第23話 エリキシの塔
ユイアレスとユリア、アテナは12会議室から兵士達に追い立てられ、窓から脱出して広い庭を通り、城から出て行こうとした所をアグスト軍総司令率いる約1,000人の兵士に囲まれてしまう。アグストは少し前にマストリア王子の威光で軍総司令官となっていた。
「仕方ない!兵士達を倒して囲みを抜けるとしよう!二人とも!強いとは聞いておるが無理はするな!何かあればクラウドに顔向けできぬ!」
「はい!かしこまりました!」
「・・・余裕。」
仕方なく自国の国民である兵士達を倒す覚悟を決めたユイアレスの下にシャアラとグラヌスが現れる!シャアラが声を上げると兵士達はアグストへの通る道を作りだす。
「これは何の騒ぎじゃ!!」
アグストが答える。
「これはこれはシャアラ様!グラヌス様!今、国家転覆を狙うユイアレス王子を捕まえるところです!邪魔しないで頂こう!!」
「ふははははは!ユイアレスが国家転覆じゃと!!ありえぬな!いい加減にせぬと私が相手になるぞ!ユイアレスは、仕方なく従っているだけの兵士を痛めつける事は懸念したであろうが私は違う!!煌輝紋章石ホルダーに逆らう愚か者どもよ!!ことごとく、あの世に送ってやろうぞ!!」
シャアラから殺気と共に強烈な魔力波が発せられる!グラヌスは誰が見ても分かる強力なスキルを使いオーラを纏う。兵士達は無理やり従わされていた上に、向かえば必ず殺されてしまうのを確信して一ミリたりとも動けなくなってしまう。
「シャアラ様!グラヌス様!罪人を庇われると言うなら同罪であるぞ!」
「ほう!!王国で定めた法律には煌輝紋章石ホルダーがいかな行動をしても罪に問われる事はないと定めておるのを知らぬとはな!お主は本当にヴェルタス王国の国民か?ちなみにユイアレス王子も煌輝紋章石ホルダーであるぞ!!頭の悪い奴じゃ!」
「ぐぐぐ!皆の者!やってしまえ!!」
兵士達は動かない。今までの状況もおかしいと思っていたが軍兵士達はユイアレス王子を尊敬し慕っている者が多く、このどうしようもない状況を打破して貰える切っ掛けを作ったシャアラとグラヌスに感謝しているぐらいであった。
「私は軍総司令官であるぞ!私に逆らうのか!?お前たちの家族がどうなっても知らぬぞ!!」
「馬鹿者めが!!脅しで人を従えようとするなど!愚者の典型的な奴じゃな!!」
「黙れ!!煌輝紋章石ホルダーがなんだと言うのだ!私の強さを思い知れ!勝つのは私だ!!魔剣レウェジャスよ!我が敵を焼き払え!てりゃ~~~~~!!」
アグストは魔剣レウェジャスを振り上げ刀身に炎を纏ってシャアラに走り込み一気に振り降ろす!魔剣レウェジャスは人間であれば一斬りで3人を焼き切れるほどの威力がある。シャアラは動かず直径30cmの魔法陣を一瞬で構築し、その魔法陣の中心に左手を入れた。アグストの振り降ろした剣を魔法陣を装備した左手の2本指で刀身を挟んで止める!魔剣はシャアラの触れた場所からカリカリカリカリ!と凍り付いて、最後にパリン!と砕け散った。
「安物じゃな。」
「おのれ!私の魔剣をよくも!」
「魔剣だけで済むと思ったら、大間違いじゃぞ。」
シャアラの左手に纏っていた魔法陣はいつの間にかアグストの足元に移動して巨大化していた。アグストの足から凍り付いて行く。
「こんな氷など、魔法で!!・・・何故だ!?とけぬ!」
「そんな魔力も込められていない魔法で、私の魔法が溶ける筈ないじゃろう!」
アグストは足元の氷に向けてファイヤーアローを放つが全く溶けず、どんどん氷が身体を上ってくる。その時、城の広大な庭へ次々と兵士が現れ5000人以上となり、その数は増え続けていた!
「くはははは!!形成逆転だな!私は軍総司令官アグスト!!命令だ!!この者達を殺せ!!」
兵士達の間からケイシス、アトス、スフェナが出て来る。兵士達の中には解雇された多くの隊長達が居た。隊長達はユイアレス王子が犯人でない証拠もありユイアレス王子に危機が迫っている事を知り、元部下たちを呼び集めユイアレス王子を助けに集まっていた。ケイシスが叫ぶ。
「ユイアレス様!!軍の指揮は取り戻しました!!」
ユイアレスとシャアラ達に向かって全ての兵が跪く。アグストは既に氷像と化している。ユイアレスは兵士達に声を上げる。
「皆の者よ!!この通り真犯人の仲間は氷漬けだ!王族の争いに皆を巻き込んでしまい済まなかった!!」
ユイアレスの謝罪に対して兵士達は次期王がユイアレスである事を証明する様に称えだす。
・・・・・・・・「「「「「ユイアレス王子様!!バンザ~イ!!!」」」」」・・・・・・・
「これで一件落着かの?・・・・ん!?そうもいかぬのか?」
クラウドが血相を変えてユイアレスの傍に降りて来る。
「ユイアレス!!大変だ!マストリア王子にシルティアがさらわれた!!地下にある転送装置から何処かに行ったみたいなんだけど、何処に行ったか分からないか!?」
「いや、地下にその様な物があるとは聞いていない!」
シャアラが答える。
「クラウドよ、そこに案内せい!」
「はい!!」
・・・クラウド達が転送した部屋に行くとシャアラが転送魔法陣の1㍍上の空中に別の魔法陣を作りだす。そして、それを重ねて行く。何か手助け出来ないかとクラウドは真眼で確認していた。
--あの魔法陣で、転送先を調べるのか。なるほど、魔法陣を動かしたりも出来ると。色々応用出来そうだな。
「分かったぞぃ、転送先はエリキシの塔じゃ!」
「それは何処にあるのですか?」
「王都から南南西に向かったバルゴ魔帝国との国境付近じゃな。」
「それじゃあ、今すぐにそこへ向かいます!」
「待つんじゃ!向こうの転送装置は壊されておるが、何とかこちらの転送魔法陣から直せそうじゃ!」
「どのくらいで、直るのでしょうか!?」
「分からぬ!・・がお主が飛んで行くよりは早く直せる筈じゃ。」
クラウドは焦りを隠せず、どうすれば一刻も早くシルティアを助けられるか考えていた。
「では、お願いします!」
シャアラは転送魔法陣へ次々と魔力の込められた魔法陣を送り込んでいく。クラウドは真眼で確認すると手伝いを申し出る。
「シャアラ様!手伝って宜しいでしょうか?」
「出来るのか!?」
「はい。」
「驚きじゃな、かなり高度な術なのじゃが。それでは反対側から頼むぞぃ!」
「分かりました。」
クラウドは魔法陣をシャアラと挟む様に立つと両手を前に出し、小さな魔法陣を放っていく。
--くっ、もっと速く!
クラウドは魔法陣をシャアラの倍、3倍と増やしていく。最終的にわずか3分弱で修復は完了した。
「まったく・・凄い奴じゃ。シルティアを頼んだぞぃ!」
--やはり私の娘シェリアルが小さい頃から言っておったのはクラウドじゃったか・・・。
「はい!」
「クラウド、私も連れて行ってくれ!マストリアに自首するよう勧めたいのだ!!」
「・・分かった。」
「私もお願いします!」
「ユリアは駄目だ!どんな罠を仕掛けられているか分からない!アテナとここで待っていて欲しい。」
「分かりました・・。」
「ユイアレス行くよ!」
「ああ、頼む!」
クラウドとユイアレスは魔法陣の中心に立つ。クラウドが転送魔法陣の3か所に魔力を込めた小さな魔法陣を放つと転送魔法陣がその魔法陣を吸収して発光しだす。そのままクラウド達は消えて行った。
「やれやれ、転送魔法陣を完璧以上に使いこなしとる。魔力とて本来なら人を一人運ぶのに1年は魔力供給を要するというのに・・・。」
・・・エリキシの塔では・・・
「ん・・・んん?ここは?ここは何処ですの?・・・!?」
シルティアはエリキシの塔の37階にある鉄格子の中に入れられ手と足には錠を嵌められていた。マストリア王子はその鉄格子の外で椅子に座り、愛おしそうにシルティアを眺めている。
「お兄様!!これは一体どういう事ですの!?こんなもの!!」
シルティアは高レベルの身体能力で鎖を引き千切ろうとするが鎖に魔法が掛けられていて切れない。魔法を使い脱出しようとするが、それも錠から魔力を奪われ無効化されてしまう。
「無駄だよ。その鉄格子は特別製でね。誰にも破れない。」
「何故こんな事をしますの!?」
「それは、王国一の美女である可愛い妹と、ここで結婚して一緒に暮らす為だよ。」
「何を訳の分からない事を言ってますの?半分は血が繋がってますのよ!それに私には既にクラウドという婚約者がいますわ!」
「ふん!あんなもの!私と一緒に暮らすようになれば、私の方が良かったと思うようになる!」
「私がクラウド以外の者を愛する事は絶!対!にありませんわ!!それに直ぐに助けに来てくれます!」
「くくく・・・ここを何処だと思っておる。使われなくなったエリキシの塔だぞ!こちらの転送魔法陣は既に壊してある。誰も気づかぬよ。気付いた所で塔には罠を張り巡らしている。誰にも私達の邪魔は出来ぬのだ!」
その時、侵入者有りの魔法警報がなる!ビィ~~~~~~~!!
「な、何だ!?」
マストリアが部屋の隅にある壁の魔法陣に手を当てると空中にクラウドとユイアレスの姿が映りだされる。
「馬鹿な!!転送魔法陣は壊した筈!それに魔法陣を使う魔力も私達が使って無くなっていたのに・・・?」
「フフフ、クラウドに常識は通用しませんわよ!直ぐに、こちらへ来ます!マストリア兄様・・いえ!!マストリア!観念なさい!」
「黙れ!!あいつらを始末した後、お前の調教が必要だな!」
「罠などクラウドとユイアレスお兄様に掛かれば全く問題ありません!」
「まぁ、そこであいつらが死ぬ所をゆっくりと見るがいい!」
--クラウド、ユイアレスお兄様。気を付けて・・。
クラウド達が1階の魔法陣から移動して2階へ駆け上がる。その部屋には壁の4隅に大きな魔法陣が描かれた箱が置いてあった。クラウド達が2階へ上がると箱が開いていく。中から出て来たのはホワイトスライムキング、イエロースライムキング、ブルースライムキング、レッドスライムキングが勢いよく出て来る!
「シルティア!見るのだ!一匹でも出現すると多くの兵士達で倒す必要があるスライムキングどもだ!それが4匹であるぞ!」
「その程度ですの?クラウドには虫みたいなものですわね。」
ユイアレスは戦おうとブルースライムキングに近付き、スキルで剣に雷を纏う。雷気剣というスキルで斬った獲物を感電させ焼く効果もある。
「嫌らしい魔物を!クラウド!悪いが3匹は任せてよいか!?」
「いや、全部引き受けるよ!」
クラウドは右手を出して手の平からゴッドグランシーズの針を出し急所核に差し込んだ!全てのスライムキングが弾けて溶けて行く。そして魔元核石を全てリングボックスに納めた。
「クラウド!?どうやって一撃で?」
「急所が見えるから、そこを刺したんだ。」
「急所?私には急所らしきものは何も見えなかったが・・。」
「え!?そうなんだ?」
--普通は見えないのか?
「凄まじい強さだな。」
一方シルティアとマストリアは・・・。
「馬鹿な!!スライムキング4匹を一撃で倒すだと!?」
「だから、言ったでしょう。」
「まだまだ、罠はある!」
クラウド達が3階に上がり4階への階段へ向かおうとすると部屋の中央に来た所で周りの壁に沢山の小窓が開いて1万本近い矢が周囲から放たれていく!
「ははは!串刺しになれ!」
--矢ねぇ、ゴッドグランシーズでも大丈夫だけど矢が壊れると勿体無いし頂こう!いずれ何かに使えるかもしれないし。
クラウドは右手でマントを広げて風高速移動しながら回転し矢を一つ残らず絡めとり、リングボックスに収納した。
--大漁、大漁っと。
「クラウド、私がやる事が無いのだが・・・。」
「後であるかもしれないし、温存という事で。」
「そうか・・・。」
クラウドは次の階段を上がり5階への階段へ向かおうとすると入り口と出口でダン!!という音がして壁が降り閉じ込められる。閉じ込められた後天井から大量の水が降り出した!
「ふはははは!今度こそ終わりだ!その部屋は扉も壁も頑丈なベルスト鋼が組み込まれておる。溺れ死ぬがいい!!」
ユイアレスが膝下まで来た水の中を進み、剣で出口を塞ぐ扉へ斬りつける。カン!!という音がして跳ね返された。
「くっ!私の聖剣セイルテミングを持って来ていれば、こんな壁など!クラウド、何とかなるか!?」
--やりすぎ注意だな。塔を壊さない様に・・ここはドリルか?
「あぁ、やってみるよ。」
クラウドは人より少し大きなドリルを作り出して高速回転させていく。火花を飛び散らせながら穴がどんどん明いていく。
「何!?何だ!あの魔法は!?」
「その程度で驚いていては困りますわね。」
「えぇ~~~い!まだだ!!次こそ息の根を止めてやる!」
クラウド達は出口の穴を出て階段を駆け上がると足元の階段が急に滑り台と化す!階段の下には幾つもの刃が壁から突き出し回転しだす!刃は滑り降りてくる者を待ち構えていた。
「ゴッドグランシーズ!階段の出来上がり!」
クラウドは滑り台となった瞬間に平らになった場所に階段を作り出した。
「何でもありだな、クラウドは。」
「よく言われる。」
・・・一方。
「フフフ、流石クラウドですわ!次の罠は何ですの?」
「次の罠はどんなに強くても無駄だぞ!呪いのシュビデュイ同様に強力な呪いだからな!ハープの音を聞いた瞬間、錯乱して目の前にいる者が魔物に見えてしまう。範囲はシュビデュイより狭いが強力な呪いだ!二人で殺しあって貰おう!!」
「そんな!卑怯ですわ!!・・・クラウド・・・・ユイアレスお兄様。」
--無事でいて下さい・・・。
クラウド達が部屋に入ると広い部屋の中心に禍々しい黒いオーラを出すハープが置かれている。ハープの上部に付いた黒い小さな髑髏の目が怪しく赤く光り、音を奏でる!
ティリン!・・・ティリティリン!・・ティティティラリンテイィィン!キィ~~~~~~~!!
「な、何だ・・・頭が・・ぐぐ・・・・。」
「ユイアレス!大丈夫!?」
クラウドには呪い無効があり、全く効いていない。
「・・・・ぐぐぐ、おのれっ!魔物め!!」
ユイアレスがクラウドを剣で横薙ぎにする。
「おっと!ユイアレス!!どうしたんだ!?・・・あれか?元凶は!?」
クラウドは呪いのハープまで風高速移動してゴッドグランシーズの剣で斬り壊した。それでも、ユイアレスはこちらに向かって襲ってくる。高レベルのユイアレスが振る高速剣を全て避けながら対策を練る。
--弱った・・・こんな時はやっぱり衝撃を与えれば治るのか?いや、エターナルヒールで呪いが解除できるのか試してみよう。
「エターナルヒール!」
ユイアレスは一度動きを止めた後、床に膝をつき頭を振っている。
--やっぱり呪いには効かないのか?・・・それじゃあユイアレス!悪いけど一発拳骨行くよ~!!
「は~~~!」
「おい!クラウド!その拳は何だ!?」
「良かった!正気を取り戻したんだね!」
「ああ、しかしクラウドに殺されそうであったがな・・・。」
「ちゃんと手加減するつもりだったよ!」
「冗談だ、ククク。」
「冗談言ってる場合じゃないだろ!急ぐよ!」
「ああ、済まない。急ごう!」
クラウド達はどんどん階段を駆け上がって次から次へと罠をくぐり抜けて行く。最後の罠をくぐり抜けて後、その部屋の5階上にはシルティアの監禁されている部屋がある。
「馬鹿な!何故奴らは死なぬ!?」
「これであなたも本当にお終いですわね。」
「くっ!こうなれば!」
マストリアは部屋の隅に走り出し机の引き出しから魔法陣の描かれた石板を取り出した。石板に手を置いて唱えだす。
「・・・・・ジャミヂエイ・・・・ラデス・・・・メンドラ!!塔の滅びを!!」
塔の各所に仕掛けられた魔法陣が輝き、各所で爆発が起こる!天井は崩れ階段は崩壊して塔は傾いていく!!
ドーン!!ドドドーン!ドーン!ドン!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
「何だ!?塔が崩れているのか!?」
「く!もうすぐシルティアの居る部屋なのに!!」
クラウド達が昇る階段は崩れ落ちて無くなり、塔はどんどん傾きを増していく。マストリアのいる部屋の監視魔法映像には砂埃のみが映りだされている!シルティアはマストリアに問い掛けた。
「何をしましたの!?」
「・・・塔を破壊した・・これで何もかも全てお終いだ!!・・・あいつらが私を追い詰めたせいだぞ!!くそ!!・・・・・・せめて愛するお前と死のう!シルティアよ!」
「人のせいにしないで下さい!!あなたの行動は、あなたの責任に決まってますわ!それに直ぐにクラウドとユイアレスお兄様が助けに来て下さいます!」
「無駄だ!・・・ここまで来る階段は崩れ去ってもう無い・・・あやつらも、もう生き埋めになっている頃だ。」
「そんな!!・・・・。」
その瞬間、シルティアの閉じ込められている鉄格子傍の壁がドゴォ~~~!!と崩れクラウド達が現れる!
「シルティア!助けに来たよ!!」
「クラウド!お兄様!」
「どうやって!?」
クラウドは上り階段が崩れ落ちた後、塔がどうせ壊れるのであればと壁を破壊して空を飛びシルティアの居る部屋へ突入していた。
クラウドは部屋に入るなりゴッドグランシーズの剣で鉄格子とシルティアの鎖を斬った。鉄格子は剣の魔力を吸い取ろうとしていたが、剣から流れて来る大量の魔力で逆に脆くなり、灰の様に崩れ落ちていく。ユイアレスはマストリアを問い詰める。
「マストリア!何故このような事をしたのだ!」
「分からないのかい、ユイアレス兄さん。私には、あなたが邪魔であった・・・・・。」
「何故だ!小さい頃は、あれ程仲が良かったではないか!一緒に来い!私もお前の罪を一緒に償ってやろう!」
「それだよ!兄さん!いつも半人前を扱うような口調!私も第二後継者だ!兄さんさえ居なければ私が次期王であったのだ!!」
「・・・。それは、済まなかった。だが、仕方ない事であろう。」
「それにだ!!兄さんと父上は、いつも私が提案する軍の強化に反対をする!!我が国の経済は他国より潤っているんだ!!軍隊を強化して他国に攻め入ればヴェルタス王国はもっと大きくなる!!何故!それがいけない!」
「いつも言っておるだろう。お前は分かっておらぬ。軍の強化はよいが戦争をすれば罪なき者も巻き込んでしまうのだ。王の使命とは国と国を繋ぐ者であり、人と人の繋がりを導く者である!それが分からない王では、いずれ民から見放されてしまうであろう。」
「戦争に犠牲はつきものだ!!王に逆らう者など全て死刑にすれば良い!いずれ逆らう者は居なくなる!」
「お前は・・・人を・・・国民を何と思っているのだ!国民は人形では無い!王の為の玩具では無いのだぞ!命を軽く見過ぎだ!!」
塔はどんどん壊れ傾いていく。天井も崩れ、塔内でまっすぐ立つ事も難しくなっている。
「ユイアレス!!そろそろ脱出しないと、出られなくなるぞ!」
「ああ!分かった!マストリア!取り敢えず、こちらに来い!王都でいくらでも聞いてやる!」
「もう遅いよ!兄さん!死刑を免れたとしても王都に戻れば一生監禁の身だろう。父上はこの度の事をお許しにならない筈だからな!監禁はゴメンだ!私は何にも縛られぬ!さらばだ!!シルティア~~~!!」
マストリアは叫びながら、崩れ落ちた穴の明いた床に飛び降りていった。
「マストリア~~!!」
ユイアレスはマストリアを助ける為に穴へ飛び降りようとして、クラウドに手首を持たれ止められる。
「ユイアレス!!ダメだ!もう塔が崩れる!脱出しないと、皆本当に生き埋めになる!!」
「ユイアレスお兄様!」
「・・分かった。」
「二人とも掴まって!!飛ぶよ!!」
「「ああ(ええ)!」」
クラウドはユイアレスとシルティアの腰に手を回して、侵入した時に壊して明けた大きな穴から空にダイブする!!
--くっ!やっぱり3人だと安定しない!
「キャ~~~~!!クラウド!落ちますわ!」
翼をいつもより広げてみるが、フラフラと高度を下げて行く。安定させようと風を増やすと回転しそうになってしまう!!
--これじゃあ、ダメだ!違う方法を!・・・そうだ!
「二人とも!一旦飛行形態を解除する!自分の身体をしっかりと掴んで!!」
「「分かった(分かりましたわ)!」」
クラウドは飛行形態を解除して落ちて行こうと加速する!それを阻止する様に上昇気流の突風を起こしスピードを緩める。
「足場を用意したから、降りるよ!」
クラウドは空中にゴッドグランシーズの足場を固定する。そこへ、ダン!!っと3人とも降りた。まだ地上までは200㍍以上ある。振り向くとエリキシの塔は完全に倒れて、砂煙を上げながら全壊していた。シルティアは高所にいる恐怖でクラウドにしがみついている。
「クラウドよ!ここから、どうするのだ?」
「滑り台と気球、どっちがいい?」
「滑り台は分かるが気球とは何だ?」
--そうか、この世界にはまだ気球が存在しないんだな。
「確か空気を温めると比重が軽くなって浮力を生じるんだよ。それを利用して飛ぶんだ。」
「もしかして、クラウドの世界に存在するものか?」
「そう。この世界にも空気は存在するんだから、上手くいく筈。」
「私はこんな高い所から滑り下りるのは、無理ですわ。」
「じゃあ、決まりだな。」
クラウドは足場を広げて一つの部屋を作る。その上に薄く軽いイメージで気球を作って、その中にある空気を光業炎で温める。足場の空中固定を解除するとフワッと浮き出す!
--ちょっと、火力が強いか?もう少し緩めてと・・・これでいい。あとは、風を操って移動すれば。
クラウド達の乗った気球は優雅に王都に向かいだした。
「上手くいったよ。このまま王都に戻ろう。」
「凄い見晴らしだな!この世界初の空の旅だ!一杯やりながら旅行したい所だったな!」
「じゃあ、王都に着くまで宴会といきますか?」
「ん?可能なのか!?冗談だったのだが。」
「じゃあ、シルティアと飲むからユイアレスはお預けで。」
「おい!!それは無いだろう!」
「冗談だよ。」
「この野郎!」
「フフフ、ユイアレスお兄様。お兄様には大変感謝しております。クラウドを婚約者として下さった事に。」
「そうだな。まさか、ここまで凄い奴とは思っていなかったがな。この度の事もそうだが何よりもシルティアを助けてもらい、本当に感謝している!クラウド!」
「大切な人だからね。」
「クラウドったら!・・!?・・・何ですの?」
シルティアはクラウドにキスをしようとして、クラウドがそれを止める。
「ユイアレスが見てるから。」
「そ、そうでしたわね!ごめんなさい。」
「おいおい!私が居るのを忘れるとは、初めての出会いでは考えられぬ程の惚れ具合だな。」
「いやですわ!お兄様。その通りですけど・・・。」
「そういうユイアレスは婚約者って居るの?」
「ああ、居るぞ。エステナ神聖国の姫が一人と本国に4人おる。2年後に妻に迎え挙式の予定だ。」
「そうなんだ!?じゃあ、その前に魔神の件を片付けないとね。」
「そうだな。安心して挙式も出来ぬからな。」
「お!そろそろ焼けたよ。オグトロスの串焼き。」
「やはり!城西塔に閉じ込められた時の差し入れはオグトロスであったのか!?よく見つけたな!」
「シルティアも同じことを言ってたね。良かったら何頭でもあげるよ。」
「何!?そうか!ラルガデイテの玉か!クラウドは食材も戦闘も無敵だな。」
「無敵って!?戦闘は意味が分かるけど、食材が無敵って何?」
「でも、お兄様の言いたいことは分かりますわね。」
「であろう!まぁ、また食べたくなった時は頼む事としよう。」
「ユイアレスお兄様。話は変わりますけど、もう少しすればヴェルタス王国の総合闘技大会ですわね。この大騒ぎでは中止に致しますの?」
「いや、闘技大会を楽しみにしている者は大勢おる!予定通りに行う。」
「闘技大会?何それ?」
「王国での強者を見極める大会ですわ。そこで優勝した者には賞金の1万デロと優れた職人の作った魔法剣が贈られますの。10位までは賞金もあって、この大会で優秀な成績を収めた者は貴族で無い者でさえ、貴族の紋章を与えられ王国軍のエリートになる事が可能ですわ。」
「更に闘技大会は一般部門と学生部門の2つがあります。学生部門は女性と男性に分かれていますが優勝賞金は500デロで、もう少しで予選選抜をそれぞれの学校で行う筈ですわ。ケイシスとアトスも選抜前にはよく特別講師として学院に招かれていますの。」
「言っておくが煌輝紋章石ホルダーは闘技大会に出られぬぞ。クラウド達が出ると他の者に優勝は不可能であるしな。」
「いや、出るつもりは無いよ。」
--ルシルちゃんも学生だったよな。大会には出るのだろうか?あれからそれ程経ってないし、それは無いか・・・。でも、一応ケイシスさん達にルシルちゃんの補助が出来ないかお願いしてみようかな?リンドルさん達も心配しているだろうし・・・。




