未来を築く
メリゴは近くの石に身体をこすりつけた。石の先端に毛玉が集まる。その毛玉をメリゴはノゾミの手に握らせる。
「お礼です。おかげで何をすればいいのか見えてきました。頼もしい勇者になれるよう頑張ります」
「……銃持つの?」
「銃より強くて価値のあるものにするよ。誰でも生まれた時に授けられるけど、そんなに重要なものだとは思ってなかったんだ。これから磨き上げてどんどん使っていくよ」
ソウがそっと笑みを広げた。シンは首をひねる。
「毛玉はノゾミのオモチャになるか?」
「それもいいですけど、僕の毛よく燃えるんでパーティーに使って下さい」
「パーティー?」
「落ち葉を集めてたところを見ました。きのこだか、芋だかわからないけど何か焼く予定があるんですよね?」
すると、ソウはパァっと目を輝かせる。
「いいですね!焼き芋パーティーにします」
「ただの掃除だろ?」
「目的があるとやる気倍増ですよ。メリゴさん、素敵なアイデアと毛玉をありがとうございます。良かったら参加していきませんか?」
「いいんですか!?」
「わぁい、焼き芋」
喜んで跳ねるノゾミを見てるうち、メリゴは確信を得た。喜んでもらうことが喜び。それを勇者はわかっているのだ。
募集広告の件はまたの機会で大丈夫。勇者になる試験を受けなくたって勇者は勇者だ。勇者になりたいと願えば、いつでも誰でも勇者になれる。
今、メリゴは最高の未来を築くための貴重な一瞬を手に入れた。
おしまい