守る
ソウはしょんぼり耳を折るノゾミと苛立つシンを振り返ってニコリとした。
「もしもの時、私がメリゴさんに撃たれてもメリゴさんを恨んじゃいけませんよ。恨みや悲しみは魔王の大好物です。ノゾミさんやシンさんまで魔王にとりつかれてしまったら、それこそ私は苦しみます」
「苦しい……ソウも一緒に生きるっ!」
大きな瞳に涙をゆがめるノゾミがソウに飛びついた。ソウの頭にべったりとへばりつく。離れたくない気持ちが痛いほど伝わってきた。
ソウは頭を軽く揺らして笑っている。
「例え話ですよ、ノゾミさん。大丈夫です、私はここにいますよ~」
「ノゾミも勇者になって守ればいい。ソウから魔王を追い出せ」
「守る。ソウから出てけ、魔王ーっ!」
ノゾミはポカポカとソウの頭を叩く。今は乗っ取られていないと説明するが、ノゾミは降りようとしなかった。シンがくくっと笑いながら、目元をゆるめて見守っていた。
メリゴの肩に入っていた力が抜けていく。血なまぐさい強さで望む世界はつくれない。小さくて地道な解決方法かもしれないけれど、確実な方法で世界に幸福を根づかせていけばいい。メリゴは光を見つけた。勇者がかかげる光だった。
鋭利な爪も牙も無いこんな自分でも勇者になれる。メリゴは自分の中に温かいエネルギーが生まれたのを感じた。
つづく