第12話 ラルガデイテの玉
いつもの如く目を回しながらアグナシダ遺跡の傍に着陸する。
「この着地いつか何とかしたいなぁ・・・さてと行こうか、ユリア。」
「はい、クラウド様。頑張ります!」
ユリアは胸の前に両手を出してぎゅっと握りしめる。
「頑張るのはいいけど、あまり前に出ないようにね。止めを刺すのは自分がするから。」
--そうすれば魔元核石が必ず出るはず。それでユリアのレベルアップを図ろう。見てるだけでも駄目だな・・・戦わずにいても技術は身に付かないだろうし。
「はい。」
クラウドとユリアはアグナシダ遺跡へ入っていく。一階にはLV15ベドドという植物系の魔物が一匹だけいる。
「あれっ?他の遺跡と違って魔物の数が少ないなぁ。まぁ、ユリアは魔力残量を考慮して下級魔法限定使用で宜しく。」
「分かりました、クラウド様。ベドドの弱点は炎系魔法ですが、茎を燃やさず擦りつぶして飲めば毒消しにもなります。」
「そうなんだ。じゃあ、炎系はやめて花の部分を風魔法で攻撃してくれる?あとは、自分に任せて。」
「はい。・・・シャーテ・・・・・・フィルフィ・・・ウインドカッター!!」
ユリアの魔法は見事、花部分へ命中するが細かい傷が出来るだけで致命傷を与えられない。クラウドがその後、高速移動で花を斬り落として倒した。レベルアップの為に魔元核石をユリアに渡す。
「クラウド様、見てください!魔元核石が黒に変わりました。多分、何かのスキルか魔法を覚えたと思われます。」
「なるほど、普通はこんな風に変わるんだ。」
「えっ、クラウド様・・・魔法使用されていましたよね。」
「ああ、うん。自分が魔元核石を吸収すると白い玉が灰になってエネルギーとスキルか魔法の両方得られるみたいなんだ。」
「そうなのですか?・・・さすがクラウド様です・・・?」
--なんか疑問形になった?
「それとユリアが覚えたのはスキルで毒耐性が少しアップするものらしいよ。」
「さすがクラウド様、博学なのですね。通常ギルドで何を覚えたか調べてもらうか、図書館で魔物の魔元核石について調べるのですが。」
「そうなんだ?」
「え?ご存知だったのでは・・・。」
「いやっ、何を覚えたか分かるみたいなんだ。」
「フフフ、クラウド様は何でも有りですね。」
べドドの茎はリングボックスに収納して地下2階へ移動すると、そこには別の冒険者チームが居て地下2階の最後の一匹、LV17のドンゴというカバの頭に長く湾曲した1本の角を生やした魔物と戦っている。
「ウェルザ!レイデドの魔法で動きを抑えるんだ。シェニファはリタの回復を!私が聖剣ストレドリで止めを刺す!」
「「はい!」」
「ウォ~~~~!ハァ~~~!」
「やったか!!・・ぐはぁっ!!」
男はドンゴに斬りつけて頭に傷を負わすが、その後ドンゴの角の一撃を右横腹にくらってしまう。
「シェニファ・・・僕に回復魔法を・・。」
シェニファが回復魔法を構築している間にウェルザが炎の中級魔法でドンゴを焼き、倒した。
「よし!皆、良くやった!さすがこの勇者たる私の従者だ!・・・・んっ、君たちは何だね?ここは魔物の巣だぞ。危ないからさっさと帰りたまえ。」
「そっ、そこの君!名前は何というんだい?」
「はぁ、ユリアですけど何か?」
「ユリア殿、良い名前だ。初めまして、私は女神様に選ばれし勇者ドレボである!世界を救うため、旅をしております。美しく可愛い貴女は私にこそ相応しい!そこのキテレツな服を着ている男など放っておいて私についてきなさい!」
--なんかどこかで聞いた話だなぁ。あっ、ユリアが無視していきましょう。・・・みたいな目配せしてる?
ドレボが再度言い放つ。
「そんな弱そうな男に付き合うのは大変だったのではないか!そういう男はだいたい心も弱いものさ!美しい君は勇者たる私について来るがいい。さぁ、おいで!」
ドレボは両手を広げ、私に飛び込んできなさいとアピールしている。ユリアは恐い顔でドレボの傍に近付くなり、ドレボの顔を杖で横から思いっきり振り抜いた。
「グハァ~~!なっ何だ?シェニファ!・・・回復を・・・・。」
シェニファの回復魔法でドレボは復活する。
「貴様!この麗しのユリア殿が純真な事をいいことに惑わしの魔法で操るなど神が許しても、このドレボが許さん!」
ドレボが剣に手をかけクラウドを攻撃しようとすると、ユリアは殺気を発しながら一番得意な氷魔法を短い時間で構築する。それを見てウェルザが防御結界を構築していく。他のメンバーは攻撃魔法を詠唱している。
--いやぁ、面倒なのは何処の世界にもいるんだなぁ。ユリアよりレベルは高いみたいだけど魔法構築の速度からしてユリアが勝ちそうだし、あの聖剣って言ってたのも鑑定したらレプリカみたいだし・・・ユリアが人殺しになってもまずいから、そろそろお暇しますか。
「あっ!あんなところにベドドの大群が!」
全員が振り向いた一瞬にクラウドは高速移動してユリアを抱える。そのまま地下七階まで魔物達を倒さず通り過ぎて移動した。
「ここまで来れば大丈夫かな。ユリア、変な奴だったね。」
「退治したかったですわ!」
--あいつ、ユリアの中では魔物扱いみたいだな・・・。
「まぁまぁ・・・おっと!」
LV19のチェキデア3匹が襲ってきた。カニの様な形で足は6本しかないが大きなハサミが4本もある。大きさはクラウドの腰の高さまであって挟む力は人の骨を容易に砕いてしまう。
「クラウド様!チェキデアは炎系魔法と衝撃魔法が弱点です。衝撃魔法は目と目の間にある一本の触覚の根元が弱点の目印でそこを狙います。そこ以外は堅い甲羅で防がれてしまいます。それと市場では高級食材として扱われています。」
--確かに美味しそうな姿しているよね。
「よっと、ゴッドグランシーズの壁!これでよし、衝撃魔法って何?」
「土魔法のロックボールやロックハンマーの様な物理的に衝撃を与えれる魔法の事です。確か爆発系でも問題ないはずです。」
「なるほど、要は弱点に物理的な衝撃を与えればいいんだね・・・じゃあ、もぐら叩きならぬ蟹叩きで行きますか。」
クラウドは大きなハンマーを1匹目の魔物の上に創り出し、重たいイメージで構築したハンマーを弱点へ落とす。
ドォ~~~ン!!!という音で遺跡が揺らぎチェキデアは平らに潰れてしまった。魔物と共に地面もかなり凹んでいる。天井からパラパラと埃や小石が舞い落ちる。
--あっ、手加減失敗した・・・。
「クラウド様、やり過ぎです。遺跡が壊れます。」
「ごめん・・・。」
「フフフ・・・チュッ。」
--えっ?
「だって、クラウド様。可愛いんですもの。」
「これでも大人のつもりなんだけどな。」
ユリアはそれを聞いて微笑んでいる。
--今度は手加減してと。
クラウドは先程より、かなり手加減したハンマーを残りの2匹に落とす。見事2匹に命中してチェキデアは倒れる。気を抜いた二人を狙ってLV23ウェルドルという巨大な蛇が大きな口を開けて天井から襲い掛かる。気配を殺して降りて来たウェルドルは勘のいいクラウドに首を斬られて瞬殺される。
「キャッ!クラウド様・・・わっ、私・・・ニョロニョロ系が苦手なんですぅ~~~!」
クラウドを盾にユリアは背中に抱き着いて密着してくる。
--背中に柔らかいものが当たって幸せだ・・・駄目だ駄目だ早く蛇を収納しよう。
「ユリア、もう大丈夫。収納したよ。」
「私の前でそれを絶対出さないでくださいね。私、泣きますよ。」
「ユリアにも苦手なものがあるんだね。」
「どういう意味ですか!・・・クラウド様、ひどいです。」
「ごめん、ごめん。悪い意味じゃなくって、ユリアって何時も凄くしっかりしてるから。」
「そんなこと無いです・・・クラウド様がいないと私・・・弱くなります。」
「じゃあ、ユリアは、ずっと強いままだね。」
「はい!!」
ユリアは魔元核石を吸収して現在レベル20まで上がっている。
「よし、次の階に行こう。」
クラウド達は階段を下りていくのだが先程のハンマーの衝撃で階段途中の壁が、一部剥がれ落ちている。ユリアには普通の壁にしか見えていないがクラウドの眼鏡で見ると壁に魔力を注げと書いてある。
--ん~、何だろう?嫌な感じはしないし、確認してみるか。
クラウドは壁に手を当てて魔法を構築途中でやめて前方へ流していく。
--こんな感じでいいのかな?
「クラウド様、何をなさっているのですか?」
「自分にもよく分からないけど、多分もうすぐわかるよ。」
クラウドが触っていた扉が柔らかくなっていく。
「よし、ユリア行こうか。」
「何処にですか?・・・・キャッ!」
クラウドはユリアの手を引っ張り、壁の中へ入っていく。そこには、とてつもない広さの白い異空間があった。その空間を分ける様に真ん中に透き通った水が流れている。その水を辿って進んでいくが何も見えてこない。
--なんだこれ?行けども行けども何もないけど・・・よ~し!
「ユリアちょっと失礼するよ。」
クラウドはユリアを抱えて高速移動していく。時速70KMで1時間ほど移動すると、ようやく何か見えてきた。半径5㍍の円形状の池に光り輝く直径70cmの銀の玉が浮かんでいる。
池の傍に石板があって、そこには遥か昔に滅びた国の古代文字で説明が書かれていた。この玉はラルガデイテの玉である。悪用すれば世界は滅ぶであろう。この玉に魔力を注ぎ魔物の詳細を思い浮かべよ。そこに現れるであろうと書いてあった。
「クラウド様・・・これはいったい何でしょうか?」
「うん・・・ラルガデイテの玉って言って、魔力を注いだら魔物を生み出せるって石板に書いているみたいだね。」
「読めるのですか!?しかも魔物を生み出す!?」
「ん~、なぜか読めるみたい。危険な物みたいだねぇ・・・。」
「・・・・。」
--怖っ!こんな玉、悪用すれば確かに世界が滅びるなぁ。壊しておくべきかなぁ。でも、壊したらそこから100万匹の魔物が溢れ出すとかなっても困るし・・・いやっ、待てよ。もしかして、生み出した魔物を退治して魔元核石も出るとしたら・・・試してみるか。
クラウドはゴッドグランシーズの柄杓を伸ばして玉を取り、まずは比較的イメージのしやすいホワイトスライムキングを思い浮かべて魔力を注いでいく。
少しして魔法陣が構築されて、LV30ホワイトスライムキングが7匹現れる。
--えっ?7匹も!そんなイメージした覚えないけど、とにかく倒すか。
「大変です!クラウド様。ホワイトスライムキングです!しかも7匹も!早く王国軍に知らせませんと!!」
クラウドは右手を前に出してゴッドグランシーズの鎧から長い針をいくつも伸ばして7匹まとめて弱点を狙い突き刺した。ホワイトスライムキングは細かく飛び散って魔元核石が7個出現する。
「えっ?先程の魔物はホワイトスライムキングですよね。」
「そうだね。生み出せるし、魔元核石も出るみたいだね。」
「クラウド様・・・・私が驚いているのはホワイトスライムキングが1匹現れただけでも軍隊が出動する程の魔物で、それが7匹も現れたからだったのですが・・・。」
「えっ、軍隊で倒す魔物なの?確かに初めて倒した時は死ぬかと思ったなぁ。」
「それを7匹まとめて一瞬で倒されるなんてクラウド様・・・強すぎます。」
「まぁ、取り敢えずユリア吸収してみてくれる?」
「はい。」
ユリアが2個目を吸収した所でふらつく。
「ユリア!!どうかした、大丈夫かい!?」
「はい・・・少し気持ち悪くなって・・・。」
--しまった!!自分で試しておけばよかった。生み出した魔物の魔元核石ではやっぱりダメなんだ!
「エターナルヒール!」
「どう、ユリア!」
「はい、さっきよりは良くなった気がします。」
--あれっ?完全に治ってないのか?もしかして、身体の異常ではない?
クラウドは残りの玉を吸収してみる。
--やっぱり問題ない・・・。
よく見るとユリアの周りに、ほんの僅かなオーラが漂っている。
--んっ?この光り方は玉を吸収した時に出るオーラに似てる?・・・そうか!もしかしたら急に魔元核石を吸収しすぎて身体に吸収しきれてないのかも?・・・でも自分は何ともないんだけどなぁ?
「取り敢えずユリアは休んでおいてくれる?」
クラウドは少し効果の上がったヒールブロックをユリアの周りに張った。
「クラウド様・・・有難うございます。凄く安らぎますね、これ。」
「そう、じゃあちょっと待っててね。」
クラウドはホワイトスライムキングを次は20匹、30匹・・・・と生み出しては倒していく。
--よし、このくらいで良いかな。
そこには350匹分の魔元核石が転がっている。クラウドはそれをすべて吸収してスキル欄を確認してみる。ヒールブロックは名前を変えてヒーリアルデアエリアとなっていた。
--さっきの事もあるし自分で試しておこう。ヒーリアルデアエリア!
クラウドは、この世界にいるのに何処か別の不思議な世界に包まれた感じがある。それは言葉で言い表せない程、心地よく・・・母の胎内にいるかのように幸せを感じる。まるで身体が生まれ変わったみたいである。
--・・・・・・気持ちいい・・・・・あっ!ユリアに掛けてあげないと!
クラウドは問題ないことを試した後、ユリアに一人サイズのヒーリアルデアエリアを構築する。
「これでどう、ユリア。」
「・・・・・あっ・・・はい・・・とても心地よくて・・体調も全く問題ありません・・・すぐにでも戦えます・・・。」
「もう少し休んでいた方がいいよ。」
その間に不気味な寄生生物であったLV40グルンガルを大量に倒して魔元核石を吸収していった。死体は邪魔なのでリングボックスにすべて吸収した後、何もない谷にでも捨てようとクラウドは思っている。
スキルの呪い耐性アップ及び状態異常耐性アップは変化して呪い無効、状態異常無効に変化した。レベルは43まで上がっている。
--この耐性アップスキルはユリアにも後で覚えてもらおう。
次はLV60ツインサイクロプスを2匹生み出す。慣れたのか、生み出す数の調整も上手く出来る様になっていた。倒し方は先程のグルンガルを倒した時と同じである。ゴッドグランシーズの部屋を用意して、その中に魔物を生み出す。何もできない魔物を部屋の中で多数の剣で突き刺していく。
--ん~。何か虐待みたいで嫌だなぁ・・・・でも我慢、我慢。出来る限り強くなっていないと、魔神に勝てないような気がするし・・・。
次々にツインサイクロプスを生み出しては倒していく。450匹倒した所で魔元核石を吸収していく。スキルを確認すると魔眼スキルは真眼スキルとなり魔眼耐性アップは魔眼無効、真眼無効と変化していた。レベルは65となっている。
--真眼?
スキルの詳細があった為、調べてみる。真眼を発動して見たスキルや魔法を取得可能。また、相手の目を見ながら、相手のスキルや魔法を確認すれば一生涯封印が可能。真眼で解除も可能。魔眼効果はアップして眼を見た生き物を操れる、解除も可能。そのほかの効果は動体視力アップ、遠眼、顕微眼、医療眼があった。
--真眼スキル凄すぎる!遠くを見れるのは、もうあったけどね。
クラウドは真眼を発動して眼の瞳孔が銀色に変化する。医療眼スキルでユリアを見たところ、現在は問題ないようだ。身体の周りを覆っていたオーラも消えていた。その後、食材確保と真眼の効果を試すためチェキデアを筆頭に魔物を大量生産しては倒して訓練を終了した。
--念のために今日はユリアの魔元核石の吸収を止めておこう。そろそろ、お腹空いたしチェキデアの蒸し焼きと行こうかな。
クラウドは魔元核石やラルガデイテの玉を収納して、ヒーリアルデアエリアを解除しユリアを呼ぶ。
「ユリア、ご飯にしよう!」
「はい、クラウド様。」
クラウドはダウゴウラを調理した時と同じようにチェキデアを蒸し焼きにしていく。ユリアはその横でクラウドが創った机と包丁で街で買っておいた野菜を切っている。
「「頂きます。」」
「!!・・・美味しい!さすが高級食材というだけあって凄く美味しいね。」
その味はやはり蟹に近く、旨味を凝縮した柔らかな身から溢れ出て来る肉汁も最高である。匂いも凄くいい香りでどんどん食が進む。ソースをかけた付け合わせのサラダもサクサクして美味しい。
「そうですね。私は数回ほど食べたことがありますが、これほど美味しいものは初めてです。」
「そうか、ユリアは一等貴族だったから高級食材も食べてるよね。そういえば話変わるけどユリアの貴族的な言葉使い減って来てるよね。」
「はい、この方が話しやすいものですから。駄目でしょうか?」
「いやいや、ユリアが話しやすいのであれば問題ないから。ふと、思っただけだし。」
「あっ、あとゴメン!実は・・・謝らないといけないことがあるんだ。」
「何でしょう・・・?」
「この前、ユリアが寝ている間に契約の首輪を外しておいたんだ。ユリアの決意を無駄にして申し訳ない!ユリアが自分の奴隷っていうのが辛かったから。・・・首輪なんかなくても心は繋がってるよね。」
「そんなことを思って頂いてたのですね。私、首輪などなくてもクラウド様に一生御奉仕していきますから。これからもずっと宜しくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします・・・ふ~、良かった。」
「でも、今私が着けてるスカーフの下の首輪って・・・。」
「それはゴッドグランシーズで色も形も似せて作った首輪だよ、今から消すから。」
「そうなのですか、でも消すのは待ってください。このままこれを着けていたいのですが。」
「構わないけど、魔法だからいずれ消えてしまうよ。」
「はい、それまで大事にします。」
「そう、分かった。」
クラウドは昼食を美味しく頂いた後、ユリアを連れて高速移動していく。やがて異空間の端に辿り着くと入ってきた入り口の壁に魔力を注いで出た。
一方、ドレボを含む冒険者一行は4階でLV21バダーンという腕が4本あって手に鋭い爪があって振り回してくる魔物と戦っていた。魔物の体は剛毛に覆われていて身長は約2.3㍍ある。
「くそっ、こいつ剣が通らないぞ!魔法もあまり効果ないし・・・ぐはぁ!・・・シェルファ・・回復を・・・むっ、向こうからも2体来ている?ありがとうシェルファ!回復した。皆!逃げるぞ!!」
「ウェルザ!霧の魔法で目くらましを!」
「はい!」
ドレボ達は3階へ、急ぎ逃げ戻る。
「ハァ・・・ハァ・・・ここまで来れば大丈夫だろう。皆、大丈夫か?まさかもう遺跡の主に出会うとはな。」
「ドレボ様、アグナシダ遺跡は最下階が地下15階です。殆どの場合、最下階に遺跡の主は居る筈ですし3体も居ましたけど・・・。」
「多分、例外が起きたんだろう。まさか私の時に、それが起こるとはな。変な地震も起きたことだし気を付けた方がいいな。取り敢えず街へ戻って宿を取り、対策を練るとしよう!そろそろ皆、私と同じ部屋で」
「「「嫌です!!」」」
「そ・・そうかまだ早いかな。それでは戻るとしよう。」
クラウドは地下4階のバダーン3匹を瞬殺して地下3階に上がる。
--あっ、しまった。まだあいつ居たんだ。よし!誰も居ないことにして通り過ぎよう。
「何だ、君たちも遺跡の主から逃げて来たみたいだな。ユリア殿!これで分かっただろう。私についてきた方が安全という事を。」
--遺跡の主?そんなの居たかなぁ?まぁ、いいか・・・誰も居ない、誰も居ない。
クラウド達は何も無かった様に横を通り過ぎようとする。
「ユリア殿、聞いておるのか?グハァ・・・シェルファ・・・回復を・・・。」
無視して通り過ぎようとしたユリアの手を取ろうとして、杖でドレボは顔を殴られる。それを見て他のメンバーが戦闘態勢に入る。
--やっぱりこうなるのか・・・。
クラウドは真眼を発動して2秒ほどドレボ達の意識を奪う。そのままユリアを抱えて高速移動し遺跡を出た。
「あれっ、ユリア殿は?」
「「「さぁ・・・。」」」
クラウドは遺跡から出て誰も居ないことを確認するとユリアを降ろした。
「それじゃあ、空の旅を楽しみますか。」
クラウドとユリアは空へ旅立つ。いくつもの森を越え山を越えると巨大な街や、その中心にそびえ立つ王城が見えてくる。人に見られないように少し離れた場所でユリアと共に回転着陸した。
「・・・ここからは歩きで行こうか・・・。」
「・・・はい・・。」