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コンセプト1「小人から巨人まで使えるゲームコイン」5

「ユイさー、もうちょっと体力つけたら?」

「うるさい体力馬鹿、脳筋。脊髄反射だけで生きてろ。」


買い物を終え、事務所に戻ってきたところ。

確かに。確かに、私に体力が無いことは認める。

しかし1km四方の大型商業施設など買い物に行ったのだ。

テーマパークに行くのと同レベルでしんどい。


「ふ、双子の姉にボロクソ言うね。自爆テロだよこれは……。」


若干の冷や汗すらかいてユニがつぶやく。

うるせーばーかばーか。


「喉乾いた。ジュース。」

「お茶にしておきなよ。」

「むぅ……。」


ユニが、冷蔵庫から冷えたお茶を取り出してコップに注ぐ。

カーテンから零れる夕日がグラスに乱反射しきらきらと輝く。

テーブルにしなだれかかりながら上目使いにその様子を見る。


「ありがとうユニ。」

「どういたしまして。」


2つのコップを一つずつテーブルの端においてユニが腰を掛ける。

それにユニは口を付けない。私だけが喉を潤すために飲む。


「そろそろこれ止めない?」

「ダメ。私の分だけ用意するとかありえない。」

「はいはい。」


幽霊たるユニにとって飲水は必要な行為ではない。

食事こそ魔力補給のために摂るが、本来はそれだけで十分だ。

だとしても、二人分の飲み物を用意することをやめるつもりは私にはない。

5年間で何度も繰り返してきた問答を今回も同じように繰り返す。


そして今回も同じようにお互いなんとなく気まずくて無言となる。

ユニのグラスにだけ結露が生じ、その足元に小さな水たまりをつくった。


「よし、やろうか。」

「うん。まずはお互いの成果を確認しようか。」


そうやって話をすり替えて問題を先送りにするのだ。

今までも、これからも。



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机に置かれた様々な製品そして部品。

二人でかき集めた使えそうなガラクタを一つ一つ確認していく。


「なんかラムネが混ざってるんだけど……。」


白いタブレットを手にとってユニに聞く。

ご丁寧にも1個ずつ個包装だ。


「あ、それラムネじゃないよ。」

「なんなのこれ?」

「ふっふっふー。説明するより見たほうが早いと思う。」

「ふーん……。」


そういうとユニは再度立ち上がり、適当な小皿を持ってきた。

包装を破き、それを小皿の上に置く。

そして先程口をつけていなかったお茶をそれにかけた。


「え。」

「いいから見てて。」


水を吸ったその白いタブレットは急激に膨張していった。

ユニがそれを手に取り広げる。


「ほら。タオルになった。」

「面白いね。何これ?」

「圧縮タオルっていうらしいよ。ユイの条件そのままだと思うんだけどどうかな?」

「うん、ちょっと想像してみる。」


小さいコインを受け取った大型種族がそれを水につける。

……うわぁ、シュール……。

水はまぁ砂漠地帯でもない限り簡単に手に入るとして大目に見よう。

そして紙幣の形で手元に加える。

……え、こんなふにゃふにゃな紙幣を重ねるの?

次にそれをゲームの場に出す。

……水を含んだタオルを?

それを小型種族が受け取り……って、どうやって元の形に戻すんだこれ。


「……とりあえずこれ、テーブルが水浸しにならない?」

「確かに……。」


私の理想そのままだけど、ちょっとこれはこのままでは使えそうにない。

例えば防水フィルムで包むとか?

そもそも膨らまなくなるか。


「保留で。これはクリアしないと行けない課題が多すぎるよ。」

「うん。大がかりな改良が必要そうだよね。」


改良の必要があるとはいえただ捨てるには勿体無い。

なんとか使えるようにする方法を後で考えてみよう。


「これは?」


今度はユニが針金を手にする。

正直外見だけでは少し細いくらいの針金だ。

なにか特徴があるわけでもない。


「形状記憶合金の針金。」

「あー、あの熱くなると元の形に戻る奴か。」


形状記憶合金。

金属結晶の10%以内の変形であればもとに戻そうとする性質を持つ金属だ。


「どう? 使えると思う?」

「これ……ゲーム中にちょっとしたはずみで変形しない? 例えば手で握ったり。」

「……確かに。」


手で触れたら小さくなるコイン?

それも握りしめるほどに小さくなる?

皮肉が効いている。何かの童話で似たような事を聞いた記憶がある。


「というかこれコインから紙幣に変形できるの? 流石にそこまでの変形はできないんじゃない?」

「確かに。そんな物質があれば造幣局があっという間に採用しているよね。じゃあボツか……。」

「え、なんで?」

「だって使えないんでしょ。これ。」


ユニの意図が分からない。

今まさに否定意見を言ったところではないか。


「組み合わせればいいでしょ?」

「何と?」

「他の素材と。だって小さくなる素材と小さくなる素材を組み合わせればすっごく小さくなる素材ができそうじゃん。」

「そんなハンバーグカレーみたいな…………ありだね。」

「でしょう?」


よくよく考えたら、別に1つの方法に拘る必要は無いのだ。

2種類3種類の方法を1つの形に押し込んでもいい。


「それなら、金属つながりでこれとなら組み合わせられるかも。」


同じく金属製の円盤を手に取る。

およそ8枚の三角形の穴の空いた金属板を組み合わせたキッチン用品だ。


「自在蓋……だったけ?」

「そう。鍋に合わせて大きさを変えられる蓋。」

「確かに形状記憶合金を組み合わせれば……。」

「すごいものができるかもしれない。」


自然と顔を見合わせてうなずく。

ここにあるガラクタの山。どれもこれも単独では使い物にならないものばかりだ。

あるものは半分程度にしか小さくならない。

あるものは水浸しになってしまう。

あるものは自然と元の形に戻ってしまう。

あるものは一度膨張すると二度と戻らない。

でも、2つ組み合わされば使えるようになるかもしれない。

私達と同じように。


「ユニ、ゲームコインとしてどういう条件が必要か、そしてどういう条件が不要か一度洗い出そう。」

「そうだね、ユイ。今のままだと闇雲に突き進んでる感じがする。ホワイトボードを持ってくるよ。」

「うん。お願い。」


ユニがホワイトボードを取りに向かう。

そして私はガラクタじゃなくなるかもしれない品物の山を一つ一つ袋に詰めていくのだった。

では、今回から本格的にデザインを開始します。

なんてことはありません。全て僕と友人がアイデアを出し合ってボツを出しまくった過程を描いているだけです。

わりかし大変でした。

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