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やだ、ここ乙女ゲームの世界じゃない!?




ずっと、乙女ゲームが大好きだった。




華麗な世界、優しく美しい攻略者達、泥臭いけれど健気なヒロイン。

現実は、頑張れば報われるなんてそんな綺麗事ばかりではないなんて、大人になって知ってしまった私が唯一、夢を見れる場所。

それが、私にとっての乙女ゲーム。



その中でも思い入れが強いのは、「イケメン大捕獲乱闘2018」



成人して一人暮らしをするようになって、初めて買った乙女ゲームだ。

強力なライバルキャラである、アンジェラ・ド・シルヴァと、ヒロインが5人の攻略者を取り合う、王道学園ものだ。


レジに並んだ時は心臓が張り裂けそうなくらいにドキドキしていて、それでもどうしても買わずにはいられなかった。


逸る気持ちを抑えつつ、ゲームを始めた私。攻略者に出会った瞬間、心臓がキュッと掴まれ、体が火照るのを感じた。


そう、胸に広がるこの気持ちを私は知っていた。


これは、中学校三年間同じクラスだったモブ顔の高橋君に抱いた気持ちと同じだった。

…あるいはサッカー部のエース佐藤君への仄かな劣情と同じ。


または、球技大会で足を捻った私に肩を貸してくれた陸上部の山田君へのトキメキか、塩顔男子のクラス担任、田中先生に赤点でマンツーマン補修を受けた時の嬉しさか、憧れていた神谷先輩に笑いかけてもらった時の恥ずかしさ、不良ぶってるのに実は優しい吉田君にキュンとした時かー…etc.



まぁ、多分そこらへんのどれかだ。

御託はいい。

詰まる所、私は恋をしたのだ。画面の中の王子様達に。




そんな私は、もちろん願った。

あぁ、この世界に生まれ変われたら、と。

一度でいいから、イケメンに愛を囁かれたい、と。





「ー…さま…」




乙女ゲームの世界ならば、




「ー…ラ…さま…っ」




こんな私でも、




「ージェラ…さまっ…!」




「うるっさいのよおおおおおお、夢くらい見させなさいよおおおおおおおおお」





絶叫して起き上がって、はたと気付く。

私、一人暮らしじゃない。じゃあ、誰が起こしたの…?

…やだ、幽霊!?

慌てて周囲を見回すと、私の部屋ではなかった。

深い赤を基調とした、クラシカルな室内に、私が寝ている、フカフカの巨大なベッド。

そして、側には呆気にとられている、私の侍女。

私の侍女ー…?何よそれ…?

ギギギと、視線を動かすと、キャビネットの鏡に目が止まった。



そこに映っていたのは、緩く髪を結わいた金髪の女の子ー…。


幼いながらも、この顔を見間違えるわけがない。


散々、ゲームで見知った悪役の顔。


そんなわけがないと理性が叫ぶ。

私は側にいたメイドに恐る恐る声をかける。



「…ちょっと」




「はい!どうなさいました?お加減は…」



続く言葉を制止し、私は質問をする。




「私の名前は…」



だが、わざわざ聞かずともわかっていた。





「アンジェラ・ド・シルヴァだったわね…?」







ー…私は、あの悪役令嬢、アンジェラ・ド・シルヴァだ。









「…?いえ、貴方は、ジェラス・ド・シルヴァ様です」






ー…違った。



嘘でしょ!?この前振りで違うワケ!?

私、赤っ恥じゃない!?


メイドの制止を振り切って、慌ててベッドから降り、鏡に近づいた。

やはり、顔は完全にアンジェラそのものだ。

キツそうなつり目にキラキラと輝くプラチナブロンドも、雪のような肌は微かに上気し、桜色。

私ったら、とんでもない美人じゃないの…!?



だが、問題は顔ではない。もっと下だ。そこに、前世でもとっても馴染み深いヤツの気配を感じた。





あぁ…転生して、ようやく今度こそお姫様になれると思ったのにー…




あまりのことに、私は膝から崩れ落ちる。







あぁ、前世、オカマだった私は、今世もオカマなのね…!?


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