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異世界人よ、大志を抱け!!!  作者: 植尾 藍
第6章 草原の馬
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6ー18 邂逅②

 食事が終わり「準備が整っております」というペニナさんの案内のままにお風呂に入る。柑橘系の果物がたっぷりと浮かんでいるお風呂に肩までつかる。そして、後頭部を浴槽の大理石の後ろに乗せる。

 浴槽に浮かんでいるのは、蜜柑みかんの大きさなのだけれど、緑色だ。前の世界で蜜柑と言ったら、黄色に近い色だった。しかし、この風呂に浮いている果実は、形や大きさは蜜柑のようだけれど、スダチのような緑色。皮をむいて食べてみたら蜜柑なのか、蜜柑じゃ無いのか分かるかも知れないけれど、酸っぱいと嫌だなぁなんて思う。湯気と共に香ってくる匂いにも、酸味がある感じだしね。


「アリサ・サアサキ様、こちらをお使いになられてはいかがでしょうか?」と言ってペニナさんがハンドタオルを持って来てくれた。彼女は私が湯船の縁、大理石に直接頭を乗せていることに対し気を使ってくれたらしい。気を使い過ぎだろうと思うし、別に固い大理石に頭を置き、ゆったりと湯船につかることもそんなに悪く無い。贅沢を言えば、ひのき風呂の方が個人的には好きなのだけれど、沢山湯船があるこの後宮でも、石以外で出来ている湯船はないから仕方が無い。


「湯で濡らしたのを頭に引くと気持ちが良いですよ」とペニナさんは言って、ハンドタオルを湯に浸けて、軽く水を絞る。湯にタオルを入れないでよ、という抗議の声が喉元までやって来たのだけれど、気にしたら負けだと思い、頭の所に敷いてもらったタオルに頭を委ねる。ペニナさんの言う通り、石にじかに頭を置くよりも気持ちが良かった。


 ゆっくりとお風呂に浸かり、天井を眺めながら考える。ロトラントさんに会って何を話そうかと。


 ロトラントさんをタキトス村からここまで連れてきたのは、ロトラントさんが生活の保障をする、と言ったからだ。たしかに、前の世界でもタキトス村でも考えられないような贅沢をさせてもらっている。専用の使用人や専用の音楽演奏係までいる贅沢な暮らしだ。それに私専用の料理人までいるらしいし。

 確かに生活の保障ということでは、私の想像以上の水準だ。でも、結婚をするということは別問題である。しかも、私が結婚するにしても、他に3人もお嫁さんがいるなんて考えられないと思う。浮気だ、浮気。それに、3人とも、それぞれの魅力があって素敵だし。私はプリスキラさんやシエルさんのように豊満なのがあるわけでもないし。ワシュテアさんよりは少し大きいかななんて思うけれどね、って、私は何を考えているんだ。とりあえず、結婚はないなぁ。後宮の人やプリスキラさん達も結婚前提でいろいろ話をしてくるし、最近はめんどくさいからいちいち否定していないけれど、どうなのだろう。会議で、壇上にあがって、熱心に平和を訴えるロトラントさんは、確かにかっこよかった。平和を本当に望んでいるというロトラントさんの思いが、私の胸にしっかりと響いた。自国民が戦争で死んでは困るアメリカから圧力が掛かっているというのがバレバレなのに、すまし顔で、集団的自衛権の行使は合憲である、なんて言っている前の世界の政治家に、ロトラントさんの爪の垢を煎じて飲ませてあげたいと思うくらいだ。それくらい、ロトラントさんは、平和を望んでいたし、主張も心がこもっていた。

 ちょっとだけ、ほんのちょっとだけだけど、素敵だ、なんて思って、結婚というか、お付き合いをする、というようなことが脳裏をかすめた。

 でも、4番目の妻とか、おかしいって思うもんね。


 そういえば、プリスキラさん、シエルさん、ワシュテアさんは、そこのところに不満とかないのだろうか。もし、私がロトラントさんの妻だったとして、「今夜は、プリスキラと同衾する」なんてロトラントさんから言われたら、傷つくと思うのだけれど……。妻とかではなくて、後宮で働かしてもらうとかで良いのだけれど、どうしよう。その辺り、ロトラントさんに相談してみるべきだろう。


 そして、問題は戦争のことだ。イコニオン国とザンドロス国が戦争をする。ザンドロス国がイコニオン国を攻めるのであれば、必ずタキトス村を通る。また、タキトス村に被害が出る。それだけではない。戦争になると、イコニオン国だとコルネリウスやラッシさんなどが戦いにでるのであろう。ザンドロス国であれば、ダンサーのアヒルドさんのような人達が戦争に出るのだろう。私の知り合いが、敵味方に分かれて戦うことになるというのは、とても悲しいことだ。戦争という具体的なイメージを描けないのだけれど、コルネリウスが全力で、人を殺そうという意思を持って、剣を振り下ろしているのを想像すると、恐くなる。充血した目、つり上がった眉、雄叫びを上げながら剣を振るうコルネリウスなんて想像するだけでも恐い。優雅なダンスを踊るアヒルドさんが、返り血を浴びているところなんて、想像したくない。


「アリサ・ササキ様、少し長湯をし過ぎかとと思います。あまり長く入られると体に毒でございます。飲み物を持って参りましたので、お飲みください」と、ペニナさんが話しかけてきた。彼女は手にコップを持っていた。私はそれを受け取り、飲んだ。葡萄ジュースだった。甘酸っぱい味で美味しかったのだけれど、その深紅は、私に血の色をどうしても連想させ、私の頭にそのイメージは残り続けた。

読んでくださりありがとうございます。

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