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情愛装甲戦姫オモイビト〜大学生でも変身ヒロインできるんです!〜  作者: 梅谷涼夜
第1章 『ふたりは大学生で変身ヒロイン!!』
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第15話 大学生がそこを気にするのはなぜか 〜直緒〜

 電灯が少なく、少し薄暗い所の多い八号館。にも関わらず、非常に多くの学生がこの場所を利用する。なぜなら、講義の多くがこの八号館で行われるためだ。


 八号館は十六の大教室と三つの小教室で成り立っている。その教室を利用して、学部の専門的な講義や一般教養、通称般教の講義が行われる。


 私と友美も多くの学生と同じように、目当ての大教室へ向かう。


「教室どこだっけ?」

「確か、8302教室に変更だったと思う」


 私たちが目指す講義は文学部の怨霊と日本史という講義。元々の場所は文学部棟だったのだが、どうも履修者が集まりすぎて教室を変えたらしい。


 この連絡はちょっと前に、学内アドレスにしれっと通知されてるだけみたいで、ちゃんと確認しないとこの事に気づけない。だから、しっかりしている友美と一緒に講義を取って正解だった。


 目当ての教室に着き、中に入る。割と早めに教室移動したはずだったけど、もう半分くらい席が埋まってる。


「後ろの方でいい?」


 友美に聞かれる。私は黒板さえ見えれば、場所はどこでもいい。だから、了承してだいぶ後ろの方に並んで座る。


「にしても、人数多過ぎ」

「だよね。先輩に聞いたときは、人も全然いない楽単って聴いてたんだけど」

「私たちもそうだけど、他学部履修多過ぎるんだよ」


 この大学は般教の枠の単位に限り、学部が違っても受講できる講義があり、これを他学部履修と呼ぶ。他学部履修できるかどうかは講義ごとに決まっており、この怨霊と日本史はそれが可能な講義だ。


 去年単位を取った先輩から、先生優しくて、授業楽で、人も少ない穴場の講義、っていう前評判を貰っていた。だけど、もう既に人の少ない穴場、ってとこについては満たしてない。大丈夫かなぁ。


「そういえば、デートどうだったの?」


 藪から棒に、友美が先週末のデートについて聞いてくる。


 どう? って言われてもなぁ。


 とりあえず、起きた出来事を事実だけありのまま話す。すると、話が進むうちに、友美の表情がどんどん怪訝そうになる。


「えっと、聞くけどさ、それってもはやデートなの?」

「多分、デート……、だと思う」

「百歩譲って、有名じゃない所に二人で歩いて行くのはいいよ。それも悪くはないし。ただ、どこかでご飯を食べるでもなく、途中でスーパーに案内させる彼氏ってどうよ?」

「うーん。私は別にいいと思うけどなぁ」

「いや、よく考えて」


 キッパリ言い切られる。そんなに言わなくても……。


「でも、状況にもよらない?」

「極論言えばそうだけどさぁ」


 それに、と付け加える。


「デート中そんなにガッツリ寝る、直緒もどうかと思うよ」


 その点は、自分でもそう思う。


「それは本当に私が悪い。でも、先輩が隣にいてくれる、って思うと安心しちゃって」

「それについて、優斗さんはなんて言ってたの?」

「ありのままの直緒でいてくれるのが一番、って」

「それについてどう思った?」

「先輩がそう言ってくれるならそれで嬉しいな、って」


 そう答えたとたん、友美はニヤリとしながら聞いてくる。


「大丈夫? 直緒、寝てる間に変なことされてない?」

「先輩はそんな事しないって」

「本当に? 何かされてるけど、自分はそれを受け入れたから変なことじゃない、とかじゃなくてよ? 客観的に見て、起きたら衣服が乱れてたとか、口紅が取れてたとか」


 メッチャ興味深々だし。いや、なんでそんなノリノリなの?


「無いってば! なんでそんなこと聞くの?」

「だってぁ、さっきの理論から言えば、優斗さんの言うこととか、やることなーんでも受け入れそうなんだもん。ここでありのままの直緒が見たい、って言われたらぁ、プッ、どこでも脱ぎそうじゃん? まあ、そういうプレイなら止めないけど」


 ついに言いながら吹き出した。しかも完全に誤解してる。先輩は多分、そう言うことを言ってるんじゃないと思うし、流石の私もそこまではしないっての!


「脱がないよ! しかも、先輩が言ってるのは、見た目とかの外側じゃなくて、性格とかの中身の方だから!」


 こう言っても、友美の表情が全然変わらないどころか、普通に笑っちゃってるし。


「あー、おかしい」

「友美!」

「ごめん、冗談冗談。アッハハ。なんかそういうピュアな話聞いてたら、羨ましくなっちゃって」


 いくらからかうのが面白いからって、涙が出るほど笑わないでよ。不快になるわけではないんだけど、なんかその、恥ずかしくなってくるから。


 てか、こんなとこで、そういういじり方をしないでよ、もう。


 友美はそのまま涙を拭って言う。


「でも、本当に心配だわ。先輩にそういうこと言われたら、雰囲気に流されて本当は嫌だけどそのまま、ってのが想像できちゃって。そういうのは、自分がちゃんと納得できたときだけだよ? 自分を大事にする、ってお姉さんと約束よ?」

「あのねぇ」


 メチャメチャからかわれてる気がするんですけど。私だってその辺はちゃんと考えてますし。


 ただ、ニッコニコで小指を差し出してくる友美を見てたら、しょうがなく指切りしようって気になってしまった。


「はい、約束」


 親戚のお姉さんとするような約束を、この歳になって友達と、しかも指切りまでするとは思いもしなかった。この異様な光景は周りにどう見られてるんだろう。


 そう思いながら、指切りを交わす。流石に針千本云々は唱えなかったけどね。

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