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光の中で、誰も見ていない

作者: ai遊び人
掲載日:2025/10/19

 スマホの光が、夜の部屋を白く染めている。

 ベッドの上、私は膝を抱えながら、画面をスクロールする。

 ハートの数が、今夜も少しずつ増えていく。

 ——また、ひとり誰かが、私の笑顔に「いいね」を押した。

 

 フォロワー、三万一千六百二十二。

 数字は、私の体温みたいに日々変わっていく。

 嬉しい。けれど、どこかで、ずっと怖い。

 この“理想の私”が、少しでも崩れたら、

 きっと全部、消えてしまうような気がして。

 

 投稿用に撮った写真は、十枚に一枚しか残さない。

 角度、光、肌の色。全部、計算。

 笑顔は本物じゃない。

 でも、本物の笑顔を誰も求めてないことくらい、もうわかってる。

 

 私のアカウントの名前は「yuzu_daylight」。

 本名の柚なんて、誰も知らない。

 現実の私は、教室の隅で静かにお弁当を食べるただの子。

 でもスマホの中では、“憧れの女の子”になれる。

 ——少なくとも、そう見えるように作れる。

 

 放課後、親友の沙耶が話しかけてきた。

「柚、またバズってたじゃん。すごいね」

「うん……まあ、たまたま」

 笑いながら答えたけど、胸の奥はざらざらしてた。

 沙耶はSNSをしていない。

 「リアルで十分」って言って。

 それが、少しだけ羨ましくて、少しだけ腹立たしかった。

 

 夜になると、頭の中で声が響く。

 ——もっと投稿しなきゃ。

 ——昨日より、いいねを取らなきゃ。

 スマホを置くと、部屋が一気に静かになる。

 その静けさが、まるで「存在を否定されている」みたいに痛かった。

 

 ある日、知らないアカウントからDMが届いた。

《コラボしませんか?フォロワー10万のモデルです》

 名前は「RINA」。

 私は胸が高鳴った。

 “選ばれた”気がした。

 

 彼女と初めて会ったのは、渋谷のカフェ。

 RINAは、写真のままだった。

 完璧な髪、完璧な笑顔。

 でも、話してみると、どこか上滑りしていた。

 彼女もまた、“演じている”のがすぐにわかった。

 だけど、私はそれを指摘できなかった。

 むしろ、そんな彼女に憧れた。

 「この人みたいになれば、もっと“光”の中にいける」と思った。

 

 数日後、コラボ投稿をした。

 RINAと並んで笑う写真。

 タグは《#dreamgirls #yuzuXRINA #selflove》。

 投稿から一時間で、コメントが二百件を超えた。

《天使みたい》《最強コンビ》《リアルより綺麗》

 ——気持ちよかった。

 この感覚こそ、私が生きている証拠のようだった。

 

 でも、その快楽は長く続かない。

 翌週、別の人気アカウントが炎上した。

 「加工詐欺」「現実と違いすぎ」

 タイムラインには批判と罵倒の嵐。

 私は震えながら画面を見ていた。

 コメント欄の文字が、私の未来みたいに思えた。

 

 怖くなって、投稿を一週間止めた。

 でも、すぐにフォロワーが減った。

 100、200、300——数字が減るたび、

 心臓が縮むように痛んだ。

 「存在してない」みたいな恐怖。

 私は焦って、深夜に新しい写真を投稿した。

 笑顔を貼りつけた、加工の強い自撮り。

 キャプションには《久しぶりに笑えた》と書いた。

 本当は泣きながら撮ってた。

 

 投稿の翌朝、通知が爆発していた。

 1万いいね。数百のコメント。

 《元気そうでよかった》《やっぱりyuzu最高》

 その言葉を見ながら、心は冷たく沈んでいく。

 “みんなが見てる私”は、もう私じゃない。

 でも、もう戻れない。

 このアカウントが私の「居場所」になってしまったから。

 

 そんなある夜、RINAから再びメッセージが来た。

《新しい案件、一緒に出よう。テレビにも出れるかも》

 私は迷った。

 でも、即座に「行く」と返した。

 「現実の私」がどれだけ小さくても、

 「光の中の私」は誰よりも綺麗で、必要とされていたから。

 

 撮影当日。

 私たちはプロの照明の下に立った。

 眩しすぎるライトが、肌を焼くように照らしていた。

 RINAは笑いながら囁いた。

 「笑顔、崩さないでね。みんな見てるから」

 その言葉で、私は気づいた。

 ——ああ、この人も、私と同じなんだ。

 “見られなければ、消えてしまう人間”。

 

 番組は好評だった。

 SNSでは「可愛い」「次世代モデル」と騒がれた。

 でも、放送後、ひとつの匿名投稿が流れた。

 《加工なしのyuzu、別人じゃん》

 それは瞬く間に拡散された。

 写真は私の学校での姿。

 スッピン、無表情、現実の私。

 フォロワーのコメント欄が、あっという間に変わった。

 《騙された》《夢を壊すな》《ブスすぎ》

 私は画面を閉じられなかった。

 いいねの代わりに、罵声の通知が鳴り続けた。

 

 次の日、学校に行けなかった。

 鏡の中の自分を見ても、誰かわからなかった。

 「光の中の私」も、「現実の私」も、

 どっちも嘘みたいで、どっちも消えていくようだった。

 RINAに連絡したけど、既読はつかなかった。

 

 夜になって、窓を開けた。

 外の光が滲んで見える。

 スマホの通知はまだ止まらない。

 私は思わず、カメラを開いた。

 泣き腫らした顔を、そのまま映した。

 そして、投稿した。

 キャプションは短く。

 《もう、誰のために笑ってるのかわからない》

 

 投稿から数分で、コメントが溢れた。

 《泣かないで》《大丈夫?》《構ってちゃん?》

 その混ざり合う言葉の海の中で、

 私は初めて、何も感じなかった。

 ——誰も、私を見ていない。

 見ているのは、「画面の中の何か」だけ。

 

 次の日、SNSを削除した。

 その瞬間、静けさが戻った。

 でも同時に、世界が少しだけ遠くなった。

 “誰も見ていない私”を、誰が生きるのか。

 そんな問いだけが残った。

 

 放課後の教室。

 久しぶりに沙耶が声をかけてきた。

「柚、最近どう?SNSやめたって聞いたけど」

「……うん。もう疲れちゃった」

「そっか。あのね、明日さ、放課後プリクラ撮らない?」

 私は一瞬、返事をためらった。

 でも、うなずいた。

 「いいよ」

 

 その瞬間、胸の奥に小さな痛みが走った。

 きっと、まだどこかで誰かに“見てほしい”んだと思う。

 でも、その誰かが「画面の向こう」じゃなくて、

 目の前の誰かであることを、

 ——やっと少しだけ、思い出した。

 

 放課後、夕暮れ。

 プリクラ機の中で、沙耶と並んで笑った。

 シャッターが光る瞬間、私は思った。

 あの“いいね”の光よりも、

 この一瞬のほうが、ずっと温かいかもしれない。

 だけど、その温かさが長く続かないことも、

 私はもう知っている。

 

 家に帰ると、スマホが机の上で静かに光っていた。

 新しいアプリの通知。

 《あなたの笑顔がトレンドに戻っています》

 指が、勝手に画面へ伸びた。

 心臓が高鳴る。

 ——光の中に戻れるかもしれない。

 そんな錯覚に、また少しだけ救われた。

 

 私はゆっくりと画面をタップした。

 青白い光が部屋を満たす。

 まるで、私を再び“世界”に迎え入れるように。

 

 その光の中で、私は笑った。

 涙を拭いながら。

 ——誰も見ていない笑顔で。

 

 ***



この物語は、

「承認の光」と「孤独の影」の間で揺れる現代人の写し鏡。

SNSという虚構の世界が、彼女に“生きる意味”を与え、

同時に“現実”を奪っていった。

ビターエンドでありながら、

彼女が最後に見た“光”は、もしかすると救いなのかもしれない。


暇つぶしでaiに書かせました。

文は人が書いた方が面白いなと再認識

今の量産型小説と同等に感じます

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