第47話 アナザーサイドエピローグ:男の憎悪 〜優斗〜
「私が興味持って来たからいいものの、無様な姿ね」
荒れ果てたアウトレットの屋根の上、鏡部は俺の様を見て言い切る。
身体を覆っていた装甲は消え去り、全身傷だらけ。そして全身を痛みが襲う。浮かび上がっていた黒い光のライン、憎悪の炎の印もとぎれとぎれになったこの無様な姿を。
「勝手にほざいてろ」
「助けてもらっておいてその態度とは心外ね」
「余計なお世話だ」
二人の同時蹴りを喰らったあの瞬間、纏っていた鎧を爆散させることでなんとか死なずに済んだ。そして、その様子を興味本位で見に来ていた鏡部の必要のない助力により、俺はここまで退避させられた。
「あの二人に倒されそうだったくせに」
「たまたまだ」
個々の力関係では俺が上回ってたはずだろう? なぜ、なぜあの雑魚どもにこんなにも無様な醜態を晒さねばならない?
その上奴らのせいで力を纏うためのこの印も滅茶苦茶に壊れた。
クソッ。この分だと当分、憎悪装着も無理だ。
ふざけんなよ。
「そのたまたまで死にかけてるのはどこの誰かしら?」
人が弱ってると思って調子に乗りやがって。イライラしてんだよ、こっちは。
「何にも言い返せないとは、図星?」
鏡部は嘲笑しながらそう言い続ける。
純粋に腹が立つ。鏡部の挑発に、自らの不甲斐なさに、そしてあいつ等に負けたという事実に。
あいつ等が憎い。鏡部もウザいし憎い。この世の全てが憎い。
「……フッ。クククッ。フハハハハハ!」
「あら、壊れた? 案外脆いこころッ――」
耳障りな言葉が鳴り終わる前に、その葦のような喉元を鷲掴む。
「なに……を……」
「さっきからうるせえんだよ。おかげでイライラしててなぁ。殺したいほどに」
鏡部の首を絞めている右手が憎悪の黒き炎で燃え盛る。
感情の高まりと共に首を絞める力が、燃え盛る黒炎の火力が高まってゆくのを感じる。
なんて素晴らしい気分だ。
首を掴む指からミシッ、という悲鳴が伝わってくる。
鏡部はただ苦しみ悶えている。
「何も言えないようだな」
どうする? このままひと思いに折ってやろうか。
「実にいい気分――」
そんないい気分に水を差すように、俺の胸の中心めがけ鏡部の一撃が放たれる。
思わぬ不意打ちに、堪らず首から腕を離す。
「調子に……乗んなよ」
俺をギッと睨みながら言う、鏡部のその左手は白く眩い光に包まれていた。
「忘れんな。私だってあんたを倒せる力を有してるのよ。弱ってる今なら楽に殺せる程度の力はね」
一メートルにも満たない空間は緊張感に満たされ、互いに身動き一つ取れない。互いが互いを倒さんと、一挙手一投足を見ている。
俺たちの間に割って入るのはうららかな春風だけ。
そのとき、その春風に乗って甲高い警報音が聞こえてくる。
「チッ、面倒くせぇな」
「あんた、私を殺そうとする元気があるなら一人で帰れるでしょ。私、面倒なのは嫌いだから。あっ、そうそう彼女たち意外と面白そうね。ちょっと好きになったかも。それじゃあね」
そう言って鏡部は大急ぎで目の前から逃げてゆく。
俺もこれ以上面倒なのは御免だからな。ずらかるとしよう。
鏡部とのやり取りは不毛でしかなかったが、それでも収穫はあった。
この感じ、この力。
もっと怒りを、もっと憎しみを増せ。
鏡部を、あいつ等を、世界を! もっと恨め、憎しめ。
――さすれば更なる力に、そして、俺の野望に近づくはずだ。
【次章予告】
動乱の幕開けとなった4月。しかし、次の月にも波乱の予感。それは友美の恋心。
次章『第2章 ─土方友美の章─』
お楽しみに!
お読みくださりありがとうございました!
面白いと思っていただけましたら、ブクマ、評価、感想を是非ともお願いします!




