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LUCK   う~ん・・・勇者?  作者: ススキノ ミツキ
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第18話 グラディアル帝国への旅 スフェナ後編

 スフェナは4つ目の魔元核石を吸収する。全身の血管が浮き上がり、至る所で破裂していく。破裂してはヒーリアルデアエリアの魔法で一瞬で治される。全身の骨という骨は軋み、骨折しては治るのを繰り返していく。神経は直接握られ引き千切られているかの様に感じる。しかし、痛みが気絶を許さない。


「負け・・・ない・・ぐぐぐ・・ぐぁ!!絶対・・・・吸収しきってやる!うぐ・・ぐぐわぁ!!・・・・ぐぶぶうぶ・・・ぐぼ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


--ベアン・・・見て・・て・・・くれ!!


・・・・・時が過ぎていく。スフェナはレベル47に上がり全てのエネルギーを吸収し終わる。スフェナがヒーリアルデアエリアから出ると魔法は消えてしまった。クラウドが残した剣を腰に差し、玉をポケットに入れる。村の厩舎に繋がれていた馬に跨ってテラクの村へ、まだ夜にも拘らず松明を片手に走らせて行く。


・・・・夜通し馬を走らせると、朝日が昇りだした。


--村はもう少しの筈だ!絶対、ピラスフィアを許さない!!


 そして午前8時半頃にテラクの村に辿り着く。その少し前に43人の家長である村人達は、村長の家の横にある集会場に集められていた。


「村長!どうするよ!飲み水もねぇんじゃ、生きてきねぇぞ。溜めてた水も、もうほんの少ししか残ってねぇ!」


「ん~、困ったのぅ。井戸水が全滅とはどういう事じゃ。・・・皆、仕方ない。原因が分かるまで取り敢えず、ルシャンの村にでも避難させて貰うとするか。」


 その時、扉がトントンと叩かれる。


「ん?誰かのぅ。」


 扉が開かれると女が入って来た。


「どうも初めまして。私はピラスフィアという者です。先程、偶然外で聞こえたのですが井戸が枯れてお困りの様ですね。それを解消出来る、いい方法があるのですが試して見ませんか?」


「どうするんじゃ。」


「これを出来るだけ村の中心にある井戸に投げ込むのです。そうすれば、忽ち井戸に水が湧いてくることでしょう。」


「うむ、気味が悪そうな物じゃが大丈夫かの?いったい、それをいくらで売ってくれるというんじゃ?」


「そうですね。成功した場合、報酬として5デロ頂くだけで結構です。」


「本当に成功した場合でいいんじゃな。」


「村長!そら、試して見れ!」


 集められた村人達が頷く。


「そうじゃな。それじゃあ、村の井戸に案内するかの。」


 村長はピラスフィアを連れて村の中心に近い井戸へ向かった。


「ここじゃ。」


「それでは入れますよ。」


「待て!!それは入れさせない!!」


 スフェナが村に辿り着き、素早い動きでピラスフィアに駆け寄り剣で斬りつける。ピラスフィアはそれを避けるが、一部髪の先が逃げ遅れパラパラと落ちていく。


「中々、やるようですね。」


「皆!!コイツのいう事を信用しちゃいけない!!コイツのせいで、ルシャンの村民は皆死んじまったんだ!井戸が涸れたのも、きっとこいつのせいだ!!」


「フフフフ、ばらして貰っては困りますね。仕方ない・・・魔神様へは私が直接お前達の命を捧げる事にしましょう。」


 女の姿が変わっていく。白かった肌は赤黒く染まり、額から10cmほどの角が生えだした。小さな魔法陣を出し、そこから1.5メートル程の鎌を取り出す。


「おまえ!!やっぱり魔族だったんだな!ベアンを・・・ぐ・・よく・・も!!・・ベアンを!!!」


「「「「「「「ひえぇ~~~~!!」」」」」」」


 村人たちが悲鳴を上げる。村長が逃げながら指示を出すが誰も耳に入っていない。


「皆、家族を連れて早く逃げるんじゃ!!」


「逃がしませんよ。」


 村人達が逃げ出そうとすると、どこからともなく現れた17匹の黒ずくめの者達に囲まれる。右手にはそれぞれ剣を握り、村人達に襲い掛かった。


「「「ぎゃぁ~~!!」」」


「くそ!!とりゃぁ~~~~!!」


 スフェナはピラスフィアを標的にしていたが、変更して村人達を囲む黒ずくめの者達を斬り倒していく。斬られた者の黒い衣がめくれ、正体が露わになる。その正体は平均レベル19のアジュリザードという魔物で水を少しだけ操ることが出来て、ある程度の知性を持ち戦闘には剣を使う。大きなトカゲが立っている様な姿をしている。


 スフェナは村人を囲む7匹目のアジュリザードを斬った。隙を伺っていたピラスフィアが気配を殺して、スフェナの後ろに回り込む。手に持っている鎌でスフェナの首を刈ろうとした。


--!?


 スフェナが7匹目のアジュリザードをイヴェグスの魔剣で斬ると、その箇所が凍り付く。そこに映ったピラスフィアの鎌に気付き、しゃがんで避ける事が出来た。


「フフフ、運のいい女です事。」


--ふ~、危なかった!!感謝するよ、クラウド様!


 スフェナはレベル47で身体能力はレベル42のピラスフィアより優れていたが経験と技術は、かなり劣っていた。身体能力を活かしながらピラスフィアから距離を取りつつ、アジュリザードを倒していく。


「ちょこまかと、動かないで下さい!・・・・・ストーンロック!!」


 地面から石の檻が出来ていくのだが、スフェナは完成する前に素早く飛び上がって、檻の外にでる。檻の外に出たが着地点を見誤ってしまい、その場所には足を傷つけられて動けない村人がいた。


--しまった!!


 スフェナはその村人を避ける為に態勢を崩して転がってしまう。転がるスフェナの先にピラスフィアが回り込み、足でスフェナの腹を蹴り上げる。


「ぐはっ!!」


 ピラスフィアは地面に倒れ込んでいるスフェナにアイスランスを打ち出す。それがスフェナの左肩と右足に突き刺さって、地面に縫い付けられる。


「ぐあぁ~~~!!」


「フフフフ、ようやく捕まえましたよ。さぁ、この鎌であなたの首を・・命を魔神様に届けましょう。」


 ピラスフィアが近付いて来る。スフェナは動く事が出来ず、咄嗟にクラウドから貰った玉を思い出しピラスフィアに投げつける。


「てやっ!!」


「はっ!」


 ピラスフィアは鎌でカン!と音を立てて、それを弾き返した。玉はスフェナの顔の横まで転がり戻って来る。


「フフフフ、何がしたいのです。さぁ、死になさい!!」


 スフェナの近くでピラスフィアが鎌を振り上げる!


「死ねぇ~~~~!!」


--クラウド様、玉は役に立たなかったよ。ベアン、仇を討てなくて済まない・・・もうすぐ会いに行く・・・。


 スフェナの目から一筋の涙がこぼれ落ち、ゴッドグランシーズの玉を濡らす。玉はそれに応える様に辺り一帯を光で照らしだし奇跡を起こす!


 ピラスフィアが振り下ろした鎌は、スフェナの首に届いていない。鎌の刃は握られていた!光り輝くベアンの右手に!!


「まさか!?ベアン!・・・ベアンなのか!!ベアン!ベアン!!・・・うわぁ~~!!」


 スフェナは大声で泣き出した。ベアンの姿をした者はピラスフィアを鎌ごと投げ飛ばす。そして右手をゆっくり前に出すとアジュリザード達に向け大量の菱形の刃を飛ばし、一瞬にして全て倒してしまう。


「なんですか!?お前は!何処から現れたのです?まぁいい・・・・・デアアイスランス!!」


 ベアンは動かない。スフェナが叫ぶ!


「ベアン危ない!避けろ!!」


 ベアンは避ける気配も無くアジュリザードの次は、お前だと言う様にピラスフィアの方へ向かって行く。


「ハハハハ!!死ね!・・・!?」


 ベアンに当たった筈の7本のアイスランスは全て砕け散っていく。


--ベアン・・・じゃ・・ないのか?


「そんな筈!?この!・・・・トア・・スト・・・・・・ダルファ・・・・ベェオ・・・・・・・リンドガルグロッグ!!」


 ベアンの周りにある大量の石や砂が舞い上がって、ベアン目掛けて突撃していく。あっという間に高さ3㍍の小山に包まれてしまった。


「ベアン!!」


「ハハハハハ、これで身動き取れないでしょう。そこでゆっくり死になさい!」


 ピラスフィアは勝利を確信して、動けないスフェナの下へ近づいて行こうとする。


「お待たせしましたね。後はお前を始末した後、ゆっくりと他の者の命を魔神様に捧げましょう。」


 ピラスフィアが一歩踏み出した瞬間、ピラスフィアに向かってドゴォ~~~~!!という音と共に石土が爆発した様な勢いで弾け飛ぶ。ピラスフィアは、その衝撃で吹き飛ばされ10㍍程離れた家屋の壁に叩き付けられた。


「グハァ~~~!!馬鹿な!?奴は不死身とでも言うのですか?こうなれば・・・・!?」


ピラスフィアは叩き付けられた後、すぐに土煙の中を逃げ出そうと考えたが、土煙からベアンの左手が現れて、首を絞めつける。


「ググ・・・・グググ・・。」


 強烈な力で締め付けられピラスフィアは苦しんでいる。スフェナを道連れにしようと背中に隠していたナイフを投げようとする。その瞬間、ベアンの右手が剣に変わりピラスフィアに向けビュッ!!と振り下ろした。身体を真っ二つにされピラスフィアは倒れていく。


「グァ・・・ヴ・・・・・・。」


 ベアンはスフェナの下に走ると膝を落として、ゆっくりアイスランスを引き抜いていく。痛みでスフェナが呻く。ベアンは心配そうな表情をしている。


「うぅ・・・。」


 引き抜いた後、ベアンは傷口に手を当ててゴッドグランシーズの一部をスフェナに使い、応急手当を行った。


「ベアン・・・だよね。」


 ベアンはスフェナの頭を3回ポンポンと叩いた後、額に口づけする。それはベアンの生前、スフェナが落ち込んでいたりすると、必ずベアンがする仕草であった。スフェナは泣きながらしがみつく。


「うぁ~~!!ベアン!!ベアン!!・・・もう何処にも行かないでおくれ!・・・うぁ~~~!!」


 ベアンはスフェナを見てほほ笑む。そして、地面に指を当てて文字を書きだした。


・・・強く生きろ・・・。


 そして、


・・・見守っている・・・。


 スフェナにキスをするとベアンは細かな光の粒子となって消えていく。


「うあぁ~~!!ベアン!!行かないでくれ~~~!!」


 スフェナが泣くと、ベアンは強く生きろ見守っているの文字を指差し、微笑みながら消えていった。


--・・・・・ベアン!分かったよ!強く生きる!!いつか会えるまで見守っていてくれ・・・。

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