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情愛装甲戦姫オモイビト〜大学生でも変身ヒロインできるんです!〜  作者: 梅谷涼夜
第1章 『ふたりは大学生で変身ヒロイン!!』
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第5話 ふたりは大学生で変身ヒロイン!!! 〜直緒〜

「ストライクファイア!!」


私史上最大の危機、その瞬間に聞こえるのは友美の声。


 両手を振り下ろさんとする憎念の攻撃に身構えたそのとき、突如として目の前は炎に包まれ、私の周囲にいた憎念はその炎に焼き尽くされた。


 炎の来た方を見つめると、友美が右腕を突き出している。友美はその手を下ろし、私の方へと駆け寄る。


「直緒、大丈夫?」

「ありがとう! 危ないとこだったよ」


 あと一瞬でも友美の援護が遅れていたら、私はもうダメだったと思う。


「無事でよかった」

「やっぱ、友ちゃんは強いね。それに比べて私はダメダメだ」


 あれだけの力を目の当たりにすると、どうしてもそう思ってしまう自分がいる。


「そんなことない!」


 友美は私の言葉を否定する。


「私は直緒を守りたいって想いを形に、力にして放っただけ」

「でもそれは友美だからできただけで、私にはまだ──」


 私の弱気を断ち切るように、友美は私の言葉を遮る。


「それは直緒にだってできる! だってそれは、私たちが持つ特別な力だから」

「特別な力?」

「そう。直緒、あなたの想いを力に変えるの!」

「私の……想い」

「今のあなたが心に抱えている想いは何?」


 私の想い、それは──。


「私はみんなを守りたい!!」


 その瞬間、風に吹かれたように髪の毛が逆立つ。そして、身体の奥底から、いや心の奥底から力が湧き上がってくるのを感じる。心なしか身体もさっきより軽い気がする。


 向こうの方にいる憎念たちを眺める。


 その景色を見ても私の心に不安感はない。私の心にあるのは、みんなを守るんだという想いだけ。

 その想いが私に勇気と力を与えてくれる。


「さあ、行こう!」


 みんなを守りたいという想いに身を任せ、飛び出してみて思うのは、やっぱりさっきよりも身体が軽い。足は自分から進みたがってるように力強く大地を踏みしめ、腕は重みが消えたようにスムーズに動く。

 おかげで走るスピードも速くなり、接敵も早くなる。


 でも、大丈夫。頭に思い描いた通りに動けるから、急減速もお手の物。その行き場を失ったエネルギーは憎念を殴るエネルギーへと変貌し、相手を綺麗に殴り消せる。


 身体がしなやかに、そして速く動くようになったから、憎念の攻撃も楽々躱せる!


 右肩を相手の攻撃に合わせて引き、身体を捻った勢いで左拳をお返し。

 その態勢のまま力を溜めて、一気に解放。


 右手が憎念の胴を突き抜け、カウンターも身体のバネを使えるから一撃が重くなる。


 迫り来る拳を躱しながら憎念の懐に入り込んで、思い切り掌底を胴の中心へ打ち込む。憎念は周囲の仲間を巻き込みながら吹き飛び、まとめて消滅。


 これで大部分は倒せて、残るは四体ほど。そんなとき、私の心の中に攻撃のビジョンが浮かぶ。その景色は見えてはいても中々身体がそう動きそうにない。


 でもやらなきゃ。だって、私の心がやれって告げているから!


 私は心の示すまま駆け出し、一番手前の憎念に右ストレート。


 勢いのまましゃがみ、その隣のやつ目がけてジャンピングアッパー!


  態勢を立て直して後ろの奴の肩に飛び乗り、両肩に両足を乗せ、ジャンプする踏み切りに合わせて頭にチョップ!


「とうっ!」


 憎念の身体がバキッと悲鳴をあげるのと同時に勢いをつけ、天高く跳び上がる。


 両足を振り上げ、飛翔の頂点に合わせ空中で一回転。そこから一気に飛び蹴りの態勢になり、


「ムーンサルトキーック!!」


 飛び蹴りの形を保ったまま急降下し、キックはクリティカルヒット。


 キックの態勢から起き上がり友美の方を見ると、彼女の周囲で、激しい炎が燃え広がっていたり、雷撃が迸っている。その炎や雷も友美の力で、広い範囲の人魂や化物をまとめて殲滅し終えたみたい。


 そんなところで、遠くの方からパトカーのサイレンが聞こえてくる。


「直緒、逃げるよ」


 友美に撤退を促され、私たちは急いでその場を離れる。


 憎念対策処理班とは、近年の憎念被害の増加に対応すべく、警察内に設立された特殊チーム。彼らは私たちと異なり、想いを具現化させた特殊な力ではなく、現代の科学で憎念と立ち向かう。

そして公的な対応では、憎念の対処は全て対策班が行うことになっている。


だから私たちは彼らと入れ替わりで逃げることにしている。


 先程までいた現場から距離を置き、私たちは人気の無いところで変化を解く。


「今日は直緒、なかなかやるじゃん。いい感じ」


 友美に褒められて、ちょっと嬉しくなる。


「エヘヘ、ありがとう。あっ、そう言えば、明日の新歓はどうするんだっけ?」


 唐突にそのことを思い出し、友美に明日やる予定のサークルの新歓花見について聞く。


「私たちは準備だから、確か開門で場所取りかな。いや、本当悪いね。家近いってだけで準備メンバーにされられちゃって。しかも、下見だけだと思ってたら、明日フルでいてもらうことになっちゃって」

「別にいいよ。八時なら全然余裕。まあ、明日は自転車かなぁ。髪のセットは場所取りしてからしよう」


 サー室で花見担当のメンバー決めをしていた時、たまたまその場にいた私は既に担当だった友美と友達ってことと、家が近いっでことで、半ば無理やり場所取りメンバーになってしまった。


「悪いね。私は買い出し担当だから、終わるまでそっち行けなくて。ちょっと気まずいと思うけど、まあ、何とか頑張って」

「別に、みんなの事を嫌いって訳じゃないから大丈夫だよ」

「確か、そのあと二時くらいまでそこに居てもらうんだったよね」


 友美の言う通り、私は場所取りして終わりではない。


「うん。でも、一年生の話聞けて新鮮な気分になれるから問題ないよ」

「直緒マジ神。じゃあ、明日頑張ろう」

「うん!頑張ろうね!」


 明日から私の大学二年生生活が本格的に始まる!


【次回予告】

新歓当日の朝、直緒はニュースを観ていた。そこでは現代社会を脅かす脅威について語られるのだった。


次回『フレッシュ! 新学期 その1』

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