第37話 ボルドア王国 後編
ウェスタンティス卿とブルーの姿に変装したクラウドが頷き、3人とも馬に乗りウェスタンティス卿の領土を目指す。しかし、卿が戻る事を危惧したビアロテルド王は領土の境界線に王国軍約7000人をすでに配備していた。
・・・境界線付近まで辿り着いたオルランドとウェスタンティス卿は、王国軍を見て悔しがっている。
「くそ!ここにも兵士が!ウェスタンティス卿!こうなれば私が聖剣エルトアシェンルの力で道を開く!ウェスタンティス卿は隙を見て駆け抜けるのだ!」
「オルランド様、なりませぬ!あの大軍を相手では魔力も持たぬ筈!遠回りしてでも、あれは避けるべきです!」
オルランドは真剣な表情で顎に手を当てて良い方法を見つけようと考えた。
「・・・。」
『王子よ、私が王国軍を引き受けよう。』
「何を言う!?ブルー殿!貴公がいくら強くとも、あの大軍を相手には無謀であろう!よいか!アーセアがラスティスの形見を渡したという事は私を思ってだけの事ではない!そなたの事も心配したからこそ渡したのだ!心意気には感謝するが命を粗末にするでない!」
--そうか・・アーセアちゃんは自分の事も心配してくれて、こんな大事な物を。
『心配するな、死ぬ気は無い。良い考えがある。』
--本当は単騎で突っ込んでも無傷で勝てそうだけど・・。
「それは!?」
『この直ぐ近くのマトマフ山脈にヘイスディが500匹程、大量発生している様だ。そのヘイスディを兵士達に突っ込ませる。そして兵士達が乱れて道が開いた場所を一気に駆け抜けよう。』
ウェスタンティス卿が危険だと、それを止める。
「なんと!?ヘイスディが500匹も!しかし大量におびき寄せる等、失敗すればヘイスディの群れに襲われるのでは!?」
「そうだ、危険であるぞ!ブルー殿!」
--これもか・・全く問題無いんだけどな。
『大丈夫だ。いざとなれば、この様に幻術魔法で姿を消して隠れる事が出来るからな。』
クラウドは幻術魔法ではなく、一瞬で二人に分からない様に移動して・・2秒後元の場所に戻った。オルランド王子達が勘違いをして驚く。
「ほう!その様な魔法が・・。それならば私が聖剣の氷魔装でウェスタンティス卿を守りながら走れば突破出来るかもしれぬ!」
「オルランド様!足手纏いで申し訳ございませぬ!」
「何を言う。そなたには感謝しきれぬ程だ。そなたがおらねばビアロテルドは、もっと早く事を起こしていたかもしれぬ。そうなればソレアもアーセアも助かってはいまい。それにこれから存分に働いて貰うぞ!大公爵騎士団はそなたを尊敬している者達ばかりだからな。そなたがおらねば動くまい。頼りにしておるぞ!」
「もったいなき御言葉!」
『それでは私はヘイスディをおびき寄せる。向こうの軍が乱れたら駆け抜けろ。』
「分かった!ブルー殿も気を付けろ!」
『ああ、任せてくれ。』
クラウドはマトマフ山脈へ馬で向かった。オルランド達が見えなくなると空を飛んで山に降りる。そして直ぐにゴッドグランシーズの大きな檻を生み出すと、ラルガデイテの玉で檻の中にヘイスディを次々と発生させていった!ヘイスディが暴れるが真眼で大人しくさせ、500匹生み出した所で暗示を掛けていく。
--これから自分に付いて来る事。この先に大勢の人族である軍隊がいる。殺さない程度に襲ってほしい。後、この姿の二人は絶対!襲わないように。
クラウドは光魔法レイレドオで二人を空に映し出した。
--この二人が通り過ぎて見えなくなるまで、それを続けて欲しい。後は好きに生きて良い。ただし!襲い掛かる人族以外は攻撃しない事!よし、出発!
「伝わったかな?・・。」
クラウドがゴッドグランシーズの檻を消して馬を走らせると500匹のヘイスディが付いて来る!
ドドドドドドドドドドドドド!!
--魔物を生み出して操るって、勇者というより魔王みたいだな・・。
・・・1時間半程、走るとボルドア王国軍の一部にはヘイスディの大群が見えて来た。魔物が迫って来ており、軍内が騒然となっている!
「隊長!やはりこちらへ向かって来ています!」
「弓矢隊と遠距離魔法部隊をここに集めるように他の隊長達に、急ぎ伝令を伝えてくれ!15分もすればここは襲われるぞ!」
「皆!聞いてくれ!何者も通してはならぬ!ヘイスディもだ!ここを死守するぞ!」
「「「「「「「「おぉぉ~~~~~!!」」」」」」」
ヘイスディの大群を見た隊員達が同じ様な事を思っていた。
--あれ止められるのか?あんな魔物の大群初めて見たよ・・止められないよなぁ。俺の方に来るな!頼むぅ!!
ヘイスディが近づくと、集まった隊員達から一斉に矢と攻撃魔法が放たれた!先頭を走っているクラウドには、まだ気付いていない。ヘイスディのインパクトが強過ぎて目に入っていなかった。
クラウドは馬を走らせながら魔法陣を構築して、元々防御力の高いヘイスディに上級防御魔法ステラプロホルドを掛けている。ゴッドグランシーズを掛けると無敵状態で兵士を間違えて殺してしまう可能性を考えてだ。ステラプロホルドは多くの防御ターゲットに一度に掛けられるが初級魔法程度の効果しかない。しかし!高レベルで凄まじい魔力を持つクラウドが掛けた魔法の効果は絶大であった!大量の矢と攻撃魔法を浴びてもヘイスディは傷付きもせず、大軍に突っ込んで行く!
--もういいかな?よっと。
クラウドは馬の背中に立ち軽くジャンプすると、羽を広げて空に舞い上がった。空中にゴッドグランシーズの足場を設けて着地する。オルランド達を守る為に上空で地上の様子を伺う事にしたようだ。
ドドドドドドドドドドドドド!!
「「グワーッ!」」
「「「ハッ!おりゃ!!」」」
「何だ!?このヘイスディ!異様に防御力が高いぞ!」
「剣もダメだ!」
「槍も刺さらない!グワァ!」
「魔法も散らされた!?グォ!」
「「「「「「「「「「グワッ!!」」」」」」」」」」」
ドン!ドドン!ドスン!
「駄目です!隊長!隊列が崩れました!」
「周囲のヘイスディだけを退治しろ!その後、隊列を組みなおせ!」
少し離れた場所で、その様子を見ていたオルランドとウェスタンティス卿が馬を走らせる!
「ブルー殿がやってくれた!・・・アリロブゴ・・・・・・・・センネレイド!」
オルランドが氷魔装に包まれた。
「ウェスタンティス卿!参るぞ!出来るだけ私の傍から離れるな!ヘイスディの角にも気を付けてくれ!」
「はい!」
ウェスタンティス卿がオルランドの馬の後を追うが、戦闘能力は乏しく緊張しながら必死に付いていく。
ドドドドド!・・・!!
・・兵士達はオルランド達が接近するも混乱状態で気付かない!気付いた少ない兵士達が何かを叫んだがヘイスディと戦闘している中、声もかき消された。オルランド達を見つけた優秀なレベル37の第3歩兵師団副隊長が動く!ヘイスディ達の背中を飛び移りオルランドに迫った!
タッ!タッ!タッ!・・・シュタ!シッシシ!!
攻撃範囲内に入ったと同時に空中で、腰ベルトに付けたナイフ5本を一気に取り外し右手に持つと流れるような動きでオルランドへ飛ばす!
キキキキキン!!
オルランドは副隊長に気付いていて、手綱を放した右手で聖剣を抜くと高速で飛んで来るナイフを叩き落した!副隊長はオルランドが剣を鞘に戻し手綱を握る所を見て、クルリと身体を回転させ回し蹴りをオルランドの首元へ放つ!オルランドが避ければ直ぐ後ろにいるウェスタンティス卿に危険が及んだ。オルランドは右手で副隊長の足首を掴む!そのまま蹴りの勢いを殺さず聖鎧で強化された力を使い、ブーメランの様に投げ捨てた!
バシ!
「ハァ!」
ブオン!
「ウァァ~~!」
その戦いで近くにいる他の者達も気付いたがヘイスディの大群に蹂躙されていて何も出来ない!軍の半ばに進んだ所で長槍がウェスタンティス卿の横腹に迫る!オルランドは気付いていない!
「テスタプロンツ!」
ガン!!
ウェスタンティス卿の横に魔法陣と大楯が現れて長槍を退けた。
--ヘイスディだけじゃ危なっかしいな。
「ストーンゴーレム!」
クラウドはオルランド王子の進行方向両側へ合計6体のストーンゴーレムを召喚していく!急に現れたストーンゴーレムの場所に居た馬と兵士が吹き飛んだ!
「「「「「「「うわぁぁ~~!!」」」」」」」
オルランドは敵のストーンゴーレムと勘違いして斬り付ける!
「くそ!高度な召喚魔法を!!しかしこの聖剣ならば!」
ザシュ!ザシュ!・・・・ザシュ!!ガラガラガラ・・。
「よし!勝てるぞ!」
「オルランド王子!前方にも4体おります!」
「任せろ!」
--仲間を斬らないで欲しい。ゴーレムが進行方向に居る兵士達を投げ飛ばしているのを見れば分かるかと思ったけど・・仕方ない。
混乱の中、オルランドは進行方向の左側のゴーレムを次の目標に選んだ所でブルー姿のクラウドはオルランドの傍に飛び降りた。
「おぉ!ブルー殿!無事であったか!」
『王子よ!あのストーンゴーレムは私の部下が召喚した物!気にせず、そのまま駆け抜けろ!』
「なんと!ん!ハァ!!」
オルランドが立ち止まったところにクラウドへ2本の長槍が襲ってくる!クラウドは当然気付いていて余裕で避けれたがオルランドが槍の刃を全て斬り落とした!
スパ!スパ!
「危ない所であったな!ブルー殿!しかし、ストーンゴーレムを召喚できる優秀な者をいつの間に軍に忍ばせておったのだ?」
--危なくないし世間話は後にして欲しいな。
『それよりも、ここを早く抜け出した方が良い。』
「おう!ブルー殿も気を付けろ!」
再び、オルランド達がストーンゴーレムが作った道を駆け出す!
--後は・・。
クラウドはストーンゴーレム4体を更に召喚した。出来た道を塞ごうと増援部隊が走り込んで来ているのを防いで貰う。
「グワァ~!」
「ウォ~!助けてくれぇ~!」
ブォン!
ストーンゴーレムが兵士達の身体を掴んでは投げ捨てていた!
・・オルランド達が王国軍を抜けていく!
--よし!通り抜けたな!
クラウドは再びジャンプして100メートルの高さのゴッドグランシーズの足場に着地した。クラウドを攻撃しようと剣を振り上げた者が驚いている。
「消えた!?」
・・・オルランドとウェスタンティス卿が10分程走った所でクラウドは王国軍から奪った馬で合流し、更に1時間程走ると目標とするバルシュテルザ城が見えてきた。城の周りには完全武装した兵士達が厳重に警護に当たっている。オルランドがウェスタンティス卿に尋ねた。
「ウェスタンティス卿?」
「ご安心下さい、アレは味方の騎士団です。参りしょう!」
「そうか!」
オルランドとウェスタンティス卿が近付くと騎士団を束ねるゴストル将軍がお供2人の兵士を連れて城から出て来た。ウェスタンティス卿の下で跪く。ゴストルは30代半ばの男でドワーフ族と人族のハーフであった。身体も人族よりもかなり大きい。
「良くぞ!無事にお戻りに!ラグナス様!」
「うむ!それよりもオルランド様は、やはり生きておられたぞ!オルランド様に御挨拶せよ!」
「申し訳ございません!気付きませず!オルランド様!又、お会い出来まして光栄にございます!」
「久しぶりだな、ゴストル。そなたも元気そうで何よりだ。」
「勿体なき御言葉!感謝申し上げます!」
ゴストル将軍はオルランド王子からウェスタンティス卿に振り向いた。
「ラグナス様!王国軍はラグナス様がオルランド様の偽者とテロを起こそうとしていると嘘を捏造し、王国軍に寄与する様に求めて来ました!」
「な!それでオルランド様を見ても、兵士達はこちらを襲って来たのか!オルランド様が偽者かどうか見分けもつかぬとは!失礼にも程がある!!」
「勿論!ラグナス様がその様な事をする筈が無い!と王国軍に与する事は断りました!今は一触即発の状態です!」
「そうか、ゴストル将軍!今から王国軍と戦う事となる!戦の用意を頼むぞ!」
「畏まりました!公爵騎士団全兵士!公爵様の為に死ぬ覚悟は出来ております!」
クラウドが、それは困ると公爵が話す前に口を挟んだ。
『死ぬ覚悟はいらない。生きる事を優先してくれ。』
「何だ!?貴殿は!兵士が決死の覚悟で臨む事に水を刺すつもりか!兵士数はこちらが圧倒的に少ない!だが兵士の練度と士気の高さでは勝っておる!命を賭けぬと勝てぬ戦いなのだぞ!」
熱くなったゴストル将軍をウェスタンティス卿が止める。
「落ち着くのだ、ゴストル。私もこちらに居るブルー殿に賛成だ。」
「何を仰られます!?ラグナス様まで!」
「まぁ、待て。こちらに居るブルー殿とクラウド殿の尽力でグラディアル帝国の力を借りれる事になったのだ。」
「なんと!グラディアル帝国の!?」
「そうだ。3万の兵士を編成して、こちらに向かって来てくれている。」
「・・それは本当でしょうか?私はこの仮面を被った男を信用出来ませぬ。」
「何を言う!?ブルー殿に失礼ではないか!」
「申し訳ございません!ですが!何故、顔を隠す必要があるのです!」
『・・・。』
--確かに怪しいかな。ただあまり目立つとユイアレスの立場もあるし・・。
「それは!・・しかしだな!オルランド様と私を助けてくれた事実も有るのだ!」
オルランドが補足する。
「ラスティスが命を賭けてまで守ったソレアとアーセアが、ブルー殿に頼んでくれたのだ。それをそなたは否定するのか?」
「では!ラスティス様は、もう・・。」
「裏切り者のバルンに殺された。必ず!私が父上と!ラスティスの仇を討つ!」
「!?オルドレンド陛下はバルンに!?」
「・・そうだ。ビアロテルドと手を組み、私の目の前で殺された!」
オルランドは怒りを顕に顔の前で右拳を強く握った。
「ビアロテルドとバルンを討つ為にブルー殿の力が必要であるし、私は信用に値する人物であると思っている。」
「王子がそう仰られるのであれば私も信じさせて頂きます。ただ・・1つだけお願いがございます!」
「何だ?」
「ブルー殿も剣士で有る様子!少しだけ御手合わせさせて頂きとうございます!」
「ふむ、剣を合わせて分かる事もあるか。しかしブルー殿は?」
『問題無い。』
「分かった!但し!2人共、決して怪我はするでないぞ!大事な決戦前故にな!」
ゴストル将軍が背中に背負った大剣を振り上げてニヤリと笑い話す。
「御意!」
『・・・。』
--とは言ったけど、どうするかな?手を抜いたら怒られそうだし本気を出すと怪我させそうだし・・?
「いくぞ!」
『来い。』
ゴストル将軍は大剣を軽々と振り上げ、クラウドの斜め左から斬り下ろした!クラウドはダルクフェルザの剣でそれを受け止める!
ガン!!ギキギギキギ!
「グググ!!まったく動かぬ!何と言う力!?私よりも力があるのか!ハァ〜!!」
ガン!!キン!ガン!!
オルランドとウェスタンティス卿、更にゴストル将軍に付いて来た隊長達も驚いていた。怪力で知られるゴストル将軍が純粋な力で負けたのを初めて見たからである。2人の隊長はゴストル将軍が王子の手前、手を抜いているのだろうと思っている様だ。
--あの剣は魔剣でもなく只の鉄みたいだな・・よし。
『いくぞ。』
ゴストル将軍はブルーの声掛けに、異常に反応して剣を前に構える。前に居たブルーの姿が一瞬ブレたかと思うと大剣に一筋の傷が入り、そのまま地面に落ちた。
ドサッ!
「な!我が家の家宝の剣が!?」
--え!?家宝だったの?しまった・・大剣は作ってないし、デハルグ様から貰った大剣を上げるか。
『家宝をすまない・・。家宝の代わりには、ならないだろうがコレを受け取ってくれ。』
「!?何処に持っていた?」
クラウドが急に大剣を、出した為に全員驚いている。魔晶石が付いているのを見てゴストルは剣を受け取りながら呟いた。
「もしかして魔剣・・?」
『そうだ、それは土の魔剣ウォドバル。魔晶石に魔力を注げば最高30分間、筋力が3割増しになるだけの魔剣だ。』
「なんと!30分も!?」
--30分しか、ですけど・・。
「我が家の家宝とさせて頂く!」
--家宝になった?・・まぁ、いいか。
ウェスタンティス卿が近付いて話す。
「ゴストル、これでよいな。」
「はい、取り敢えずブルー殿が強いと言う事は分かりました。」
「ブルー殿を城へ案内差し上げてくれ。」
「畏まりました。」
ゴストル将軍の案内で城の会議室に案内された。オルランドとウェスタンティス卿、ゴストル将軍の4名で円卓を囲み話している。ウェスタンティス卿がクラウドに確認した。
「ブルー殿、グラディアル帝国軍の現在の位置予測は如何かな?」
--メニュー・・検索、グラディアル帝国軍。
『既に南の国境の手前に陣取っている筈だ。国境を突破して良いか?の知らせを待っているのかも知れん。』
「ふむ・・オルランド様と私がこの城に戻った事は既に王国軍に知られている。王国軍本隊が襲って来るのは時間の問題ですな。何処で合流するか・・?」
ゴストル将軍が顎髭を引っ張る様な仕草で話す。
「伝令を出して、この城までグラディアル帝国軍に来て頂きましょう。国境までコチラが退くのは合流前に追い付かれた場合、全滅する可能性が有ります。軍隊は後ろから襲われると弱いものですから。」
『伝令は任せてくれ。』
「時間の勝負だ。グラディアル王国軍と連絡が取れる手段をお持ちなら、そう願いたい。」
『会議が終わり次第、直ぐに伝えよう。』
「後はこの城で、何処まで持ち堪えられるかですな。公爵様、公都民への避難命令宣言を願います。」
「うむ、公都にいる民全てを早急に避難させよ。取り敢えずは西にあるメラシエの町が良いだろう。」
「畏まりました!」
・・最後にオルランドが言葉を発し、会議を終えた。
「皆、頼んだぞ。」
「「ハッ!」」
『・・・。』
クラウドは豪華な客室に通され、誰も居なくなった所でローラフィナ皇帝に連絡を取り出す。
「・・ローラフィナ様、聞こえますでしょうか?」
「・・はい、聞こえております。」
「派遣して頂いている兵士達に国境を突破して貰い、バルシュテルザ城を目指して欲しいのです。出来れば兵士達も殺さずに。」
「分かりました。努力は致しましょう。クラウド様はバルシュテルザ城に?」
「はい、現在は此処にいます。」
「直ぐに向かいます。」
--?向かいます?
「・・お願いします・・?」
・・・翌朝、ブルー姿でクラウドは出されたお茶もお菓子も口にせずソファーに座っていたがスクッと急に立ち上がった。御用聞きの為に居るメイドが、用があるのかと頭を下げる。
「ブルー様、何か御入り用でしょうか?」
--王国軍が来た・・。
『貴女も今直ぐ、他の公都民達と一緒に避難した方が良い。』
「いえ!・・私はブルー様の必要な物を揃える様に仰せつかっておりますので。」
『ならば必要な事を命じる!まだ避難していない家族や親戚がいれば一緒に避難しろ!後、1時間程で王国軍が攻めてくる!貴女に今命じた事は、オルランド王子とウェスタンティス卿に話しておくので安心して良い!』
大事な者が居るのか、少し思案してメイドは深々とお辞儀をすると、急いで部屋を出て行った。クラウドは作戦会議室に向かい、扉を開けるとオルランド達に話す。
ガチャリ。
『来たぞ・・後、一時間もすれは王国軍本隊がここへ来る。』
ウェスタンティス卿が立ち上がった!
「な!?早過ぎる!!ゴストル!」
「はい!!必ずや!城を死守致します!」
ゴストル将軍が急いで出て行く!クラウドはどう対処するか悩んでいた。オルランドも来たかと席を立つ。
--自分はどうするかな?ユイアレスから戦争には加わるなと言われたけど、見て見ないフリは出来ないし。
・・・ユイアレスはクラウドが出発する前に釘を刺していた。
「クラウド・・無理かもしれないが、どの様な犠牲が出ても出来るだけボルドア王国の力だけで収めるように努めてくれ。クラウドがその国で暮らすと言うなら別だが、他力本願では決して国は良くならない。・・クラウドの力は大き過ぎる。その力にばかり頼る様になれば、国は育たないからな。」
--・・って、言ってたしな。でも、攻撃しないストーンゴーレム500体ぐらいなら良いかな?・・。
クラウドが部屋から出ようとしてウェスタンティス卿が尋ねる。
「ブルー殿にも力を貸して貰えるので?」
『ストーンゴーレムを500体召喚する・・盾に使う様に伝令を頼む。』
「ストーンゴーレム?五百?体・・?いつの間に!そんな用意を!?それに、五百体もいれば王国軍を退けられるのでは!?」
『数重視で召喚する為に、殆ど動かない。せめて、近くに飛ぶ遠方系攻撃を叩き落とすぐらいだ。』
--本当は動くけど・・。
「いや!それでも、かなりの戦力となる!ゴストルに上手く使う様に伝令を出そう。」
『頼んだ。』
ガチャリ。
・・・クラウドは城の外に出ると、北から迫る王国軍と城の中間辺りまで空を飛んで行く。
--この辺で良いかな?
スタッ!
着地すると直ぐにストーンゴーレムを生み出す為に両手を広げ、魔法陣を構築した。巨大な魔法陣がクラウドを中心に1線上へ増殖していく!
--集中・・。
ブォン!ブォン!ブォン!・・・・・・・・・・・・・・ブォン!!
「ストーンゴーレム召喚!!」
王国軍の先陣がソレを見て、青褪めていた。
「た!隊長!前方にストーンゴーレムが現れました!」
「そりゃあ、向こうだって抵抗ぐらいするだろ・・って!何だ!?あの大量のストーンゴーレムは!?しかも普通のストーンゴーレムじゃ無い!遠くて勘違いしているのかも知れんが、大きさも2倍ぐらい有るんじゃないか・・?」
「隊長・・私にもそう見えます。」
・・勢い良く進んでいたボルドア王国軍が一斉に止まり出した。急に止まった為に、アチコチで衝突が起きている。
「コラ!急に止まるな!危ないだろ!」
「前がいきなり止まったんだよ!仕方ないだろ!」
最後尾の豪華な装甲馬車に乗ったビアロテルド王が窓を開けて宰相に尋ねた。
「何故、止まった?」
こちらも一段落ちるが豪華な馬車に乗った宰相が応える。
「はい!今連絡が有りまして前方に巨大なストーンゴーレムが大量に出現したとの事です!」
「何?悪あがきを・・まぁ良い。何も知らないと思っているグラディアル帝国軍に、アレの威力を見せつける良い餌となって貰おう。グラディアル帝国軍の現在は?」
「はい、国境を越えてコチラへ向かっております。」
「・・であれば、待つとするか。兵士達に待機せよと伝えよ。アレの準備だけは確実に行え。」
「畏まりました・・。」
・・止まった王国軍を見て前線で佇むゴストル将軍が呟いた。
「ストーンゴーレムに恐れを成したみたいだな・・。グラディアル帝国軍が来るまで動かなければ良いが・・。」
・・・グラディアル帝国軍が間もなく到着するタイミングで上空に変化が起こる。巨大なビアロテルド王の姿が映り出す!
「ボルドア王国!全国民よ!!今から起こす私の奇跡を見るがよい!私は宣言する!エイ・デファーリスの統一王となる事を!!」
その上空には一大イベントととしてオルランド王子とローラフィナ皇帝の姿も映し出される。急いで、ローラフィナ皇帝の優秀な宰相兼近衛騎士総司令官が魔法省の司令官に向けて叱責に似た命令を下した。
「何をしている!?ラネオス!陛下の御姿盗覗を阻止せよ!」
「は!申し訳ございません!早速!」
「構いません!ボルドアの国民達が聞いているのならば好都合です!」
ローラフィナが、そう話すと2人が頭を下げる。ローフィナはクラウドが以前見たボルドア王国よりも豪華な装甲馬車の一番高い場所から話していた。空に足場を設けているブルー姿のクラウドがローラフィナを見て驚く。
--ローラフィナ様!?
ローラフィナは装甲馬車の透明な魔法防壁を消すと、立ち上がって空のビアロテルドに声を上げた。
「ビアロテルド!グラディアル帝国は貴方を王とは認めません!!ボルドア王国国民達よ!良くお聴きなさい!オルランド王子は、この通り生きています!オルドレンド王を殺めた罪人であるビアロテルドを決して王と認めてはいけません!」
ビアロテルドが反論する。
「・・国民達よ!騙されるでない!グラディアル帝国はウェスタンティス卿と共謀して、今映り出されているオルランド王子の偽者を使いボルドア王国を乗っ取るつもりなのだ!」
オルランドが怒りと共に声を上げた。
「貴様!!よくも抜け抜けと嘘を並べたておって!ボルドアの民達よ!心して聞いてくれ!我が父!常に国民を大事にして来たオルドレンド陛下は、ビアロテルドと英雄であったバルンに殺された!決してビアロテルドを王と認めてはならぬ!」
「ハハハハハ!何を戯言を!偽者は嘘も上手い物だ!」
「ビアロテルド、大人しく投降なさい!それともグラディアル帝国を、敵になさいますか!?」
「聞いたか!?国民達よ!グラディアル帝国はボルドア王国を下に見下している!決してボルドア王国は屈しぬ!我の力を思い知るがよい!ゴルドア超兵器を出せ!」
「「「「「「「「「ハ!!」」」」」」」」」
バサ!!
兵士達はビアロテルドの傍にあった兵器を覆った布を一気に取り払うと大型の円盤を少しずつ小さくして重ねた様な装置が現れる!円盤1つ1つに小さな魔法陣がビッシリと書き込まれ、模様にも見えた。直径15mもあり装甲馬車4台の上に乗っている。その兵器は直ぐ傍の魔力充填装置から魔力供給されていて、クラウドは上空から見て驚いた。
「え!?あれ・・もしかして?やっぱり自分が置いて来た物か・・。回収しておくべきだったな。」
ビアロテルドが叫ぶ!
「狙いはストーンゴーレム!全て消し去ってしまえ!」
「「「「「「「ハ!!」」」」」」」
円盤の周りに居る魔導兵士達が小さな魔法陣から出ているモニターでストーンゴーレム全てを標的に打ち込んでいた!全ての兵士が魔導将軍に頷くと、魔導将軍はビアロテルドに話す。
「用意完了致しました!」
ビアロテルドが腰の剣を抜き、頭上に掲げた所からストーンゴーレムの方向へ剣先を向けると叫んだ。
「撃てぇぇ〜〜〜〜!!」
ギュン!ギュン!ギュン!ギュンギュンギュンギュンギュン!!・・・・・・・・・ギュォン!!
円盤装置の上にエネルギーを凝縮された赤い球体が浮かび、勢い良く大きくなっていく!直径5mまで大きくなった所で球体から赤いビームが全てのストーンゴーレムに向けて発射された!
ヴァオン!!
ドゴーン!ドーン!ドーン!ドーン!ドーン!ドーン!・・・・・・・・・・・!!
巨大なストーンゴーレムが赤いビームにより、爆発して一瞬で砂と化す!殆どの者達がその威力に呆然として声が出ない!ストーンゴーレムの頭上に足場を作っていたクラウドも驚いていた。
--マズいな、あの威力。ゴッドグランシーズの壁じゃないと防げない。魔力充填装置を早く回収しないと!
ビアロテルドが勝ち誇った顔で上空を通して話す。
「見たか!我の力を!グラディアル帝国軍よ!負けを認め投降するならば、命だけは助けてやっても良いぞ!フハハハハハハ!!」
そう話した後、ゴルドア超兵器の傍にブルー姿のクラウドが現れた。兵士達が剣や杖を構える。
「「「何者だ!貴様!」」」
上空にもクラウドの姿が映し出されていた。オルランドとローラフィナも驚いている。
「あれはブルー殿!」
--ブルー殿!?それはもしや・・?
ローラフィナはユイアレスからクラウドの情報を根掘り葉掘り聞いていた為に、ブルーがクラウドと勘付いていた。
クラウドが剣や魔法を、魔力を帯びた手だけで振り払いながら魔力充填装置に近付いていく。手を当てて収納しようとした瞬間!超兵器から出た強い衝撃に弾き飛ばされた!
ヴォン!!
--な!?
ズザザザ〜〜!!
兵器の傍に居た兵士達も例外ではなく、吹き飛んでいる!!
「「「「「「「「うわぁぁ〜〜!!」」」」」」」」
クラウドは10m程飛んだ所で、回転しながら地面に着地した。オルランドとローラフィナも心配して声を上げる!
「ブルー殿!」
「ク・・ブルー殿!」
聡明なローラフィナはクラウドがあの姿であるのは何か事情があってだろうと、クラウドと声が出そうになるのを呑み込み声を出した。装甲馬車が盾となり、ビアロテルドと魔導将軍は多少の砂埃のみの被害である。魔導将軍は何があったか確かめる為にゴルドア超兵器に走った。
「大変だ!!ゴルドア超兵器が暴走している!」
・・魔導将軍が急いで全てのモニターを触るが、効果が出てない様子で冷や汗を出しながら膝を地面に落とす。
「・・ダメだ。この国はもう終わりだ・・。」
ビアロテルドが魔導将軍を叱責しようと近付いた。
「何をしている!?さっさと次を撃つ用意をしろ!」
「ダメです・・魔力供給装置の魔力が止められません。暴走しています。」
「何!?何とかしろ!」
「無理です。制御モニターが一切受け付けません・・。」
ギュン!ギュン!!ギュン!ギュン!ギュン!!・・・!!
円盤上の空中に急激に球体が成長していく!既に球体の大きさは直径15mを越えていた。王国の民達やオルランドロもビアロテルドと魔導将軍の会話を聞いている。ビアロテルドは再び魔導将軍を怒鳴りつける!
「ふざけるな!このエネルギー体はどうなるんだ!?止まらないならグラディアル帝国軍を撃て!!」
「本当に!ダメなんです!もう!何も対処出来ません!恐らく調整が終わっていない魔力充填装置を繋げた為にコレは起きたんだ・・駄目だと言ったのに無理矢理あんたが急がせたからだ!!」
「貴様!誰に向かって言葉を吐いている!私は王だぞ!!」
「ククク!・・この球体が弾ければボルドア王国全土はおろか!他の国の一部も溶けて無くなる!あんたは何処の王のつもりだ!お前も死ぬんだよ!!」
「貴様ァァ〜〜!!」
ビアロテルドが魔導将軍の首に掴みかかる!魔導将軍は無抵抗のまま、涙を流し空を向いて笑い出した!
「ハハハハハハハハハハ!!皆!終わりだ〜!!」
空の映像を見ていた国民達は急いで国を出る為に馬車に乗り走り出す!馬車を奪って逃げたり混乱が国中で起きていた!食料を保管している頑丈な地下倉庫に殺到するが、筋力の少ない母親と子供達は入れず泣いている!
ドンドンドン!!
「お願い!!この子だけでも入れて頂戴!!お願い!お願い!お願いします!開けて頂戴!!」
ドンドンドン!!・・・・・・・!!
ビアロテルドは魔導将軍を捨てる様に地面に落とすと、近くに居た兵士達に命令を下した!
「逃げるぞ!一番速い馬車を用意しろ!!」
国を逃げ出そうとしているビアロテルドに、兵士達は反応を見せない。
「何をしている!?早く用意しろ!!」
それを見た空中に今も映し出されているオルランドが叫ぶ。
「ふざけるな!!ビアロテルド!貴様は仮にも王を名乗ったのであろう!ならば王国を最後まで守れ!それが王と言う者だ!」
「うるさい!私さえ生きていれば王国を立て直せる!」
話しにならないとオルランドは首を振り、ビアロテルドに話すのをやめて国民達への願いを話した。
「ボルドアの国民達よ!!私はオルランドである!聞いた通り!この国は今!大変な脅威に曝されている!!皆!力を合わせて女と子供達を守るのだ!力を合わせよ!未来を守るのだ!決して人としての自身を貶めるでない!死が怖いのであらば私が先に死のう!一人でも多くの国民を守れる様に魔法防御壁を私が作る!ハァ!!」
オルランドがゴルドア超兵器に向けて馬を走らせる!傍に居たゴストル将軍率いる公爵私兵騎士団も当然の様にオルランドに付いて行く!空からのオルランドの呼び掛けは全ての国民達が聞いていて、多くの地下食料倉庫の扉も開いた。
バタン!
男達が少しの涙を拭きながら出て来る。
「すまない・・俺が出るから、その隙間に入ってくれ。」
「ありがとうございます!!」
「俺も出るぞ!!」
「俺もだ!町に残ってる女達と、子供達を探そう!!皆で未来を守るんだ!!」
「「「「「「「「オォォ〜〜〜!!」」」」」」」」
地下に入れなかった女子供達は、引き返して来た馬車に乗って国を出て行く為に急いだ!
・・クラウドは少し思案した後、ゴッドグランシーズを刺激しない様にゴルドア超兵器と魔力充填装置の下に設置する。
「ゴッドグランシーズ。」
そして、少しずつゴッドグランシーズを操作して浮き上がらせていく!
ズザザザ〜〜!
土を撒き散らしながら2mの高さまで上げると、その下に入った。ローラフィナが何をするのかと声を出す。
「ブルー殿!」
ローラフィナの横では早く陛下を避難させたい宰相が焦りを見せていた。
「早く!この国を出るのです!陛下!巨大魔法防御壁を展開させる用意もさせました!行きましょう!」
クラウドはゴッドグランシーズを両手で支えて下面に風を当てると空を飛び出した!
ゴゴォォォ〜〜〜〜!!
オルランドも空を偶々(たまたま)見ていた多くのボルドア国民達もクラウドがゴルドア超兵器を空に飛ばす様を見て、驚くと共に助かるかもしれないと歓喜する。
「ブルー殿!!」
オルランドの声を聞いたボルドア国民達が応援する様にブルーを連呼した。
「「「・・・・・・「「「「ブルー!ブルー!ブルー!ブルー!ブルー!!・・・・・!!!」」」」・・・・・・・」」」
ボルドア王国の全土に声援が響き渡る!ローラフィナだけはクラウドを心配して両手を前に出して祈っていた。
--クラウド様!どうか御無事で!
「・・陛下!皇帝陛下!早くお下がりを!」
「あなた達だけ避難なさい!私はあの御方を信じて、此処に居ます。あの方はエイ・デファーリスの救世主なのです。この様な所で死ぬ筈有りません!」
「あの御方?・・よく分かりませんが、あの空を飛んでいった青い姿の方がエイ・デファーリスの救世主であると?・・畏まりました。さすれば陛下が信じる救世主を私達も信じます。但し!装甲馬車へは、お戻り下さい!!陛下を心配する者達の心も汲んで頂ける様、お願い申し上げます!」
「・・分かりました。」
「皆の者!ここで上空からの攻撃に備えて魔法防御壁を幾重にも重ねて張るのだ!」
グラディアル帝国軍は素晴らしい連携を見せ、魔法防御壁を構築していく。オルランドが馬でゴルドア超兵器まであった場所に辿り着くと兵士達全員が跪いた。それを見たビアロテルドが自らの今までの行動は余所に喚き散らす。
「貴様らぁ〜〜!!裏切りおってぇ〜!覚えておくぞ!貴様らは死刑だ!」
バキ!!
オルランドは到着すると同時に馬を降りて、喚き散らすビアロテルドを殴った。ビアロテルドは口から血を流して倒れ、気絶する。
ドサ!
「お前の贖罪は後だ!」
「兵士達よ!聞いてくれ!ブルー殿は出来るだけ被害の無い場所まで兵器を運ぼうとしてくれている筈だ!全ての兵士達の魔力を掻き集めて、出来る限り上空に魔法防御壁を張れ!!王国を守るのだ!!」
「「「「「「「「ハ!!」」」」」」」
・・上空500m付近まで上昇した所で、ゴルドア超兵器に異変が起きた!
ヴァン!ヴァン!ヴァン!・・・!
ゴルドア超兵器から見えない衝撃波が連続で発生し、クラウドのゴッドグランシーズが地面へ押し下げられて行く!
「ク!!もっと!もっと!風よ!吹け!!」
ゴォォォ!!〜〜〜〜〜!!!
--まだだ!頼む!まだ爆発するな!
・・再び連続する衝撃波に抗いながら、ゴルドア超兵器を上昇させて行く!
--ぐ!ぐぐぐぐ!!
・・・高さ1200mを過ぎた辺りでゴルドア超兵器の上に存在する直径67mの球体が、細かい無数の立方体に変化してそれは起こった!!
ヴァオン!!ドォォォ〜〜〜ン!!!
「く!!うぉおぉ〜〜!!ゴッドグランシーズ!ラッパ状に変形して出来る限り広がれ!!ゴッドグランシーズの足場!上部と下部のゴッドグランシーズを固定!!」
ミキ!メキ!メキ!
「グァァ〜〜〜!!」
足元のゴッドグランシーズを固定した為に、衝撃に負けた固定している筈の上部のゴッドグランシーズ圧力が勢い良く増して行く!支えているクラウドの全身が悲鳴を上げて、ブルー姿も解け手の平と節々から血が流れた。
メキメキ!ブチ!ビュッ!
「ぐ!!エターナルヒール!」
クラウドの傷が一瞬で治ったが、上部からの強烈な圧力に再び身体が悲鳴を上げる!ボルドア王国全土の空とボルドア王国の隣国の一部の空が真っ赤に染まった!民達はその眩しさに手を翳し、顔を隠す。
メキメキ!!メキメキメキ!!
「グァァ〜〜〜!!ヒーリアルデアエリア!!ゴホッ!」
クラウドの口から血が流れた。身体が壊れては治す事を繰り返し耐え続ける。
メキメキ!メキメキ!ゴキ!バキ!メキメキ!!・・・・・・・・・・・・・メキメキ!!
「ぐぐ!グァ〜〜!!負けない!今まであった地獄に比べたら!!こんなものォォ〜〜!!う!うう!!ウォォォ!!〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
クラウドの目が青く輝いた!!強烈なオーラを発しながら雰囲気の変わったクラウドは静かに両手を降ろす。上部のゴッドグランシーズは、まだ少しずつクラウドへ迫りつつある!
「止まれ。」
ピタ!
未だにエネルギー球体から凄まじい衝撃波が発生しているが、上部のゴッドグランシーズはクラウドの声に反応して微動だにしない。
「球体を空の彼方へ飛ばして消滅させろ。」
クラウドが上部のゴッドグランシーズにそっと触ると、そこから何万もの手が生えて球体を覆い、手が勢い良く伸びて球体を運んで行く!
ギュン!!
更に追い掛ける様にゴッドグランシーズから大量の輝く針が伸び、彼方に飛ばされたエネルギー球体を貫いた!
カカカカ!!カカカカカカカ!!・・・カカ!!!・・・ギュオン・・・。
・・針に貫かれた球体は静かに消えて、空は元の青空に戻った。安心した国民達は抱き合ったり、ブルーを讃えながらバンザイを繰り返している。クラウドは空間固定した足元のゴッドグランシーズへ、仰向けに倒れ込んだ。
ドサッ。
「疲れたぁぁ〜〜。」
指のリングから、心配したローラフィナからの通信音が鳴り出す。
ティラリラ!ティラリラ!
「ん?・・ローラフィナ様?・・もしもし。」
「クラウド様!大丈夫なのですか!?」
「まぁ・・大丈夫とは言い難いですが。」
「怪我を!?」
「いえ、疲れて眠たいだけです・・おやすみなさい・・・。」
「え?クラウド様!クラウド様?」
「ぐぅ〜・・ぐぅ〜・・ぐぅ〜。」
「まったく・・フフ。お元気そうですね・・おやすみなさい。」
ローラフィナは豪華な装甲馬車から顔を出すとオルランドと連絡を取り、全軍の撤退を命じた。
・・その後、ビアロテルドは多くのボルドア国民の前で王の座を剥奪され処刑された。ビアロテルドは王では無かったとし、オルドレンド王の次の王としてオルランドが座に着いた。バルンは部下と共に姿を消して、ボルドア王国軍が必死に探すが見つからない。何処かに亡命したのではと囁かれている。オルランドは何も言わずに居なくなったクラウドとブルーをボルドア王国初の勇者であると王国の民達に発表した。特に王国を直接救ったブルーの空を飛ぶ姿は国民達の目に焼き付いており、あちらこちらに守り神として像が建てられる事となる。
・・疲れて24時間寝てしまったクラウドがレンステルス公都のデクトノフの屋敷に急いで戻ると、アテナは用意された客室で大きなテーブルの上に積まれた料理を一心不乱に食べ続けていた。
「ただいまアテナ・・って何!?この大量の料理!」
モグモグ!
「おハえり、クラウド・・あれ。」
アテナが料理を頬張りながら指差した部屋の隅には、早食い及び大食い大会の優勝トロフィーが15個も並んでいる。
「優勝を祝う品らしい・・。」
ズルッ!
「流石、アテナだね・・。」
「もっと褒めていい。」
--褒めてないけどね・・。
新連載のラナmarkⅢも宜しくお願い申し上げます! LUCKう~ん?勇者を読んで頂いている方であれば、気に入って頂けるかと思います。




