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混乱

 暴れても逃げられないメリゴは大泣きを始めた。そんなメリゴを狼は静かに見下ろしている。

 泣き声を聞きつけ、落ち葉を掃いていた狐がひょいとやってきた。


 「何かありましたか?」


 天の助けだ。メリゴは逆さまの視界の中に狐を見つけると、涙を引っ込め、声を張りあげる。


 「た、助けてっ!!」

 「おや?これは一体……?」

 「いきなり突進してきた。興奮しているから落ち着くまで待っている」

 「それは心配ですね、私も一緒に待ちましょう」


 メリゴはぎょっとした。助けに来たはずの狐が狼と親しげに話しているではないか。そればかりか、一緒になってメリゴを見下ろしている。襲われていたはずの子猫でさえ、大きな瞳でじぃーっとメリゴに注目している。

 メリゴは混乱した。狐は敵なのか?狼は子猫を襲っていたんじゃないのか?あわれな子猫を助けに入ったはずなのに。どうなってるんだ?

 動かないでいると、すんなり狼の足が退いた。ゆっくり起き上がるメリゴを襲う者はない。狐が来たから襲うのをやめたのだろうか?本性を隠しているのか?

 不信げなメリゴに、狐が優しく問いかける。


 「大丈夫ですか?」

 「……」

 「私はこの寺で働いている者で、ソウと言います。あなたは?」

 「……メリゴです」


 メリゴが返事したので、狐のソウも、子猫も、狼までもがホッと胸を撫で下ろした。なんでおまえにまで安心されるんだ、と疑うメリゴに、狼は平然と話しかける。


 「慌てていたようだが、急ぎの用事か?」


 子猫が興味津々に尻尾を振っている。怯えも涙もない。全く怖がっていないようだ。メリゴは狼を警戒しながら、ソウに説明した。


 「ここを通りかかったら……」

 「通りかかったら?」

 「この狼が……」

 「シンさんが?」

 「この猫に噛みつこうとしてたから……」

 「噛みつく?」


 狼と子猫がきょとんとして目を合わせた。一緒に首まで傾げている。

 今の今まで襲う者、襲われる者だと見ていたが、動きの揃う二匹に違和感は膨れ上がった。もしや早とちりではないかとメリゴは口をつぐんだ。




つづく

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