0話
初投稿初執筆です。たぶんこれからどんどん下ネタが入ってくると思いますが小学生の頭の中レベルなので大丈夫だと思いますたぶん。
下ネタ駄目な人は下ネタ部分だけ読み飛ばしてください。読むところなくなるかもしれませんが。
朝ノ日高校の3階建の校舎の2階。階段から最も遠い教室の窓側の列の後ろから2番目の席。そこが学校における僕――綿 秋智の居場所である。
机を壁際にピタリとくっつけて並べるせいで体の左側は外の影響を存分に受けてしまう。夏は冷房が効いているのにも関わらずじんわりと汗がにじみ出てくるし、冬は左肩から体温を奪われていく。風が強い日は耳元でビュービューと喧しく鳴き喚くし、唐突に強いそれが吹くと窓ごと襲いかかってくるようで、ああ我が家の姉の様だ、と何故学校に来てまで姉の事を考えているのかと思考がリセットされたところで秋智はふと我に返る。
「……誰もいない」
先程まで教壇には確かに教師がブツブツと教科書に書いてあることを読み上げ、聞いているのかいないのかよく分からない生徒たちそれぞれが各自自由に行動していた……ような気がする。そもそも自由行動の代表格がこの綿 秋智である。彼の普段の様相を一言で表すと『目を開けたまま寝ている』である。ふわふわとここではない何処かに思考がほっつき歩いてしまう。そいつにGPS機能なんて高性能なものは搭載されていない為、誰が何を話しかけようと無反応。側から見れば口を半開きにして宙を眺めている、よく言えば不思議くん、悪く言えば何を考えているかよくわからないアホヅラ男子の変人。ビンタされたら戻ってくると思う。
ふと目に入ったくりんと巻かれた茶色の毛束をつんと指でつつき、ああメープルシロップをかけたパンケーキの色だと又もや思考が旅行準備を始めたところで、パシンと音と軽い衝撃が秋智の頭を襲う。
「おいこら秋智。いつまでぼーっとしてんだ!もう外で体育祭のクラス練始まってんぞ」
体育会系ぽさを醸し出した小麦肌、白く並んだ小さな歯が白のタンクトップと並んでよく映える姿をその声から想像してそちらへ振り向き、ああ全くそんな容姿をしていなかったと思わず秋智の顔に落胆が浮かんだ。
「え、何で落胆されてんの俺」
「そんな声で振り向いた先がこんな色白で細いやつだなんて思わなかったよ」
「いやバスケ部だからそりゃ外の部活のやつらに比べたら白いけど筋肉は割とあるからな!?なんなら見せてやろうかって何でそんな嫌な顔をするやましい事じゃないだろっておいおいトリップするな!!」
ふわーっと窓に付着した誰ぞの指紋に視線を向けていたら頭を両手で掴まれてグラグラ揺すられる。忙しない。ああでも揺すられると何故か電車内が頭をよぎり、何で電車ってあんなにも眠たくなるんだろうなぁなんて秋智はぼんやりと考え始める。揺れが大きくなった。心なしか騒音も。
ふと、カッカッカと何かが廊下を叩く音がして、次第にそれが大きくなってきたところで、ああ足音かーと推察する。そのあまりの規則正しさにメトロノームを思い浮かべて、あの音落ち着くなぁとまた没入しそうになったところで、カララッと教室の引き戸が開く音がした。
「吉田くんまだ綿くん連れてこられないの……うぇ?」
ふわりと尾を引いた黒いポニーテール。恐らくフレームの裏側が緑色をしているのだろう、少し小洒落た黒縁眼鏡。その奥の双眸には何故か多大な戸惑いと少しばかりの気まずさが写り込んでいた。眼鏡っていいな。明日伊達眼鏡してこようとぼんやり思案していたところで、教室に入ってきた女子生徒が口を開いた。
「あああなたたち不純異性交遊は校内では禁止よ!ここんなひ、人気のない教室でふたりっきりで頬に手を添えて見つめあってもしかしたらとは思ってたけどやっぱり!」
「待て待て待て待て落ち着いてちゃんと見て!秋智と俺は同性だから!!」
慌てて俺の顔から手を離し、必死に弁明しつつ女子生徒に詰め寄る通称吉田くん。手を両手でぶんぶんと振りながらも詰め寄る姿を後ろから見ると、何故かお腹のそこからじんわりと笑いが込み上げて「ぷふっ」と小さく漏れる。
(てか不純異性交遊丸ごと突っ込んで。なんで異性の部分ピンポイントで……笑い事じゃないじゃん)
「ふ!不純なのは認めるってこと!? それでもそういうことは家で!自分の部屋でするものじゃない!! 教室でだなんてマニアックすぎよ!!!」
「不純でもない断じてそんな関係じゃないからな!! だからそんなに鼻息を荒くしないでくれ! そんな目で俺を見るな!!」
口では押すなよと言いつつ押されることを望む女子生徒と、割と男子と距離感が近い男子生徒通称吉田くん。そんな2人の一期一会。こんな騒音も今では慣れっこなところもあるけど、そんな事よりパンケーキが食べたいな、と目にかかる髪を見て再度秋智の意識は旅行準備に取り掛かった。
これが綿 秋智の日常である。
不定期更新ですが時間を見つけて書いていきます。
数字の使い分けがわからぬ。探り探りになるかもしれません。