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LUCK   う~ん・・・勇者?  作者: ススキノ ミツキ
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第10話 グラスカ森

「いくらぐらいあれば買えますか?お金を渡しておきますので。」


「クラウド様、このような高級店ではなく、普通の服店でお願いします。」


「いやっ、ここでお願いします。1000デロで足りますか?」


--使い切れない程、お金があるし王国の事を考えると沢山使ってあげる方がいいだろう。


「そっ、そんなに必要ありません!?では、20デロお願いいたします。」


--多分遠慮して言ってるだろうな。


「では、100デロを渡しておくので使い切って下さい。これはお願いです。」


「分かりました。お気遣い頂いて申し訳ございません。」


 ユリアが大量の服を持った店員と出てくる。その服全てをリングボックスに収納すると店員が驚いていたが、構わずユリアと共に次の店に向かう。ちなみに、ギャドリグ公都では夜も人通りが多く深夜まで開いているお店が殆どであった。


 ユリアの首には白い生地に青い花柄のスカーフが巻かれていた。他の服も青が必ず入っていたのでクラウドの服に合わせたようだ。


「次はこの武器防具店に入ってみましょうか?」


「はい。」


 店の中には沢山の装備があり、見た目だけでは使用方法の判断できない装備も置いてある。


「ユリアさんは魔法が得意なのでしたよね。」


「そうです。中でも氷魔法が得意です。」


--となると魔法の効果の上がる装備かぁ。


「では、そのエッドレイロッドとかどうですか?この中では一番魔法効果が上がる様ですし。」


「クラウド様、こちら320デロもしますけど。」


「ああ、いいんです。デザインが気に入りませんか?」


「いえっ、このような綺麗な杖、魔法騎士学校でも使ったことありませんわ。」


「それではこれにしましょう。」


「クラウド様!?」


 ユリアが驚いているが構わずクラウドは店員にキープするよう話している。


「あとは防具ですね。一番いいものにしましょう。」


「なるほど、これが良さそうですね・・・魔法も物理衝撃も和らげてくれる、必要時に防御結界魔法の掛かるこのラーレドレスと魔力の消費を抑えれるスエコデアネックレスを下さい。」


「さすがお客様お目が高い!こちらは合わせて920デロとなっております。」


「ではそれをお願いします。」


「それではお客様、少し手直しいたしますので、こちらへどうぞ。」


「いえっ・・クラウド様。」


 ユリアが女性のスタッフに少し強引に連れていかれ、身体に合わせ装備の手直しをしている間に支払いを済ませておく。


--そういえば色々あって晩御飯まだだったなぁ。ユリアさんもお腹空いているだろうし遅くまで開いているギルドで食事にするか。あっ!宿も取ってない。まぁ、お店がこれだけまだ開いているぐらいだから、食事した後でも大丈夫か。


 クラウドは本当は一人分の宿をイレナから御礼として提供されていたが、色々あって完全に忘れている様だ。


「お客様、お待たせいたしました。」


「どうですか?クラウド様。」


 ユリアは新しい装備を着けてうれしいのか、クルッと回り問い掛けている。


--・・・可愛過ぎる。


「クラウド様・・?似合ってませんか?」


「いやっ!似合ってます!凄くかわいくて美しいです。」


「ありがとうございます、フフフ。」


--天使だ!ここに天使がいる。


 クラウドとユリアは店を出て、夕食ならぬ晩食を食べるため、ギルドへ向かった。ギルドへ着くとユリアは男たちの視線を一身に受けるが本人は気付いていないようだ。


 クラウドは給仕に美味しいプグキ鳥の肉料理二人分と少しアルコール弱めのクルクス酒とラドラドという木の実から出来る少し酸味のあるジュースを注文して待つ。


 しばらくすると給仕がお酒とラドラドのジュースを持ってくる。その後にすぐ肉料理も出てきた。


「この肉、柔らかくて凄く美味しいですね。」


「はい、美味しいです。特にこういう場所で食べるのが初めてですから楽しいです。」


--貴族のお嬢様だから箱入り娘なのかな?


「そうですか。」


 クラウドたちが食事を楽しんでいると一人の男性が傷だらけで現れる。その男はギルドの受付に走っていき依頼をしていた。依頼内容はギャドリグ公都から少し離れたグラスカ森の傍でグケグジ蜘蛛3匹に襲われ娘のリアヌ五歳がさらわれたので助けて欲しいとの依頼だ。


 グラスカ森はアグナシダ遺跡から近い為、遺跡から出てきた魔物が住み着いている。夜になると森の魔物の動きが活発となるため、ギルドの依頼ランクはCランク3人以上となっていた。


 職員も男性を哀れに思ったのか冒険者らしき者へ声をかけて回っているのだが、夜の森へは行かないと皆断っていた。


「誰かお願いします!!娘を助けてください!!」


 男性は泣きながら、そう叫んでいる。


「ユリアさん、食事中すみません。あの人の娘さんを助けてあげたいので、ここで待っててもらえませんか?首輪は外していきますので。」


「クラウド様なら、そうおっしゃると思っていました。私も御一緒します。娘さんを助けに行きましょう!」


「そうですか。では・・・。」


 クラウドはギルドの受付カウンターへ行き依頼を受けようとする。


「娘さんを助ける依頼を受けたいのですが。」


「申し訳ございません。ギルドランクC以上の依頼となっています。折角ですがGランクのクラウド様では・・・。」


--早く助けないと娘さんが危ないかもしれないし勝手に助けに行こう。


 そう思い振り返ろうとするとカウンター奥から一人の男が出て来る。


「いいじゃねぇか。依頼してやれ!子供の命が掛かってんだ!責任は俺が持つ!」


「ギルドマスター!?宜しいのですか?」


「あぁ、一目見ただけだが俺の勘じゃコイツは只者じゃねぇ気がしてるしな。クラウドだったか、レベル20以上はあるんじゃねぇのか。」


「はい、一応今のレベルは32です。」


「32!?何だってそんな奴がGランクにいるんだ!まぁいい、この依頼が成功したら報酬の他にCランクにしてやる。本当はBランクと言いたい所だがそこまでの権限はねぇんだ。ほれ、これで依頼発行成立だ。宜しく頼む!」


「はい!」


 ギルドを出てマップでグラスカ森へのルートを確認する。


--町を出るまで30分、グラスカ森まで馬車で2時間40分という所かな?一刻の猶予もないから着地が心配だけど飛んでいくしかないな。あと、ユリアさんもいるしなぁ。


 クラウドはマップで確認し、少し開けた人気のない裏道へと急ぐ。道中でガラの悪い4人組に絡まれるが時間が無い為有無を言わさずゴッドグランシーズを4人全員同時に叩き込み、一瞬で昏倒させる。


 更に人に見られないように壁を作り出した。


「ユリアさん、一刻を争うので今から空を飛びます。高いところは平気ですか?」


「クラウド様のおっしゃっている意味は分かりませんけれど小さいころから鳥の様に空を飛んでみたいと思っていました。」


「あと着地がかなり目が回るのですが大丈夫ですか?」


「クラウド様も一緒にいてくださるのであれば。」


「勿論、傍にいます。」


--というか一緒に回転します。


「それでしたら大丈夫です。」


「それでは行きますよ。」


 クラウドはユリアを抱き寄せゴッドグランシーズの羽を広げ、空へ舞い上がる!二人で飛んだ為、バランスを取るのが難しく少しフラフラとするが羽を更に大きくして安定した。


「うわぁ~、クラウド様!私、鳥になったみたいですわ!」


--可愛い、うんうん。


「怖くないですか?大丈夫な様でしたら、もっと急ぎます。」


「大丈夫ですわ。全く怖くありません。」


「それでは急ぎますよ~!」


 クラウドはスピードを今可能な安全ギリギリの速度に上げゴォォ~~~!!という轟音と共に突き進む。


 約5分程でグラスカ森直前まで到着すると出来るだけ平坦な場所を探す。ゆっくりと速度を落として着地するのだが、二人抱き合いながらゴロゴロゴロゴロ・・・・・と転がっていく。


「ふぅ、やっぱり着地が上手く行かないなぁ。大丈夫?ユリアさん。」


「はい、少し目が回りましたけど大丈夫です。」


 クラウドはマップを開きリアヌを探す。


--よし!!まだ無事みたいだ。


 クラウドはマップで確認したリアヌの場所を望遠と透視を併用し再確認する。


--大変だ!!急がないと!


 そこには蜘蛛の糸でグルグル巻きにされ身動き出来ないリアヌの傍でLV5~8グケグジ蜘蛛7匹が何かの動物を捕食していて、食べ終えるところであった。


 クラウドは直ぐにユリアをお姫様だっこで抱え高速移動を開始する。


--頼む!間に合え!


 森を駆け抜ける!活性化した魔物達がクラウド達に一瞬だけ反応するが振り向いた時には、その方向に何も無かった。移動を続け、かすかにリアヌが見えだすと、既に動物の獲物を食べ終えたグケグジ蜘蛛がリアヌに襲い掛かろうとしている。


--クッ、ゴッドグランシーズ!!


 クラウドは高速移動で近付きながらゴッドグランシーズのハンマーで襲おうとしている2匹の蜘蛛を吹き飛ばす。それと同時にグルグル巻きにされたリアヌの上部の糸を切り落とし保護する。


--ほぉ~、間に合った。


 リアヌに巻かれた糸は身体との間にゴッドグランシーズを薄く構築して一気に広げ弾き飛ばした。


「大丈夫かい、リアヌちゃん。もう心配ないからね。」


「うわぁぁ~~~ん!!お兄ちゃん!怖かったよぉ~!」


 リアヌがクラウドに抱き着いてくる。


「ユリアさん!リアヌちゃんを頼む。」


「はい!リアヌちゃん、こっちへおいで!」


 グケグジ蜘蛛は獲物を取られた怒りでキィ~~~!と威嚇しながら、こちらへ向かってきた。それを見たユリアが魔法を詠唱して構築していく。


「ラーレ・・・・ハリク・・・・デト・・・・デアアイスランス!」


 クラウドはゴッドグランシーズの剣で蜘蛛を瞬殺しようとするがユリアの詠唱を聞いて思いとどまった。


--いい機会だし様子を見てみるか。


 ユリアから放たれた10本のアイスランスは全弾命中する。先頭の3匹に2本ずつ残りに1本ずつ命中して5匹は倒れる。残りの2匹は怯みはしたのだが向かってきた為、クラウドが剣で瞬殺した。


--おぉ~、さすが魔法学科トップ!全弾命中だ!


「クラウド様!見てください!クラウド様が倒した2匹から魔元核石が!!」


「あぁ~、そういえば言ってなかったですね。自分が倒すと何故か必ず落とすんです。」


「・・・・クラウド様って本当に不思議な方ですわよね。高速移動したり、空も飛べたり聞いた事もない魔法をたくさん使われるし、魔元核石は魔物を倒すと必ず出現するなんて。」


「ははは、何故だろうね!でもこれは内緒にして下さい。」


「分かりました。」


 話している間に夜になり活発となった魔物達が戦いの音を聞いてたくさん集まって来ていた。


「おぉ~、沢山集まって来たねぇ~。30匹ぐらいかな?」


「クラウド様!早く逃げませんと!」


「あぁ~、このぐらい大丈夫だよ。」


 クラウドは、もう少し近付いてきたら剣で倒そうと思っていたのだが急に魔物達は居なくなってしまう。


 ドゴドドド!!バキバキ!!ドン・・ドン・・ドン!地響きと共に木をなぎ倒しながらLV73体長7㍍のツインサイクロプスが現れた。


「なっ、何故サイクロプスがグラスカ森に!?しかも頭が二つという事は遺跡の主として出て来るようなツインサイクロプスですわ!レベルは最低60以上の筈です!クラウド様、私が囮になります!リアヌちゃんを連れて逃げてください。」


 クラウドは前に出ようとしたユリアをゆっくりと下がらせ、リアヌと一緒にゴッドグランシーズで包み込んだ。


「クラウド様、死ぬ気ですか!?待ってください!」


 ユリアはクラウドが死ぬ気で二人を守ろうとしていると思い込み泣いていた。リアヌは次々と出て来る魔物達への恐怖で声も出ずユリアにしがみついている。


「なんで泣いているの?ユリアさん、安心して。」


「クラウド様!」


 ツインサイクロプスは1トンを超える巨木を凄い速さで振り回しクラウドを潰そうとしてくる。クラウドはゴッドグランシーズの壁でそれを受ける。ドォ~~ン!!ドォ~~ン!!と当たる度に轟音を発するが壁には一つの綻びも出来ていない。頑丈なゲルクボルの巨木が逆に削れていく。


 ツインサイクロプスは無駄と分かったのか風の上級魔法サイクロンデッドを発動しようと魔法陣を構築していく。


「クラウド様!お気をつけ下さい!ツインサイクロプスは魔眼スキルと風魔法を使います!」


「了解!」


--風なら、こっちもお手の物ですよっと!


 クラウドはゴッドグランシーズの鎧から大きな剣を多数周囲に作り出し、そこへ大量の風を当てて高速回転していく。あっという間に暴風と共にカマイタチを発生させて周囲の木々を細切れにしていく。クラウドが発生させた暴風により巨大な竜巻が発生する。


 ツインサイクロプスが放ったサイクロンデッドは一瞬で消滅してツインサイクロプスも「グオォ~!」という悲鳴を上げながら切り刻まれ死んでいった。ゴッドグランシーズで守られた二人以外の場所は半径約100㍍の円状に森が消滅していた。


 クラウドは回転を止めると地面へ倒れこむ。


「クラウド様!!どこかお怪我を!?」


「いやっ、目が回って気持ち悪くて・・・。」


「フフフ、クラウド様ったら。」


「今日はここで野宿しよう!3人じゃ空を飛ぶのも難しいだろうし。ちょうどキャンプ場も出来たしね。」


--1番は気持ち悪くて動けないが正解!この技・・・二度と使いません・・・。


「フフフ、そうですわね。でもクラウド様には驚かされてばっかりですわ。」


 クラウドは気持ち悪さを抑えてツインサイクロプスの魔元核石を吸収する。クラウドはレベル47まで上がりスキルの魔眼と魔眼耐性アップを得た。


 ゴッドグランシーズを大きめに張り、二人に害が無いようにその外でダウゴウラの丸焼きを作ってみる。


 なるべく小さな光業炎をイメージして焼いてみると一瞬でダウゴウラは消し炭となってしまう。


--あちゃ~、駄目だ。何とかならないかなぁ~・・・おっ、そうだ!ダウゴウラをゴッドグランシーズで覆って凄く細い穴をいくつも開けてこれでよし!光業炎!


--おっ!上手く焼けそうだぞ~。良い匂いがしてきた。こんなものかなぁ~。


 クラウドは皮をはいで一口つまんでみる。


--おっ、美味し~い!なんだこれ!?今まで食べた中で一番美味しいぞ!丸ごと蒸し焼きが良かったのかな?まぁ、いいや。皆お腹空いてるだろうから持って行こう。


「みんなぁ~!出来たよ~。」


 クラウドはゴッドグランシーズの机といすを作り豪快にその上にダウゴウラを置く。甲羅を全部剥いであげる。フォークとナイフもゴッドグランシーズ製である。


「さぁ、どうぞ。召し上がれ。」


「お兄ちゃん!これっ、すごく美味しいよ。」・・バクバク、モグモグ・・ングッ。


「ほっ、本当ですわ!」


 皆、すごい勢いで食べて1/3食べ終わったところで満腹となる。勿体ないのでリングボックスに収納しておく。水分はクラウドがマップ検索で探して鑑定で安全を確認した水を確保した。


 深夜と言うこともありゴッドグランシーズ製の竈と煙突を着けて木を燃やし暖を取る。木はそこら中に落ちている細切れになった物をリングボックス内に収納する事で大量に集めた。


 更に柔らかいゴッドグランシーズ製ベッドを3人分用意していく。


--本当に、万能だなぁ~。ゴッドグランシーズ。


「ユリアさん、リアヌちゃんが寝るまで添い寝してあげてもらえませんか?」


「はい、クラウド様は?」


「自分も、もう少し暖を取ったら寝ます。」


--寝てる間にゴッドグランシーズが解除してたら大変だしな。解除しなければ一週間以上、軽く保ちそうな感じはあるけどね。確信ないし・・・。


「そうですか・・・。それではお休みなさい。」


「おやすみ(なさ~い)。」


 それから周りを警戒しながら木を焼べ続ける。4時間以上は経ったであろうか。少しづつ朝日も射してくる。魔物達はツインサイクロプスが倒されたことで本能的に、この辺りへ近寄ってこなかった。


--ん~、魔物全然出ないなぁ~。夜は活発になるって聞いたのに。ふわぁ~~、眠たい・・・。もう少し経って、朝になったら少し寝るか。


 クラウドは周囲の警戒を怠らず、木を焼べては周りを気にしていた。その少し前ユリアは目を覚ましていたがクラウドの優しさに感謝しながら目を閉じていた。


 やがてクラウドのいびきが聞こえるとユリアは音を立てないように起きてクラウドをすぐ傍のベッドまで引きずり、そっと寝かせる。ベッドに横たわるクラウドに添い寝しながら、起こさない様に長い髪を両手で上げて頬にキスをする。


「優しいウソつき様・・・チュッ。」


 クラウドは目を覚ます。


「あっ、しまった!寝てしまった。」


 そういいながらクラウドは起きるとユリアが傍にいて驚いたが二人が無事であることを確認するとホッとする。その様子を見てユリアは顔を赤らめながらクラウドへ囁く。


「クラウド様、もう朝ですし私が起きてますので少しはお眠りください。」


「じゃあ、もう少しだけ寝ようかな。」


「はい。」


 寝ているクラウドをそっとユリアは抱きしめる。


 一時間ほど仮眠を取り、クラウドは眠たい目をこすりながら起き上がる。


「う~ん・・・リアヌちゃんのお父さんが心配しているだろうし、そろそろ戻ろうか。」


「はい。」


 クラウドは魔物を警戒しながら森の外へ向かう。ユリアはリアヌの手を引いている。マップを開くと森に向かって近づいている一台の馬車が居る。


--父親か捜索隊かな?もしそうであれば行違わないようにしないとな。


 クラウドはその馬車が近づきそうな場所を目掛けてゴッドグランシーズで道を作っていく。


「リアヌちゃん、もう少しだからね。」


「うん、お兄ちゃん。」


 森を抜けると一台の馬車がどんどん近付いて来る。


「あっ、パパの馬車だ!パパ~!」


 リアヌが手を振る。向こうも分かったのか片手で手綱を握りながら普通の数倍の速さで振り続けている。馬車が目の前に泊まるとリアヌの父親アレドが急いで降りリアヌを泣きながら抱きしめている。


「リアヌ~!リアヌ~!良かった!良かった!リアヌ~・・・・・。」


「パパ~、怖かったよぉ~!うぁ~~~!」


「うん・・うん・・もう大丈夫だ!家に帰ろう。」


「・・・・うん。」


「クラウドさん、ユリアさん。本当にありがとうございました。さぁ、馬車にお乗りください。お送り致します。」


「ありがとうございます。」


 揺られながらクラウドはユリアはお互いの身体に体重を預けて仮眠をとる。約二時間半経ちギルドの前で起こされる。


「クラウドさん、ユリアさん到着いたしました。」


「・・あぁ、ありがとうございます。」


「いえっ、こちらこそ本当にありがとうございました!!」


 アレドとリアヌから繰り返しお礼を言われて分かれた。そのあと少し遅い朝食をとるため、ギルドのレストランへ行く。テーブルに座って料理を待っていると一人の男性が近づいてきた。ギルドマスターである。


「お前達、聞いたぞ!本当に間に合うとはな。良くやった!お前が只者じゃなくても時間的に厳しいと思ってたんだ。ここは俺が奢ってやる、いくらでも食べろ!後でカウンターで待っているぞ。俺が直々に報酬と新しいギルドカードを渡してやる。それじゃあな。」


「あっ、はい。」


 クラウドとユリアは昼食と兼用の朝食を食べた後、カウンターへ行き名乗ると受付の女性が少しお待ちくださいと言ってギルドマスターを呼んできた。


「おう。満足したか?これが成功報酬の115デロだ。あと、カードを発行するから、その上に手を置いてくれ・・・・ん?なんだこりゃ!お前レベル32って言ってたよな。」


「あぁ、グケグジ蜘蛛を倒した後にツインサイクロプスに襲われまして。」


「倒したのか!?」


「はい。レベルもそれで47に上がりました。」


「・・・・・ふははははは、こりゃあいい!本当に只者じゃなかったな。本当の実力はBランクじゃなくSランクだったか。Cランクのギルドカードしかやれねぇのが悔しいところだな。ほらよっ、出来たぞ。」


「有難うございます。」


 その後ユリアもギルドカードを発行してもらうのだがギルドマスターの権限でこちらもCカードをもらうことが出来た。


「だが、惜しかったな。ツインサイクロプスの魔元核石でも手に入れば、今だったら3万7000デロで買い取れたんだがな。」


--えっ、そんなにするんだ。でもお金は沢山あるしな。


「お前なら安心して依頼を任せられる。また、よってくれ。」


「はい。」


 クラウドはギルドを出て、しっかりとした睡眠をとるため、宿を探す。


「何か今日はいつにもまして人通りが多いですねぇ。」


「あっ!大変ですわ。クラウド様!今日は半年で一度のカジノのラッキーデーですわ。宿は取れませんかも。」


「えっ、何ですか?それっ。」


「カジノが行っているお客様感謝祭で、いつもより少ない掛け金で配当が大きいらしいのですわ。」


「なるほど、それで人が多いのですね。取り敢えず一軒ずつ回ってみましょうか。」


クラウドは1軒目、2軒目、3・・・6軒目を断られて現在7軒目である。


「あのぉ、宿を探しているのですが二部屋空いてないでしょうか?」


「あんたら運がいいねぇ~!滅多に、こんなこと無いんだけど二人用の部屋が一部屋キャンセルになった所だよ!これを逃したらどこにも泊まれないと思うよ。」


--う~ん、こんな可愛いユリアさんと同じ部屋・・・理性保てない、却下だな。仕方ない、どこかでキャンプでもするか。


「それではそこをお願いしますわ。良かったですね、クラウド様。」


--えっ、これは理性を保てるようよっぽど頑張らないと。


「今からでもチェックイン出来ますが、どうなさいますか?」


--まだ少し眠たいし晩御飯まで寝ておこうかな。


「お願いします。」


 クラウドたちは部屋へ通され説明を受けた。


--ベッドはダブルじゃなくツインかちょっと残念だけどホッとしたな。


「私は晩御飯まで少し眠ろうと思います。ユリアさんもそれまで自由にしてくださいね。あ~、疲れた~!」


 そう言いながらクラウドはバタッとベッドへ飛び込み布団をかける。


「はい・・・クラウド様はお疲れなのですね。」


 ユリアはクラウドの寝ている布団へ上半身を入れる。


「クラウド様、殿方はここをこうすれば元気になると同級生から聞いた事があります。こんなことは初めてですがクラウド様になら・・・パクリ。」


「ユリアさん!?」


--確かにそこは元気になります・・・駄目だ・・・突入。


「キャッ・・・クラウド様・・・んっ、そこは・・・あんっ・・・・・・初めてですので宜しくお願いします・・・あっ・・んっ・・・・・・痛い!・・。」


「ごめん、痛かったかい?止めようか。」


「いいえ、クラウド様と一つになれる幸せの痛みです・・お願いします・・・んっ・・・ん~!・・・・・・・・・。」


・・・・時間が過ぎていく。


「ユリアさん大丈夫でしたか?」


「クラウド様、ユリアと呼んでいただけないでしょうか?」


「ユリア、大丈夫かい?」


「はい、幸せを頂きました・・・チュッ・・・フフフ。大人へ近づいた気がします。」


「えっ?ユリアっていくつなの?」


「17歳です。」


「えぇ~~~!?」


--17歳でこのプロポーション!?年上だと思ってた。そういえば学校に行ってるってイレナちゃんが言ってた気がする。法律的に大丈夫なんだろうか?


 クラウドはユリアに確認したところ、この世界では結婚に年齢制限はなく身体が大人になっていれば〇〇〇も問題ないようだ。


--婚約者が二人いることも話さないとな。ルシルちゃんは周りに勝手に決められただけなんだけど。


 クラウドが説明すると少し悲しそうに話しだす。


「そうですか、でもいつか私もお嫁さんにして下さいね。愛しております・・・クラウド様。」


「はい、世界を救った後に必ず!・・・愛しているよ、ユリア。」


 ユリアはクラウドの発言を聞くのだが煌輝紋章石ホルダーである為、大変な仕事もあるのだろうとしか思っていない。まさか文字通り世界を救う為に動いているとは、この時は理解していなかった。ただ、愛してるの言葉だけが心に届く。


 そうして時間が過ぎていき、晩御飯を食べに出掛けていく。


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