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コンセプト2「事故の起きない交差点」6

「ユニバーサルデザイン……。」


どちらからかはわからない。

この際どうでもいい、私達の口からその言葉が溢れる。

そうだ、私達がこの世界で作り上げようとしていたのは、確かにそれだった。

何かを色んな人と共有したいから作り上げてきたのだ。


「聞けば、あなた方はユニバーサルデザインを得意としているのだとか。」


とここでアダムスが聞き捨てならないセリフを打ち込んできた。


「待って、なんで知っているの?」

「蛇の道は蛇と言いまして。」

「アイツか。」

「企業秘密とだけ。」

「ユニ、やっぱアイツ警察に突きだそう。」

「流石に可哀想だからちょっと不眠症になってもらう程度で済ませてあげる。」

「それは……優しい……のかな……?」


毎晩枕元でポルターガイスれば流石の奴も音を上げるだろう。

私の持つお仕置き用の必殺技だ。証拠が残らないのが素敵。


「で、目的は何? 偶然を装って私達に近づいて。」

「……なんでしょう?」

「「は!?」」

「僕としてはとにかく暇だったから面白いものが懐に飛び込んできたなと。」


これはやばい。視点がおかしい。

さっきまで親切なガイドくらいにしか思っていなかったが、これは虫かごを覗くアダムスだ。

ユイをかばって少し後ずさる。


「君、ただの学芸員じゃないでしょ。」

「ちょっと人より長生きなだけだよ。」

「話が噛み合ってないんだけど。」

「ちゃんと問いかけには答えてるでしょ。」

「……。」


日中の公共施設で何かするとも思えないが、そういうのを気にする手合とも思えない。

そもそも今の私達は迷宮に迷い込んだ新米冒険者のようなものだ。


「不完全な異世界転移、双子の姉妹で方や幽霊、もう方や人間。こんなに面白い観察対象は久しぶりだよね。しかもこちらに来て何をしているのかと思えばユニバーサルデザインの作成? 一体どう生きたらそうなるの?」


あかーん。本当にこれはあかん。

どう考えてもやべえやつに目をつけられてしまった。

背景現世のお父様、お母様、お元気ですか? 私達は今人生最大の修羅場です。

どう切り抜ければいいか教えて下さい。


「……つまり目的は私達ってこと?」


ユイが私の後ろから問いかける。

語尾が震えている。なんとしてもユイだけは逃さないと。


「確かにその通りだね。」


今気がついたとでもばかりにアダムスが納得する。

目的を明確にしてしまったのは悪手だっただろうか?


「で、どうするの? 白昼堂々誘拐? 虫かごにでも閉じ込めてアリの巣観察?」

「んー、それも魅力的な提案ではあるんだけど、つまんなそうだし止めとくよ。」

「……はい?」

「だって脱出ゲームに閉じ込められた人間なんて協力するか、裏切るか、絶望するかの3択じゃん。つまんないよ。」

「……まるで見てきたような物言いだね。」

「ご自由に。ま、そういうわけで僕としては今のところはどーするつもりもありません。」


手をバッテンにしてイーっと子供のような表情を作るアダムス。

先程まで巨大に見えたアダムスが見た目通りの大きさに縮む。

空気が弛緩してどっと肩の力が抜ける。


「今のところは?」

「今のところは。」


ニッコリとアダムスが裏のない笑顔で微笑む。


「いつまで?」

「それ聞いちゃう?」

「止めておく。」


なんだかよく分からないうちに見逃されていた。

ひとまずは自分たちの幸運を喜ぶべきだろうか。

ありがとう現世のお父様、お母様、偶には役に立ちますね。


「さ、時間も押していることだし、次のセクションに移動しようか。」

「お前のせいだろ。」

「5分も経ってないよ。久々に面白いものが見れて僕としては大満足。」

「キモ……。」

「うっ!! 想像以上に来るねこれは……。これが思春期の娘を持つ父親の心情かな。新しい発見だ」

「……。」


アダムスが扉を開け私達を迎え入れる。

奥に続くのは近代の展示物を飾った、私達が当初目的にしていたセクションだ。

ぶっちゃけ入りたくない。道先案内人ならもう少しマシなのがいくらでもいそうな気がする。

だが……


「来ないの? 特別性なのに。」


心の底から残念といった感じでアダムスが首をふる。

どうやら私達には選択肢が残されていないらしい。


「行こう、ユニ。」


銀糸を編み込んだ手袋越しにユイの手が触れる。

流石に今回ばかりは小刻みに震えていた。

虎穴に入らずんば虎子を得ず、前門の虎後門の狼。

二つのことわざが同時に現出している。

絶体絶命の状況だが、そんな状況は5年で慣れた。

倒れるなら前向きと二人で決めている。


「私が前に出る。ユイは下がって。」

「……分かった。」


何か言いたげな表情でユイが同意する。

こんな時くらいは幽霊であるこの身を利用させてほしい。

簡易魔導書に刻まれた魔法陣の位置を指先で確認しながら扉の前へと進む。


「意外と大胆。」

「君は私達の何を知っているの?」

「それもそうだね。知ってたらつまらない。新しくない。」


扉の前で一呼吸置き、部屋へと、「なぜか魔法陣で埋め尽くされた」部屋の内部へと足を踏み入れる。

これが転移魔方陣なら誘拐完了だ。だが、きっとそうじゃない。

本当にそのつもりなら自分の正体を事前にばらさない。

つまりは試しているのだ、私たちを。

私に続いてユイも足を踏み入れる。


「くだらない物だったら怒るよ。」

「それは無いよ。保証する。少なくとも妹さんは気に入ると思うよ。」

「「最悪。」」

「やっぱり君達面白いよ。」


パチンとアダムスが指を鳴らす。

それがトリガーだったのだろう。

魔法陣が急速に輝き出す。

これほど複雑な陣は久々だ。

一体何を仕掛けたのか。


「じゃあまたそっち側で会おう。」


アダムスの言葉を最後に私達の視界は完全に白に染まった。

結構やばい伽羅をだせて満足

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