄い速さでアッという間にゾリンペル砦近くまで到着する。


--ん?あの巨大なの何だ?


 レベル207の巨大な紅龍が砦の柱や守っている衛兵に炎を吐いていた。王国軍は結界を何重にも張り破られては都度張りなおしている様だが、どんどん結界側が間に合わなくなってきている。


「ぐわぁ~~~!隊長~!!」


 王国軍が紅龍の羽ばたきで21人吹き飛ぶ。


「もっ、もう駄目です!成龍が相手では我々だけでは対応できません!」


「諦めるな!!我々は命をかけて、この結界柱を守るのだ!王国の結界が消滅すれば多くの魔族や魔物に攻め込まれることになる。そうなればヴェルタス王国は終わりだ!先程ユイアレス王子から強力な助っ人を送ったから、それまで耐えてくれとの魔法連絡もあった!何とか皆の者!それまで頑張るのだ!」


 そう声を上げた瞬間にクラウドは着地を失敗して派手な音を立てながらズザ~~~~!ゴロゴロゴロゴロ・・・・・と転がり止まる。目を回しふらつきながら声を上げた。


「皆さん!!ユイアレス王子の命により助けに来ました!」


 足元をふらつかせながら大声を上げるクラウドが王子の派遣した者と知った王国軍の一部は落胆していた。もう駄目だと膝を落とす者も沢山いる。更に結界魔法を止めてしまう者さえいた。


--失礼な!ちょっと着地を失敗しただけでそんな落胆しなくても!まぁ、取り敢えず王国軍全員と柱、守っておきますか・・・ゴッドグランシーズ!


 軍と紅龍の間に大きな黄金の輝きを持つ壁がそびえ立つ。その瞬間吹き荒れていた炎も熱も一切届かなくなる。紅龍は更に勢いをつけて吐き出しているが揺るがなくそびえ立っている。


「「「「「「「・・・ウォォ~~~~~~~!!!・・・」」」」」」」


 王国軍の士気が戻る。


--よかった、よかった。でもこんな大きい竜どうやって倒すかなぁ。まだ短い神剣レナスじゃ、倒せないよな。ゴッドグランシーズの巨大剣で真っ二つにしてみるか?


「バカナ!紅龍の光業炎をフセゲル結界ガアルナド。」


--んっ?竜が話してるのか?いやっ、違うな?おっ!何だコイツ。


 クラウドは竜を透視する。竜の体の胃に当たる部分でどす黒い花を持つ植物が咲いている。花には不気味な顔が付いていて、それが声を発していた。


 LV53グルンガルという魔物で大型の生物に取り付き、その生物を操って取り込んだエネルギーを吸収するようだ。


--コイツが原因か?操られてるなら竜に罪はないよな。よしっ!


 クラウドは右手を出して竜の周囲にゴッドグランシーズの網を発生させて竜の体を縛り上げる。そして少し開いている口を更にゴッドグランシーズジャッキで開かせる。竜の牙に縄を固定し、それを利用して口の中に立った。口から炎を吐かれても大丈夫な様に全身にゴッドグランシーズの鎧を着ている。


--は~い。ごめんなさいね~。


 ゴッドグランシーズの縄をグルンガルの体まで伸ばしていく。魔物を縛り上げて巨大な防御結界の一部に固定して一気に縄を縮める。


「ナンダァ~、コレハ~!グェェェ~!!」


--よっ!グルンガルの一本釣りっと!


 グルンガルは巨大な防御結界の壁に衝突して地面に落ちた。クラウドは止めを刺すため、その傍に着地する。


「コノ~~、クロウシテ竜ニ、トリツイタノヲムダニシオッテァ~!コウナレバ貴様ヲ、アラユル状態異常デクルシメテ殺シテヤルァ。クラエァ~!!」


 グルンガルは巨大な顔を振り、毒、麻痺、石化、呪いなど多数の花粉を撒き散らそうとする。クラウドはゴッドグランシーズでグルンガルごと、花粉を閉じ込める。そのまま、あらゆる方向から内部へ剣をつくり出し突き刺した。


「グオェ・・ウェ・・エベ~~・・・・。」


--うぇっ!ちょっと惨かったかな?でも変なものを飛ばそうとしてたし。


 少しすると頭の中に声が響きだす。


「紅龍の長、このベグドーザ。命を助けられたことを感謝致す。本来、人間には関わる事はないのだが汝の助けが必要であれば我を呼ぶがよい。この紅龍族の秘宝、紅龍王の牙を預けておく。我を呼ばずともある程度であれば光業炎を操れるはずだ。人族の寿命は短い、それまで好きに使うがいい・・・さらばだ・・・。」


 そういって紅龍は飛び去って行った。


--紅龍の長だったんだ・・倒さなくってよかった。魔族以外に人類の敵が増えるところだったよ。あと、紅龍王の牙か・・・。今のところ、ダウゴウラの丸焼とかで使えるかな?そんなので使ったら怒られるか?まぁ、でも好きに使えって言ってたし大丈夫だろう。


 クラウドは軍の前にある防御壁はまだ解除せず魔元核石を吸収することにした。


--ちょっと躊躇うな。まさかスキルで顔を振ると異常になる花粉が出るとかだと・・・まぁ、その時は使わなければいいか。


 恐る恐る魔元核石を吸収すると状態異常耐性アップ及び呪い耐性アップのスキルを得ていた。さらにレベルは32となっている。


--花粉スキルでなくって良かった~!レベルも上がったし、やっぱり高レベルの魔物を倒すと違う!


 クラウドはゴッドグランシーズの壁まで戻り王国軍を見渡して重傷者を確認する。全身が焼け爛れているものや腕や足が熱で溶けてなくなり苦しんでいるものが沢山いる。医療班が治療しているが全く追いついていない状態だ。


「ぐわぁ~~!!苦しい~!もう殺してくれ~~!」


「うっ、腕がぁ~、腕を返してくれ~!」


「もうすぐ帰れるんだ、頑張れ。頼む、生きてくれ。」


「早くこっちの処置をしてくれ!肺が焼けて息が出来てない!早くしてくれ!!おれの友達が死んじまう!」


--ひどいな、早く何とかしないと・・・エターナルヒール!


 クラウドは防御壁越しに誰にも分からない様にエターナルヒールを発動する。すると見る見るうちに肌は再生され、無くなった腕や足も細胞分裂して生えてくる。亡くなったものには残念ながら効かなかったようだ。


「あれっ!?いっ・・痛くない?痛くないぞ~!マーニャ!ガフド!父さん生きて帰れるぞ~~!」


「う・・・う・・・腕が~・・・腕が戻って来た~、うっ・・うぅぅ~・・。」


「よかった!ビクトル!よかった~!うぉぅ~~~。」


 皆、なぜ治ったのか不思議であったようだが、それよりも嬉しさが勝っているようで誰の仕業か追求しようとは思っていないようだ。ただ一部の者は天を仰ぎ神に感謝をささげている。


 クラウドが防御結界を解除した途端、地面が響くほどの喚声が上がる。


・・・・「「「「「やったぞぉ!ウワァァァ~~~!!!!」」」」」・・・・


 誰かがその時、叫び出す。


「竜を撃退せし奇跡を起こす青い御人・・・ミラクルブルー様だぁ~、ミラクルブルー様!!ばんざ~い!!」


 それがどんどん広がり殆どの者が何を勘違いしたのか「ミラクルブルー様!ばんざ~い!」と叫んでいる。


--何!?そのヒーロー番組みたいなネーミング、恥ずかしいんですけど!


 クラウドは結界柱を守れた報告をしようと王子へ煌輝紋章石を取り出す。すると今度は「煌輝ブルー様、ばんざ~い!!」や「ブルーホルダー様、ばんざ~い!!」等、いろいろ名前を付けられる。


--よし!ここから離れるんだ!!


 クラウドは高速移動で風の様に移動した。誰も居ない草原まで移動する。そしてユイアレスへ報告をした。


「ユイアレス様・・・応答願います。」


「どうした?クラウド。何か道中問題があったのか?まさかもう到着したのか?あれから半日しか経っていないが・・・それはないか。こちらのベデス砦は上手く行ったぞ。シャアラ殿とグラヌス殿が王国に戻る途中、砦の異変に気づき魔物を撃退したそうなのだ。」


「そうなんですか?こちらも到着して紅龍が暴れていましたが、何とか帰ってもらいました。」


「何と!もう到着したのか。それにしても紅龍だと!?5大竜である内の紅龍族がなぜ人の砦を襲うのだ?」


「竜の内部に魔物が取り付いて、その竜を操っていたのです。」


「そうか、子竜とは言え良く撃退できたものだ。5大竜である成龍ともなればシャアラ殿やグラヌス殿でも厳しい戦いとなるだろうからな。」


--いえっ、子竜ではなく成龍の上に紅龍族の長って言ってましたけどね。


「そうなんですか。」


「まぁ、何にしても良かった。クラウド感謝する。褒美は何が良い!何でも申せ!」


「いえっ、ユイアレス王子。お気遣いなく、何もいりませんので。」


「なんだ、国を救った英雄であるのに無欲な奴だな、クラウドは。それとユイアレスと呼べと言っておるだろう!それっ、練習だ。言ってみろ!」


「・・・・・ユッ・・・・ユイアレス!」


「そうだ!それでよい!ふむ、褒美かぁ・・・!!良いことを思いついたぞ、クラウド!王都に着いたとき楽しみにしておれ!」


「あと、疲れたであろう!ギャドリグ公都で精気を養うといい。楽しめるようにお金を渡しておく。預金所へ行き、名を名乗るだけでよい。こちらで手続きは取っておくのでな。それではな、クラウド。」


「はい。」


 ユイアレス王子との通信を終えてクラウドは宿を確保するため、ギャドリグ公都へ向かっていく。

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