失態
近道なので惣佐寺を突っ切って行くことにした。正門の先で落ち葉を集める金色の狐がいた。自分のふさふさの尻尾を使って丁寧に掃いている。掃いても掃いても葉は落ちてくるが、あきらめる様子はない。尻尾に枯れ枝や砂が混じって汚れても嫌な顔せず、むしろ楽しそうに掃除している。なぜあんなに楽しそうなのだろう?集めた葉で芋でも焼くのだろうか。
不思議に思いつつ、メリゴは通りすぎた。勇者になるための試験を受けるため、体を綺麗に洗って毛先までブラッシングしてきたのに、ここで汚したくはない。手伝ってほしいと声をかけられないよう急ぎ足で立ち去った。
ところが、本堂裏でメリゴの足は止まった。
銀色の狼が目についた。鋭く光る赤い瞳、剥き出しの牙、百匹の羊が戦いを挑んだところで瞬く間に殲滅するであろう迫力に、身がすくむ。だが狼の標的はメリゴではない。狼の眼前には、小さな女の子。紫色の毛並みの子猫が大きくて白い瞳で狼を仰ぎ見ている。
メリゴの正義感がうずく。勇者ならば悪を野放しにしない。しかし、メリゴは震えていた。あんなにも恐ろしい眼をした狼はかつて見たことがない。そうは言ってもメリゴが行かなければ、あの子猫は無防備のままペロリと食べられてしまうに違いない。
ガクガク震えながら葛藤の末、メリゴは決心した。狼に向かってがむしゃらに突撃する。
「うおーっ!」
叫びながら走るメリゴに狼は気づいた。体当たりするメリゴをさらりとかわす。ついでに足を引っかけてメリゴを転ばせた。呆気なくひっくり返りジタバタするメリゴの腹に左前足を乗せ、ぐっと抑える。
勇ましかったメリゴは一転して弱り果て、激しく後悔した。相手の力量も定かでないのに闇雲に突撃して倒せるわけがなかった。逆に捕まってしまう始末。勇者になるどころか、もはやメリゴの未来が消えるかもしれないピンチに陥ってしまった。
つづく




