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LUCK   う~ん・・・勇者?  作者: ススキノ ミツキ
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第26話 闘技大会 予選編

・・・・次の試合が始まる。次の相手は剣をメインに闘うレベル13のフィアッテであった。ルシルは魔法をメインに覚えて来た為、通常は距離を取りながら闘う事がお手本の闘い方である。ただ、クラウドから多対一での実践をさせられていたので近接戦闘も問題はなかった。フィアッテが叫ぶ。


「魔法は使わせないわ!はぁ~!間に合わない!?なんて魔法構築が速いの!?」


 試合開始早々、ルシルに魔法を使わせない為に全力で駆け寄るがルシルの魔法構築に追いつけない。ルシルは落ち着いて下級盾形防御魔法エピエルを構築して備える。フィアッテが相手であれば距離を取りながら安全に魔法で戦う事もルシルには出来たのだが、そうしていない。ルシルの最終目標はクラウドの旅に付いて行き、補助出来る者となる事である。クラウドに付いて行く為には、あらゆる状況に対応できる者になる必要があるとルシルは考えていた。


「よし!距離を詰めたわ!攻撃魔法は使わせない!はっ!とっ!やぁ!!・・・・・・・とぅ!!・・・・はぁ・・はぁ・・はぁ。なんて!素早いの!?魔法がメインじゃないの!?」


 ルシルは念のために構築した小盾も使わず、すべての剣技を体捌きのみで避ける。


--クラウド様の訓練の効果が出てる!!攻撃の変化からフェイントも全て予測出来るし見えてますわ!


「今度はこちらの番です!」


 ルシルはウインデアシュートの魔法で攻撃しようとする。それを阻止しようとフィアッテはガンフィラという下級スキルを使い、高速でルシルを突く!


「させません!!はっ!と!!・・・ハァア~~!ガンフィラ!!タタタタタタタァ!」


 ルシルは盾を使いながら少し距離を取って全ての突きを受け流し、魔法を構築して放つ!


「・・・・・・・・・ウインデアシュート!!」


 フィアッテは至近距離から、それを喰らって3㍍程吹き飛ぶ。


「キャァ~~!!」


 フィアッテが態勢を立て直す前に風魔法のシグファングブレスを構築していく。シグファングブレスは中級風魔法で、風を集めて圧縮し一部を解放する事で高速発射させる。標的に当った瞬間、すべての圧縮した風は解放されて小さな爆弾となって相手にダメージを与える魔法であった。


「・・・・・・・・・リグ・・・クァォル・・・・・・・・シグファングブレス!」


 ヒュ!ッ!ボォン!


「キャァ!」


 フィアッテは足元から来る衝撃で再び吹き飛びドサッ!と落ちて倒れたまま降参のサインを審判に送った。ルシルが足元に当てたのはフィアッテが防げず大怪我する事を懸念した為である。


「それまで!勝者、ルシル!」


 ルシルはどんどん勝ち進める。予選選抜の最後の相手はルシルの同じクラスでトップの実力を誇るレベル17のジャンネであった。ルシルのクラスの学生は全てジャンネを応援している。ルシルの応援はケイシスと遅れて応援に来たリエスだけであった。リエスはケイシスを見つけて近寄っていく。


「こんにちは、ケイシス様。」


「こんにちは、リエス。」


「私を家に戻して頂くようにお父様に話して頂いてありがとうございました!・・あの後、勘当された事を相談しようと友達に話したのですが逆にお父様の威光がない事を知って嫌がらせをして来たんです・・・本当に!どれだけ前の私が愚かで恥ずかしい人間であったのかが分かりました。その時、ルシルが通りかかって前に私からされた仕打ちも水に流すように味方をしてくれて・・私、涙が止まらず・・・その後、心の底から謝って友達になって下さいとお願いしました!」


 リエスが涙を流している。


「私、ルシルの心の強さや広さに本当に感動して!本当の友達が出来たと今は喜んでいますわ!」


「そう!それはよかったわね。」


「はい!もうお父様の勘当も解けていますが他の人には内緒にしています。ルシルの様に心を強く持ちながら本当の友達を作って行こうと思っていますわ。」


「それがいいわね。ルシルもクラウド様に言われた事を律儀に守らなければ学院でリエス以上に、ちやほやされたでしょうけど。」


「そういえばルシルの婚約者のクラウド様って言う方は本当にどういうお方なのでしょうか?」


「そうねぇ・・・ルシルの友達なら言ってもいいかしら?内緒に出来る?」


「はい!誰にも言いません!もちろんルシルにも聞いた事は内緒にしますわ!」


「そう、クラウド様はね・・ヴェルタス王国第一継承者ユイアレス様の親友であり現在5人目の煌輝紋章石ホルダー様よ。」


「煌!!?」


 リエスは大声を出しそうになり右手で自らの口を塞いだ。


「ルシルには普通に接して上げてね。折角友達になれたのですし。」


「宜しいのでしょうか?本来なら王妃様並みに扱われるのでは・・・。」


「ルシルもクラウド様も自身の事は全く偉いと思っていないし、クラウド様は凄く優しくて気さくな方なの。それにルシルはそんな扱いを受けると、きっと悲しむと思うわ。」


「確かにルシルならそうですわね、分かりました。新しくクラウド様が煌輝紋章石ホルダー様となられたのであればやっぱり、凄くお強いのでしょうね?」


「全ては話せませんけど少し前、闘技場に巨大な魔物が現れたと噂が流れたのは知っているわね?」


「はい、でもあれは只の噂だと落ち着いた様です。」


「実はね、本当に現れたの。体長12㍍もある巨大な魔物よ。」


「えぇ!?そんな魔物が!」


「そう、その魔物はクラウド様が一撃で闘技場と共に真っ二つにしてしまわれたわ。」


「凄い!!」


「そうでしょ。でもまだあるわよ!亜竜とは言え、成龍もこの前倒したって聞いてるから・・・竜より強いという事になるわね。」


「竜!?・・・・王国最強!いえ!エイ・デファーリス一の最強ですわ・・・!あの時ジャットス様が何故怯えていたか分かりました。」


「ではケイシス様がルシルを特訓されていたのも?」


「そう、クラウド様に頼まれたの。」


「道理で強くなる筈です。」


「でもね、今の強さは私の特訓もあるけど、殆どクラウド様の力ね。あんなに短期間で強くなるのは常識では無理です。今日もクラウド様の特訓を受けると聞いているから、明日からの闘技大会を勝ち進めて優勝するかもしれないわよ。」


「優勝!?少し前のルシルでは考えられませんわ!」


「そうねぇ・・クラウド様には常識と言う言葉が無いですからねぇ。」


 ハクシュン!!


--誰か噂してるのかな?これは・・・ケイシスさんでしょ!?なんてね。


 クラウドは別の場所でくしゃみをしながらケイシスが噂をしていると言い当てていた。クラウドがくしゃみをしたその場所はビッゴスの工房の隣にあるビッゴスの屋敷であった。内部はドワーフ族の大きな身体に合わせた木製の頑丈なテーブルや椅子などがあり、既にビッゴスとデハルグがそこで酒を飲んでいた。


 テーブル等の家具は木製であるが高級家具といえる気品を備えている。ビッゴスが建てて作った家や家具であるが本人はもう少し無骨さを感じさせる様に作りたかったらしい。妻のドルネの希望に合わせて作られ、頑固職人のビッゴスといえど惚れた妻には弱いようだ。ビッゴスの持つ酒の入ったジョッキは通常の5倍はある。酒のつまみはドルネがキッチンで作っている。家族は4人だがビッゴスの二人の息子は共通の友達の結婚式に出席してまだ戻っていない。


「おう!クラウド。来たな!風邪か?おめぇも座って呑め!この酒飲んだら、そんなのすぐ治らぁ!」


「こんにちは!お邪魔いたします。先日はどうもありがとうございました。それと、デハルグ様。お久しぶりです。」


「久しぶりじゃな。儂の売った屋敷はどうじゃ?良かろう!」


「はい!住み易いですし、何より地下宝物庫にあった物のおかげで友達を救えたりと役に立ち、本当にデハルグ様には感謝しています。ありがとうございます。」


「そうかそうか。お主であれば存分に、この世界の役に立てれるであろう。」


「デハルグ!話の途中で悪いがな、クラウドも来た事だし見て貰いてぇもんがあんだ。」


「ん?何じゃ。」


「これだ!見てみな!」


 ビッゴスは座っていた後ろの長い木箱の蓋を開けるとスレート綿という、きめ細やかな柔らかな綿に乗っている一振りの剣を取り出した。


「こ!!これは!?神羅紋様ではないか!?」


「やっぱり、一目で分かるのか?さすがデハルグだな!」


「何処からこれを借りたんじゃ!?まさか!この借りて来た国宝装備を持って行けと言うんじゃ無かろうな!?こんなものを使って壊した日には、国のお尋ね者じゃ!儂はビッゴスに作ってくれと頼んだ筈じゃろうが!まったく・・・。」


「おう!だから言ってんだ!その剣は俺とクラウドの合作だ。値段はそうだな・・・?俺にゃあ親友価格で500デロでいい!残りはクラウドにやってくれ!国宝装備にしたのは殆どクラウドの力だしな。」


「待て!!何じゃと!?この剣を作ったじゃと・・・!?」


「おう!そうだ!いい出来だろう!」


 デハルグは驚きのあまり、剣を持って見つめたまま動かない。


「・・・・・。」


「あの~、デハルグ様には本当にお世話になったので自分には何も必要ありません。」


「何言ってんだ!?クラウド!国宝装備だぞ!クラウドがデハルグから屋敷と宝物をいくらで買ったか知らねえが、国宝装備に比べれば焼き菓子みたいに安いもんだ!少しでも何か貰っとけ!」


「いえ!本当に大丈夫ですから。」


「その前に・・・やはり聖剣じゃ!聖剣雷光ミッドレイとなっておる!?ビッゴス!!分かっておるのか!?」


「何がでぇ?」


「聖剣は・・・聖剣は神が鍛えるから聖剣となるのじゃ!」


「そ!!?そんな訳ねぇだろう!?クラウドが神様ってか・・・!?」


--え!?レイティス様は神様だけど自分は違うし!


「いや!自分は人族ですよ!」


 デハルグはクラウドをスキルで鑑定している。


「・・・本当じゃ!おかしいのぉ・・・・?」


「ほれ見ろ!おめぇの鑑定スキルで確認したんだろ!だったら間違いねぇさ!た・・たまたまだよ!たまたまクラウドが魔力を込め過ぎたのさ!!」


「・・・ん~?・・・聖剣が人に作れるのか・・・?しかし、国宝装備なんぞ儂が貰ってよいのかの?この通りの老いぼれじゃしな・・・。」


「いえ!是非使ってください!それと、私はデハルグ様をお年寄りと思っていませんが、もしデハルグ様が望むのであればスラールファクティアの杖を使われますか?自分なら使えそうですし。」


「いや、儂は自然に歳を取り亡くなるのを望んでおる。杖はお主が自由に使うといい。ただし、分かっておると思うが今みたいに軽々しく話さない方が良いぞ。」


「ああ、あれの話か・・・。」


 ビッゴスもスラールファクティアの杖の効果を知っている様であった。


「分かりました。必要となれば使わせて頂きます。」


「ふむ、それでは儂も雷光ミッドレイを有難く頂くとしよう。」


「はい!」


・・・・デハルグはこの後、雷光ミッドレイの聖剣を携えエステナ神聖国のゴアオド峡谷に住むレベル62のボズスを倒す。ボズスは体長7㍍で巨大ミミズにドリルの様な顔を付けた魔物である。ダメージを受けるとと直ぐに地中へ潜ろうとする為、潜ろうとした瞬間に雷系の攻撃で感電させ地中から追い出す必要がある。ただし、雷系に弱いが倒すには大量の魔力が必要な為に長期に渡って攻撃できる雷系攻撃の可能な装備や魔法具を用意する必要があった。一度目は雷魔法といくつかの魔法具で倒そうと試みたが魔力が尽きた為に撤退した。ビッゴスに注文した剣であれば魔力を温存しながら闘う事が出来る。・・・筈であったが、剣は注文した装備とは違う。


 ボズスが凶悪なドリルを向け素早く突進してくると、デハルグはそれを避けながら聖剣雷光ミッドレイを振り降ろした!その瞬間、剣は稲妻を帯びながら稲妻を凝縮した元の刀身より5倍の大きさの巨大剣となりボズスの3分の2から真っ二つにしてしまう。斬れた部分は焦げ付いて体液の1滴も出ていない。ビクビクと感電して蠢き、二つに分かれた巨体は静かに横たわった。


「二日間掛かって倒せなんだ相手を一撃か・・・・。むやみに人前で使えぬのぅ。しかし・・・この威力・・やはりクラウドは・・・・・・では・・?」


 ・・・少し、時は戻り・・・ルシルの出場している闘技大会ではケイシスとリエスが応援する中、対戦が始まろうとしていた。


「あ!始まりますよ!応援しましょう!」


「はい!ルシル!頑張って~!」


 ルシルのクラスから多くの応援が巻き起こる。


「「「「「「「「ジャンネ~!!頑張って~」」」」」」」


「それでは・・・はじめ!!」


 ルシルとジャンネの対戦が始まった。ジャンネは剣と魔法の両方を使うバランス型の様だ。髪はショートヘアで男の子と間違えそうなぐらい精悍な顔立ちをしている。


「ルシル!あんたはどうやら、この闘技大会の為に爪を隠していた訳だね。戦術とは言え少し卑怯だろ!は!とぅ!は!・・・・・・・・・ボイ・・・・・ミトスト・・・・・・・・・・デアロックボール!」


 ジャンネはルシルに話しかけながら剣で攻撃し、魔法を構築するとルシルへ放つ!ルシルは剣を避けながら魔法の盾を構築して直径20cmの土弾3発の弾道を変えて受け流し、さらに攻撃魔法を放つ!


「隠してません!・・・・・・・ウインドカッター!」


 至近距離から放った風の刃が剣を持つ腕にかすめる。


「痛っ!だったら、わずか10日間ほどで魔法も何も出来なかった貴女が、そこまで強くなったって言うのか!?馬鹿馬鹿しい!ありえないな!」


--私も信じられないし、仕方ありませんわね。


 距離を取り、腕の傷を治そうと魔法構築するジャンネに風中級魔法デリソフィスシュートを構築しながら近づいていく。デリソフィスシュートは風を送るウインドシュートに回転を加えた効果がある。


「でも、本当の事です!・・・・・・デリソフィスシュート!」


「グアッ!!」


 強烈な風の回転に巻き込まれたジャンネは吹き飛ばされて場外へ落ちた。ジャンネを応援していたクラスの者達はがっかりしている様だ。


「そこまで!勝者、ルシル!」


 ジャンネは再び闘技場に上がりルシルの傍に戻る。


「私がこんな簡単に負けるとはな!だが・・こうして直接闘ってみて分かったよ。実力を隠してた訳では、なさそうだ。実力がかなり上にも拘わらず大怪我しない様に闘ってくれてたし。闘技大会に相手を気遣える様な者が卑怯な手段を取るとは思えないもんな!・・大会本戦では応援するから頑張ってくれ!」


 ジャンネはルシルの強さを認めて握手し合う。闘いを見ていたクラスの生徒からも、その握手を見て3分の2は拍手をしていた。3分の1の者達は今までルシルに嫌がらせをしていた事で自分達よりも強いルシルから仕返しされないか懸念している様だ。


「ありがとう!頑張りますわ!」


「それにしても・・本当に隠してないんだろうが凄すぎるな。この短期間でその強さになるとは!私も是非ケイシス様の特訓を受けてみたいものだ。どうやって、ケイシス様にお願いしたんだ?」


「え~と・・・私の婚約者がケイシス様にお願いしてくれましたの。」


「ふむ、婚約者か・・・。聞くのが怖いな。王子様直属、近衛騎士隊長のケイシス様に学生の長期間特別指導をお願い出来るお方となると・・・限られる。お~、怖っ!ルシルに嫌がらせ等、下手をすれば死刑だ!他の者は分かって嫌がらせしているのか?分かっていたとしたらやらないか・・・。少し考えれば分かりそうなのに馬鹿な奴らだ。いや、馬鹿は止めなかった私もか。悪かったな、ルシルが嫌がらせを受けているのを知っていて止めずに。」


「いえ・・・。」


「私も闘技大会に向けて必死だったからな。ルシルは1等貴族と聞いていたから学校さえ辞めれば裕福に暮らせるし、ケイシス様も付いているから大丈夫だろうと思っていた。まぁ、ルシルが強い所を見たんだ。嫌がらせも無くなるか。いや!逆に仕返しされると、怯えているかもな。」


「私は仕返ししようと思っていませんわ。ただ、これからは分かりませんけれどね。」


「お~、怖っ!」


「フフフ。」


「ハハハハハ!これから訓練する時、よかったら稽古をつけてくれ。」


 ジャンネが頭を下げる。


「もちろん、こちらこそお願いします。」


 ルシルは闘技場から降りてケイシスとリエスの下に行く。


「ルシル、本戦出場おめでとう!」


「ルシル、おめでとう!」


「ありがとうございます!ケイシス様!」


「ありがとう!リエス!」


「それじゃあ、クラウド様に報告しに城へ戻りましょう。」


「はい!」


 訓練室では既にシルティア達やアトス、ユイアレスまでもが多種多様な魔物のいるゴッドグランシーズ製の檻で訓練を行っていた。アテナ、クラウドで1檻。シルティア、ユリア、ユイアレスで1檻。アトスで1檻。レベルに合わせて3つの檻に分けている。クラウドはルシル達に気付き、残りの魔物はアテナに任せて檻から出た。


「おかえり、ルシルちゃん。聞いたよ!本戦出場おめでとう!」


「ありがとうございます!クラウド様達のおかげですわ!」


「明日からは本戦だね。早速だけど訓練する?」


「はい!頑張ります!」


「クラウド様、私もお願いします。」


「はい、ケイシスさんはアトスさんの檻に入って下さい。」


 クラウドは更にもう一つ檻を作ってゴッドグランシーズの薄い膜をルシルとケイシスに掛けた。檻に入る前にレベルアップの為、それぞれに魔元核石を吸収してもらう。


「ケイシスさん!近付く魔物の処理はアトスさん任せにせず、同時構築した魔法を使って倒すようにして下さい!アトスさんは魔物が増えると大技になりがちです!味方と混戦する場合を想定して使用を減らして下さい!大技でさえ小さく範囲を纏めて!」


「いつの間に、こちらへ!?は!はい!」


「!?はい、でござる!」


 クラウドは檻でアテナと共に魔物へ攻撃しながら、風高速移動して他の檻に入ってはアドバイスをしていく。まるでクラウドが4人いるかの様に皆、感じていた。魔物の数は増やしたり減らしたし、レベルも色々調整していく。誰かが疲れると、クラウドがその檻の魔物を全て狩り、疲れた者をヒーリアルデアエリアで完全回復をさせながら更に魔元核石を吸収して貰う。それを何度も繰り返していく。3時間経った所でその日の訓練を終了した。


「こんな訓練を毎日行っているとはな!?クラウドの周りがどんどん強くなる訳だ。」


「ユイアレス王子様!?」


 ルシルは跪き頭を下げて挨拶をしだす。


--え?ルシルちゃん、ユイアレスに気付いて無かったんだ?


「お初にお目にかかり光栄でございます!私はグラハット・ルシルと申します。」


「ああ、聞いておる。クラウドの婚約者であれば楽にしてくれ。闘技大会の学生部門に出るそうだが期待しておるぞ!」


「ちょっと、ユイアレス!あまり気負わせないでくれ!自分は怪我しない程度に、頑張って欲しいんだから。強くなるのは時間さえあればなれるし。」


「いえ!クラウド様!私、頑張ります!頑張って優勝を目指し学園を卒業したらクラウド様の旅に同行致しますわ!」


 そのルシルの発言にシルティアとユリアも頷く。


「そうですわね!ユリア!私達もギルドの高ランク依頼を沢山達成して、もっと強くなるのです!未開の地にもクラウドに付いて行けるぐらいになりますわ!」


「はい!シルティア様!」


「クラウド、それはそうと未開の地へ行く前に王都で楽しまないのか?今、王都はお祭り騒ぎで様々な催し事もしておるぞ。」


「ん?ああ、ルシルちゃんに明日の本線に向けて今日も徹夜で付き合おうと思って。予定を変更して明日にはエルフの真森へ発とうと思っているから。」


「「「え!?」」」


「そんなに早く発ちますの・・・?」


 シルティアが暗い表情で問い掛ける。ユリアも、本戦で活躍を見て欲しかったルシルも暗い表情を見せる。


「ごめん!本戦はルシルちゃんの活躍を見ようと思ってたんだけど、アテナの両親を早く見つけてあげたいんだ。親御さんも心配していると思うし。そんなに、がっかりしないで皆!出来るだけ早く帰って来るよ!」


「分かりましたわ。早く帰って来てください。」


「はい。」


 ユイアレス達が去ってルシルの訓練を始める。いつもと違うのはルシルの訓練している横で小さな工房を作って剣や鎧、杖、盾などの魔法装備を作っていた。シルティアとユリア、アテナもそれを手伝う。


・・・・そして朝となる。ルシルはレベル21となり本戦を迎える。朝早くクラウドとアテナの見送りに皆が揃う。スフェナも来ていた。スフェナの現在の立場はユイアレスの補助もあり、王国の煌輝紋章石ホルダーであるクラウド付き近衛騎士として正規採用とされている。旅立ちは城の3階にある大きなバルコニーからだ。そのバルコニーには大きな箱が9つ並ぶが、その箱をユイアレスは不思議に思ってクラウドに尋ねる。


「ん?クラウド何だ?この大きな箱は?それぞれに私たちの名前が書いてある様だが・・・?」


 シルティアとユリアが顔を見合わせて笑う。アテナは親指を突き立てる。


「お兄様!又、驚きますわよ!」


「なるほど・・またクラウドが何かやったのか?」


「まぁ、そうだけど。その言い方・・悪いことはしてないよ。皆にプレゼントをね。ルシルちゃんには、もう上げたから。他の皆にもと思って。」


 ケイシスが驚きの表情を見せる。


「まさか!?クラウド様!?」


「ん?何だ!ケイシスは知っておるのか?」


「はい・・・ユイアレス様。見れば分かります。・・・私があんな凄い物を頂いて良いのでしょうか・・・?」


「開けてよいのか?クラウド。」


「どうぞ。」


「ん!?なかなか見事な魔法装備であるな。悪いな、クラウド。こんな良いものを。」


「お兄様?・・その様子では、まだ分かっておりませんわね。お兄様は鑑定も出来た筈です。鑑定して頂けますか?」


「・・・・!!?国宝装備だと!?何処からこんな物を!!?」


「作ったんだ、ユイアレス。」


「こっ!!国宝装備を作っただと!!?」


「ああ。」


「・・・・・・まったく・・・この事は他の者には内緒にしておるだろうな!」


「ん?ああ。ビッゴスさんからも、口止めされたし他の人には言ってない。」


「クラウド一人いれば世界征服も簡単そうだな。クラウドに征服欲が無かったのが救いだ。それにしても・・これだけの国宝装備を作れるのであれば他の聖鎧等、探す必要があるのか?」


「う~ん、聖剣と言ってもレリティアルソードと違って、素材が追いついていないのか?威力や発揮できる効果が劣るんだ。それを考えるとシャアラ様の言う様に探す方がいいのかもしれない。まぁ、よっぽど良い素材が手に入ったらそれで作ってみるけれど。」


「そうなのか?それでは仕方ないな・・くれぐれも気を付けてな!」


「ああ、ユイアレスも魔族には十分気をつけて!」


「ああ。・・そうだ!!クラウドに言うのを忘れておった!クラウドのおかげで、グラディアル帝国から感謝の意と同盟の申し込みが来たぞ!」


「そうなんだ、受けるの?」


「もちろんだ!同盟を結び世界平和に繋がれば良いと思っておる。あと、現皇帝ローラフィナ殿よりクラウドに客分勇者の位を与えてよいか?と言って来た。クラウドとヴェルタス王国の了承を得たいそうだ。」


「客分勇者?どういう事?」


「勇者の地位を与えたいがヴェルタス王国に所属している為に難しい。客分としての勇者であれば良いか?との感じであろう?我が国にとってもクラウドが友好の懸け橋になって貰えるのは願ってもない事であり、クラウドさえ良ければ了承したいと思っておる。」


「自分が勇者として相応しいのか分からないけど、平和の役に立つなら自分も問題ないよ。」


「そうか・・あとクラウド。」


「ん?」


「私は諦めていませんとお伝え下さい。とは、どういう意味だ?ローラフィナ殿がそこだけは、自身の言葉で連絡が来たのだが?」


--え!?まだ言ってるの!?まっ・・いずれ忘れてくれるか。


「え~と、リドバドル王国と再度、同盟を結ぶのを諦めていないという事じゃないかな・・?たぶん、そうだよ。」


「・・なるほどな。また、酒を一緒に飲んだ時に聞くとしよう。」


--ギクッ!何か感づかれた!?ユイアレスも意外と勘が鋭いんだよな・・・・・。


 シルティア、ユリアが皆から見えない様に手で隠しながら見送りのキスをする。クラウドが他の者とキスをしている姿を見せられルシルは胸が張り裂けそうなぐらい、心を締め付けられた。


「あ・・・・。」


「ルシル、あなたも見送りしなさい。」


 シルティアがルシルを呼ぶ。


「え・・・・あ・・・う・・。」


 ルシルにとってはファーストキスである。ルシルは顔を赤らめて狼狽えてしまう。その姿を見たシルティアが皆に伝える。


「皆さん、申し訳ありませんが後ろへ向いて頂けますかしら?」


 全員、気遣い微笑しながら後ろへ向いた。


「ルシルちゃん、それじゃあ行ってくるよ。」


「ルシルとお呼びください、クラウド様。」


「分かった。行って来ます、ルシル。」


 ルシルはクラウドに飛びついて抱き着いた。


「はい、クラウド様。お気を付けて。」


 ルシルは抱き着きながら、自身の斜め上にあるクラウドの顔に向け静かに目を閉じる。少し震えながらクラウドの口づけを待った。


--う~ん、ルシルちゃん若いし本当にキスして良いのだろうか?でも、この流れでしないとルシルちゃんを傷つけそうだし。胸もシルティア達程じゃないけど柔らかい感触が伝わって来て・・・。駄目だ、早くキスして離れないと!


「チュッ。」


「ん・・・。」


 クラウドは優しく、柔らかなルシルの唇にそっと口付けをして少し離れる。ルシルは微笑みながらクラウドを見つめた。今はルシルよりもクラウドの方が顔を赤くして照れている。


「それじゃあね!みんな!もう振り向いていいよ!アテナ行こうか!」


 全員、クラウドへ振り向く。クラウドは飛びついて来たアテナをキャッチして、アテナ用に作った国宝装備をリングボックスへ収納すると空に飛び立っていく!一瞬で見えなくなってしまうがシルティア、ユリア、ルシルはクラウド達の消えた方角を暫く眺め、無事に早く戻る事を祈った。


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