第19話 グラディアル帝国への旅 小さな少女編
クラウドは国境を越えて睡眠時間も少なかったが、睡魔と戦いながらも今までより多く進み大きな川の傍でキャンプをする事にした。
「車を走らせて思ったけどエステナ神聖国って川が多いね。」
「そうですわね。エステナ神聖国には南北に長くそびえ立つエステナ神山脈があるんですの。山頂付近には一年中、雨が多く降るらしいのですけど、そこから派生した聖水を含んだ川が国のあちらこちらに流れて魔物を防いでいる様ですわ。」
「私の聞いた話ではバルゴ魔帝国との国境付近には広い聖水の堀が設備されているとの事です。聖水を放射できる装置が並んでいて魔帝国からの侵攻を防いでいるそうです。」
「それとエステナ神聖国にある聖王様の住むセアスクロスト聖都は水に溢れた都でエイ・デファーリスの中で最も美しい都と言われてますわ。」
「そうなんだ。いつか皆で行ってみたいね。」
「そうですわね。」
「そうですね。」
食事を食べ終わると全員眠たくなってしまった様で、クラウドを筆頭にベッドへ向かい深い眠りに入る。
・・・・・明朝、お風呂に入った後に朝食をとっているとユリアが少し離れた川岸の異変を見つける。
「クラウド様、川岸のあの辺り・・何か光っているように見えるのですが。」
「え・・・本当だ。何だろう?」
クラウドは遠視で確認してみると川の浅い箇所に浸かった少女が俯せに倒れていた。その少女の全身から、柔らかな光が薄く出ている。
「子供が倒れているみたいだ。ちょっと行ってくる。」
「そうなんですの?私達も行きますわ。」
クラウドは急いで近づき少女を抱きかかえる。医療眼で状態を確認すると、全身傷だらけで衰弱が激しい様であった。すぐにエターナルヒールを掛ける。
「君、大丈夫かい?」
少女が目を開けると身体の発光は消えて、ボーッとクラウドを見つめたまま動かない。少女は7歳ぐらいの容姿をしており、髪は紅い髪を肩まで伸ばしている。容姿は7歳であるがどこか大人びた雰囲気のある、綺麗な少女であった。
「あなた、どこかで会った・・・?」
「いやっ、多分初めて会った筈だけど・・・どうして?」
「・・・なんとなく。」
--川に流された時に頭でも打ったのか?
「何か憶えてることある?」
「分からない・・・。」
--困った・・・。そうだ!鑑定!・・・えっ!?
名前 ???
年齢 ???
種族 人族?
LV 17
HP 720
MP 1730
STR 211
DEF 142
DEX 312
MAG 420
MR 371
LUCK 82
--何!?レベルと見た目の年齢に合わない、この高いステータス?尋常じゃない魔力量・・・STRとDEF以外は確実にレベル100以上のステータスだよ。スキルも魔法も???。人族?って・・・人じゃないのか?
「クラウド、どうしますの?」
「う~ん、この国では親が居なくて困っている子供がいたとして国が保護してくれるのかな?」
「所属国が不明な場合は保護施設には中々入れて貰えず、一年過ぎても親が引き取るか養子にしたいものが現れない場合は残念ながら奴隷商人に引き渡されます・・・。」
「そんな!あの・・・君、良かったら付いて来るかい?」
「・・・行く。」
「連れて行きますの!?危険な旅ですわよ!」
「ゴメン・・・自分にはこの子を放っておく事は出来そうにない。」
「クラウド様らしいですね。それでは私もフォロー致します。」
「そうでしたわね。優しいクラウドなら当然でした。では、無事に旅を終えてヴェルタス王国に連れて帰りましょう。」
「じゃあ、取り敢えず記憶が戻るまでの名前が必要だね。」
少女はクラウドを指差す。
「付けて・・・。」
「えっ?自分が付けるの?」
--女の子の名前かぁ。弱ったなぁ・・・母さんの名前は彩音・・・この国はエステナ神聖国・・・アヤネ・・・エステナ・・・ん~・・・アテナ!
「アテナとか、どうかな!」
少女はニコッと笑い頷いた。
「じゃあ、決まり。そろそろ出発しようか。」
「「ええ(はい)。」」
アテナも頷く。クラウドが車を走らせると猛スピードで走っているのだがアテナは車から顔を出して景色を楽しみ微笑んでいる。
「アテナ、あんまり車から身体を出したら危ないよ。」
「・・・はい。」
「それにしても赤い髪の民なんて聞いた事がありませんわ。」
「そうなんですか?」
「ええ、少なくとも北の未開の地は別としてですわ。」
「エルフの真森から更に北には広大な土地が広がっていますの。その大地には5大竜族やその他の竜族の縄張りが沢山あるそうですわ。迂闊に近寄ると生きて帰れません。ただ、シャアラ様とグラヌス様は、たまに修行と称して出掛けているみたいですけど。」
ユリアが驚愕している。
「そうなんですか!?いくらシャアラ様達でも危険なのでは?」
「そうですわね。遺跡の魔物達も竜の餌となる以外死ぬ事が少ないので、こちらの魔物よりもレベルが段違いらしいのですけど、それが修行に丁度良いと、仰ってましたわ。」
「そうなんだ。」
「流石、賢者シャアラ様と真魔剣士グラヌス様ですね。」
「まぁ、クラウドはグラヌス様に勝っているのですから、いずれ竜でも相手に修行しそうですわね。」
「フフフ、まさか。シルティア様・・いや・・でもありえそうで怖いです。」
--竜と修行か。悪い竜がいたら倒して魔元核石を吸収してみようかな。
「クラウド・・・その顔まさか本当に竜を相手にしようと思ってるのでは?」
「えっ?ダメ?悪い竜なら倒してもいいかと、思ってたんだけど。」
「ダメに決まってますわ!私は冗談で申し上げたの。竜を相手に修行なんて、どんなに強くても危険ですわ!」
--ん~、紅龍族の長に会ったけど。そんなに強いと思わなかったんだけどな。憑りつかれていたから弱かったのか?
「気を付ける様にします。」
「まったく・・・。」
「クラウドなら、どの竜にも勝てる・・・。」
アテナが呟く。
「ん?アテナなんか言った?」
「・・・分からない。」
「・・・そう。でも未開の地に住んでいる人達がいるかも知れない訳だよね。」
「可能性としては少ないですけれど、未開ですから0ではありませんわ。」
--なるほど、アテナの両親が心配してるだろうから、この件が落ち着いたら修行がてら向かって探してみるか。
クラウドは車で走り続け休憩と昼食をとる為、車を止める。
「そろそろ、お昼にしましょうか?」
「今日は何をメインにしますの?」
「アテナは何が食べたい?」
「・・・おいしい物。」
--ん~、美味しい物か。範囲が広すぎるな。あ!あれ、焼いてみようかな。多分美味しいと思うんだけど。
「じゃあ、今日はオグトロスの焼肉にしようか?」
「クラウド!?オグトロスを見つけましたの!?滅多に居ない魔物ですわよ!!」
「え?知ってるの?」
「本当に凄く美味しくて希少なお肉なので市場でも中々見れないそうです。1kg確か・・7デロはする筈ですけど。」
--そんなにするんだ!?こっちの世界に来て2番目に会った魔物なんだよな。美味しそうだったから、ラルガイテの玉で生み出して沢山狩ってみたんだけど。
「見つけたというか、ぶつかって来たというか・・・。」
クラウドがオグトロスをそれ専用のテーブルに一頭出す。
「大きいですね!」
「本当ですわ!」
--確かに。全部は食べれないだろうから、少しだけ切ろう。自分と女性二人と子供一人・・・1.5kgぐらいでいいかな。
クラウドは食べれる部位か鑑定しながら、食欲が失せない様に皆から見えない様に壁を作って肉を切り取り、残りの肉は収納した。
--1匹から1トンは肉が取れそうだな・・・少し狩り過ぎたかも。
バーベキュー用のテーブルを作って一口サイズに切った肉を串に刺して焼いていく。火はテーブルの下側に光業炎を入れ、細かい穴から上に極小の火が出る様にしてある。
「いい匂いですわ。」
「おっ、焼けて来たみたいだね。まずは、はいアテナ。」
「ありがとう・・・美味しい。」
3人に行き渡ると、クラウドも肉にかぶりついた。
「美味しい~~!!凄く柔らかいし肉汁もたっぷり!脂も上品で甘いし、肉の味がしっかりしていて流石、高級肉だね。」
--今度ログログ料理店のベンジルさんにお裾分けしてあげよう。ついでに料理もして貰って・・・。光業炎で焼いたとはいえ、焼くだけでこんなに美味しいのならベンジルさんの料理なら・・・。んん~~!想像しただけでお腹が空く!
「本当に美味しいです!私もオグトロスを食べたのは初めてです。」
「シルティアは食べた事はあるの?」
「私も今までで10回ぐらいですわ」
「王族でそれなら本当に希少なんだね。」
--お土産じゃないけど戻ったらユイアレスに何頭かあげよう。
「足りない・・・。」
「えっ、もう食べたの?余程、お腹が空いてたんだね。一杯あるから遠慮しないで食べて。」
クラウドは再度、多めに肉を切って焼いていく。
「はい、焼けたよ。」
皆、食べ終わって満足している横でアテナはどんどん食べる。1kg焼いたはずの焼肉があっという間になくなる。
「・・・足りない。」
「「「!?」」」
「え!まだ食べれるの!?お腹壊さない?」
「・・・全然、足りない。」
--確かにお腹が膨れた感じが無いけど、こんな小さな身体のどこに入ってるんだろう?よし、思い切って20kg焼くか。残ったらそのままリングボックスに収納して今度食べればいいし。
「クラウド、いくら何でも焼き過ぎですわ!」
「・・・食べれる・・・美味しい。」
「食べれるって・・・。」
「食べれるんですの!?」
アテナは休みなく、凄い速さで食べ進めていく。不思議とアテナのお腹は全く膨らむ様子が無い。
「みたいですね・・・。」
--これは、まだまだ食べそうだな・・。
クラウドはどんどん追加して焼いていく。自身の体重の何倍をも超える200kgを食べ終わりアテナは満足?したようだ。
「・・・太ると困るから腹5分目。」
「・・・・そう。」
--この子の胃はブラックホールです・・・。オグトロス、今度もう少し狩っておこうかな・・・。
昼食を食べ終わり車を走らせていく。何事も起きず順調に6時間ほど進みキャンプをする事にした。クラウドは家を建ててキッチンをいつも通りに作り、訓練に出掛けようとするとアテナが付いて来ようとする。
「一緒に行きたいの?」
「・・・行く。」
--ゴッドグランシーズの檻の外に居て貰えば安全か。
「それじゃあ、行こうか。」
アテナが頷く。クラウドは少し離れた場所にゴッドグランシーズの檻を作って魔物を大量に生み出す。
「訓練するから、ちょっと外で待っててくれる?」
「・・・入る。」
「えっ?ダメダメ!危ないから!」
「多分・・・大丈夫。」
--う~ん、どうしようかな?でも、あの高いステータスだし自分の勘でも大丈夫な気はしてるけど。まぁ、ゴッドグランシーズの防御結界があれば問題ないか。
「分かった。でも、念の為に闘える装備を着けて。アテナは魔法か剣は使える?」
「・・・分からない・・・けど多分、両方大丈夫。」
「そう、じゃあこのベアリの杖とミストリアローブを着けて。」
--これしか、アテナに合いそうなサイズが無いしな。
「・・・分かった。」
アテナはその場で脱ぎだす。
「・・・エッチ。」
「あぁ、ゴメン!後ろを向いておくね。」
--こんな小さな子でも、もう恥じらいがあるんだ。気をつけてあげないとな。
「・・・着替えた。」
クラウドが振り向く。
「ちょっと大きいけど、うん!似合ってるよ!」
「・・・ありがとう。」
アテナは嬉しそうに微笑んでいる。
「それじゃあ、魔物を減らすから少し待っててくれる?あと、檻に入ったら魔物に近付き過ぎないように気を付けてね。」
「・・・大丈夫。」
--本当に分かったのかなぁ。
クラウドは檻の扉を開けて中に入るとアテナも、いつの間にか付いて入っていた。
「えっ!?アテナ!?」
魔物が次々と襲い掛かってくる。
「・・ファイヤーウォール!」
「・・・ファイヤーベアリ!」
「・・・・スタンエナスト!!」
「・・・油断禁物。」
付いて入って来たアテナの方を振り向くと次々と凄まじい速さで魔法陣を同時構築してクラウドに襲い掛かろうとした魔物を倒していく。
--凄い!何!?その詠唱速度?殆ど無詠唱だし、違う種類の魔法を同時構築って・・・。フォローの必要全くないみたいだね・・・。それじゃあ、自分の訓練でもするか。ついでにアテナの魔法も覚えておこう。
--クラウドはアテナに近付こうとする魔物を訓練の為に、風高速移動無しの普通の鉄剣で倒し続け、アテナと共に大量の魔物を倒し終えた。
「アテナって、強いんだね・・・。」
「思い出すには・・・足りない・・。」
「え?ああ!もしかして戦って行けば何か思いだせそう?」
「そう・・・魔法も少し思いだせた・・・。」
「じゃあ、もう少し闘ってみる?」
アテナが無言で頷く。
--この分なら魔物をもっと生み出しても大丈夫そうだな。でも魔元核エネルギーを大量に吸収しているのにアテナは平気そうだな?医療眼で診ても全く問題ないし。レベルも47まで上がってるみたいだ。自分と同じ特異体質?・・・あれ?でもステータスが殆ど上がってない・・・?
クラウドは先程の2倍の魔物を生み出す。
「アテナ!行くよ!」
「・・・任して。」
クラウド達が檻の魔物を倒し終えたところで、シルティア達が料理を作り終わり迎えに来た。
「クラウド、料理できましたわよ。・・って、なんでアテナまで檻に入ってますの!?」
「あぁ、シルティア。自分もさっき知ったんだけど、アテナって凄い強いんだよ!」
「強いと言ってもクラウドの訓練に付き合うなんて無茶ですわよ。」
「・・・大丈夫。」
--う~ん、目の前で見ないと、こんな小さなアテナが強いなんて信じられるわけが無いか。でも、良かったかも。シルティアは負けず嫌いだから対抗心燃やして無理されても困るし・・・内緒にしておくか。
「魔物のレベルを落とした上に、自分がフォローしているので大丈夫です。それに闘うと何か思いだせる切っ掛けに、なっているみたいなんです。」
「そうですの。」
「そういう事でキャンプにしましょう。食べ終えた後はシルティアとユリアの特訓という事で。」
「そうですわね。」
「はい。」
二人が振り向いた所でクラウドはアテナに耳打ちをする。
「悪いけどアテナが強い事は、今のところ二人には内緒にしてくれる?」
「・・・了解。」
シルティアが振り向く。
「何か言いました?」
「いや、何でもないよ。肩車してあげようか?って言ってたんだ。断られたけどね。」
「断っている様には見えませんわよ。」
横を向くとアテナがクラウドに向けて両手を上げている。
「えっ?あぁ、それじゃあ。・・・よっと。行くよ~!」
アテナを肩車してクラウドは走っていく。
「・・・楽しい。もっと、速く・・・。」
「えっ、怖くない?」
「・・・全然。」
「よ~し、行くよ~!」
クラウドは風高速移動でジグザグに移動しながら、キャンプ場に戻っていく。
「・・・フ・・フフ・・・キャハハハハハハハハ~~!!」
「待ってください!クラウド。速過ぎて追いつけませんわ~!・・でも楽しそうですわね。」
「では、シルティア様もどうですか?」
「遠慮しますわ・・・。」
「フフフフ、でも本当に楽しそうですね。まるで親子みたいです。」
「そうですわね、いつか私達もクラウドの子供を産んで幸せな家庭を築きましょう。」
「はい、私はクラウド様の子供を沢山産みます。」
「私も沢山産みますわ。」
「楽しみですね。」
「楽しみですわ。」
クラウドは戻るとシルティア達が戻る前にオグトロス150kgとダウゴウラ10匹を蒸し焼きにしておいた。二人が戻って来ると皆で談笑しながら、美味しい料理を食べていく。すると、ユイアレスから煌輝紋章石を通して連絡が入る。
「クラウド、順調に進んでおるか?」
「今の所、順調だよ。それより、お願いしてたスフェナさんの補助とピラスフィアの行方はどう?」
「あぁ、スフェナは怪我をしていた様だが派遣した軍が無事保護したみたいだぞ。ピラスフィアも倒せたと言っていたそうだ。怪我が治れば、クラウドに仕えると言っておるみたいだな。クラウド!夫人を増やすのは、ほどほどにしろよ。」
「ちょっと!そんなんじゃ無いって!シルティアからも何か言ってやってよ!!まったく・・・。」
「お兄様!今のは駄目ですわよ!私達・・・この件で凄く辛い思いをしましたのに。」
「そうか・・・何も分からぬまま発言してしまい済まない。冗談のつもりだったのだが・・。詫びと言っては何だがスフェナにはクラウドが戻るまで王都で養生して貰う事にする・・本当に済まぬな。」
「いや、ユイアレスに悪気が無いのは分かってたのに自分も怒ってゴメン。ただ王都に戻ったら愚痴に付き合ってもらうよ。」
「そうだな、では私もクラウドに話す愚痴を用意しておこう。」
「用意ってなんだよそれ!ハハハハハ・・・!」
「「ハハハハハ・・・!!」」
--でも、良かった。スフェナさんが無事で・・・ベアンさんありがとう。
何故だか分からないがクラウドにはベアンがスフェナを救ってくれた様な気がしていた。ユイアレスとの会話を終了して、シルティア達のその日の訓練も終える。
その後クラウドは1人でお風呂に入った。他の皆はクラウドがアテナを気遣って作った別のお風呂に入っている。
クラウドは先に出て3人とは別のベッドで寝ていたのだが、眠りに落ちかけた時に扉をノックする音が聞こえて来た。コンコン!
「クラウド・・・もう寝ましたの。」
シルティア達がアテナを寝かしつけた後に、クラウドの部屋を訪ねたようだ。
「いや・・・まだ起きてるけど。」
ガチャっと音を立てて二人が入ってくると、そこにはシルティアとユリアがビキニの水着の面積しかない色っぽいコスチュームで犬系と猫系獣人族に扮装していた。頭には犬耳と猫耳のカチューシャを着けている。
「クラウドどうですか?少し恥ずかしいのですけど・・・ワン・・。」
「クラウド様・・可愛がって欲しいです・・・ニャン・・。」
シルティアもユリアも顔を照れて真っ赤にしている。
--かわいい!!でもこんな服どこで手に入れたんだ?・・・突入!
クラウドが二人に近付いて行く途中で、ガチャっと音がして扉が開かれる。
「アッ、アテナ!」
--退却!!
「アテナ、どうしましたの?寝れませんの?」
「寝れる・・・けど・・楽しそう・・・混ざる・・。」
「ダメ!ダメ!今日は皆もう寝るから、お休み!」
クラウドはシルティアとユリア、そしてアテナを部屋の外へ押していく。
「ちょっと、クラウド。折角着替えましたのに・・・。」
「シルティア様、今日は仕方ありませんね。」
「ふ~・・・アテナ!明日は絶対早く寝て貰いますわよ~~!」
「皆、おやすみ・・。」
・・・次の日の朝、起きるとアテナに異変が起きていた。
「クラウド!起きてください!アテナを見て!」
「う、う~ん・・・おはよう。どうかした?」
「アテナが成長してますの!?」
「成長ぐらい誰でもするんじゃ・・・え!?」
クラウドが目を擦りながら起きるとシルティアの横にアテナが居た。どう見ても前の日より5cmは身長が伸びていた。胸もペッタンコであったのが少し膨らんでいる。身長は現在120cmである。
「う~ん?いっぱい食べたから・・・育ったね・・・。」
「クラウド・・寝ぼけてますわね。そんな訳ありませんわ。この子は一体・・・。」
アテナは手でVサインを出している。ユリアはその横で不思議そうにアテナを見ている。
「う~ん・・・まぁ、考えても分かりそうに無いので考えるのは止しましょう。いつか分かりますよ、きっと。それより朝食にしましょうか。」
「そうですわね。」
「そうですね。」
いつも通りアテナは大量に朝食をとり、旅を進めていく。道中、道路から逸れて溝に嵌まり動けなくなった旅人の馬車を助けたり、魔物に襲われている人を救助しながらグラディアル帝国へ近付いて行く・・・。