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怪異世界の旅事情  作者: 秋丸よう
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【怪異ファイル01】ボタルダール森林保護区 その3

「父さん、えっと父は最近様子がおかしくて……なんだか人が変わった感じがするんです。本当はシモンさんを迎えに行くのは父の取り巻きたちの筈だったんですけど、僕の勝手な判断でシモンさんに予定の1日前に来てもらいました。でも、なんだか変なんです。あの干ばつが起きて少し経った後から!」

「まぁとりあえず、飯食いながら話そうや。落ち着け」


 シモンはジョゼを落ち着かせると、席につき、ジョゼの話を聞き始めた。フロリアも少し暗い顔をしている。


「元々、この村は排他的な村で、自分たちに持ち合わせていない魔法を嫌っています。父たちのようなご年配の方々は昔ながらを推し進めようとし、僕のようなまだ若い年齢層の方々はこの村に新しい空気を入れようという方向性の違いで、村は真っ二つなんです。僕はこの村が好きです。だからこそ新しいものを取り入れて素敵な村にしたいんです。父も最初はこの案に賛成だったんです。だけど……」

「だけど、なんだ?」


 ジョゼは話している途中で涙を流した。


「だけど、干ばつが起きて、村が大変なことになってからというもの、父の様子がおかしくなったんです! 突然、怒り出すし、僕の話も聞いてくれない。まるで性格が変わったかのように!」


 ジョゼの様子を見ていたフロリアはそこから付け足すように話し始めた。


「ボタルダール大干ばつ、というのはご存知ですか?」

「ああ、有名な類を見ない干ばつだったからな。知ってるぞ」

「この水明の国では珍しい干ばつでした。水が豊富な水明の国ではまずありえないことです。6月はこの地域ではたくさん雨が降ります。そのおかげで植物は育ち、森の恵み、私たちが育てた作物の恵みにありつけるのです」


 フロリアも話していくうちに、どんどん表情が暗くなって行く。


「でもその年は一滴も雨が降らなかった。そのせいで植物は枯れ、私たちは死の淵を彷徨いました。でもある日、1人の占い師がやってきたんです。彼はこう言いました。『この村は何年捧げてないのだ』と。私たちは森の中に祠らしきものがあるのを知っていました。だから急いでありったけの食べ物を持って行ったんです。しかし、何も起きませんでした。当たり前ですよね」


(捧げていない……か。やっぱりな)


 シモンは最初の見解を改めて確認した。


「でもある日、急に雨が降り出したんです。私たちは喜びました。だけど村長は様子がおかしかった。そこからはボタルダール森林保護区のおかげで観光客も増え、村は潤っていきました。でも、1年前、ボタルダール森林保護区は突然禁足地に認定されました。元々排他的な村だったので連絡手段はありません。だからジョゼがわざわざこの辺で一番大きな町に行ったんです。そしたら、失踪者が出てるって聞いて……村長だ、と思いました」

「失礼、どうして村長だと?」

「観光客は村長が案内していたし、何より干ばつの時から様子がおかしかったから……絶対そうだって思いました」


 ここで1つ謎が生じる。


「なぜ、俺を村長と会わせないようにしたんだ?」


 この言葉を聞いて、ハイセル夫婦は顔を見合い、うんと頷いた。


「私たちの見解ですが、村長は魔法使いさんたちを狙っています。失踪者は最初は普通の人だったみたいですが、日を追うごとに魔法使いさんが多くなっています。だからです。最強の魔法使いであるシモンさんが狙われる可能性が高いんです」

「魔力が多いものが贄に捧げられているのか……ま、大体話は分かった。今はこの料理に舌鼓を打とうや」

「〜っう、ありがとうございます! そうですね、今は楽しみましょう!」


 その後、ハイセル夫妻とシモンは料理を楽しみ、時にはシモンが料理のレシピを教え、楽しんだ。


「そういやぁ、ジョゼはなんで、魔力があるのに狙われてないんだ?」


 シモンのこの問いにジョゼは目を丸くして、驚いた。


「僕には魔力はないはずですよ……そんな、僕にあるわけないじゃないですか」

「いや、公的には知られていないが、俺は魔眼持ちなんだ。魔力を持っているかいないか、どれくらいの量なのかが分かる。ジョゼからは強い魔力を感じる」


 その言葉にジョゼは目を輝かせたと思うと、泣き出した。


「僕、僕、本の中に出てくる魔法使いに憧れていたんです……でも親には魔力はないし、僕もないものだと思ってました。だから、魔法を使えると思うと、嬉しくて嬉しくて……! グスッ、すみません……!」

「魔法使えるってわかった時は嬉しいよな! これ、渡しとくわ。魔法使いは魔法石を使って魔法を行使する。このブローチの真ん中の石、これが魔法石だ。あー心配するな、これはその辺で売ってるやつだ。高くないからな、安心しろ。魔法は想像力。イマジネーションが大切なんだ。けど、使いすぎると体力を消耗する。そこだけ気を付けないといけない。わかったか? まあこれが片付いたら、美味しい飯の礼だ。教えてやるよ」

「僕、嬉しくて死にそうです……」


 そして、そのまま魔法を教えた後、ハイセル夫妻の家で眠りについた。

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