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勇者とは

 間違ってないはずなので、認識のズレを直そうと、次々に言葉を連ねる。


 「ま、魔王を倒さない限り平和は来ないでしょう?勇者になったら自分より世界の秩序を優先しなきゃならないし、色んな覚悟をして、敵を倒さなきゃいけないんだ。犠牲者をゼロにはできないけど、最小限にするためにも、勇者になって早く魔王を倒すんだ!」


 激情を破裂させるメリゴを、ノゾミはまばたきせずに見つめ、またソウに尋ねた。


 「敵とか魔王とかを倒すのが勇者なの?」

 「助けてくれるのが勇者だと思いますよ」

 「ほら!一匹でも多くを助けるためには魔王を倒さなきゃいけないってことでしょ?だからソウさんが敵になるなら撃たなきゃ!」

 「ソウは助からないの?」


 ノゾミの尻尾がショックのあまり、パタリと落ちた。まだ幼い少女を前にしてするべき話ではなかったようだ。爆発した感情が急速に居心地悪くなり収束する。

 重苦しい沈黙の中、ソウの声はのんびりしていた。


 「魔王を倒すというのは一つの方法にすぎないと思います」

 「……どういうことですか?魔王を倒さなきゃ誰も助からないんですよ?」

 「魔王を倒せてない今でも、命を救うことは可能ですし、命を救い続けることがより大切なように思います。それが魔王を倒すことにもつながります」

 「……わかりません」

 「落ち込む友達に寄り添い、悲しみを分かち合うことがあります。励まし、勇気づけると友達は明るさを取り戻すことがありませんか?」

 「ありますよ、それは。でも、元凶がいなくなれば落ち込むこともなくなるでしょう?」

 「落ち込んでも助けてくれる存在があれば、私たちは立ち直ります。おまけに強くなれるのです」

 「強く?」

 「魔王がいても、嬉しいこと、楽しいこと、幸せになる瞬間があります。そういう瞬間をたくさん作る手助けをしてくれるのが勇者なんだろうと私は思っています」


 メリゴは動けなくなった。反論しようと思ったが、おばあさんのことが頭をよぎる。おばあさんは魔王を倒してないし、倒そうともしなかった。だからといっておばあさんの行いが的外れで無意味なものだったとは思えない。おばあさんが手を貸したことによって笑顔があちこち広まっていったし、おばあさんも喜んでいたことを知っている。おばあさんは魔王の手下にさえ思いやりを尽くした。相手は酷いことをしたが、おばあさんのしてきたことは最期まで立派だった。

 おばあさんは勝者だ。魔王はおばあさんに及ばなかったのだ。魔王が入り込めなくなる瞬間、そういう瞬間を積み重ねようとソウは言ってるのかもしれない。




つづく




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