攻略者対策はバッチリするワ!
私が目指すのは、ヒロインにとってのベリーバッドエンド。
つまり、悪役令嬢にとってのハッピーエンド。
そのために私は、攻略者を全員こちらに堕とさなくちゃいけない。
そのためには、攻略対象の悩みを聞いて解決することで心を解きほぐしてあげる必要がある。
ゲームの中でも特に力の入った場面、それが攻略者がヒロインに悩みを打ち明けるシーン。
この場面があってこそ、攻略対象は初めてヒロインを、ただ好きな人から生涯を添い遂げたい相手って認識になるのよね。
ついには自分の弱さでもある、悩みを吐露するイケメン達。
影のある美男子の切なげなスチルに私は鼻息荒く大興奮したものだワ。
そんな完璧ハイクオリティのシーンだからこそ、弊害が生じてしまったワ。今、まさに。
私ったら、あまりにトキメキ過ぎて、スチルばっか見てたから、肝心の解決方法をカケラも覚えていないのよね。
主人公ちゃんがなんか言ったと思うんだけれど、さっぱりわからない。
多分その時、私、悶え転がってたワ。
かと言ってヒロインのセリフが予想がつくかといったら、それもノーアイディアだワ。
そもそも、あんな健気美少女の言いそうなこと、中身オカマの悪役令嬢にわかるわけないじゃない。
汚れ度が違うわよ。こちとらピュアじゃないのよ。
仕方がないから、かろうじて記憶の片隅にある悩みを書き出して、今のうちに対策を考えることにしましょう。
第一皇子ルシウス。
確か、彼は、父の国王殿下と実母の正妃の関係が冷めきっていたことから、政略結婚に疑問を持っているのよね。
そんな中で、会ったこともない異国の姫君との婚約話が浮上していたはず。
政略結婚への拒絶と、でも国の為には…っていうジレンマを抱えてるのね。
…。
よし。それなら、私が愛人枠で慰めてあげれば問題ないわね。
次!
宰相の息子、ジョゼフ。
このインテリ眼鏡は、隠れ人見知りだったはず。自分の知能には絶対の自信があるけれど、人と会話や交流することに苦手意識があるんだったワ。
会話が嫌?
なら、肉体言語で語ろうや(低音ボイス)
これで解決!
次!
それから、皇子の親友で遊び人のフェリス。母親の浮気からの女性不信だったかしら。
オーケー、なら私を信じさせてあげる。男の悦びを教えてあげるワ。これもバッチリね。
次!
騎士団に入りたい、色白もやしっ子のペルム。
昔から体が弱かったことをコンプレックスに思っていたんだったかしら?
要は、体力つけたいのよね?じゃあ、夜の稽古は私に任せてくれれば完璧ね。
それから、大司教の息子、アイリク。
幼い頃に戦争で亡くなった人々の悲惨な姿を葬式で見て以来、信仰が揺らいでいる。
ちょっとヘビーだけれど、つまりこうよね?俺に天国を見せてくれ(懇願)
わかったわ、ダーリン。私が連れてってあげる。
そしたら…
あら?全員解決しちゃったじゃないの。
つまり、ボディランゲージすればいいのね。作戦はガンガンいこうぜ、で。
体当たり(物理)な作戦だけれど、一応決まったワ。これで安心。
全員ちゃちゃっと攻略して私の天下よ!
イケメンを捕獲するのはこの私だワ。
満足したら眠くなってきちゃった。
私は高級すぎる布団に潜り込み、目を閉じる。
それにしても、本物のアンジェラちゃんは逆ハールートどう攻略したのかしら?
本当にアンジェラちゃん、体で攻略したとか…ないわよね?
…まさか令嬢なら問題だけれど、令息だったら婚前交渉とか関係ないってこと?
なかなかやるじゃない…。ここに来て、だいぶアンジェラちゃんの見方が変わるワ…。