第16話 グラディアル帝国への旅 旅立ち編
クラウドとユイアレス含め6人で誰にも話を聞かれ無い様に会議室へ移動する。・・・少しして連絡係が入って来る。ユイアレスに何かを報告した後に会議室を出て行った。
「大会の結末がまさか、こんな事になろうとはな・・・。デントルは魔神デクロノギアスに命を捧げると言って、あの様な姿になったのだ。変身する時、掲げておった不気味な黒い心臓を探させたが、どこにも無いとの事だ。亡くなったデントルの巨体も黒い煙を出して消えてしまったのでな、困ったことに手掛かり無しだ。」
「う~ん、そうか・・。」
「うむ、まさか国の中枢まで魔神の魔の手が及んでおるとは。こんな事が広まれば国が混乱しかねん!魔神の事はくれぐれも内密にな。後はこちらでデントルの関係者達を調べておく。クラウドは予定通り、明日の朝出発してくれ。」
「分かった。車の方は何とか用意出来そうかな?」
「ああ、明日までに一から作るのは流石に無理だそうだが、今王都中の腕利きの職人が総出で既にあった新車を利用して頑丈な車を作っておる。明日の朝には出来上がるそうだ。」
「そうか、職人さんに悪いことをしたな。」
「初めは、どの職人も断っていたのだがな。相場の5倍の報酬と明日までに作る理由を聞かせろと言うので、勿論かなり大変であろうから相場の10倍払う上に、明日までに作ってもらうのは詳しく言えぬが世界を救う為だと伝えると、普通の相場でいいから世界を必ず救え!と言って引き受けてくれたそうだ。」
「責任重大だね!あと車代は自分が出すから。」
「クラウド、国の依頼で行くのだ。国が出すに決まっておる!」
「いや、その後も乗り続けようと思って。移動手段の車が欲しいと思ってたし。」
「それならそれで、国から進呈する。報酬の一部と思えば安いものだ。」
「報酬なんかいらないって。もともと国からの依頼が無くても、戦争を止めに勝手に行くつもりだったからね。」
「そうは言ってもだな。国のために働いた者に対して、何も与えないのでは後々困るのだ。皆がクラウドの様な者であれば良いが、働いた者が無報酬であったと広まれば、国の依頼内容を聞く前に断わる者も出て来てしまうのでな。」
「まぁ、自分が無報酬を隠しておけば問題ない気がするけど・・分かった。今回の事が上手く行けば報酬で車だけ貰っておくよ。」
「全く、クラウドは無欲な奴だな。それでは料理も用意出来たみたいだし大会の勝利祝いと行こう。豪華な夕食を用意してある。そうだ!早速11人の大臣達から娘や孫達をどうかクラウドの夫人にと見合いを申し込んで来たぞ。もちろん、そんな暇はないと断ったがな。」
「え?ずっと断っておいてくれる?」
「そうですわ!全部断って下さい!お兄様!」
「今のところ煌輝紋章石ホルダーである事を隠したいと言うクラウドの意向を伝え、他の貴族連中には伝わらない様にして貰っている。知られてしまうと他の貴族からも見合いの話が来るのは間違いないからな。だが、ずっと断るわけには行かぬぞ。面倒な連中であるし断ったことに対して逆恨みされても敵わん。断るなら、見合いをした後にクラウドが断わってくれ。」
「う~ん、困ったなぁ・・。」
「・・・クラウド・・その顔。もしかして戦争を止めた後、直ぐに遺跡回りで修行にでも行くか、みたいな顔をしておるな。」
--ぎく!
「ばれた・・・?」
「まったく・・・帰って来た時は内緒にしておくから、必ず帰って来る様にな!私と飲みにぐらい付き合ってから修行に行け。」
クラウド達は豪華な夕食を食べ終えてユイアレスと露天風呂で談笑した後、シルティアとユリアと共に屋敷へ馬車で戻った。シルティアは王宮から出る際、馬車に大きな荷物を載せて貰っていた。屋敷に着いた後、クラウドはリングボックスを利用して大きな荷物を屋敷へ運ぶのだが不思議に思って尋ねてみる。
「シルティア、この荷物大きいけど何が入ってるの?」
「屋敷に着いてからのお楽しみですわ。」
「そう。」
・・・・・・クラウド達は屋敷に着くと送ってもらった衛兵にお礼を言って中に入る。
「今日も一日長かったね。」
「そうですね。クラウド様、何かお飲みになりますか?」
「それじゃあ、あっさりとしたストロコの炭酸ワインでも開けようか。」
「はい、シルティア様もそれで宜しいでしょうか?」
「ええ、ありがとうユリア。ユリアの分は私が注ぐわね。」
「いえ!シルティア様にそのような事をして頂く訳には!」
「何を言ってますの?私たちはクラウドの妻になるのよ。家族になるのですから遠慮など不要ですわ。」
「・・・はい、それでは遠慮なく頂きます。」
「はい、どうぞ。それではクラウドの完全勝利を祝って乾杯ですわ。」
「「「乾ぱ~い!」」」
「それにしても、最後の試合では対戦相手と何を話してましたの?」
「あぁ、あれはこの前ユイアレスと飲みに行ったときに襲ってきたデントルの一味だったんだよ。魔眼スキルを持っていて危ない奴でね。」
「大変じゃありませんの!魔族ですの!?」
「いや、そいつは只の人族みたいだよ。」
「良くクラウドは魔眼に掛からず倒せましたわね。目を見ませんでしたの?」
「本当です!掛けてこようとは、しなかったのですか?それともクラウド様はレベルが高いから耐性も高く魔眼に掛かる前に倒したとか。」
「いや、掛けて来たよ。でも自分には掛からないんだ。」
「まさかクラウドも魔眼スキル持ちですの!?確か魔眼スキル持ちの魔族同士では掛かりにくいとシャアラ様に聞いた事がありますわ。」
--魔眼スキルは持っていないよ。真眼スキルに変わってしまったし。
「いや、持ってないよ。」
「そうですわね。魔眼なんてレアスキル、中々覚えている人などいないですわよね。」
--少し前は覚えていたけどね。
「でも衛兵に気を付ける様に言いましたの?目隠しをしていたようには見えませんでしたけど、危険ではありませんの?」
「あぁ、大丈夫。一生封印させて貰ったから。」
「・・・クラウドったら、本当に何でもありですわね。」
--そのセリフ・・よく聞きます。
ユリアがクラウドの表情を見て微笑している。
「さぁ~て、それじゃ明日に備えてそろそろ寝ようか?」
そう言うとシルティアが1/3残っていたワインを一気に飲み干す。
「まだ早いレスわよ。」
--あれ?いきなりレスわ?・・・酔ってらっしゃる?
「クラウドは、ここで待ってらシて。ユリア、行きまシわよ。」
「え?はい?分かりました。」
シルティアがユリアを連れて行き、暫くすると胸元に可愛い大きな赤いリボンを着けたメイド姿で戻って来る。短いスカートで二人の綺麗な足が全て見えていた。クラウドの目の前で二人とも可愛くクルリと回転する。シルティアは短いスカートを更に上に上げている為に、座っていたクラウドから白の下着が少し見えていた。
「シルティア?何を・・・?」
「お付きのメイドに聞いたのレすわ。夫を喜ばスための色々な方法を。マンネリ化は、浮気を招くらシいのでスわ。」
--マンネリ化って、まだ会ってから間もないし・・・。もしかして馬車に積んでた大量の荷物はそれ!?
「ユリア!スカートの上げ方が足りまセん事よ!」
シルティアがユリアの傍に寄り、スカートを持ち上げる。勢いをつけ過ぎた為に、細いウエストの上部まで上げてしまい下半身が下着丸出しになってしまう。ユリアが慌てて下着を可愛く両手で隠す。
「きゃっ!!シルティア様、上げ過ぎです!」
--理性・・・理性・・無理です、突入!
「「あっ・・・・・あ・・・ん・・・・。」」
・・・・・・時間が過ぎ、次の朝となる。
「クラウド起きてください。朝食が出来ましたわよ。」
「おはよう。シルティア・・・って、まだ着てるの?二人とも、その服。」
「とっても動き易いんですのよ!この服。」
--まぁ、家の中だし正規の位置にスカートがあるからいいか。
朝食を取り終えたクラウド達はお城へ向かった。
・・・城に到着して中に入るとキャンピングカーぐらいの大きさで、町中も移動可能な低速仕様の帆と高速移動用の大きな帆がついた車がある。使用しない場合は畳める様になっている。
--おっ、凄く綺麗なのが出来てる!あまり目立たず作って欲しかったけど新品だから仕方ないか。もしかして、あの人達が作ってくれたのかな?
車の周りには衛兵が立っていて、それを取り囲むように職人らしき服を来た者が50人以上いた。
「ユイアレス、この方たちが作ってくれたの?」
「あぁ、そうだ。立派であろう!どうしても車の門出がみたいという事でな。私が許可したのだ。」
「そっか。」
「皆さん!初めまして!クラウドです。この車で戦争を止めに行ってきます!かなり無理して作って頂いたみたいで、ありがとうございます!」
クラウドは職人たちに、お辞儀をする。
「クラウド様!!車の駆動部には最新式の魔法駆動軸受を完璧な調整で組み立てておりやす!どんなに帆に風を入れてスピード出しても、びくともしませんぜ!もし帆が折れても馬さえいりゃあ、問題ありゃあせん。」
「馬っ鹿野郎~~!どんな荒海でも乗り越えられるだけの帆を着けてあるんでぃ!スピード出して駆動部が壊れても帆が壊れるかい!」
「なんだとぉ~~!!」
「なんでぃ!!やんのかぁ~~!」
「そこっ!!ユイアレス様とクラウド様の御前であるぞ!」
「「あっ!?これは失礼しやした!」」
「目を離すと直ぐに喧嘩が始まるそうだ。」
--こだわりがある職人さんが集まると大変そうだな。
「そうなんだ。」
「あっ、シルティアはもう持って行くものは無いの?」
「えぇ、もうありませんわ。」
「ユリアもいい?」
「はい。」
「それじゃあ、行こうか。」
「それじゃあ行って来るよ、ユイアレス。」
「ああ、気をつけてな。」
クラウド達3人が乗り込む。クラウドが前の席に設置されたハンドルを握ると帆にゴォ~~~~~!!と大量の風を入れ凄い速さで加速し、あっという間に見えなくなった。
「おい・・・お前ん所の駆動部、本当に大丈夫か・・?」
「・・・多分・・・お前の帆は・・?」
「・・・多分・・・。」
「まっ・・まぁクラウド様さえ居れば大丈夫だろ!」
「そっ、そうだな・・・ハハハハハ。」
「「ハハハハハ・・・。」」
ユイアレスは、その車の速さを見て呟く。
「クラウドが戻ってきたら乗せてもらう事にするか。」
「ユイアレス様、自分も宜しいで御座るか!?」
「ずるいですよ、アトス!私も乗ってみたいです!」
「それでは、早く戻ってくることを期待しよう。」
一方、車の後部座席ではシルティアが叫んでいた。
「キャ~~~!!クラウド!速過ぎますわ!ぶつかりますわ!!キャ~~~~!!止めて~~~!!」
「でも急ぎませんと間に合わなくなります!今ならまだ王宮に戻れますよ!」
「だっ、ダッ、ダダダ・・ダイジョウブですわ!!このくらい慣れれば・・・ヒィ!・・・。」
--大丈夫かな・・・。あと車のスピードをもっと上げたいけど今でも挙動が不安定だし、どうしようかな。う~ん、新幹線の顔の様にゴッドグランシーズの装甲を変えてみるか?
--おっ!安定した!これなら大丈夫そうだな。
車は時速300kmで山以外を殆ど直線にゴッドグランシーズの道を作って、その上を疾走していく。たまに出て来る動物たちは早めにマップで確認してゴッドグランシーズを変形させて避難させて貰う。
--このぐらいで毎日8時間ほど進めば10日で着く筈。何とか間に合えばいいんだけど・・・。
・・・一時間程走った所。
「シルティア、少しは慣れましたか。」
「えっ、えぇ。こんな速い乗り物に乗ったことありませんでしたから。揺れも減りましたし、少し慣れてきましたわ。ユリアは平気ですのね。」
「はい、クラウド様に初めてお姫様抱っこして頂いて、移動した時の方が怖かったですし。」
「何ですって!?クラウド、私にもお姫様抱っこして下さい!」
「・・・今は急いでいるので又今度で。でも、ユリアが怖かったらしいですけど大丈夫ですか?」
「移動は無しでお願いしますわ・・・。」
--何の為に抱っこするのやら。
・・・出発して4時間ほど走った所で昼食タイムにする。場所は大きな川の見える見晴らしの良い場所を見つけ止まった。料理は王宮の料理人に大量に作ってもらう予定にしていたがシルティアが料理の腕を磨くため自身で作りたいと言い出したので大量の材料とお酒を含む飲み物を用意して貰ってリングボックスに収納してある。
「この辺でお昼にしましょうか?」
「綺麗な場所ですわね。」
「本当ですね。」
クラウドは二人に何が必要か聞いて大きめのゴッドグランシーズ机を作りその上に載せていく。水はゴッドグランシーズの大きい桶にウォーターシュートの魔法で溜める。火力はグラスカ森で大量に伐採した薪を乾燥させて燃料として料理可能な状態にしておいた。後はシルティアとユリアが作るというのでクラウドは少し離れた魚が泳いでいそうな川岸で魚を釣ることにした。
クラウドは川岸に着くと魚がいるか透視してみる。
--結構深い川だな・・・おっ!いるいる。こんなに沢山いるのか。え~と、食べれる魚みたいだな。
クラウドはゴッドグランシーズで15メートルの長い竿、糸、針を作って体長20cm程のエリウという魚の群れに垂らす。
クラウドは針の部分を小虫の様に変化させて泳がせる。すると垂らして平均1,2秒で魚が釣れる。当然であるが魚も自身の姿が見られているとは思っていないだろう。
--漁師でも生活していけそうだな。釣り過ぎて生態系を壊さないように、そろそろ止めるかな。
クラウドは30匹釣ったところで止める。残りの時間は200m四方のゴッドグランシーズの檻にラルガデイテの玉で大量に多くの魔物を生み出して、その中に入り戦闘訓練を行う。
初めて玉から魔物を生み出した時、クラウドは魔物を大量に出してしまう危険性を危惧していた。しかし強い魔物を生み出すには多くの魔力量が必要な為に、クラウド以外が使用しても特別な方法を取らない限り大量の魔物を出現させることは不可能であった。
--そろそろ1時間ぐらい経つけど戻ってみるか?
シルティア達の下へクラウドが戻る。
「ちょうど良かったですわ。今呼びに行こうとした所ですの。」
「そうなんだ、良い匂いだね。」
--そうだ!折角釣れたし魚も焼いてみるかな。
クラウドは魚を3匹だすと鱗を一気に剥がしてゴッドグランシーズの串に刺した。味は塩のみ振りかける。
「あら、3匹も釣れましたのね。」
--3匹じゃなく30匹釣れてます。
「本当です!美味しそうですね。」
「じゃあ、焼けたら皆で食べよう。」
「このシチュー私が作ったんですの。」
「本当に美味しいですよ。この肉料理も美味しいし。」
「ありがとうございます。それは私が作った料理です。」
「そうなんだ、あっ魚焼けたみたいだね。」
香ばしく良い匂いが漂ってくる。クラウドは1本取り豪快に一口食べてみる。
「うん、こういうのも素朴だけど外で食べると美味しいね。」
ユリアが焼いてる魚の近くに居たので味見するかと思い、一部食べた魚を前に出す。ユリアはそのクラウドの食べた箇所を味見する。
「おいしいです。」
「ずるいですわ!ユリアばっかり!」
「いやっ、魚はまだあるから食べられるよ。」
「違いますわ!今度は私の番ですわ!」
シルティアはクラウドに2本目の串を握らせて食べさせる。シルティアのクラウドの食べた箇所を食べる。
「はい、あ~ん。」
--噛みついた魚が欲しかったんだね。嬉しいけど、これから奥さんが増えると大変そうだな・・・。
クラウド達はご飯を食べ終えると直ぐに出発しだす。車の中でクラウドが話しだす。
「シルティアは王族だから、色々な耐性アップスキルは持ってる?」
「いいえ、お兄様と違って私には王位継承権がありませんでしたので、毒耐性アップスキルのみですわ。」
「じゃあ、シルティアとユリアこれ。」
クラウドはシルティアの前に5つとユリアの前に2つの魔元核石を車で走りながら出した。
「これって何の魔元核石ですの?」
「グルンガルの魔元核石です。」
「7つ共ですの!?こんなに大量のグルンガルの魔元核石なんて、王族でも手に入りませんわよ!?」
--いやっ、今持ってるだけでも100個以上ありますけど。
「自分が倒すと必ず魔元核石が出るみたいで。」
クラウドはアグナシダ遺跡にあったラルガデイテの玉について説明した。
「何ですって!?お兄様には話したんですの!?」
「この前一緒にお酒を飲んだ時に話してます。ユイアレスもかなり驚いていたけど無欲であるクラウドに持っていて貰うのが1番安全だからと、今まで通り無くさない様に持っていて欲しいとの事です。あと、他の者に絶対に話さないことも。」
「そうですわね。クラウドが持っているのが1番安心ですわ。分かりました、人に漏らさないように私も気を付けます。これを出してきたという事は、私たちに耐性アップスキルを覚えさせたいわけですのね。」
「そうです。この先何が待っているか分かりませんから。気分が悪くならない様に時間を置きながら吸収して下さい。」
「分かりましたわ。」
「分かりました。」
そしてクラウドたちは順調に進んで行き、ギャドリグ公都の少し手前でキャンプをする。この時点でユリアが状態異常耐性アップ及び呪い耐性アップスキルを得てレベルが32となっていた。残念ながらシルティアはまだ覚えれていない。
「そろそろ今日はキャンプにしましょうか。」
クラウドは広い場所にゴッドグランシーズ車庫を作って車を入れる。後はゴッドグランシーズで50メートル四方の床から柱や壁などを出して家を建てていく。キッチン、寝室、トイレ、少し離れて露天風呂と全て作ってわずか一分程で完了した。
「一瞬でこれだけの家を建てれたら、もう家を買う必要ありませんわね・・・。」
「でも魔法ですから、いつか消えますし。」
--う~ん、確かに買う必要ないかも。でもそうなると、お金の使いどころが無くなるし。
「まぁ、街中に家がある方が何かと便利ですから。」
「それもそうですわね。」
他愛もない会話をしながら食材を並べていく。シルティアとユリアに料理を任せてクラウドは二人から離れた所で戦闘訓練を行う。
--少しでも強くなってないとな。でも1番強い魔物ってツインサイクロプスしか出せないんだよな。これじゃあ、もうレベルが上がらなそうだし、もっと強い魔物どこかに居ないかなぁ。
マップを近くを検索確認してみるが最高でレベル17の魔物しかいない。
--やっぱり遺跡に行くか、バルゴ魔帝国にでも行かないと難しいみたいだな。バルゴ魔帝国は遠いし・・・あっ、アグナシダ遺跡だったら、ここから飛んで行けば、そんなに遠くないかも。遺跡の主だけパパっと倒して来ようかな。
クラウドはシルティアとユリアには言わずに飛び立つ。アグナシダ遺跡に着くと直ぐに風高速移動を開始して移動する。途中にいる魔物は素通りして地下15階までたどり着いた。地下3階と2階に別の冒険者達がいたが、かなり早く移動した為に気付かれていない。
--よし!15階までたどり着いたぞ!何が居るかなぁ?おっ!居た居た。レベル68アイスグラントルドねぇ。もっと、強いのが良かったんだけどなぁ。
調べてみると、魔物は体長3.2メートルの真っ白な体毛が生えた猿である。動きが速く上級氷魔法を使う。
--なるほどね。それじゃあ、色んな氷魔法をゲットしてからパパッと倒してしまおう。
クラウドが近づくと自らの代名詞ともなっているアイスグランデの魔法を唱えてくる。冷たい水の混じった温度の低い冷気を飛ばしてクラウドが避けた場所に氷の大きい岩が出来る。
--う~、避けても寒い!!ゴッドグランシーズの耐寒バージョン!これでよしと。
クラウドが2つ目のアイスグランデを避けるとアイスグラントルドはブリザウェードの魔法を唱え、辺り一面が氷の世界に包まれる。立て続けにデアアイスランスでクラウドを串刺しにしようと狙ってくる。クラウドはそれを避けようと移動するが足が滑り壁に激突してしまう。
--うわぁ!滑る~!?
ゴォン!と激突したクラウドを見てアイスグラントルドが笑いだす。
「キィッ!キッキッ~~!!」
--笑われてる?見てろよぉ~~!
クラウドは足の裏にゴッドグランシーズのスケート靴を作って走り出す。
--お~とっと。こうして・・・こう・・・う~ん・・・こうか・・・なるほど・・・きゅっと・・はい、ジャーンプ!・・・よし、行ける!!
クラウドは大量の氷の槍を避けながらスケート技術を凄い早さで習得していく。アイスグラントルドが槍を飛ばしながら、必死で追いかけるが全く追いつけない。
--それじゃあ、行くよ!
クラウドは少し離れた所でアイスグラントルドに向き合う。氷の槍を避けながら鎧に2本の剣を生やして、魔物に凄い速さで近付くと回転ジャンプを行う。
--トリプルアクセルジャーンプ斬り!!なんちゃって・・・。(実際には15回転している。)
アイスグラントルドは胸の辺りでズレていき倒れる。
--よし!お猿さんの魔元核石を回収して帰るか。
帰りも高速移動して戻っていく。ついでに4階で魔物達に囲まれ、死にかけていた冒険者達にエターナルヒールを掛けて全快させ、周りにいた魔物を一瞬で倒して出て行った。9人の冒険者達は生を諦めかけていた自分達に何が起こったのか分からないが洞窟からの撤収を決めたようだ。魔元核石はクラウドが回収している。
--魔元核石は助けた報酬として貰っておこう。シルティアとユリアに役立つかもしれないし。
クラウドが帰ると、ちょうど料理が出来上がっていた。
「ただいま。」
「「おかえりなさい。」」
「クラウドは何処に行ってましたの?」
「戦闘訓練にちょっと。」
「そうですの。私も今度お願いしますわ。」
「私も少しでも役に立てる様に強くなりたいです。」
「そう?じゃあ、ご飯を食べた後に行いましょうか?」
夕食を食べた後、200㍍四方の檻を作ってレベル35までの魔物を50匹生み出す。
--少ないかな?
「クラウド!多すぎますわ!前衛無しで、この中に入るなんて自殺行為です。シャアラ様の厳しいトレーニングでも、これ程の訓練ありませんわ!本当にクラウドの基準はどうなってますの・・・?」
--えっ?かなり手加減したつもりだったんだけど。
「そうなんだ、ごめん。」
--ゴッドグランシーズでフォローするつもりだったし、このぐらいだったら普通の人が入っても怪我させない自信があるんだけどな・・・しょうがない。
クラウドは中に入り風高速移動で半分を一瞬で倒して出て来る。
「これでどうですか?」
「これぐらいなら、何とかなりそうですわ。ユリアはどうしますの?」
「私も行きます!」
「それでは行きますわよ!」
「はい!」
シルティアとユリアは前衛が居ないので自身に全身防御型魔法プロテクティカを施した後、中に入る。クラウドは二人に気付かれ無い様にゴッドグランシーズの防御をかける。二人が檻へ入ると魔物達が一斉に襲い掛かって来た。
「・・・・・・デアアイスランス!・・アイスランス!」
「・・・ワストゥ・・・・ティルカ・・・・・・・・・・・・・・・・アスタデットボルト!!」
ユリアが氷の槍で牽制しながらシルティアが雷上級魔法アスタデットボルトを構築して放つと20匹の魔物達の頭上に枝分かれした雷が落ちる。魔物達は煙を上げながら倒れていく。
「やぁ!」
「はっ!・・ブリザフィス!!」
その隙に生き残った7匹の魔物が2人に襲い掛かるが全ての攻撃を杖と簡易防御魔法で散らしながら、ユリアがブリザフィスの魔法で5匹の足を凍らせて動きを止める。そこにシルティアが雷魔法スルドを連続構築して叩き込む。
--大丈夫そうだな。こっちはお風呂でも沸かしておこうかな。
クラウドは2人を気にしながら、お風呂に魔法で水を入れて光業炎で沸かしていく。直接、炎を放つと一瞬で蒸発してしまう為、ダウゴウラの蒸し焼きの要領で沸かす。数秒で沸いて2人の元に戻ると残りの2匹を魔法で倒し終えるところであった。ユリアのレベルが33に上がっている。
「お疲れさま。余裕そうでしたけど。」
「そんな事ありませんわ。前衛もいませんし、魔物があれだけの数揃うと少し油断するだけで命取りになります。」
「そうですね。私も魔法騎士学校で、そのように教えられました。」
「そうなんですか。」
「クラウドの様に周囲の全てを見通して素早く倒すなんて普通の人には無理ですわ。それこそシャアラ様やグラヌス様クラスでないと。」
--ん~、何と無く分かるんだよね。
「それじゃあ、明日はちょうどいい強さでレベル45のロアタンク1匹とかにする?」
「明日はそれでいいのですけど、多量の魔物を倒すのも凄く良い訓練になりましたわ。冒険者でもあれだけの魔物達に囲まれる事は中々無いことです。クラウドが居ないと出来ない体験ですから一日ごとに訓練してみますわ。」
「私もそれでお願いします。」
「了解。じゃあ、お風呂沸いてるけど入りますか?それとも動いて小腹が空いている様なら何か出しますけど。」
「そうですわねぇ。汗もかきましたし、お風呂に致しますわ。」
「そうですか、ちょっと待ってください。湯加減見てみます。」
クラウドは温度を確認するとかなり熱かった為、ウォーターシュートの魔法で水を足していく。
--このぐらいでいいかな。
「どうぞ、入れますよ。」
「クラウドは一緒に入りませんの?」
--えっ、一緒に入ると大きくなるかも・・・。
「後で入りますから。」
「いけませんわ、クラウドは私達の主人となるのですから先に入って下さい。」
--それならたまに出して来る姫様的な威圧感を抑えて欲しい・・・。
「分かりました。」
クラウドは、風呂に浸かりながら綺麗な星空を眺めていた。
--ふぁ~、自然の中での露天風呂は最高だなぁ~。
「クラウド、入りますわよ。」
「失礼致します。」
--え!?ちょっと待って!後から入る筈じゃあ。
シルティアとユリアは布で裸を隠して入ってくる。
「シルティア!ユリア!?」
シルティアとユリアは、クラウドがこちらを見た所で布をファサっと取ってしまう。
--!?
「フフフ、水着を着けて来ましたの。夫の前でも恥じらう心が必要と教えられましたので裸ではありませんわよ。でもクラウドが脱いで欲しいというのであれば脱ぎますけれど。」
「いや、着たままでお願いします。」
二人は身体も洗える様にビキニの水着を着ていた。クラウドの横で二人が立ったまま透き通る様な綺麗な肌を泡だらけにしながら洗っている。
「そ・・・そろそろ出ようかな。」
「待ってください。一緒に湯船に入りたかったんですの。」
--あっ、駄目だ。
「でも、二人の凄く綺麗な身体を見てると、ここが・・。」
クラウドは自身の身体の一部を指差す。
「いやですわ、クラウド。でもクラウドがしたければ私達は構いませんわよ。」
シルティアが顔を赤くして言う。ユリアも顔を赤くして横で頷いている。
--えっ、いやなの?構わないの?理性、理性・・・駄目だ・・・突入!
「「あ・・・・・ん・・・あん!・・・・・・・・・。」」
・・・・・・・時間が過ぎていく。
次の日、朝食を取り家を片付けて出発した。