第31話 孤児院とスフェナ(外伝) 前編
・・・ベアンを失ってから怪我の療養とクラウドが王都へ戻るまでヴェルタス城でスフェナは保護されていた。ベアンの仇を討ったとはいえ、大きな心の隙間が埋まる訳でもない。昔、新婚旅行で王都へ来てベアンと他愛も無い事で笑いあった事を橋の上で思い出し、涙を浮かべていた。
「ちょっと、あなた?良かったら手伝って貰えないかしら?」
その場所でスフェナは不意に声を掛けられる。声を掛けたのは67歳の紺のチュニックに白いエプロンを着けた女性で背中に大きなリュックと両手に大きな手提げ袋を持っていた。顔は年齢相応の皺が刻まれていたが優しさに満ち溢れた顔をしている。
「え?あ、ああ。」
クラウドが戻るまで何もする事が無かったスフェナはその提案を受け入れ、リュックも手提げ袋も全て引き受ける。全部で約15kg程あったがレベル47のスフェナは空のリュックを背負っているかの様に軽々と持っていた。
「本当!助かるわ!ありがとう!・・でもあなた!?力持ちねぇ~!!軽々と持って!私はね、この近くで孤児院をしているアネイスよ。」
「私は、スフェナです。」
「あなたが居て良かった!高齢の私には、もうきつくてね。」
「これは、何の荷物が入っているの?」
「子供達の服や食べ物よ。家を回って要らなくなった物をお願いして分けて貰っていたの。」
・・・そんな話をしながら一時間程、女性に付いて歩いて行く。少し入り組んだ路地を抜けると塀に囲まれた土壁の大きな平屋が見えてきた。その前では子供たちが縄跳びや鬼ごっこをして遊んでいる。子供達の服装は継ぎ接ぎだらけで穴が塞がっていない物もある。靴にもどこか一箇所は穴が空いていた。栄養が足りていない為、どの子供も瘦せ細っている。アネイスを見つけて3人の男の子と2人の女の子が近寄ってきた。
「「「「「お帰りなさい!アネイス母さん!」」」」」
「ただいま。」
8歳の男の子ニンテスが尋ねる。
「その人、誰?」
「この人はね、荷物を持つのを手伝ってくれたんだよ。御礼に皆と食事でもどうかと思ってね。」
「いや!私は・・。」
「質素な食事しか出せないけどね、一緒に食べていっておくれ。」
「お姉ちゃん!一緒に食べようよ!」
「お姉ちゃんって、呼ばれる歳じゃないけどな。」
アネイスが笑いながら話す。スフェナは32歳であった。
「そんな事言ってたら私は、おばあちゃんって呼ばれちゃうよ。」
それを聞いたスフェナが笑う。
「フフフ・・。」
「ようやく笑ったね!人間はね・・笑う事で幸せになれるんだよ。皆、幸せになれる権利を持ってる!笑わなきゃ損するんだ!」
アネイスは橋の上で泣いているスフェナを見て心配して孤児院に誘った様である。
「アネイス母さん!その言葉もう聞き飽きてるんだけど!」
笑いながらアネイスは顔を少し傾け腰に手を当てて話した。
「今はあんた達に言ってないんだから、そんな事を言わない!それにね!私は何度でも言いたいから何度も言うよ!」
「アネイス母さん、開き直らないでよ!」
「いいから、あんた達!このお姉ちゃんと食事が出来るまで遊んで貰いなさい!」
スフェナが困惑した表情をみせる。
「え?」
「やった~~!!鬼ごっこしよ!お姉ちゃん!」
スンテスがスフェナを誘うと、横に居た6歳の女の子ニスレが違う遊びで誘う。
「何言ってるのよ!?お姉ちゃんは私達と縄跳びで遊ぶの!」
子供達はスフェナの手を引っ張り合う。スフェナは子供達の無邪気さに自然と笑みが浮かんだ。
「それじゃあ、皆で鬼ごっこした後に縄跳びもしよう!」
「「「「「やったぁ~!!」」」」」
鬼ごっこをしている内に子供達が集まって来て15人で遊びだす。少し大きくなった子供達は出掛けるか、捨てられていた本を拾って来て勉強をしている様だ。
・・・子供達と遊んで暫く経つと孤児院から出て来た一人の女性が声を上げる。
「みんな~!ご飯出来たよ~!!」
25歳の女性カリルが呼びに来た。カリルはこの孤児院出身で、今は結婚して別の場所に住んでいるがアネイスを手伝う為に度々訪れている。カリルの様に時々手伝う者が後、3人いるらしい。孤児院出身者で手伝いたいと思っている者は沢山いるが遠くに住んでいたり、結婚した家庭の事情で困難であった。
「「「は~い!カリル母さん!」」」
カリルはスフェナに会釈すると、どうぞ!と手で招く。スフェナも会釈して中に入った。中は広く清掃はよくされているが机の足は何本も折れていてテープで補強して使用している。壁も朽ちて削れていたり凹んでいた。
「そこに座って下さい。粗末な食べ物で申し訳ありませんが、ゆっくりしていって下さい。」
「・・すみません。頂きます・・・。」
食堂には長机を10程並べ沢山の椅子があり子供達が座っている。机にはパンとスープだけ用意されていた。パンはカビの生えた部分をちぎった物だ。スープの具材は育ちが悪かった様な野菜が刻まれて入っていて肉や魚は一つもない。全員が集まるとアネイスが最後に座り食事の合図を送る。
「それでは皆、頂きましょう。」
「「「「「「頂きま~す!」」」」」」
皆、食べ盛りである筈が少しづつ食べている。早く食べると直ぐに無くなり、お腹が空いてしまう為であった。5歳のグネットという名の女の子がアネイスに自分のパンを持って近付く。
「アネイス母さん・・私のを半分あげる!」
スフェナ以外の大人の分にはパンの皿が無かった。家を回って食料が少ない場合は子供達に食べさせる為、大人たちは我慢していたのだ。
「ありがとう。でも良いんだよ・・・いつも言ってるけど私達はね、お前達が一杯食べてくれた方が幸せなんだ。」
アネイスがグネットに笑いかける。スフェナはそれを見て止めどなく涙が溢れだす。足りない量しかないパンを他の者に与えれる5歳のグネットを見て、いつまでも落ち込んでいる自身を情けなく思ってしまっていた。スフェナの泣いている姿を見て子供達がスフェナに近寄り自分達のパンを少し千切ってはスフェナの皿に置いていく。スフェナは更に涙が止まらない。
「違う・・・違うんだ・・フフフ・・私は、お腹が空いている訳じゃないんだよ!皆、食べとくれ。皆の優しさがね!私の心の隙間に入って来て涙が勝手に出て来るんだ・・ありがとう。」
スフェナは思った。
--この子達にもっと良いものを食べさせて上げたい・・。貯金はそこまで無いけど、後一か月経てば近衛騎士としての給料も出る・・・よし!
「皆!私が今からお肉を買って来る!今日の夕食は庭でバーベキューといこう!」
「「「「「「「やった~~!!」」」」」」」
アネイスが心配して声を掛ける。
「いいのかい?・・私はそんなつもりで、ここにあなたを連れて来たんじゃ無いんだよ・・。」
「いいんだ。アネイスさんがここに連れて来てくれた御陰で元気も出たし。」
「それは良かったわ!いつでも子供達に会いに来てあげて頂戴。」
「ああ。」
スフェナは手早く昼食を食べ終わり、すぐ近くの預金所へ向かい・・到着した。
「あのダケトル・スフェナだけど、お金を下したいんだが。」
「はい、それではご確認致しますので、その石板に手を置いてください。」
「・・・・確認できました。17デロ9デル3デラありますが、おいくら程下ろしましょうか?」
--人数多いけどコノストロの肉なら5デロあれば皆に行き渡るかな?コノストロの肉はちょっと、固めだし本当はもっと良い肉を買ってあげたい所だけれど。
コノストロはベーラ大草原に多く生存する鹿に似た動物である。
「では、5デロの引き出しで。」
「畏まりました。あっ!少しお待ち下さい・・。今、クラウドという方から振り込みがありました。添え書きには近衛騎士としての支度金と書いてあります。200デロ振り込まれていますね。」
「200デロ!!?」
「はい、いかがなさいますか?先程仰られていた金額で宜しいですか?」
--・・・まったく・・クラウド様には頭が上がらないな・・でも感謝するよ!これであの子達に新しい服や靴も買ってやれる!
「じゃあ!100デロお願いします!」
「畏まりました。」
スフェナは100デロ受け取るとまず肉屋に向かう。そこは屋台街の傍にある下町商店街の肉屋であった。
--ここなら安いだろうし、皆に良い肉を食わしてやれるだろう!
「おじさん!ここにある良い肉を全部おくれ!」
「何言ってんだい!ねぇちゃん!ここの肉は俺の弟が丹精込めて育てたのを並べてんだ!良い肉しか置いてねぇよ!それに全部ってお金持ってんのか!?値が張るぞぉ!」
「ああ!大丈夫だ。それじゃあ・・ここにあるお肉を全部おくれ!」
「本当に大丈夫か?20デロ5デレ8デルもするんだぞ!?まぁ・・まけてやっても18デロってところだな。」
「じゃあ、これで頼む。」
スフェナは腰袋からお金を出した。
「大人数でパーティーでもすんのか?」
「ああ、子供達でな。」
「そんなに子供が沢山いんのか!?」
「ハハハハハ!私の子供じゃないよ!孤児院の子供達だよ!いい子達ばっかりでね。」
「何でそれを早く言わねぇ!!12デロでいい!全部持っていきな!」
「え!?それは悪いよ!儲けが出ないだろ。」
「俺がいいって言ってんだ!」
店主はそう話しながら手早く肉を袋に詰めていく。長年店を続け達人の域に達しているのか手元を見ずに話しながら素早く詰め、その動きは無駄がない。臭いや種類、美味しく長持ちする秘訣を駆使して丁寧に小分けされ袋に詰めていく。店主は最後にそれを大きな袋に3つ詰めてくれた。
「ほらよ!」
「おやじさん・・有難く頂くよ。」
「いつでも来な!!子供たちに食わせるってんなら、特別サービスしてやるからよ!」
店主は幼いころ、小さな孤児院に仲良しの幼馴染がいた。親から怪しい孤児とは付き合うな!と言われた為に一方的に別れを告げそれから会っていない。大好きだった友達に別れを告げた時の事を思い出している様だ。その孤児は大きくなりアネイスという名前で別の孤児院を養っている。店主は子供の頃、アネイスを男の子と思っていた・・。涙を堪えながら思う。
--今日もいい天気だ!!アネイス!お前は今何をしてんだ!・・・死ぬまでにいつか会って・・謝りてぇなぁ。
・・・スフェナは大量の肉を抱えて急いで孤児院に戻っていく。服や靴は子供たちの好みを聞いてからプレゼントしようと思っていた。
・・スフェナが孤児院に戻っていく中、殆どの子供達が昼食を食べ終わり片付けていた。小さな子供達はまだ少し残る食事を味わっている。急に施設のドアが開かれた。
ガン!!バ~ン!
扉を足で蹴り開けた人相の悪い男とその他の、計5人の男が我が物顔で施設に入って来る。
「てめぇ~ら!!何、呑気に食ってやがんだ!まっずそうな飯食いやがって!そんなもん食ってる暇があったらサッサと出て行くか!借金の利息を払いやがれ!!」
ガシャ!ガシャン!!
机が蹴られて、そこで食べていた小さな4人の子供達が転倒する。少し大きな子供達が駆け寄って起こす。数人の子供達は炊事場で食器を洗っているアネイスとカリルに報告しに行った。転倒させられた子供達を見て8歳のスンテスが怒り、机を蹴った男に体当たりしていく。
「何すんだ!この野郎!」
「何だ~!この餓鬼がぁ!!」
ドン!ガシャガシャ!!
急いで食堂に戻って来たアネイスとカリルが声を上げた!
「「スンテス!!」」
体当たりしようとしたスンテスは腹をけられ机に当り倒れた。蹴った男は更に追い打ちをかけ、机に凭れ掛かっているスンテスの顔を狙って蹴り上げる。
「オラァ!」
バシッ!
「あんた達!いい加減にしな!!小さい子供を蹴ろうなんて!」
スフェナが孤児院に飛び込んで来て蹴り上げようとした足を掴み取り、怒りの表情で強く握り締める。
ミシミシミシ!
「グワァ~!!いてぇ~!放しやがれ!オッ!折れるぅ~~!」
二人の男がスフェナの背後からそっと近付き、持っている鉄パイプでスフェナを挟む様に腹を襲った!
「「オラぁ~!!」」
「グァ~~!!」
スフェナは持っていた足首を放して飛び上がりパイプを避けるとパイプは足首を持たれていた男の腹と背中に直撃した。男は床に倒れて腹を抑えながら、もんどり打っている。スフェナは飛び上がった状態で状態を前傾して両足を160度開きパイプを持った男二人を蹴り飛ばした!二人の男達は施設の壁まで吹き飛び頭を強く打つと意識を失いズルリと床に倒れていく。それを見た子供達が喜んでいる。
「「「「「「強い~~!!やっちゃえ~~!」」」」」
「そこまでだ!!」
スフェナは着地すると声を発した男へ向く。
「何だい!あんたは掛かって来ないのかい!!」
「ふん!生きのいい女だ!!だが!分かってるのか?俺はメルボンド組のモストフと言うもんだ!しかも、この土地と建物は2等貴族であるブロウロル様の物でその使いで来ている。お前はどうやら孤児院の関係者の様だが抵抗するなら貴族様に逆らった事を報告して子供達諸共!全員炭鉱送りにして貰ってもいいんだぞ!」
メルボンド組というのは国の認可していない違法な賭博場や奴隷商人、裏マーケットを持つ大きな組織であった。強い権力を持った貴族達とコネクションを持っている為に、衛兵や軍も簡単に取り締まれない様である。勿論、ユイアレスの耳に入れば取り潰しに掛る筈だが、貴族達に金をばら撒き都合の悪い人物へは上手く伝わらない様にしていた。多くの者達がベルボンド組というだけで関わらない様にと逃げていく。
アネイスが何故?という表情で話す。
「ここは二等貴族のメリドル様の物で!家賃は免除されている筈です!」
「そのメリドル様は死んで、新しく長男のブロウロル様が継いだんだよ!ブロウロル様は高騰しているこの土地を大きな店に作り変えたいそうだ!」
「そんな!?」
「さぁ!!どうする!?女!子供を炭鉱で働かせるかぁ!」
「くっ!・・・。」
スフェナは両腕を下し戦闘の構えを解いた。
「それでいい・・・やれ!!」
二人が気絶した者達を起こして5人全員で鉄パイプをスフェナに叩き付けていく。
「よくも!やってくれたなぁ!!オラァ!」
ドン!!ガ!ドス!・・・ガシ!・・・・・・・ドス!ドス!ドス!
執拗に叩き付け蹴り上げ続ける。スフェナは抵抗せず血を流しながらそれを受け続けた。その姿を見ておられず女の子のニスレが庇おうとスフェナの前に両手を広げて飛び出す!
「もう!やめて!!」
「ウラァ!」
構わず男がニスレを蹴り飛ばそうとする。スフェナはニスレを両手で抱きしめると男達の反対側に向いて守る様に屈みこんだ。男達は殴りやすいとばかりに頭に背中にとパイプと足を叩き込む。男達よりかなり高レベルなスフェナでも骨にヒビが入り、身体の様々な箇所から血を流していた。
「ググ・・・・。」
「けっ!頑丈な女だぜ!!まだ倒れねえのか!まっ、いいか!お前が倒れないんなら見せしめに子供をと・・。」
男は近くにいた恐怖で動けない小さな男の子に近寄り、髪を上に引っ張り上げて顔を殴ろうと拳を握る。男の子は髪を引っ張られた痛みで声を上げた。
「痛い!」
バキッ!!
スフェナはその声を聞いた瞬間、ニスレを抱えたまま立ち上がり男達をすり抜けて顔面にパンチを叩き込んだ。男は前歯を飛ばしながら吹き飛び床を転がって行く。
「おい!女!!さっき言った事を忘れたか!!」
「うるさい!!子供達に指一本でも触れてみろ!!たとえ私が貴族に逆らった罪で死刑になろうとも!その前に!!お前達を地獄に叩き込んでやる!!」
頭や他部所から血を流すスフェナが啖呵を切ると、その迫力に男達はゴクリと唾を飲み込む。その言葉は間違いなく、手を出せば殺されてしまうと!
「分かった・・今回は出直そう。だが!これで終わりじゃない!後で後悔する事となるだろう!!・・必ず出て行って貰う!行くぞ!!」
男達は気絶している者を背負って歩いて行く。気配が無くなった所でスフェナもドサリと前のめりに倒れた。アネイスとカリルが声を上げる。
「「スフェナ(さん)!」」
「「「「「おねぇちゃん!!」」」」」
スフェナは子供達がいつも寝ている藁で作られた布団に寝かされ、濡らした布で額を冷やされる。夕食前になりスフェナの意識が微かに戻りだすと沢山の子供たちの祈り声が聞こえて来た。
「神様!スフェナ母さんの傷が早く治りますように!!」
「「「「「・・・・治りますように!」」」」」
その子供達の発言にスンテスは戸惑いの表情で話し出す・・・。
「ニスレも皆も・・お姉ちゃんをお母さんって呼ぶの早くない?お姉ちゃんとは会ってまだ一日しか経ってないし・・・。」
二スレが神様に祈ったままスンテスに話す。
「いいの!スフェナ母さんは母さんなの!!」
他の小さな子供達も両手を握って回復を祈りながら目を開けてニスレに同意する。
「「「「「母さんなの!!」」」」」
「うん・・・母さんだよね・・。守ってくれたし、俺も大好き・・でも俺達孤児だし!・・・スフェナお姉ちゃんにも見捨てられるよ・・きっと。」
「大丈夫なの!スフェナ母さんは、母さんだから大丈夫なの!!」
「「「「「大丈夫なの!!」」」」」
ニスレが大きな声ニンテスの発言を否定した所で、スフェナは寝たまま目を開ける。
「フフフ・・いつの間にか私に子供が一杯出来ちゃったね・・・。おいで・・スンテス、ニスレ・・皆も。」
--ベアン・・見てるかい。私達の子供達だよ・・。
その言葉に全員スフェナに抱き着いていく。スフェナも本当の我が子の様に子供たちの頭を撫でていた。ニスレが涙を流しながら話す。
「スフェナ母さん!早く良くなって!早く良くなるのなら私!お肉なんか要らないから!!」
スフェナは頭を撫でながらニスレに話す。
「そう言わず折角買って来たんだから食べとくれ・・。」
「だって・・。」
「気にしなくてもいい・・私にはあんた達の笑顔が必要なんだ・・・美味しい食べ物を食べて皆で笑っておくれ・・。」
「「「「「「「うん!」」」」」」」
スフェナは高レベルであるが、まだ治癒魔法を覚えていない。子供の頃覚えた戦闘用のスキルがあるぐらいだ。スフェナは上半身を起こして腰袋に入っている痛み止めと軽傷回復薬の小瓶を開けて飲み干していく。
「ふぅ・・この薬はいつ飲んでも苦いな。皆、それじゃあバーベキューの用意と行こう!」
ニスレが心配して問い掛ける。
「スフェナ母さん・・大丈夫?」
「ああ!このぐらい!かすり傷さ!」
スフェナは表情を変えず痛みを我慢して起き上がった。
--ツインサイクロプスの魔元核石を吸収した時を考えれば、こんな痛み無いようなもんだ!あの時は身体がバラバラになったんじゃ無いか!?って思うぐらい強烈だったからな・・。
そのまま子供達を引き連れ、孤児院の庭に石を積み上げて竈を作っていく。壊れた机や瓦礫を外に出そうとしてアネイスがスフェナ外で居る事に気付いた。
「スフェナ!?何してるの!!寝てないとダメよ!」
「ああ・・大丈夫さ!このぐらい何ともない!」
スフェナはヒビの入っていない方の腕を笑顔で振り回した。アネイスはスフェナが一週間は寝込んだまま動けないと予想していた為に驚いている。
「まぁ!・・凄いわね!どんな体をしているのかしら!それじゃあ、これを片付けたら私も手伝うわね。」
「だったら、あそこに置いてある肉を子供達が食べやすい様に切って串に刺して貰えるかな。串も肉の横に置いてあるから。」
串は肉屋さんに紹介して貰った店で大量に買っておいたのを渡す。
「分かったわ。」
・・・肉を串に刺し終わると、竈の上に肉を並べていく。下にある炭に火を着けた。炭はいつも風呂を焚く際に使っている物だ。暫くすると残りの47人の子供達がいい匂いに釣られて外に出て来た。
「うわぁ~!!美味しそう!!」
「肉!大量の肉だよ!俺!明日死んじゃうかも!?」
「いい匂い!!早く食べたいなぁ~!!」
「これがお肉なんだ!どんな味かな!」
全員、お肉の魅力に参っている状態だ。
「はい!焼けたよぉ~!小さい子から皿を持って順に並んで!受け取った子から食べていいからね!熱いから火傷するんじゃないよ!」
「「「「「「はぁ~~い!!」」」」」」」
急ぎ並んで行くが同じ10歳の男の子が喧嘩しだす。
「何すんだよ!俺が先に並んだんだぞ!」
「違うよ!!僕の方が早かったよ!!」
「お!れ!だ!」
「ぼ!く!だ!」
喧嘩する様子を見てスフェナが叱る。
「こら!!そこ!喧嘩する子には肉をやらないよ!!」
二人共、背筋をピンと伸ばして紳士の様に譲りだす。
「「どうぞ!どうぞ!」」
「ふふふ、急いで並ばなくても一杯あるからね!!」
先程、順番を取り合っていた子供達が笑顔を見合わせて親指を立て拳を合わせた。そして受け取った子供からフ~!フ~!と冷やしながら食べていく。
「美味し~!!お肉ってこんなに美味しいんだ!?」
「よく噛んで食べるんだよ!まだまだ沢山お代わり出来るからね!」
「うん!」
「んん~!やっぱ捨ててあった肉とは全然違う!」
「ミノデ!またレストランの残飯を漁ったのね!病気になるから、やめなさいって言ったでしょ!」
「ごめんなさい・・・リネル姉ちゃん。」
「に!に!肉~!!うまぁ~~~!!」
「「「「「「「・・・・・・・ん~!!・・・・・」」」」」」」
美味し過ぎて目を閉じ幸せを噛み締める子供達が沢山居た。数人の子供達はお腹を膨らませ過ぎて苦しそうにしている。全員満足したが、まだまだ肉は余っている。冷蔵庫が施設には無かった為に腐らない様に次の日用として火を通した。その他は保存が効くように干していく。




