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将来の夢なんて決まってますワ…!

神である作者のみに許された権力の行使ー…

それは面倒な部分の時間をすっ飛ばすこと


最近、お父様によく同じ質問をされて困っています。思春期の娘が可愛くて仕方がないからだとわかってはいるけれど、同じことを聞かれて正直鬱陶し…いや、面ど…その、とにかく何とかして欲しいと思ってます。どうすれば良いでしょうか。

ペンネーム:思春期 美人度 天井娘


ふぅ。こんなものかしら。

攻略者も全て私にメロメロになって早数年。

新たな問題の種が浮上してきている。


それこそ、前世憧れてたラジオDJ ヒュケメンボーイさんに思わず脳内お便りを送ってしまうくらい困っているんだから。

悩みの一つは成長した私が美しすぎるってこと。でも、それはまぁ無理もない話よね。



だって間も無く、私は花も恥じらう15歳。沸き立つ美しさはとどまるところを知らず、マグロですら私に見惚れて泳ぐのをやめ、溺れてしまうくらいには美しすぎる女。それが私。美人すぎる罪で、私ったら捕まっちゃうんじゃないかしら?

それとも国民を魅了して国家の機能停止による公務執行妨害でかしら?イヤね、美しすぎるのも考えものだわ。



…でも、こんな悩みは大したことないの。私が可愛いっていうのは当たり前の真理なんだから、考えても無駄よね。


重要なのは、成長して完璧な美を手に入れた私は、そろそろ学園に通い始める年齢になったってことなのよ。ゲームの世界はカミングスーン。

もちろん、私の準備はバッチリよ?ヒロインめをけちょんけちょんにしてくれるワ。


まぁ、そういうわけで…なのかは知らないけれど、最近お父様は私に進路調査を行なっているみたいなのよね。

ここしばらく、お父様からはいつも同じ質問が飛んでくるの。




朝食をモソモソ食べ終えると、そういえば、とお父様が私に話しかけてきた。また、この話だワ。私はピーンときた。




「アンジェラは何になりたいのかな?」




「素敵な方のお嫁さんですわ!!」





食い気味に答える私にお父様はとても優しい顔をする。うんうん、いつもの流れね。確か、このやり取りは今日で124回目。


…でも、やだ。今日のお父様ったら、なんだか目が少し悲しそう…。

私に本当のことを言ってもらえないと思ってるんだワ。

そうは言っても、お嫁さんになりたいっていうのは正真正銘、私の魂の叫びなのよね…。


普段であれば、これから各攻略者たちの素晴らしいところの演説に入っていたのだけれど、仕方ないわね。

今回は特別に未来の息子候補のポジキャンはパスして、お父様とお話ししてあげるワ。

別にお父様のことが嫌いで意地悪してるわけじゃないんだもの。





「…ところで、お父様にもなりたいものってあるんですの?」




お父様は一瞬、驚いた顔をしてから、少し寂しげに微笑んだ。我が父ながら、本当にイケメン。影のある男って素敵よね。


まぁ、私は前世の職場では、表情がギラギラしすぎているって言われ、そこから裸電球ってあだ名をつけられたんだけれど。

どS上司からちょっと蔑んだ目で、おい、裸電球って呼ばれるたびに、裸の部分に興奮しちゃって大変だったワ。


まぁにとにかくお父様も後、10年若ければね…残念ね。

10年前のお父様ってどれくらいイケメンなのかしら…実際に転生できたんだから逆行もワンチャン…いや、むしろフルチャン…





「四大貴族…かな」





おっと、危うく聞き逃すとこだったワ。乙女たるもの、いつでも頭の中で可愛い考え事をしてしまうものよね。



…ん?待ってちょうだい。今の単語、ゲームの中でも聞いたことのないものだったわね。あら、初物?ヤダ、好物。




「四大貴族…ってなんですの?」




「王様から厚い信頼を得ている貴族のことだよ。ほら、これを見てごらん」




お父様がメイドに一冊の分厚い本を持って来させる。

って、やだ、これ私がこの前枕にしていた本じゃない。表表紙に私のよだれの跡があるワ。

でも、お父様の方は、そんなことは気にせずに本を開く。




「ここに書いてある家名が、四大貴族だよ」




お父様が指差した場所を読むと…やだ!

王子以外の攻略対象は4人とも四大貴族の家の子じゃないの。

なるほど、そういう繋がりだったのね。どうりで、パーティーではいつも5人で仲睦まじくしているはずだワ。

私もその集まりにはガンガン混ざって愛を深めてきたけれど。

じゃあ、我が家もこの四大貴族の仲間入りをすれば、結婚の道が開けるってことね…!!




「簡単ですわ!!信頼されれば良いのですわ!!!お父様ならなれますわよ!!」



「…ありがとう、アンジェラ。でも、この四大貴族になれるレベルの信頼となると、それこそ魔王退治とか戦争から国を救うなんて規模のことをしなくては無理なんだ」





気持ちは嬉しいけど、この国の不幸は僕は望まないんだ、と微笑むお父様。



くぅぅ。わかるワ、その気持ち…!

私も、自分ではどうにもできないっていう、遣る瀬無い思いは沢山抱いてきたもの。ちょっといいなって思ってた幼馴染の田辺くんが厨二病の魔の手にかかり、私のことを邪神だと吹聴し始めたあの日。


それに感化された皆が私を見て本気で怯えた目を向けてきたあの時、学年の人気者だった山内君が英雄に仕立て上げられ、震えながら私の前に来てそのまま泣きながら命乞いを始めたあの瞬間。


現状に対する自分の無力さを呪い、遣る瀬無い思いで、私は山内君をコテンパンにして帰りにアイスを奢らせたんだったワ。


山内君はずっと泣いてたけれど…なんなら、私が彼のアイスを一口もらって、これって間接キスよね…って口を開いた瞬間にギャン泣きをきめていたけれど、きっと彼も自分の無力さを痛感してたのよね。


わかるワ、どうにもならないことって辛いわよね。

お父様、こればっかりは私にもどうしてあげられないワ。




「…大丈夫ですわ、お父様!アンジェラにとっては、今のままでも最高のお父様ですわ…!!」


「アンジェラ…!!!」



お父様が感極まったように私に抱きついてくる。その瞳には涙が浮かんでいて。

私も山内君のことを思い出して、少し涙ぐみながらお父様を抱きしめ返しちゃったワ。

それに、この日以来、公爵様の進路相談室は無くなって一安心。


つまり、きっとこれはもうお父様も重婚を応援してくれているってことよね。

これで、心おきなく恋に邁進できるワ!!

待ってて、私のプリンスたち!!!

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