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LUCK   う~ん・・・勇者?  作者: ススキノ ミツキ
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第11話 大きな買い物

 今、泊まっている宿が町のかなり南に位置し、近道して飲食店へ向かおうとしていると、少しほの暗い通りで肌の露出度が高く色っぽい格好をしたお姉さんたちが道に立っている。その中には獣人族も居てこちらがユリアと一緒に歩いているにも拘らず声をかけてくる。


「お兄さん、私と遊んでいかない~、そちらの女性も一緒でいいわよ~。」


「クラウド様!見ては駄目ですよ!」


 ユリアはクラウドの顔の前に回り込み、ほっぺを少し膨らませる。


--可愛い~~!やきもちかな。


「違う道を通ろうか。」


「はい!」


 クラウドはマップを見ながら道を少し引き返す。遠回りで大通りへ進んでいった。


「ここまで来ると色々なお店があるねぇ。何が食べたい?ユリア。」


「私は好き嫌いもありませんのでクラウド様にお任せいたします。」


--どこの店も人がいっぱい入っているから美味しそうに見えるなぁ。んっ!?この貼り紙は・・・・・これいいかも。


「ユリア、お腹の余裕がまだ大丈夫であれば寄りたい所があるんだけど。」


「はい。大丈夫です。」


「家を買おうと思ってるんだ。今回、宿を取るのも大変だったし。」


「家ですか!?」


「そう、世界各地を回るのなら、その各地に家があれば宿を取る必要もないしね。」


「世界各地に!?クラウド様は、お金持ちなのですね。・・・分かりました。ではハウスホームに行けばいいと思いますわ。この辺りは何処にあるのか存じ上げませんけれど。」


--ハウスホーム?意味が被ってる気がするけど、不動産屋みたいなものかな?・・・この町にも結構あるなぁ。それほど遠くないみたいだしギルド傍のハウスホームに行ってみるか。


 クラウドたちはハウスホームへ到着して中に入る。壁には賃貸や建売住宅の詳細情報と金額を表示したチラシがびっしりと貼られていた。


「いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか?」


 中に入ると営業の女性がこちらに近付き話しかけてきた。


「はい、一軒家を買おうと思っています。」


「そちらの方とお客様の夫婦二人でお住まいになられますか?だいたい一軒家であれば家族が増えるのを想定して、ご家族用の家をお買いになる御客様がほとんどですが。」


--夫婦に間違われて、ユリア嬉しそうだな。否定しないでおこう。住む家ねぇ~、どうせならドンと豪華な家にしようかな。ユリアも喜んでくれるかもしれないし。


「え~と、家は広くて豪華な感じで。あと出来れば色々と便利な場所がいいですねぇ。」


「お客様、ギャドリグ公都でそれですと、どうしても10000デロを超えてしまいますが・・・。」


「そうなんですか。」


「こちらなんか如何でしょうか?かなり狭くはありますが建ってる場所も殆どの種類の店に歩いて30分。また金額も3300デロと大変お買い得となっております。もちろん分割払いも可能です。」


--おっ、このチラシの家、すごく広いし街の中心部に近い!庭も広いし何より高い塀で囲まれてるから空への離着陸時、便利そうだ。


「すみません、ここにします。」


「お客様、そこは一等貴族様用に建てられた屋敷で7万!7000デ!ロ!となっております。」


--そんなに大きい声出さなくっても聞こえてます。他のお客さんも笑ってるし、この客金額の桁間違えてる?・・・みたいな感じで思われてるんだろうな。


「はい、7万7000デロですよね。そこでお願いします。」


 他の客の顔色が変わる。先程笑っていた夫婦達の中には妻が夫に「もっといい家にしましょうよ!」と詰め掛けて夫が困っている様だ。


 営業の女性はというとクラウドが金額を把握していることに気付き目の色が変わる。ユリアは貴族であったにも拘らず広い家には全く関心がない様である。


「クラウド様・・今は二人で住むことですし、その様な広い家でなくても良いのでは。」


「おっ、お客様!この屋敷は大へ~~~~ん!!オススメでございます!多くの色々な店もすぐ傍にあり、庭も最高の庭師が仕上げたものです!広さも50人が暮らしても不自由なく暮らせるスペースがございます!お風呂に関しては露天風呂一据えと室内のお風呂3据えの計4据え御座います!一度見ては如何でしょうか?宜しければご案内いたしますので!」


--日本を基準に考えると、かなり安く感じるなぁ。お腹も空いてるし、もうここに決めよう。


「いえっ、もうここに決めたので。」


「クラウド様、いけませんわ!高い買い物をするときには慎重に選びませんと。」


「そうかぁ、それじゃあ一度見てみようかな。」


「かしこまりました。直ぐに馬車をご用意いたしますので少々お待ちください。」


 クラウド達は店員二人と共にVIP用の馬車で屋敷に向かう。屋敷に着くと案内係の男性が建物外部と内部がどれだけ優れているかを説明していく。三階建ての内部は広いロビーの中央に大きな階段があり吹き抜けで天井が高い。厨房もお店を開くのかと思うほど大きく広い。外部には高い塀があり屋敷の死角になっている広い庭を利用すれば飛ぶ際の離着陸は問題ないようである。トイレも内部と外部合わせて15室もある。


 シャンデリアや厨房またお風呂、空調等それぞれの機能を発揮するには屋敷に設置された畜魔導機と呼ばれる物に魔力を注ぐ必要がある。この世界では常識であるがクラウドが質問した為、説明を受ける。誰でも魔力さえあれば注ぐことが出来るが、殆どの家庭は二週間に1度、魔力を注ぐ事を仕事とした畜魔導屋に依頼している。


「うん。綺麗だし広いしやっぱりいいね。」


「そうですわね。」


「そうでございますか。では明日の昼頃までゆっくりと見て頂くことも可能で御座います。そのために新品の布団もご用意しておりますので。」


「いえ、買うことはもう決めましたので、明日お金を用意しておきます。受け取りに来て頂く事は出来ますか?」


「7万7000デロを一括払いでしょうか!?」


「そうです。」


「・・・・あっ!ありがとうございます!!それでは明日、家と土地の譲渡契約書及び権利証をお持ち致します。ごゆるりとお過ごしくださいませ!!」


 そう話して案内係は帰って行った。クラウド達は家を出て食材を買ってくる。そのついでに泊まろうとしていた宿は、お金を支払ってチェックアウトしてきた。まだ厨房は使わずに広い庭でバーベキューをする事にした。


--そういえば蒸し焼きにしたダウゴウラ腐ってないかなぁ。


 クラウドはゴッドグランシーズのテーブルを出して、その上に置いてみる。出すと蒸し焼きにしたダウゴウラは調理して食べ終わった直後の温かさと全く変わりの無い状態で出て来る。


--えっ!?リングボックスの中って、時間の流れが違うのか?まぁ、これなら冷凍庫も必要ないかもな。屋敷には設置されているらしいけれど。


「クラウド様、焼けて来ました。」


「美味しそう、頂きま~す。」


「いただきます。」


 クラウド達がご飯を食べ終え、片付けしている最中にユイアレス王子から連絡を受ける。


「クラウド、王都へは順調に向かってきておるか?馬車で1週間ほどは掛かるであろうが出来る限り早く来てくれ。困ったことが起きておるのだ!バルゴ魔帝国の動きが活発になっているにも拘わらず西のグラディアル帝国が隣国であるボルドア王国へ戦争の準備をしているとの情報が入った。それ以降の連絡は途絶えておる。詳しい話は到着次第するゆえ、悪いが急いできてくれ。頼んだぞ!」


「分かりました。」


--もしかしたら魔神が強さを増したのと何か関係があるのかも。世界各地を回って魔神に対抗できる力を身に着けないといけないけど・・・ここは王都へ急いだほうがいいな。


「ユリア、明日の家の契約が終わったら、王都へ向かおうと思うんだけど、御両親たちに再度会いに行く?」


「いいえ、有難うございます。少し寂しくはありますが、別れの挨拶は先日済ませました。私はクラウド様の傍に居れさえすれば幸せですので。」


 クラウドはそっとユリアを抱きしめ、軽くキスをする。


「よし、明日に備えて今日は早く寝ることにしようか?」


「はい、クラウド様。」


--馬車で1週間なら空を飛べば1時間ほどあれば着くけど、この先ユリアと危険な場所を回るのであれば、この近くの遺跡でユリアをレベルアップさせておいた方が安全だな。


「それと明日王都へ行くけど、その前に遺跡に行こうか。ユリアのレベル上げをしておきたいんだ。」


「分かりました。今のままでは確実にクラウド様の足手まといになっていますし・・・。」


 ユリアは少し俯き暗い表情を見せる。


「さっきユリアは自分が傍にいてくれさえすれば幸せって言ってくれてたよね。自分も一緒だよ、ユリアが傍にいてくれれば幸せなんだ。それに強くなければ強くなればいいだけだよ!」


「はい!私強くなります!」


 ユリアはクラウドに抱き着く。クラウドは優しく受け止め、額に口づけた。


・・・・翌朝、預金所で8万デロ引き出して屋敷に戻り家の譲渡契約を無事終える。そして屋敷の庭から空に舞い上がりアグナシダ遺跡に向かった。

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