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07.穢れを祓うもの

2階の突き当たり左の空き部屋、ここがクトゥルーの自室となる。

襖を開けると、四畳の畳に部屋には最低限の物しか置かれておらず、長らく使われていなかったことが分かる。


「クトゥルーくん、ここが部屋ね。変な儀式とかにつかわないでよ。」

「ふん……まぁ少しばかし狭いが、これくらいは我慢してやろうか。」


いちいち態度が尊大でどうも解せない。

部屋に入ると、クトゥルーは一面を見渡す。

最低限置かれた箪笥や机などを一瞥して、それらに触りはじめる。

無言でそれらに触れるとクトゥルーは朝貴の方へ向いて言った。


「この部屋……何か不自然だな。」

「何ですか、不自然って。随分使われてなかったからじゃないですか?」

「いや…何だか狭苦しさを感じると言うか…」


クトゥルーは怪訝そうに部屋を見渡して呟く。

灯りは若干薄暗いかもしれないが、窓もちゃんとあるし広さも狭すぎるというほとでもない。

だが、朝貴は机や箪笥、床を見てクトゥルーの言葉の意味を理解した。


「あ、もしかして……掃除してないから?」

「……は?」


ご名答、と言わんばかりにぽんと朝貴は掌を叩いた。


***



「クトゥルーくん、いつまでも文句言ってないで手伝ってよ。」

「ちっ……何故俺がこんなことを…」


物置から掃除機やら箒やら塵取りやら引っ張り出して、即清掃モードへと移り変わる朝貴に対して、今から何を始めるのか察したクトゥルーは面倒臭そうに床に座った。


やる気に満ちた朝貴は掃除道具を手に取る。

それと対照的にクトゥル-からは全くの覇気を感じられない。

朝貴自体、掃除は嫌いではなかった。

掃除をすれば部屋も気分もスッキリするし、達成感を得られた。

だが、この部屋を使う肝心のクトゥルーがやる気を出さないので朝貴は参っていた。


「この部屋はクトゥルーくんが使うんだからちゃんと自分でやらなきゃ。

それに埃だらけの部屋じゃ落ち着かないでしょ?」

「まさか、そんな人間のようなことを俺が思うか。

そもそもこれは俺の仕事ではないだろう。俺はお前たち貧弱低能人間と違って崇高なる種族なのだぞ、身の程を弁えろ俗物が。」


クトゥルーから吐き捨てられるマシンガントークのような罵詈雑言に朝貴は耳を塞いだ。

相変わらず言葉が悪いし、何より人間に対しての価値観が否定的だ。

まぁ本人が人間じゃないからだろうが、本当に嫌そうな顔をしているのが何とも言えない。


「じゃあ物を整理するだけでいいから手伝って。掃除は私がするから。」

「……………何で」

「掃除させてくれるまで私部屋出て行かないからね?」

「ちっ……仕方ないな。」


クトゥルーから何とか承諾を得たと言うことで朝貴は掃除を始めた。

まぁ物の整理ぐらいはさせようか、と思い最低限の仕事を任す。

ここで下手に出る私も既に手懐けられてるんじゃないかと思えた。


数時間後、掃除を終えた達成感とクトゥルーくんのあの何とも言えない煩わしい表情が何よりも目に焼きついたので、私の脳内メモリーに永久保存することが決まった。

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