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3人が中庭から退出していったのを見届け、私も階段を降りた。下には、ペニナさんが待っていてくれた。この人は、ずっとここで立って待っていたのかと気になる。1時間以上私達はお茶会をしていた。その時間、立っているだけなのはきついだろうに。
「お帰りなさいませ、ササキ・アリサ様。奥様方はいかがでございましたか? 」と、言いながら笑顔を作るペニナさん。
「お待たせしました。ずっとここで待たれていたんですか? 」と、気になることを聞いて見る。
「はい。お待ち申し上げておりました」と、彼女は一礼をした。
「ずっと立ったままって大変ですよね。すみませんでした」と私は言った。
「とんでもございません」と言った後、「私は、ササキ・アリサ様よりも若いのです。それに私は、アルウェルス族の一員。少しばかり立っていたぐらいで疲れるなどあり得ぬ事です」と彼女は続けて言った。口調は柔らかくて笑顔なのだけれど、少し棘を感じた。
「そうですか。すみません。これからダンスの練習があると聞いたんですが? 」と私は言った。
「はい。すでに準備が出来てございます。このまま、練習会場に向かいますがよろしいですか? 」と彼女は聞いてきたので、わたしは「どうぞ」と答えた。そして、彼女が歩き始めたので、私はその後を着いていく。茶話会の会場に来たときとは違い、彼女の歩くペースは少し速い。やはり、私が彼女の気分を害してしまったのかも知れない。先ほどのワシュテアさんのように、突然、夫に新しい妻が現れたときの不機嫌さは理解できる。ただ、ペニナさんが気分を害してしまった理由がいまいち分からない。彼女の短いショートカットの髪の毛が、左右に揺れている。
「あの、ペニナさん? 」と私は声をかける。
「はい。ササキ・アリサさま、なんでしょう? 」と言いながら立ち止まり、私の方を振り向く。そして私は彼女と目が合う。私は、自分の視線を彼女の足下に移動させた。
「さっき、私、変なことを言いましたか? 」と、尋ねる。そして、視線を足下から少し横にずらした。山茶花の花が一輪見えた。薄いピンクだった。
「いいえ。そのようなことはございません。私がササキ・アリサ様にお仕えし始めてまだ1日も経っておりません。誠心誠意お仕えをして、ササキ・アリサ様からの信頼を獲得していこうと思います」と彼女は言った。
そしてさっとまた中庭の出口の方を向き、歩き始めた。まだ話したいことがあったのだけど、彼女が歩き始めて行ってしまったということは、彼女にとっては会話は終わったのだろう。
私は黙って、ペニナさんの後に着いていった。私の部屋の扉も素通りし、後宮の玄関先に着いた。そして、ペニナさんが玄関の大きな扉を開いた。大きな扉だし、両方に落と錠が掛かっているのをわざわざ両方とも錠を上げて、扉を観音開きするのかが理解できない。片方開けても充分通れるのだけれど、まぁ気にしたらまけだ。
階段を降りた先には、馬車が待っていた。お馴染みというか、印象深い鬣が縦ロールな馬だ。相変わらず変わったセンスをしていると思う。威風堂々というのを鬣で表現しているのかも知れないが、滑稽に見える。そして、その馬の後ろ足付近には、大きな大便が落ちていた。玄関先での待機時間が長かったために、ついつい馬がやってしまったのかも知れない。私は、その大便にあっけに取られて立ちすくむ。そして、それに気付いたのか扉を開いて待っている御者の人が、気まずい顔をして、顔を地面に向けた。あっ、別に貴方を責めている分けではないです…… 。私は、急ぎ足で馬車に乗った。
「みっともない。気を引き締めなさい」という声が、馬車の中まで響いて来た。ペニナさんの声だ。きっと、御者を叱りつけているのだろう。原因は、馬の大便の件だと思う。御者のせいでもないだろうにと思っていると、ペニナさんも馬車に乗ってきて、扉を閉めた。
あっ、ペニナさんも一緒に行くんだと思った時、馬車は動き始めた。
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