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ロゥカス!  作者: 結倉芯太
1章
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3.試験開始 其の二


 アリエル達は昼食を済ませると、受付でペアの登録を行い、武器庫へと移動する。武器庫内は埃っぽくカビ臭い空気が充満していた。小さな格子窓から日が差してはいるが、あまり換気の効果は無いようだった。全体的に薄暗く、足元に気をつけていないと段差やぞんざいに置かれた武具につまずいてしまいそうになる。

 武器庫内には様々な武器が置かれていた。弓や剣、槍等、種類や形も様々で選ぶのも一苦労しそうな量だ。だが、倉庫に入った二人は入り口付近に立っていた管理者に一言尋ねるや、スタスタと獲物を取りに行って数十分後にはまた休憩所に戻ってきていた。

「やっぱりこれだよね~。パティ、聞いてよこの音。なかなかいないよ、こんなに良い音させるは」

 アリエルはリボルバーを回転させながら、うっとりとした目で呟く。アリエルの選んだ武器はリボルバー式の短銃だった。威力は銃の中でもさほど高くなく、どちらかというと威力より連射を重視した仕様タイプだ。

「アンタはソーザさんの影響から、絶対にそれだって分かってたけどね」

 そう言うパティの背後には大きなバスタードソードが立掛けられている。アリエルの身長程ある剣は、パティのような女性が扱えるような得物にはとても見えない。その証拠にアリエル達の傍を通過する人達のほとんどが、驚きの表情を隠せていなかった。

「パティこそ、そんな女らしさの欠片もない武器じゃんかぁ~。目立ってんよ」

「でもあんたは知ってるでしょ?」

「まぁね~、なんでそんな大剣が振れるのか、今でも不思議だね」

 パティの家は有名な騎士の家柄で、幼い頃から大の大人でも逃げ出すような厳しい鍛錬を積んできた。その頃からの積み重ねがあるからこそ、アリエルはパティがこのような大剣を容易く扱えることがわかっている。

 けれどもスタイル良し、頭良し、性格良しの三拍子が揃っているパティである。まさか気品や上品等といった麗しい言葉で出来ているような彼女が、このような女性らしくない勇ましい獲物を持つことなど、誰が想像できるだろう。

「さて下準備、下準備♪」

 そんな周囲の視線を他所に、アリエルは腰にぶら下げたバッグから弾を取り出すと、弾に魔力を込める作業を始めた。傍から見ると、弾丸に魔法を込める事で魔砲弾として使用するという魂胆が丸分かりになっている。

「アリー、いいの? こんな大勢の前で自分の武器の種を明かしちゃってさ」

 見かねたパティが呆れた顔で一応の忠告をする。

「いいの、いいの。どうせ一発撃っちゃったら分かっちゃうんだし、一撃必殺の攻撃でもないからさ。それよりもパティも五、六発込めといてよ。炎弾って攻撃力も上がるし、実用性も高いしね~♪」

 アリエルはそう言い放ちながら、バッグに手を突っ込むと弾丸を数発パティの目の前に転がす。パティは軽いため息を一つ放ち、テーブルに転がった弾丸を手に取る。

「はいはい、ペアですからね。でも『アレ』は隠しておきなさい。いざって時の切り札にできる可能性もあるから」

「うん、ありがと~。だからパティって頼りになるのよね」

「私もあんたの事、頼りにしてるからね」

 二人がそんな会話をしていると、館内にパン、パン、と手を叩く音が響き渡った。音の聞こえたほうをアリエルが見やると、試験官が受付から出てくる。

 ゆったりとした動きで館内中央に来た試験官はゴホンと大層な咳払いを一つすると、説明を始める。

「え~、ただいまから実技試験を開始致します。呼ばれた番号の方は控え室のほうまで移動をお願いいたします」

 試験官の声と同時に館内がどよめく。

 ――――いよいよ始まる。

 アリエルは作業の手を休めずに、緊張感と高揚感とを同時に感じていた。

 試験開始から一時間程時間が経ち、とうとうアリエル達の番号が試験官の口から呼ばれた。試験官に連れられて控え室に移動し、最終的なルールと武器の確認をする。

 試験時間は十五分、二対二のタッグ戦。タッグ内での役割として、まずリーダーを決める。リーダーはその証であるプロテクターを胴に装着し、そのプロテクターに嵌め込まれた赤いガラスを砕いた方が勝者となる。手段は問わず、リーダーのガラスを割る為なら相手を殺傷しても構わない。魔闘士になった場合の待遇は素晴らしいのだが、魔闘士になる為のリスクも相応に伴う。

 フィールドは無属性の闘技場なので、属性による魔法の強弱は発生しない。単純に戦術と個々の能力が優劣を競う戦いとなる。最後に対戦相手の名前が試験官の口からアリエル達に伝えられる。

「リオ=メッシェルダーとフラン=バレッジかぁ」

 控え室の椅子に座ったアリエルは頭の後ろに両手を回し、相手の名前を復唱する。その横でパティが深刻そうな顔をしている。形のいい眉が中央に寄っており、綺麗な額に皺を作っていた。

「どうしたの? 皺、できちゃってるよ」

 そう言いながら、アリエルはパティの眉間を人差し指で弾く。

「リオって人、属性調査で話題になっていたあの光属性よ」

「光属性だからってなんなのさ」

 たしか、属性検査の時の男の人も同じ事を言っていた。しかし、それを聞いてもアリエルにはパティが深刻な表情をしている理由がわからない。そんなアリエルに突き刺すような視線を向けながら、パティは口を開く。

「いい? 光ってのは攻撃特性に富んだ希少属性なの。光速による一撃必殺の強力な攻撃。武器が何であれ、光の速さの攻撃を避けることは不可能に近いのよ。私達はその攻撃をかいくぐってガラスを砕かなきゃいけないのよ。よりにもよって世界で三人しか存在しない内の一人と戦う羽目になるなんて……」

 おそらく、アリエルのお気楽さ加減が原因なのだろう。うなだれながらもパティは能力の説明をしてくれる。険しい表情のパティを尻目に、アリエルは太ももに巻かれたホルダーから銃を引き抜くと、引き金に人差し指を突っ込みそこを基点に銃をクルクルと回転させる。そして自信満々の顔で不敵に笑って見せる。

「でも無理じゃないよね。私とパティならどんな奴でも敵じゃないよ、今までもそうだったようにこれからも、ね」

 アリエルの台詞にパティは瞳をきょとんとさせる。

「そうね、この程度の壁、私達に超えられないわけないじゃない。じゃあ役割を決めるわよ」

「今までどおりっしょ。パティが考えて私が動く、これが一番なのさ」

「アリーもたまには考えなさいよ。それに私だってちゃんと行動するわよ……」

 そう言ってから顔を上げるパティは、男ならば必ず固まるであろう妖艶な笑みを決める。こういう時のパティは本当に頼りになる。

「私はアリーの眼にかけるわ。リーダーはアンタよ。とにかく光属性の子には常に注意して。視線は外さないように距離をとるの。その点に限っては近接武器の私よりアリーの方が適役だわ。相方のフランって子は私が相手するから、アリーは常にリオを視界に入れておくこと。私が狙われた時は攻撃の妨害をして。多分相手のリーダーはリオ、なんてったって光属性の有利性を相手が利用しない手は無いわ。恐らくアリーと一緒で銃とか弓みたいな飛び道具系の武器を使用してくると思うの。近距離よりも安全に、しかも強烈な一撃を相手のレンジ外から叩きこめるから。だから、まずはフランを先に片付ける。とにかく光属性の子は二対一の状況にしてからじゃないと勝ち目はないと思うの。それまで、アリーは私の援護と光属性の注意を引きつけておくのよ」

 パティの説明にコクコクと頷く。攻撃力に富んだパティがアタッカーになるのは当然だし、アリエルの武器は中距離で援護に適している。アリエルに異論はなかった。

「じゃあ一丁がんばりますか~」

「よろしく頼むわよ」

 お互い腕を交差させ、気合を入れる。二人は控え室を出ると、歓声が響いてくる通路を抜け、闘技場へと向かった。




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