第4話 初めて出来た友達は〇〇⁉
暫く歩いたが町に辿り着かない。どうやら目立ちたく無かった為、早く降り過ぎたようだ。
--時計が無いから分からないけど明るいし、かなり暖かいからお昼ぐらいかな?
お腹も空き体力も限界に近い。少し休む為、道の端の短い草をクッションにへたり込んで座った。
ぼぉーっと、周りの長閑な風景や今までの道のり、これから進む道のりを眺める。
疲れて気付かなかったが、この世界の道路も日本の道路並みにかなり整備されて綺麗だ。アスファルトではなく土だが、でこぼこも少なく歩きやすい。
--この世界にも舗装出来る機械があるのかな?
--んっ?あれっ?
眼鏡を通して見える空間の左上にスイッチらしきオン、オフと小さいカーソルが見える。
--なんだこれ?
カーソルは頭で思うだけで移動出来るようだ。スイッチをオンしてみるとゲームのメニューみたいなものが宙に浮かぶ。
表示はそれぞれステータス、スキル、魔法、鑑定、リングボックス、色変更、マップ、透視、望遠と出ていた。
--う~ん、いろいろ神様に突っ込みたい所だけど、周りに誰も居ないしやめておこう。
早速、ステータスを選んでみた。
名前 ウィン・クラウド
年齢 22歳
種族 人族
LV 1 (レベル)
HP 37 (生命力)
MP 7 (魔力量)
STR 15 (筋力)
DEF 15 (頑丈さ)
DEX 11 (器用さ)
MAG 17 (魔力威力値)
MR 9 (魔力抵抗力)
LUCK ????? 表示不可能
--いやっ!名前変わってますけど!!転生したから?それともこの世界ではこう読むのだろうか??というか、そもそも自分は何語を読んでいるんだろう?
--神様が言葉が分かる様にしてくれたらしいけど・・う~ん、まぁいいか・・考えても分からないだろうし。え~と、ステータスはと。
--うんうん。やっぱりね。多分このステータスは低いのだろうなぁ~。自分が強くなった感じなんて全くないし・・・。でもLUCK・・運だろうけど?????って、神様はどれだけ運を詰め込んだんだ?
次はスキルを選んでみる。言語超理解スキルが記されている。
--超?・・・その他は・・・。
--んっ?左上の方にこれまた????が3つ並んでいる?もしかしてあれかな?神様から受け継いだ力かな?今は使えそうもないけど。
--魔法はと?・・やっぱり覚えていないね。
--次は鑑定っと・・・なるほど、カーソルで選ぶ必要があるようだな。
道路を選んでみた。土魔法で整備された道路と出ている。
--おぉ~!そうなんだ。詳細スイッチもあるようだけど、それはまぁいいか。土の成分とか表示されても理解出来そうもないしね。
次はリングボックスを選んでみる。神様から頂いた剣は神剣レナスと表示されている。
どうやら指輪の中の物を出し入れ出来るみたいだが神剣レナスと、いつの間にか収納されていたゴブリンから奪った石のナイフ以外は、薄く表示されていて取り出せない。
--神剣レナスは短かったけど、どうして取り出せたんだろう?あれかな?異常な運ステータスが影響しているのか?まぁ、何にしても助かったけど。
--えーっと、次は意味が想像できない色変更?
眼鏡や服、マントなどあるようだが現在は眼鏡しか選べないようだ。
--まぁ、眼鏡だけでも目立ちたくないから黒縁眼鏡にしよう。
青色の他は赤色しか選べない。
「芸人か!!?」
--いけない、いけない。誰も居ないのに、つい声を出して突っ込んでしまった。他の人に見られたら変に見られるよ。まぁ、取り敢えず色変更は無しという事で・・・・・次はマップっと。
--オォ~。これは便利そうだ。
今、クラウドがいる場所はヴェルタス城を中心にいくつもの町や少し規模の小さい城などがあるようで、そのままヴェルタス王国と呼ぶ。
そのヴェルタス王国の最果ての西の町リクスへ向かっていた。
神様のいた山はレイティス山といい、山の頂上までは地上から4523メートルもある。その山を囲むようにして更に険しい山々が連なっている様だ。リクスからは北北東にある。
リクスの町からヴェルタス城方面へ向かうとリクスよりもかなり大きい町があり、そこはカジノ経営を中心とするキャドリグ公都という名の都市もあった。
--おぉ~!カジノの都とかあるんだぁ~運も良くなっているらしいし、この世界で生きて行くための取り敢えずの資金でも稼げたらいいのだけど・・。まっ、そんな上手くはいかないか。
--んっ?キャドリグ公都方面から二人近付いて来ている。馬車だろうか?結構早いし、あと数分後ぐらいで来るかな?
--この世界の住人かぁ~。ちょっと緊張するなぁ。・・・カラカラカラ・・・・・来た!えっ!?
やはり馬車のようだが引っ張っているのは馬?ではなく上半身が人間のケンタウルスでもなく、ほとんど身体は馬だが鼻の先に人の顔がついている人面馬のようだ・・・・鑑定によるとそのまま馬人という種族の人らしい。
馬車が目の前で止まる。
「どうしたんじゃ、坊主。」
馬人の男に話かけられる。
--いやっ、坊主ってそれなりに歳をとっているつもりだけど。こっちの世界の人って皆こんな感じなのか・・・?
「んっ、何かあったのか?」
馬車の荷台からもう一人が顔を出す。その人物は普通の人の姿をしていた。
--良かった!・・普通の人も居るんだ。
「いやね、旦那!物凄く目立つ格好をしたイケメンの坊主が道端で座り込んでるんじゃて。」
--やっぱり目立つんだ・・・・しかもイケメンって今まで一度もモテた事がなかったから分からないけどイケメン何だろうか?・・・多分お愛想の挨拶みたいなものかな?
風雲の顔は世間一般で言えば中の上以上として評価出来るものであったが、風雲の頭や服には運悪く降って来た鳥の糞等でいつも汚れていた。その為、風雲の今までの外見評価は最悪なものである・・・。
「あの、少し疲れて休んでいるんです。」
「なんじゃ、坊主。腹減ってるんじゃろ!」
--えっ!!さっき話する時、少しだけお腹が鳴っただけなのに聞こえたんだろうか?馬人さんの聴力凄い!?
「ほんの少し余ってる肉あるでぇ、これ食べさせてやりな。」
「よかったな。坊主、ほれっ!」
--お腹が空いてたから嬉しいのだけど口に咥えて投げるのはちょっと・・・。
「あっ、ありがとうございます。」
馬人の男が投げてくれた干し肉に噛みついてみる。かなり塩辛く少し硬いが噛めば噛むほど味わい深く美味しい。
「なんじゃ?そんな泣く程お腹空いてたんかい?」
気付かない内に涙が溢れ出していたようだ。クラウドは前世では善意で人から何かを貰ったことは一切ない。貰ったとしても無理やり要らないものを押し付けてお金を請求されたり、貰った食べ物の中には小石や大量の辛子や山葵、唐辛子等を入れられクラウドが苦しんでいるのを見て笑われていた。
「そしたら、行くで。坊主も、もう少し歩けばリクスの町に着くで。頑張んな!」
「はい!ありがとうございます!あっ、でも少し・・2、3時間休憩されてから行く方がいいと思いますよ。」
--んっ?自分は何を言ってるんだろう?
「悪いがのぅ。早く帰らんとカジノで遊んできたじゃろうと嫁に叱られるんじゃ。」
水も飲ませて貰い、その後颯爽とリクスへ向かう馬車を見ていると胸騒ぎがする。このままだといけないと何故か思い、体力を振り絞り駆け出す!
一方、リクスの近傍にて・・・・・・。
「何とか間に合ったか。南のバルゴ魔帝国との国境付近に現れた大型の魔物を倒して急いで来たかいがあったというものだな。たしかこの辺りか、強い魔力の揺らぎを感知したと連絡があったのは。」
「はい!ユイアレス様。しかし今まで国境付近でしか召喚魔法陣は出没しなかった筈ですのに何故でしょうか?結界を越えて、このような町の傍まで現れ始めるとは・・。」
「ふむ、分からぬが最近出て来る魔物の数も強さも勢いを増しておるしな。」
「しかもユイアレス様、私達の師匠の賢者シャアラ様も真魔剣士グラヌス様も結界強化の為に王国を不在です。その状況で、これほど強い魔力の揺らぎを感じるなど・・・。」
「もうすぐ戻ると、先日シャアラ殿より連絡があった。多くの兵はバルゴ魔帝国からの侵略を防ぐ為に、国境付近に配備せざるをえん。それまで私たちで王国に現れた強き魔物は退治していくしかない。よいな、ケイシス!アトス!」
「「はっ!!!」」
「伝達係にリクスの住人を避難させる様に町長へ連絡させろ!」
急に辺りが薄暗くなり大きな魔法陣が宙に現れる。
「しまった!もう来たか!伝達係よ!早く向かえ!!」
「はっ・・・はい!!」
そこから現れたのは2.5メートルぐらいで燃え盛るような紅い髪が空に伸び、その者の眼も深紅に染まっている。ケイシスが驚きの表情で声を出す。
「ユイアレス様!あっ・・あれは焔の魔将軍ガンギスでは!!」
「くっ・・よりによってあのガンギスか!!」
「クワハハハハ~~~!良い獲物が釣れたハ~~~!まさか第一王子のユイアレスが釣れるとハナ!お前を捕え王国の結界を消す交渉材料としよウ!」
「戯言はそこまでにするがよい!貴様一人、私達で倒す!万が一、捕われようと国民の命を脅かすような交渉などさせるつもりは、ない!!」
「ククククク・・・誰が我一人と言っタ?」
「なんだと?」
王国軍を挟むように小さな魔法陣が多量に現れ、そこから人並みに大きいサイズの蜘蛛や斧や槍を持つスケルトンと犬の顔をしたコボルト、腕が4本もあり大きな鋭い爪と牙を生やす熊などの魔物が出て来る。熊はボルドルレデイスという魔物で一噛みで強靭な顎により石をも砕く。4本の腕に捕まれば命は無いという事だ。
「くっ!ケイシスは私と共にガンギスを倒すぞ!アトスは軍を指揮して魔物共を退治せよ!」
「「はっ!!」」
「ククククク。まだまだお楽しみはこれからだヨ!王子ヨ!」
ガンギスが左手の手の平を前に出すと大きな赤黒い眼が開き、そこから不気味な怪光線が放たれる!!
「まずい!皆の者よ!!あれの光を見るでない!!」
一方その頃・・・。
少し離れた小高い丘の上に干し肉をくれた商人達はいた。
「旦那ぁ!ありゃ、王国軍と魔物が町の傍で戦ってますぜ!」
荷台から主人が顔を出す。
「そりゃ、大変だ!!」
「しばらく足止めするしか、ありませんな。」
「う~ん、しょうがないのう。家族も気付いて避難してくれていればいいんじゃが。」
・・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・。
--やっと追いついた。
「おじさん!!ここは危ない!早く離れないと!!」
「お前さんも来おったんか。なぁ~に、大丈夫じゃ。心配せんでも近付かなければ大丈夫じゃろ。」
その時、遠くから怪光線が放たれた!マントが突風で顔にかかりクラウドには何も起きなかったがマントを跳ねのけると馬車はまっしぐらに死の戦いのなかへ飛び込むように向かって行く!
「こりゃ!レイドック!!またんか!そっちは駄目じゃ!!」
商人はこちらを向いていた為、魅了に掛かっていなかった様だがレイドックと呼ばれた馬人族の男は掛かってしまったようだ。
--くそっ!!もっと足が速ければ上手く避難させれたかもしれないのに!
--とにかく初めて人生で親切にしてくれた、おじさん達を見殺しには出来ない!
体力はとっくに尽きていたが、がむしゃらに走り続けた。
どんどん馬車は戦いの最中に近付き、ついにその中へ突っ込んで行った。レイドックも引っ張っていた荷台も魔物や王国軍にぶつかり傷つきながら進んでいく。やがて大型の熊の魔物に荷台は倒され、レイドックはそのまま走り続けて囲みを抜け、無言のままどこかへ去って行った。
「ひっ!ひえぇ~~~~!助けてくれ~~!!」
荷台へと逃げ込み扉を閉めるがどんどん壊されていく。壊しているものの中には魅了され混乱している兵士の姿もあった。
「ケイシス!!軍の魅了を解く魔法を!」
「はい!」
「そうはさせぬゾ!」
ケイシスが魔法を詠唱し構築させようとした所でガンギスが炎の弾を放ち続けていく。
そこへ王子が割って入り弾を盾と剣で落としていくが弾の数が尋常ではなく、いくつかがケイシスの防御結界へ被弾した。
「きゃっ!!」
怪我は無いようだが1メートル程、飛ばされて魔法も上手く発動出来ない。
アトスは少しでも軍の被害を少なくしようと魔物を退治しながら魅了された仲間を気絶させていくが、どの仲間が魅了されているのかを見極めるのに時間が掛かり上手くいっていないようだ。
・・・・はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・。
--やっと、辿り着いた。おじさんはあそこだな!
かなり怖かったが助けたい一心で斧や槍、怒号や悲鳴の飛び交う中へ自分の運を信じて駆け出す!
それに気付いたアトスが叫ぶ。
「こらっ!そこの青い民間人!中へ入るな!!死ぬでござるぞ!」
--青い民間人って・・せめて青い服のとか言って欲しい。ござるぞ!?・・こちらにも侍が!?鎧は西洋風に近い感じがするけど。
クラウドは聞こえていたが、聞こえなかった事にして走っていく。
--どうせ見て避けれないし怖いから目を閉じて避けてる振りでもしながら行くか?
--よっ!ほっ!とっと!・・・・・・・よいしょ!はい!くるっと回ってジャーンプ!!
周りでは武器が飛び交うがかすりもしない。それどころか、クラウドを狙った魔物たちは偶然、他の魔物達の槍に刺さったり、急に吹いた突風で吹き飛び、打ち所悪く自重で死んでいく。
「何!?つっ、強い!目を閉じて気配だけで、避けながら魔物を倒しておられるのか!」
「誰かは存ぜぬが加勢!感謝致す!」
アトスの中で青い民間人から、かなりレベルアップしている。
--え?気配とか分かりませんし、魔物倒してるって何?
目を閉じている自分には状況が分かる訳もなく、ただ何となく商人の傍へ来ているだろうと感じ、目を開いてみる。
荷台はボロボロになり足が布に絡まりながらも何とかそこから這い出して逃げようとしている商人へ、容赦なく犬の頭をした二本足で立つ魔物が右手を高く上げ槍で突き刺そうとしていた。
目を開けた瞬間、商人の危機を認識するが間に合いそうもない。咄嗟にゴブリンから奪ったナイフを取り出し投げる!
--当たれ!!
犬の頭をした魔物には当たらず通り過ぎ、他の兵へ攻撃しようとしていた斧を持つ大型の魔物の肩に刺さる。
肩へ刺さったナイフで斧の軌道は変わり、商人を槍で刺そうとしていた魔物の頭を割った。
--んっ、ラッキー!!!
「おじさん!助けに来ました。」
「おっ、お前さん逃げたんじゃ無かったんか?」
腰の抜けてしまった商人を左側へ肩で支えて移動しようとする。王子の剣とケイシスの魔法を相手にしながらガンギスが気付く。
「ほ~ウ、王国軍にも面白そうな奴がおるではないカ!どれっ!試してやろう。」
「ルドリ・・グレガイディ・・・・・ファイヤー・・トルネード!」
ガンギスが自身の高さの倍もある大きさの炎の竜巻を放つ、配下の魔物達も巻き込みながらこちらへ向かって来る。
商人の男を後ろに庇いながら何となくマントを前に広げてみる。魔法陣が現れて大きな炎の竜巻はマントへ届く前に消えてしまう。
「なニ!魔法の無効化だト!お前は何者ダ!!・・・・まぁよイ!!」
「王子達の次はお前を相手にしてやろウ!」
--いや!遠慮します!でも、まずいな。周りは魔物達に囲まれてるし、おじさんと一緒に出ようとすると、自分は運で助かってもおじさんがなぁ・・。
--やっぱり、あいつをまず何とかしてやっつけて、後は王国軍に頑張ってもらうしかないか。前世で自分の命を奪った隕石でもあいつに落ちてくれたら!・・・よし!!ものは試しだ!
--隕石よ!たまたま、あいつの上に落ちてこい!!
・・と念じながら空に向かって、空いている右手を上げる。
すると隕石ではなく雨が少しずつ降ってきて、やがて辺り一帯に強い雨が降る。その雨に当たっていた魔物達が白煙を上げながら苦しみ出し次々と倒れていく!魅了されていた兵士達も雨に当たり正常な意識が戻っていった。
「グヌヌヌヌワ~~~!これは聖水カ!聖水を降らせる魔法など聞いた事もないゾ!貴様ァ~!」
--いやっ、自分も聞いた事ありません。たまたまです・・。
ちなみにこの聖水はエステナ神聖国のエステナ山、中腹から湧き出て出来た泉の水で神官や巫女が祈りを毎日捧げているものらしい。
先日たまたまの異常気象で泉が蒸発して泉の水位が下がった様だ。水位が下がった時には騒ぎとなっていたのが、現在は正常な水位に戻っていて騒ぎも収まっている。その蒸発した水が雲となり風で流されて上空で雨を降らせていた。
王子達も何が起きているのか分からず、ぼぉ~っとその光景を眺めている。
白煙を上げながらガンギスが叫び出した。
「許さヌ!王子を捕えようと思ったがもうどうでもよいワ!王子もろともここで死ネ!我の最上級魔法を喰らヘ!」
ガンギスは天高くジャンプしそこで静止する。上空に大きな魔法陣が現れ、そこから熱風が吹き荒れる。聖水も熱風で蒸発してガンギスに当たらない。王子達は防ぐために巨大な防御結界魔法を構築している。
--まずい!!でもここで諦められない!他人に親切にされる事があんなにも幸せであると、始めて教えてくれたおじさんを・・死・・な・・せ・・て・・・
「たまるか~~~~~~~~!!!」
今度は天高く上空から大きな隕石が凄い速さで落ちてくる。ピンポイントにガンギスに衝突するが今まで溜めていた魔法陣の魔力で勢いを殺そうとしていた。魔法陣から隕石に向けて強烈な熱風を送っている。
「クッ!人間ごときがメテオだト!この焔の魔将軍ガンギス様が負ける筈がないのダ~~~!!」
たまたま再度、天高くから隕石がガンギスへ追い撃ちをかけ降ってきた。
--あっ!?また降ってきた。
「グヌオォ~~~~、無詠唱のメテオを連続だとォ~~~グヌワァ~~!!」
追い撃ちを掛けて来た隕石が先発隕石に当たるとそのまま二つの隕石はガンギスを地面に叩き付けた!地面と隕石に挟まれたガンギスは物凄い轟音と共に消え去っていく。隕石の衝撃は王子達がガンギスの魔法を防ごうとした防御結界で何とか遮っている。
衝撃が止み・・辺りに静けさが満ちた・・。
その中で王子達がクラウドへ駆け寄ってくる。王子は金髪のロング髪を後ろに縛り顔も整っていてアイドル顔負けのイケメンのようだ。後ろに付いて来る他の二人も美男美女でアイドルユニットのコンサートの最前列でいるように感じる。
「私はヴェルタス王国が第一王子ユイアレス。この度のご助力感謝する。貴殿は名を何と申す?どこかの国に所属する賢者殿か?たまるか~~~とはメテオの連続魔法構築としての一部なのか?」
--鑑定で分かっていたけど、やっぱり王子様なんだ!
「え~っと、私は風・・いや、ウィン・クラウドです。恥ずかしながらレベル1の無職です。え~と、すみません!たまるか~~~は、つい叫んでしまっただけです・・。」
「貴様!王国第一王子と知りながら謀るつもりか!!!」
クラウドが本当の事を言った筈であるのに、凄い剣幕でハーフエルフである美女のケイシスが怒り出す。
「クッ・・・クッ・・・クッ・・・クッ・・・レベル1で無職のものが聖水を降らせる奇跡を起こし無詠唱でメテオを連発!!ハハハハハハハ!~~~~はぁ~はぁ~。久しぶりだ!これほど笑ったのは!たまるか~~~~!・・・・クハハハハハ~~~!・・・」
--いやっ、たまたま落ちて来ただけですし。さっきは必死だったので・・たまるかを、いじらないで欲しい。
「あの、・・・・王子?」・・今まで見たことも無い王子の様子にケイシスがとまどっている。
「クッ・・ック、良いのだ。あまり目立ちたくないのであろう。目立つ格好をしておるがな・・クッ・・・それより他の国に所属していないのは本当なのだな!」
「はい」
--この世界に来たところだし。
「それでは私の友となってはくれぬか?これを渡しておく。」
ポーンと軽く投げられたそれをキャッチする。黒光りする石にうっすらと煌めく赤色の紋章が浮かび上がっている。
「おっ!お待ちください!!!ユイアレス様!!」
ケイシスがかなり驚いた様子で声をかける。
「どこの馬の骨とも分からないものに煌輝紋章石を与えるなど!!」
「ケイシス殿。少なくともこちらの御人がおらぬば被害が拡大していた筈。その言い方は少し失礼ではござらぬか?」
「ふむ、アトスの言う通りだな。ガンギスを倒す手立てが無かった訳ではないが、軍にもリクスの町にも甚大な被害を出してしまっていただろう。」
「そこで先程の紋章石とも繋がるのだが、大きな力で多くの者を救おうとしても時として他の者達に被害を与えてしまう事もある。その者が善なる者であるのに罪により捕えてしまっては逆に多くのものを失ってしまう事になるだろう。」
「その紋章石は免罪符のような物、この国でクラウドが何をしようとも罪に問われる事は一切無い。」
--何それっ!ちょっと怖い!!
「それを持つものの行動も発言も国がした事となる。くれぐれも取り扱いには注意してくれ!」
「ちなみにそれを現在持っておるのは国王と私、賢者シャアラ殿と魔剣士グラヌス殿そして、クラウドだけだからな。無くさないようにしてくれ。」
--え~~~!!何そのV・・I・・P~~~~!
「はっ、はい!ユイアレス様!」
「私とクラウドはもう友達だ。普通に話すがよい。私の事はユイアレスと呼び捨てでよい。その石には通信機能も付いておる。必要な時は石を左手に持ち念じるだけでよい。」
--母さん。初めて友達が出来ました。初めての友達は王子です・・・って無理無理!王子をいきなり呼び捨てなんて!ケイシスさんは、なんかこっちを睨んでるし!!
「あの~急には~・・・」
「そうか。まぁ、ゆっくり慣らしていけばよい。あと、私もクラウドの力を借りねばならぬ時もあるだろう。その時は宜しくな・・・クックックッ・・・いやっ、すまぬ。」
--まだ笑ってる。何の力を借りようとしているのやら・・・。
「はぁ」
「ところでリクスへ向かっておるのか?良ければ王宮へ遊びに来ぬか?加勢して貰った礼に歓迎するぞ!」
--えっ、この世界の事も全くといっていい程、知らないのに無理です・・それに今のところの目的がレベルアップだし、王宮で魔物退治とか出来ないだろうしな・・・あっ忘れてた!やっぱりだ!レベルアップが目的なのに運ばっかりで倒したから全然上がっていない。まっ、取り敢えず断っておこう。
「あの~、リクスに用事があるので。」
「そうか、残念だな。いつでも王宮に来てくれ。歓迎するぞ!いろいろな話もまた聞かせてくれ。」
「あっ、あのぉ~、クラウド様・・・もしリクスにいらっしゃるのでしたら是非、私の家に泊まってお礼させて下さいと申すで。」
--えっ、クラウド様?何か慣れてない変な敬語使ってるし。
「お!おじさん!?・・様って?」
「クラウド様、私はリクスの町で武器屋を経営しとるウデントと申しますで。クラウド様は煌輝紋章石を持つお方でぇ。様をつけるのは当たり前ですじゃ。それに家族の住む町や私の命も救って頂いておるんじゃし。」
「いやっ!ウデントさん。普通に話して頂けないですか?こちらこそ干し肉を頂いて本当に感謝していますので。あと、泊まらせて頂くのも御厚意に甘えさせて頂きます。あっ、でもここであった事と紋章石の事は出来るだけ内緒にして頂けないでしょうか?」
「分かりましたでぇ・・す。それでは早速御一緒に行きますでぇ。レイドックも心配じゃし。」
--なんかまだ話し方がおかしいけど、まぁ。
「それではな、クラウド!私は城に戻り王に今回あった事を早急に報告せねばならぬ。ガンギスが出現した事も・・・クッ・・クッ・・いやっ、なんでもない。それではまたいずれ会おう。」
--あっ、今笑ってなかった?何を報告するのやら・・・
「はい」