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あなたとキスを

「キス、してみようか?」




 夕暮れ時の教室。

 私と彼以外は無人のこの場所で。

 私は突然そう言った。


 彼が驚く。


 それはそうだろう。

 直前には、お互いにどの部活に入るかを話していたのだ。

 今の言葉との繋がりは、一切ない。


 だけど私は、目を丸くさせた彼を見て、たまらなく楽しくなる。

 どこか幼く、優しい彼。

 幼い頃から知っている彼の表情は、私の一番のお気に入りだ。


 だから、時々無性にからかいたくなってくる。

 酷く幼い求愛行動だなと一人、胸の奥で笑う。

 それでも、私にはこんな事しか出来なくて、それが嫌になる。


 素直になれない。

 普通の女の子として振る舞えない。

 そんな、不器用な私に、彼は言う。




 彼のいつもの優しい言葉が耳に届く。

 あぁ、いつまでも聞いていたい。

 そう、思わせてくれる声だ。


 私はきっと、いたずらっぽい表情を浮かべていたのだろう。

 彼は少し拗ねたように、唇を尖らせている。

 凄く可愛い。


「酷いな。私は本気だよ?」


 敢えて大袈裟に私はそう言った。

 そうすると、彼はますます赤くなる。


 今、ぽりぽりと頭を掻いた。

 困った時にする、彼の癖だ。

 きっと、世界中で私だけが知っている彼の癖。




 こういう時、彼はいつも以上に優しくなるのを、私は知っている。

 だから、彼の言葉はそういう事なのだろう。

 その優しさが、とても嬉しい。


 だから、私はもう少しだけ、彼に甘えてみる事にした。


 多分、彼はきっと応えてくれるだろうから。


「ねぇ、キスしてみない?」


 私は少しだけ勇気を振り絞って、そう言った。 




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