コンセプト1「小人から巨人まで使えるゲームコイン」4
「よし、探すよ!!」
「おー……。」
やってきたのはホームセンター。
詳しく比べたことは無いが現世のそれよりかなり広い。
それは大型種族が存在するから……というわけではなく、単純に利用者が多い。
というのも……。
「ユイ、危ない。」
「ん……ありがとう。」
ユニが私を脇に引っ張る。
目の前をベヒーモスの男性が巨大な建築資材を担ぎ通り過ぎていった。
ペコリと会釈をされ、それに会釈を返す。
多分DIYで使用するのだろう。というかそうであってほしい。
前の話に戻ろう。この世界においてDIYは実利を伴ったメジャーな趣味の一つだ。
自分にピッタリのものを手に入れることが難しい? なら自分で作ってしまえばいい。
男性ともなれば自分の机は自分で作るべしという謎の風潮すらある。
これがこの国のホームセンターが巨大な理由だ。
「あれ、なんの材料だろう? 攻城兵器?」
「いや、食器棚かなにかでしょ。」
爆音をたてながら移動するベヘモス。4足歩行のその背には巨大な建築資材。
とてもじゃないが「ちょっと趣味のDIYをしにきた週末のお父さん」という印象ではない。
リヴァイアサンとの終末戦争に望む生体兵器だ。
「……あのサイズの食器棚……食器に私が乗れそう。」
「いや、ベヒーモス族は草食だから。」
「バロメッツの葉にくるまれば気付かれないかも……。」
「なんでそんなに自分を食べさせたいの。」
スーパーの1区画を占拠するバロメッツ。
中型種族たる私達の身長よりも巨大な葉菜は大型種族にとってはキャベツと同じような存在だ。
なるほど、あれなら肉の代わりにユニが入ったロールバロメッツができるだろう。
ひょっとすると、どこぞのItuberがやっているかもしれない。
「すみません。通してください。」
そんな事を考えていると今度は足元から小さな声が聞こえた。
この国の法律として、「小型種族は道の脇を、大型種族は道の真中を、中型種族はその中間を歩くこと」というものがある。
なんだそれは、ずいぶんと大型種族贔屓じゃないかという指摘は聞いたことがない。
せいぜいが2m程度の人間ならまだしも、5mの巨人が遠慮して道の脇を歩いたらどうなるか?
高確率でベランダが破壊される。
それに道の真中を歩くというのは場合によっては辛いこともある。
例えば極寒の雨の日だろうと極暑の炎天下だろうと大型種族が建物の影に隠れることは許されない。
そんな事をすれば道の脇を歩く小型種族を踏み潰してしまう。
逆に小型種族は壁のそばにいるだけで安全が確保できる。
大型種族が小型種族を見落とすことはあっても壁を見落とすことはない。
不幸な事故を防ぐためにはどうしても必要な法律なのだ。
で、今ベヘモスを避けるために脇に避けた私達はその小型種族の道を塞いでしまっている。
何も言わずに少し道の中央を歩けばいいじゃないかって?
乗降中のバスの目の前に飛び出すのは年端もいかない子供ぐらいだろう。
それと同じだ。
いつ動くか分からない大型生物の横をすり抜けるなど自殺行為。
自分の身を守るためにも声をかけるのが常識だ。
「あ、すみません。」
「いえ、ありがとうございます。」
大型種族が来ていないことを確認しながら避けた私達の横を、私達の膝ほどしか無い小人族の女性が糸巻きを複数背中に背負い、通り過ぎていく。
おしゃれな制服から察するに、近くのアパレルショップで急に糸が無くなったのだろう。
懸命にその小さな足を動かし走リ去っていった。
うわ、さっきのベヒーモス追い越したよ。すごい。
「アイデアを探しに来たんじゃなかったっけ、ユイ。」
「ごめん、ボーッとしていた。」
ふわふわと飛び回るユニは唯一この手の道交法に縛られない存在だ。
その気になればすり抜けてしまえばいい。あるいは浮遊して避けてしまえばいい。
「でさ、どんな素材を探せばいいの?」
「ん、基本は硬貨の形になるんだけど。広げると紙になるようなもの。折り紙みたいな。」
「なるほどね。」
最も一々折り紙を折って開いてをするなど通貨としてはナンセンスだ。
ワンアクションで開いたり閉じたりできるものが望ましい。
「1時間後にここに集合。それまで各自で使えそうなものを探してくること。」
「おっけー。じゃあ行ってくるね。」
十字路に差し掛かり、ユニは右へ、私は左へと進む。
さて、この1km四方のホームセンターをどーやって探索したものか。
「小型種族ともなれば電動自動車が貸し出されるんだけど……。」
ジ・アベレージたる中型種族は何かと便利だ。
小型種族や大型種族と違って少々不便でもなんとかなるシーンは日常多々ある。
だが、それは逆に「あいつらはとりあえずなんとかしてくれるからどーでもいいや」という負担のしわ寄せ先になっているということでもある。
このホームセンターの敷地内がまさにそう。
中型種族用の電動自動車は準備されていない。
すなわち、大型種族用にデザインされた広大な敷地を、徒歩で歩き回らないといけないのだ。
(ユニは飛べるからいーよね……。)
ふと、後ろを振り返ると商品棚をふわふわと飛び越えていく影が一つ。
「いーな……。」
種族ごとの差異に嫉妬することこそ無いが、羨ましく思ってしまうのはどうしようもない。
いつかユニと一緒に空を飛べる日が来るといいな……。
よく笑い話になるアメリカ合衆国の州法ですが、制定の成り立ちを考えると納得のいくものだったりします。
そもそも彼の国では日本と違って常識というものが人種ごとに異なるのが州法の必要性につながっているのでしょうね。
本作でもアホみたいな条例から納得の行く条例まで様々な条例をぶち込む予定です。
国際化しかけている日本でも今すぐ必要なものだと思うのですが……。




