表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界人よ、大志を抱け!!!  作者: 植尾 藍
第4章 さまよえる異世界人
39/75

4−10 ダリア姫とハチドリの物語

 伝え聞きたところでは、アルウェルス族のお姫様の中に、とても美しいお姫様がいらっしゃったそうな。そのお姫様はダリア様というお名前だった。彼女が生まれた日、王宮にとても大きく、色鮮やかなダリアが咲いていたのを族長が見つけたのが彼女の名前の由来だそうな。

 彼女は、族長とそのお后に大切に育てられました。彼女もすくすくと育ち、誰に対しても優しく、その彼女の笑顔は、ダリアの花のようにアルウェルス族の心を暖かくしました。

 そして、ダリア姫の10歳の誕生日に、族長とお后様は、ハチドリをダリア姫にプレゼントされました。ダリア姫とハチドリは大切な友達になりました。

 ダリア姫は、ハチドリの世話を毎日、丁寧にしました。ハチドリも姫の事を大事に思い、王宮の庭を飛び回り、時には遠い森にまで出かけ、見たこともない美しい花を、その小さな嘴に咥え小さな羽で一生懸命羽ばたき、姫様の所へ持って帰ってきて、ダリア姫にプレゼントをしました。

 ダリア姫とハチドリは、とても幸せな日々を過ごしました。そしてダリア姫とハチドリは、この幸せが永遠に続くと信じていました。

 しかし、ダリア姫とハチドリの幸せは長続きしませんでした。

 隣国の悪い王が、ダリア姫が美しいという噂を聞き、自分の妻にとアルウェルス族を脅迫してきたのです。

 ダリア姫の父親である族長と、そのお后は、悲しみに暮れました。隣国の悪い王は残忍で、力は強大です。もしダリア姫を妻として嫁がせなければ、アルウェルス族は全員殺されてしまうことが分かっていたからです。

 アルウェルス族には、選択の余地はありませんでした。ダリア姫を、隣国の悪い王の要求通りにすることを決めました。アルウェルス族の全ての人が悲しみました。


 ダリア姫は、隣国に向かう馬車に乗ります。ダリア姫は、友達のハチドリは連れて行くことができません。ハチドリは屋敷の玄関から、彼女をずっとずっと見送り続けていました。雨の日も、風の日も、ハチドリはダリア姫の帰りを待って、ずっと玄関で王女を待ち続けました。ある朝、お后がハチドリを心配して、ハチドリの姿を探しましたが、ハチドリの姿はどこにも見当たりませんでした。族長とお后は、ハチドリが死んでしまったのだと勘違いをしました。そしてアルウェルス族に命令し、ハチドリの死体を探しました。ダリア姫の大切な友達を、丁寧に埋葬してあげようと考えたのです。しかし、領地中を探しても、ハチドリの死体は見つかりませんでした。


 一方、隣国に行ったダリア姫は、毎日、悲しみの底で生活をしていました。隣国の悪い王が、無理矢理彼女を知ったのです。ダリア姫は、それまで男を知りませんでした。ダリア姫は、毎日、夜が来るのが怖くて怖くて、朝も昼も泣いていました。逃げようにも、部屋に閉じ込められ、扉には固く錠がおりています。

 そんなある日の夜です。ダリア姫は、窓辺で星を眺めていました。ダリア姫は、気付きました。星が無く、深い闇であった場所に、見たこともない星が8つ、明るく輝いているのです。ダリア姫は、それが自分の友達のハチドリであるとすぐに分かりました。そして、不思議なことが起こりました。開かないはずの窓の扉が開き、ダリア姫の体が持ち上がっていきます。空高くと空高くへとダリア姫は登って行きます。そして、ダリア姫とハチドリは、星空の海の中で再会しました。小さかったハチドリが、ダリア姫を背中に乗せて、星々を仲良く駆け巡ります。


 この話を聞いた私達は、ダリア姫とハチドリが今でも仲良く暮らしているのを知っています。それは、夜に、ハチドリ座が輝き続けているからです。


 めでたし、めでたし。


読んでくださりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ